巨体の人外に助けられて世話される話
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白い人工的なタイルを進んでいくと、自然の草花が生い茂った空間に出た。
だだっぴろく、色付きの巨大なガラス窓もある。だが当然外には通じておらず裏は土壁だ。
一番恐ろしかったのは、そこに小型の狼のような魔物たちがいたことだった。
あなたは初めて、瞳が赤く瘴気に満ち、不気味な唸り声を上げる獣を見る。
「きゃーッ! 本物だよ、どうしようっ、やばい、こっちに来る!」
「名無し、攻撃魔法を使え! 一番後ろにいろ!」
「わ、わかった!」
すでに戦い始めているルドガーに叫ばれ、あなたは短い息を整えて言う通りにした。
ルドガーとナザルは敵を引き寄せて戦闘を繰り広げている。
だが魔物は小さいとは言え数が大量だ。
習得していた元素魔法を使い、あなたは炎を出して威嚇し、必死にこっちに来ないようにした。
セロはもっとすごい。風魔法を操り、ちょうど二人がいる場所に魔物たちを旋風に巻き込んで集めたのだ。
「わあ、どうやってやるんですかそれ!」
「お前も10年修行すりゃできるようになるぜ!」
あなたはセロのことを尊敬の眼差しで見やる。彼は正真正銘の戦える魔術師なのだ。
だが会話してる間に風向きのコントロールがぶれたのか、何匹かこちらに戻ってきてしまった。
「きゃーっっっ」
「げっやべ! ナザルぅ! 助けてくれえ!」
すぐに獣を頼るもナザルは戦闘に夢中で聞こえていない。
しかし攻撃魔法を二人で必死に至近距離から繰り出しているとナザルは気づいてくれた。
もっと獣を引き付けているルドガーと「ここ任せた!」「ああ、名無したちを見てくれ!」と言葉を交わす。
だがそんなルドガーに、奥からボス的な巨大な狼の獣が現れた。
あなたは戦慄したが、ナザルがまだ湧き出る魔物を倒していく。
セロも果敢に戦っている。防護バリアは自分とあなたに張りながら、攻撃を繰り出す。
そんなとき、あなたに目をつけた狼の魔物がぐるる、とよだれを出しながら襲い掛かってきた。
――魔法が間に合わない。
あなたはとっさに短剣を取り出し、ルドガーの動きを思い出した。
狼は横に飛び跳ねながら、あなたの剣さばきを避ける。
すばしっこさに必死についていくも、狼はもっとも大きくジャンプをして飛びかかって来た。
小柄なあなたはしゃがみこみ右に避け、曲げた左腕を思い切り獣の脇腹に突き刺した。
そのときの感触は、異様に柔らかさを感じて、忘れられなかった。
「はあ、はあ、はあ」
あなたが一匹を仕留めたことに誰も気づいていない。
呼吸が激しくおさまらなかったが、距離のある獣をまた魔法を使い攻撃していった。
数分後、動く魔物の数が減っていった。
ルドガーも最後の一匹を倒し、皆は互いのところに集まってきた。
「……名無し! 大丈夫か!」
「う、うん。平気平気」
彼の顔を見てほっとすると、腕の中に抱きしめられた。
「ルドガー……短剣で一匹仕留めたよ。やっちゃった……」
どう思われるのかと思いながら、緊張がとけない表情で見上げる。
するとルドガーは動揺することもなく、固く頷いた。
「ああ、よくやった。訓練の成果が出たな」
そう言われた瞬間、やってよかったことなのだと、急に実感がわいてきた。
鞘にしまった血の付いた短剣を取り出し、自分で見つめる。
攻撃魔法で倒した魔物もたくさんいたはずなのに、短剣で殺したものの場所は覚えていた。
あなたがそこに向かうと、ルドガーもついてきた。
しゃがみこみ、あなたはそれを撫でた。
いろんな感情がわいたが、心の中でお祈りをするしかなかった。
「ルドガーは、大丈夫? 怪我してない? ……ありがとう、何度も戦ってくれて」
あなたは自分が戦闘を行って初めて、ルドガーやナザル、セロに対し、戦うことの本当の意味がわずかだけ分かった気がした。
「俺は大丈夫だ。当然だ。俺達は皆互いのために戦ったんだからな。お前にもありがとうだぞ」
ルドガーはあなたの頭を優しく触り、瞳を柔らかくして言った。
あなたはその言葉を噛み締めて頷いていた。
そんな姿を、セロはじっと柄にもなく眺めていた。
彼は遠くでぼうっと突っ立っているナザルへ近づいていく。
そして死んだような目で、こう呟いた。
「あ、あのさぁ」
「なんだよ」
「その……なんていうか。……ありがとうございました」
「はぁっ?」
ナザルは素っ頓狂な声を出した。自分の主になにか異常でも起こったのかという目つきだ。
だが彼は、ルドガーほど鈍感なタイプでもない。
「なんだその棒読み」
「そう? ありがとう~ナザル~」
「気持ちわりいな! 今度はなんだよ!」
「名無しの真似」
セロは30近い青年だがお茶目な面でごまかした。
ナザルは素直に大声で笑う。
それを聞きつけたあなたは、ルドガーとともに向かってきた。
「二人ともお疲れさまです!」
「おうお疲れ。おいセロ、さっきのもう一回名無しにやってみろ」
「お疲れ~名無し~」
「ひっ。な、なんですかその笑顔。ちょっと気持ち悪いんですけど、声も」
「お前の真似だぞ」
「……ひどい! そんなんじゃないもん! ねえルドガー!」
あなたが心外だと涙ながらに彼の腕を引くと、しっかり頷かれた。
「ああ。名無しはそれの百万倍可愛い。殺すぞ」
戦闘での荒ぶりがぶり返したルドガーだけは真面目に返したが、二人の男はさらに爆笑していた。
よく分からないけれど、皆体がくたくたのわりには明るい雰囲気だった。
◆
時計は夜を示し、皆は進んだ先で安全を確認すると、火を焚いた。
野営の準備をして、あなたは持ってきた干し肉と乾燥野菜でスープを作った。パンと一緒に出して皆で食事する。
「うまい、味付け最高!」
「ありがとうございます。⋯⋯はぁ〜。それにしても、ようやく一息つけますねぇ」
皆しみじみと頷く。想像していたように長い一日だったが、まだ目標地点にはたどり着いていないのだ。
明日はきっと任務の行方を決定付ける日になるだろう。
そんな話を皆でしていると、セロがこんなことを言い出した。
「でもよ、ぜってえここはミザロの手入ってるだろうからな。最悪の事態にはならないと思うぞ」
「ああ。俺もそう思うな。妨害はしてくるかもしれないが、あいつの目的は俺達を本当の危険に晒すことではないからな」
冷静にルドガーも相槌を打つが、今日の危険はそれほどでもないのかと密かに震えた。
扉に閉じ込められたのもミザロの仕業ならば、かなり手が込んでいる。
「師匠ってすごいなぁ。空間魔法ってやつも使えるんだから。⋯⋯そういえばセロさんも遺跡に閉じ込められたって言ってましたけど、お師匠さんってそういうタイプなんですか?」
あなたが何の気なしに尋ねると、彼は腕を組んでうんうんと頷いた。
「あの人はめちゃくちゃでなぁ。俺も何度敵の囮にされたり、宝物庫の罠を解くために閉じ込められたりしたか分かんねえ」
「えっ⋯⋯」
あなたが本気で引いていても、彼は「まあ弟子ってそういうもんだから」と笑っていた。
すると食事の必要がないナザルが、寝転がりながら話した。
「セロはな、師匠のおっさんを信奉してんだよ。何度ハメられてもついていこうとするんだ、馬鹿な野郎だろ」
「うっせぇな。あの人は魔術の腕だけはピカイチなんだよ。つうかお前だって捨てられただろ。俺達は同じ穴のムジナだよ」
へっ、と互いを自嘲するようなセロに対し、ナザルも反論せず面倒そうに舌打ちするだけだった。
二人はセロの師に捨てられた?
セロが騎士団に捕まった当初、守護者への借金を師に押し付けられたから魔界にいると言っていた。
あの話の信憑性が増す。
一体そのおっさんとは、どんな男なのだろう。
あなたが一人考えていると、セロがおもむろに口を開く。
「でもよ、師匠は絶対俺達を迎えに来てくれると思うんだよな。最後には絶対見捨てたりしねえってさ」
そう話したセロの顔立ちは、温かな火に照らされて穏やかなものだった。
ナザルは何も答えず、頭の下で手を組み、目を閉じていた。
寝る時間になり、二組ずつ順番に休もうとルドガーが言った。
ナザルは睡眠が必要ないが、セロから魔力の餌をもらい、体を休息させるのは意味があるらしい。
二人がまず先に休むことにし、目に見える距離で寝袋を敷いた。
セロは枕とアイマスクまで完備し、小さいイビキをかいて寝ている。少し離れたとこでナザルも横になっていた。
あなたは火の前で、隣の大柄なルドガーの腕に頭を寄りかけていた。
「ルドガー、すごい濃い一日だったね」
「そうだな。⋯⋯名無し、お前は寝ていろ。相当疲れただろう」
「ううん、大丈夫だよ。ルドガーこそ」
一番戦っていたのは彼だと思うし休んでほしかった。でも彼は体力はまだまだあるという。
「ふあ⋯⋯寝ないよ⋯⋯」
「ああ。じゃあ目だけ閉じててもいい。ここに来い」
彼が自分の膝を示し、あなたの頭を招いた。
あなたは久々の彼の温もりが嬉しくて、安心して上半身を預ける。
「今日のルドガー、格好良かったなぁ⋯⋯明日も一緒に頑張ろう⋯⋯ね⋯」
振り返っていると、寝ないと言ったのに一分で寝てしまった。
そんな可愛らしいあなたを見下ろし、ルドガーの瞳にようやく安堵の色が戻る。
自分の体の内側に、この小さな体が休んでくれていると、ルドガーは初めて心から休めるのだ。
「おやすみ、名無し。お前は俺の誇りだぞ」
そう言って瞳を細め、いつまでもあなたの柔らかい髪をそっと撫でていた。
だだっぴろく、色付きの巨大なガラス窓もある。だが当然外には通じておらず裏は土壁だ。
一番恐ろしかったのは、そこに小型の狼のような魔物たちがいたことだった。
あなたは初めて、瞳が赤く瘴気に満ち、不気味な唸り声を上げる獣を見る。
「きゃーッ! 本物だよ、どうしようっ、やばい、こっちに来る!」
「名無し、攻撃魔法を使え! 一番後ろにいろ!」
「わ、わかった!」
すでに戦い始めているルドガーに叫ばれ、あなたは短い息を整えて言う通りにした。
ルドガーとナザルは敵を引き寄せて戦闘を繰り広げている。
だが魔物は小さいとは言え数が大量だ。
習得していた元素魔法を使い、あなたは炎を出して威嚇し、必死にこっちに来ないようにした。
セロはもっとすごい。風魔法を操り、ちょうど二人がいる場所に魔物たちを旋風に巻き込んで集めたのだ。
「わあ、どうやってやるんですかそれ!」
「お前も10年修行すりゃできるようになるぜ!」
あなたはセロのことを尊敬の眼差しで見やる。彼は正真正銘の戦える魔術師なのだ。
だが会話してる間に風向きのコントロールがぶれたのか、何匹かこちらに戻ってきてしまった。
「きゃーっっっ」
「げっやべ! ナザルぅ! 助けてくれえ!」
すぐに獣を頼るもナザルは戦闘に夢中で聞こえていない。
しかし攻撃魔法を二人で必死に至近距離から繰り出しているとナザルは気づいてくれた。
もっと獣を引き付けているルドガーと「ここ任せた!」「ああ、名無したちを見てくれ!」と言葉を交わす。
だがそんなルドガーに、奥からボス的な巨大な狼の獣が現れた。
あなたは戦慄したが、ナザルがまだ湧き出る魔物を倒していく。
セロも果敢に戦っている。防護バリアは自分とあなたに張りながら、攻撃を繰り出す。
そんなとき、あなたに目をつけた狼の魔物がぐるる、とよだれを出しながら襲い掛かってきた。
――魔法が間に合わない。
あなたはとっさに短剣を取り出し、ルドガーの動きを思い出した。
狼は横に飛び跳ねながら、あなたの剣さばきを避ける。
すばしっこさに必死についていくも、狼はもっとも大きくジャンプをして飛びかかって来た。
小柄なあなたはしゃがみこみ右に避け、曲げた左腕を思い切り獣の脇腹に突き刺した。
そのときの感触は、異様に柔らかさを感じて、忘れられなかった。
「はあ、はあ、はあ」
あなたが一匹を仕留めたことに誰も気づいていない。
呼吸が激しくおさまらなかったが、距離のある獣をまた魔法を使い攻撃していった。
数分後、動く魔物の数が減っていった。
ルドガーも最後の一匹を倒し、皆は互いのところに集まってきた。
「……名無し! 大丈夫か!」
「う、うん。平気平気」
彼の顔を見てほっとすると、腕の中に抱きしめられた。
「ルドガー……短剣で一匹仕留めたよ。やっちゃった……」
どう思われるのかと思いながら、緊張がとけない表情で見上げる。
するとルドガーは動揺することもなく、固く頷いた。
「ああ、よくやった。訓練の成果が出たな」
そう言われた瞬間、やってよかったことなのだと、急に実感がわいてきた。
鞘にしまった血の付いた短剣を取り出し、自分で見つめる。
攻撃魔法で倒した魔物もたくさんいたはずなのに、短剣で殺したものの場所は覚えていた。
あなたがそこに向かうと、ルドガーもついてきた。
しゃがみこみ、あなたはそれを撫でた。
いろんな感情がわいたが、心の中でお祈りをするしかなかった。
「ルドガーは、大丈夫? 怪我してない? ……ありがとう、何度も戦ってくれて」
あなたは自分が戦闘を行って初めて、ルドガーやナザル、セロに対し、戦うことの本当の意味がわずかだけ分かった気がした。
「俺は大丈夫だ。当然だ。俺達は皆互いのために戦ったんだからな。お前にもありがとうだぞ」
ルドガーはあなたの頭を優しく触り、瞳を柔らかくして言った。
あなたはその言葉を噛み締めて頷いていた。
そんな姿を、セロはじっと柄にもなく眺めていた。
彼は遠くでぼうっと突っ立っているナザルへ近づいていく。
そして死んだような目で、こう呟いた。
「あ、あのさぁ」
「なんだよ」
「その……なんていうか。……ありがとうございました」
「はぁっ?」
ナザルは素っ頓狂な声を出した。自分の主になにか異常でも起こったのかという目つきだ。
だが彼は、ルドガーほど鈍感なタイプでもない。
「なんだその棒読み」
「そう? ありがとう~ナザル~」
「気持ちわりいな! 今度はなんだよ!」
「名無しの真似」
セロは30近い青年だがお茶目な面でごまかした。
ナザルは素直に大声で笑う。
それを聞きつけたあなたは、ルドガーとともに向かってきた。
「二人ともお疲れさまです!」
「おうお疲れ。おいセロ、さっきのもう一回名無しにやってみろ」
「お疲れ~名無し~」
「ひっ。な、なんですかその笑顔。ちょっと気持ち悪いんですけど、声も」
「お前の真似だぞ」
「……ひどい! そんなんじゃないもん! ねえルドガー!」
あなたが心外だと涙ながらに彼の腕を引くと、しっかり頷かれた。
「ああ。名無しはそれの百万倍可愛い。殺すぞ」
戦闘での荒ぶりがぶり返したルドガーだけは真面目に返したが、二人の男はさらに爆笑していた。
よく分からないけれど、皆体がくたくたのわりには明るい雰囲気だった。
◆
時計は夜を示し、皆は進んだ先で安全を確認すると、火を焚いた。
野営の準備をして、あなたは持ってきた干し肉と乾燥野菜でスープを作った。パンと一緒に出して皆で食事する。
「うまい、味付け最高!」
「ありがとうございます。⋯⋯はぁ〜。それにしても、ようやく一息つけますねぇ」
皆しみじみと頷く。想像していたように長い一日だったが、まだ目標地点にはたどり着いていないのだ。
明日はきっと任務の行方を決定付ける日になるだろう。
そんな話を皆でしていると、セロがこんなことを言い出した。
「でもよ、ぜってえここはミザロの手入ってるだろうからな。最悪の事態にはならないと思うぞ」
「ああ。俺もそう思うな。妨害はしてくるかもしれないが、あいつの目的は俺達を本当の危険に晒すことではないからな」
冷静にルドガーも相槌を打つが、今日の危険はそれほどでもないのかと密かに震えた。
扉に閉じ込められたのもミザロの仕業ならば、かなり手が込んでいる。
「師匠ってすごいなぁ。空間魔法ってやつも使えるんだから。⋯⋯そういえばセロさんも遺跡に閉じ込められたって言ってましたけど、お師匠さんってそういうタイプなんですか?」
あなたが何の気なしに尋ねると、彼は腕を組んでうんうんと頷いた。
「あの人はめちゃくちゃでなぁ。俺も何度敵の囮にされたり、宝物庫の罠を解くために閉じ込められたりしたか分かんねえ」
「えっ⋯⋯」
あなたが本気で引いていても、彼は「まあ弟子ってそういうもんだから」と笑っていた。
すると食事の必要がないナザルが、寝転がりながら話した。
「セロはな、師匠のおっさんを信奉してんだよ。何度ハメられてもついていこうとするんだ、馬鹿な野郎だろ」
「うっせぇな。あの人は魔術の腕だけはピカイチなんだよ。つうかお前だって捨てられただろ。俺達は同じ穴のムジナだよ」
へっ、と互いを自嘲するようなセロに対し、ナザルも反論せず面倒そうに舌打ちするだけだった。
二人はセロの師に捨てられた?
セロが騎士団に捕まった当初、守護者への借金を師に押し付けられたから魔界にいると言っていた。
あの話の信憑性が増す。
一体そのおっさんとは、どんな男なのだろう。
あなたが一人考えていると、セロがおもむろに口を開く。
「でもよ、師匠は絶対俺達を迎えに来てくれると思うんだよな。最後には絶対見捨てたりしねえってさ」
そう話したセロの顔立ちは、温かな火に照らされて穏やかなものだった。
ナザルは何も答えず、頭の下で手を組み、目を閉じていた。
寝る時間になり、二組ずつ順番に休もうとルドガーが言った。
ナザルは睡眠が必要ないが、セロから魔力の餌をもらい、体を休息させるのは意味があるらしい。
二人がまず先に休むことにし、目に見える距離で寝袋を敷いた。
セロは枕とアイマスクまで完備し、小さいイビキをかいて寝ている。少し離れたとこでナザルも横になっていた。
あなたは火の前で、隣の大柄なルドガーの腕に頭を寄りかけていた。
「ルドガー、すごい濃い一日だったね」
「そうだな。⋯⋯名無し、お前は寝ていろ。相当疲れただろう」
「ううん、大丈夫だよ。ルドガーこそ」
一番戦っていたのは彼だと思うし休んでほしかった。でも彼は体力はまだまだあるという。
「ふあ⋯⋯寝ないよ⋯⋯」
「ああ。じゃあ目だけ閉じててもいい。ここに来い」
彼が自分の膝を示し、あなたの頭を招いた。
あなたは久々の彼の温もりが嬉しくて、安心して上半身を預ける。
「今日のルドガー、格好良かったなぁ⋯⋯明日も一緒に頑張ろう⋯⋯ね⋯」
振り返っていると、寝ないと言ったのに一分で寝てしまった。
そんな可愛らしいあなたを見下ろし、ルドガーの瞳にようやく安堵の色が戻る。
自分の体の内側に、この小さな体が休んでくれていると、ルドガーは初めて心から休めるのだ。
「おやすみ、名無し。お前は俺の誇りだぞ」
そう言って瞳を細め、いつまでもあなたの柔らかい髪をそっと撫でていた。
