巨体の人外に助けられて世話される話
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魔術師団への入団が決まったあなたは、まず身体測定を受けることになった。
お世話になっている騎士団の医術師フォロロットゥールが、健康診断と合わせて行ってくれるそうだ。
「名無しさん。これが君の身体記録と健康状態のデータだよ。今回もすべて良い結果で、何も問題は見られなかったからね」
「ありがとうございます、フォロ先生!」
ほっとして笑顔で受け取ると、白衣を着た彼も書斎机の前に腰を下ろし、微笑んでくれた。
元軍医の彼は、整った白髪にがっちりとした体格を持つ、信頼のおける医術師だ。
体が動かなくなったときからずっと自分を診てくれて、今も魔界での主治医を務めてくれている。
魔術師団に合格したこともフォロ医師は喜んでくれた。彼から身体に問題ないと告げられたことは、あなたにとっても大きな自信となった。
「それであのう、恒例の魔力のことなんですが……最近はどうでしょう」
「そうだったね。うーん、今回の測定では……」
二人の間でお決まりの緊張の瞬間が始まり、彼はにっこりと「上限まで来てるね」と教えてくれた。
「本当ですかっ? やったーっ」
「はは、私も驚いているよ。これだけあれば魔術師として十分な力が発揮できるし、鍛錬を積めば将来的にも上限が上がっていく可能性はあるんだ」
彼は医療魔法の専門家として話をしてくれた。
ルドガーとの関わりは謎だったが、体は人間のまま普通だし、あなた自身の魔術の鍛錬による力も大きいだろうと思われた。
「ふふ、楽しみです。…でも魔術師団って、どんなところなんですかね。まだ何も教えてもらってないんですよ」
あなたが首をひねると、彼は苦笑する。
騎士団内の魔術師塔は、短期的に滞在する場所で、普段はここに魔術師が寄りつくことはないのだそうだ。
「騎士と魔術師は仕事でペアになることはあるが、特別に仲がいいわけじゃないからね」
「ええっ。やっぱりそうなんですか。私、ここにいていいのかな」
思わず呟くと、フォロ医師も、魔術師長のミザロがいいと言うならいいのだろうと結論づけていた。
色々話をしたあと、あなたは彼にお礼を言って立ち上がる。
また次の診察で――そう言って医務室の外に出ようとしたとき。
奥の検査室から助手が出てきて、医師にあるものを手渡す。
それを見たあなたは「あっ」となった。
「名無しさん、これは君の忘れ物かい?」
「そうです! すみません、ありがとうございます~」
フォロが白いハンカチを渡そうとしたとき、彼は上質な布の模様を見て、一瞬動きを止めた。
「それは……どこで……」
「これ、大事な人にもらったものなんです。忘れちゃうなんて、危ない危ない」
うっかりミスを救ってもらい、あなたは反省しながら笑みを向けた。
だが医術師は瞳を揺らし、あなたを見つめていた。
「あの…?」
「ああ、いや。なんでもないんだ。気をつけてね」
「はい! ではまた、フォロ先生!」
あなたは明るく手を振り、部屋をあとにした。
その日の夜、ルドガーにあることを言わなければならなかった。
悪い意味で、あなたはドキドキしている。
帰宅した彼に身体測定は何も問題なかったと伝えると、安心して喜んでくれた。
いつものように夕食と風呂を済ませ、二人で居間の床に座り、くつろいでいた時のことだ。
「あのね、実はルドガーにちょっと話が……」
「なんだ? どうした、名無し」
何も知らない彼に次の台詞を発することが、早くも胸を痛めた。
「……えっ? お前ひとりで、街に買い物に行くのか……?」
事情を話すと、ルドガーは思っていた以上に動揺していた。
「一人じゃないよ。セロさんとナザルさんもついてきてくれるって。昼の時間に、ちょっと魔術書を見に行こうと思ってさ」
それも本当のことだが、実は一番の目的は、ルドガーに内緒でプレゼントを買いたいからだった。
彼と一緒に行って選んでもいいのだが、やっぱり驚かせたかったし、自分にとって初めての贈り物で喜ばせたかった。
「俺がいなくても、大丈夫か……? 少し心配だ……」
屈強な彼の声が次第にしぼんでいくのを聞いて、あなたは理由を話したくなるのをぐっとこらえる。
「すぐ帰るよ、昼の2、3時間だけだし。あなたが仕事から帰る前に戻るから。一緒にご飯食べるんだからね」
手をぎゅっと握ると、彼のこちらを見つめる瞳が揺れ、やがて小さく頷く。
「……ああ、わかった。本当に気をつけるんだぞ。……でも、大丈夫だ。セロもナザルも、一緒だからな」
小さな手を大きな両手が覆い、優しく握ってくれる。
以前ならば、こんな言葉が彼から出てくることはなかったはずだ。
でも今は皆での任務を終え、四人の関係も明らかに変わっていた。
だからルドガーも、あなたのことをその時間には任せられると信じた様子だった。
「ありがとう、ルドガーっ。すぐに帰るからね。その次からは絶対、あなたも一緒なんだから!」
「そうだぞ、俺も一緒だ。忘れるなよ、名無し。今回は特別だ」
「うんっ」
若干寂しそうな表情だったが、あなたの初めての単独の買い物を、彼も応援してくれている。
その気持ちを大事に受け取って、絶対に素晴らしい贈り物を見つけようと、あなたは心に決めていた。
お世話になっている騎士団の医術師フォロロットゥールが、健康診断と合わせて行ってくれるそうだ。
「名無しさん。これが君の身体記録と健康状態のデータだよ。今回もすべて良い結果で、何も問題は見られなかったからね」
「ありがとうございます、フォロ先生!」
ほっとして笑顔で受け取ると、白衣を着た彼も書斎机の前に腰を下ろし、微笑んでくれた。
元軍医の彼は、整った白髪にがっちりとした体格を持つ、信頼のおける医術師だ。
体が動かなくなったときからずっと自分を診てくれて、今も魔界での主治医を務めてくれている。
魔術師団に合格したこともフォロ医師は喜んでくれた。彼から身体に問題ないと告げられたことは、あなたにとっても大きな自信となった。
「それであのう、恒例の魔力のことなんですが……最近はどうでしょう」
「そうだったね。うーん、今回の測定では……」
二人の間でお決まりの緊張の瞬間が始まり、彼はにっこりと「上限まで来てるね」と教えてくれた。
「本当ですかっ? やったーっ」
「はは、私も驚いているよ。これだけあれば魔術師として十分な力が発揮できるし、鍛錬を積めば将来的にも上限が上がっていく可能性はあるんだ」
彼は医療魔法の専門家として話をしてくれた。
ルドガーとの関わりは謎だったが、体は人間のまま普通だし、あなた自身の魔術の鍛錬による力も大きいだろうと思われた。
「ふふ、楽しみです。…でも魔術師団って、どんなところなんですかね。まだ何も教えてもらってないんですよ」
あなたが首をひねると、彼は苦笑する。
騎士団内の魔術師塔は、短期的に滞在する場所で、普段はここに魔術師が寄りつくことはないのだそうだ。
「騎士と魔術師は仕事でペアになることはあるが、特別に仲がいいわけじゃないからね」
「ええっ。やっぱりそうなんですか。私、ここにいていいのかな」
思わず呟くと、フォロ医師も、魔術師長のミザロがいいと言うならいいのだろうと結論づけていた。
色々話をしたあと、あなたは彼にお礼を言って立ち上がる。
また次の診察で――そう言って医務室の外に出ようとしたとき。
奥の検査室から助手が出てきて、医師にあるものを手渡す。
それを見たあなたは「あっ」となった。
「名無しさん、これは君の忘れ物かい?」
「そうです! すみません、ありがとうございます~」
フォロが白いハンカチを渡そうとしたとき、彼は上質な布の模様を見て、一瞬動きを止めた。
「それは……どこで……」
「これ、大事な人にもらったものなんです。忘れちゃうなんて、危ない危ない」
うっかりミスを救ってもらい、あなたは反省しながら笑みを向けた。
だが医術師は瞳を揺らし、あなたを見つめていた。
「あの…?」
「ああ、いや。なんでもないんだ。気をつけてね」
「はい! ではまた、フォロ先生!」
あなたは明るく手を振り、部屋をあとにした。
その日の夜、ルドガーにあることを言わなければならなかった。
悪い意味で、あなたはドキドキしている。
帰宅した彼に身体測定は何も問題なかったと伝えると、安心して喜んでくれた。
いつものように夕食と風呂を済ませ、二人で居間の床に座り、くつろいでいた時のことだ。
「あのね、実はルドガーにちょっと話が……」
「なんだ? どうした、名無し」
何も知らない彼に次の台詞を発することが、早くも胸を痛めた。
「……えっ? お前ひとりで、街に買い物に行くのか……?」
事情を話すと、ルドガーは思っていた以上に動揺していた。
「一人じゃないよ。セロさんとナザルさんもついてきてくれるって。昼の時間に、ちょっと魔術書を見に行こうと思ってさ」
それも本当のことだが、実は一番の目的は、ルドガーに内緒でプレゼントを買いたいからだった。
彼と一緒に行って選んでもいいのだが、やっぱり驚かせたかったし、自分にとって初めての贈り物で喜ばせたかった。
「俺がいなくても、大丈夫か……? 少し心配だ……」
屈強な彼の声が次第にしぼんでいくのを聞いて、あなたは理由を話したくなるのをぐっとこらえる。
「すぐ帰るよ、昼の2、3時間だけだし。あなたが仕事から帰る前に戻るから。一緒にご飯食べるんだからね」
手をぎゅっと握ると、彼のこちらを見つめる瞳が揺れ、やがて小さく頷く。
「……ああ、わかった。本当に気をつけるんだぞ。……でも、大丈夫だ。セロもナザルも、一緒だからな」
小さな手を大きな両手が覆い、優しく握ってくれる。
以前ならば、こんな言葉が彼から出てくることはなかったはずだ。
でも今は皆での任務を終え、四人の関係も明らかに変わっていた。
だからルドガーも、あなたのことをその時間には任せられると信じた様子だった。
「ありがとう、ルドガーっ。すぐに帰るからね。その次からは絶対、あなたも一緒なんだから!」
「そうだぞ、俺も一緒だ。忘れるなよ、名無し。今回は特別だ」
「うんっ」
若干寂しそうな表情だったが、あなたの初めての単独の買い物を、彼も応援してくれている。
その気持ちを大事に受け取って、絶対に素晴らしい贈り物を見つけようと、あなたは心に決めていた。
