巨体の人外に助けられて世話される話
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数日後、ルドガーは革服と重装備をまとい出発した。
前日からぴりぴりしていたし、きっと遠方で戦う仕事なのだろう。
あなたは応援しかできないが、彼の無事の帰還を祈って送り出した。
朝から晩まで、小屋でひとり待つ。
体が動けるので家事をしたり、本棚にある図鑑の絵だけ見て過ごしたりした。
丸時計の針は夜八時になり、そわそわする。
もうすぐかな。
そう思って窓から外の森を覗くと、足音と話し声が近づいてきた。
「ん⋯⋯? 誰かと喋ってる⋯?」
またお医者さんか誰かだろうか。
ルドガーが帰ってきたと一瞬心が弾むものの、じっと耳を澄ませた。
すると小屋の石扉がガタゴトと揺れる。
知らない男達の声もした。
「アァ? なんで鍵かかってんだ? おかしいな。いつも開けっ放しなのによ」
「ほんとだ、まあいいや。ブチ壊せ」
信じがたい台詞が聞こえてきて、あなたは即座に身の危険を感じる。
心臓が飛び出そうになりながら、居間の奥にある台所の棚裏に隠れた。
――嘘でしょ。誰? 盗賊?
恐怖にまみれて、本当にドアを力づくで開けた男の集団が押し入ってくる。
鎖はちぎれ床にガシャンと散らばった。
あなたはぞっとして口を自ら塞ぎながら、居間をのぞき見た。
そこでは人間じゃない男達が酒瓶やら、酒や食い物が入った箱やらを持って食卓を囲み始めている。
もう終わりだ。見つかったら殺される――。
泣きそうな目を見開き息をのんでいると、彼らは自由に乾杯し煙草を吸い、宴会を始めた。
しかし問題は、どう見ても彼らが獣人なのだ。
体つきは巨体のルドガーと大差なく、全員が胸囲も脚も太く大きい。
だが顔だけは犬に似た者もいるし、虎に似た者もいるし、服装は人間風だが獣なのだとわかった。
「おい。なんか匂わねえか?」
「ああ⋯⋯? なんの匂いだ?」
「メスの匂いがする」
そう言って立ち上がったのは、犬顔で牙と舌を出した大男だった。
あなたは背をすくめて震える。
しかし彼が立ち上がり鼻を動かしてこちらへ向かってくると、他の七人ぐらいの男たちもついてきた。
確信を得た犬顔が棚を軽々と動かすと、怯えたあなたと目があった。
「きゃああぁぁッ!!」
あなたはワンピースをはいた尻で後ずさり、もう腰が抜けたように感じる。
男達は目を丸くしたあと、すぐにいやらしい目つきになった。
「へっへっへっ⋯⋯どうしてこんな所に人間のメスがいるんだ?」
「はははは、本当だぜ。あの野郎、どっからこの女を連れ込んできたんだ?」
下卑た笑いの波が生まれ、あなたは首をふってどうにか逃れようとする。
「やめて、殺さないで! あっちにいって!」
叫ぶものの男達は意に介さず腕組みをし、品定めをするように見下ろしている。
獰猛な獣の檻に突如放り込まれたかのような、恐怖と重圧に襲われた。
だが一番うしろから、虎顔の大男が彼らをかきわけてあなたの前に現れた。
彼は背を曲げて、じろじろと見てくる。凛々しい顔立ちながらルドガーの鋭い金の目とは違い、澄んだ青い瞳をしている。
「皆止めないか。かわいそうに怖がっているだろう。お嬢さん、なぜここにいるんだ? ルドガーの知り合いかい?」
「⋯⋯えっ。はい、そうです⋯⋯っ」
あなたは一番話が通じそうな虎獣人に相づちを打つ。
すると周りの男達はニヤニヤし始めた。
「てことはあれか。あいつは仕事中にお楽しみをしてたってわけか。堅物に見えてやっぱ獣だねえ」
「⋯⋯きゃあっ!」
酔っ払った他の獣人が手を伸ばしそうとしたため、あなたは叫んで避けようとした。
するとその手首を虎獣人が握る。
「やめろと言っているだろう。我々が触れたら人間は簡単に壊れてしまうぞ。とくに若い娘さんには優しくしろ。それに、ルドガーに殺されたいのか?」
「それは勘弁だけどなぁ。冗談だろう隊長さんよ。あんたも真面目なんだから」
周りは口々に喋り、隊長と呼ばれた虎獣人をからかうように笑い出す。
助けてくれた彼はため息をつき、あなたを違う場所に移動させることにした。
後ろから男達のガヤが聞こえてきたが、なぜか小屋の間取りを知っている彼は、地下へ続く階段を下りていく。
「ひっ⋯⋯暗いし怖い⋯⋯」
彼についていくあなたがそう呟くと、地下室に着いてから明かりを灯してくれた。
こちらに向きなおり、探してきた毛布を手渡してくる。
彼は綺麗に整った白毛に丸い耳がある虎だった。佇まいから戦闘も強そうで服装も一人だけ灰色の制服をまとっている。
他の者達よりは信用できそうだが、地下室を見渡すと鉄の檻があってあなたは恐怖した。
「そう怖がらなくていい。ここに入っていたほうが安全だ。皆酔っ払うからな。ほら、鍵は君が持っていなさい」
「⋯⋯でも⋯⋯あなたはルドガーを知っているの? 皆、何しに来たの? 彼に会いに⋯?」
尋ねると、虎獣人は頷いた。
「そうなんだ。今日はルドガーが活躍する任務の日でね。俺達はこうしてたまに祝って宴会することがある。今日はちょうど時間が合うもの同士、サプライズのつもりで早く来たんだが⋯⋯まさか君のような娘がいたとは知らなかった。驚かせてごめんよ」
偏見かもしれないが、驚くほど理知的で穏やかな話し声だ。その誠実な態度と眼差しから、あなたは彼を信じることにした。
「ううん。ありがとうございます。私は後から来た人間だから。彼に拾ってもらったんです、この森で倒れてて⋯⋯」
「そうか。だからルドガーも秘密にしていたんだろうな。大変だったね」
彼はあなたを気遣うように見つめてくる。
その時、ちょうどいい機会だと思っていくつか質問することにした。ルドガーは外の世界について、あまり語りたがらないからだ。
「あの、こういうことってあるんですか? 人間がここに現れたりとかって。ここって普通の世界じゃないですよね」
「うん⋯⋯ここは魔界だからね。きっと君は夜の森に入って、こちらの世界に紛れ込んでしまったんじゃないかな。原理は俺にも分からないよ。かなり珍しい話だ」
あなたは率直に話してもらい感謝したものの、やはり詳細は分からず肩を落とした。
魔界のことは知っている。おとぎ話の類だが、魔物や悪魔、吸血鬼や獣人などが住む世界のことだろう。
でも自分のことは、名前以外記憶がない。常識的な知識はあるのに。
そう説明すると彼に同情された。
名前を聞かれたので教えて、この虎獣人の名前も聞いておく。
「セヴァさんっていうんですね。ルドガーと仲がいいんですか?」
「俺はそう思っているけど、彼はどうかな。立場的にはこちらが上だが、ルドガーの能力は誰にも代えられないものなんだ」
ふっと笑いながら話してくれたが、彼はそろそろ上に戻ると言った。仕事の話はあまり漏らせないらしい。
「あのっ、ルドガーが帰ってきたらすぐに教えてください!」
「わかった。こんなところに閉じこめてすまないね。少しだけ辛抱してくれ」
最後まで親切だったセヴァは階段を上がっていき、あなたは自ら檻に入って鍵を閉める。
部屋は明かりが灯っているが、肌寒く毛布にくるまった。
「⋯⋯彼にも彼の生活があるんだもんね」
呟いて膝にため息を吐く。
まったく教えてくれなかったのはどうしてだろう。
強そうな男達だが、たくさん仲間がいるのも知らなかった。
あなたはしばらく目を閉じて、低い寝台に横たわっていた。
そういえばこの檻も、なんのためにあるのだろう。
人質を捕まえるため?
よく分からない。
自分も彼に見初められていなければ、ただの人質だったのだろうか。
「はあ。⋯⋯でも別に、怖くないもん」
二人のときの、段々感情豊かになってきたルドガーを思い出す。
また戻ってきたら、自分を抱き上げて「怖い目にあわせて悪かった」と謝ってくれるはずだ。
そんなふうにいつの間にか彼のことを信頼していた。
宴会が始まってから三時間ほどが経った。
もう夜も更けて、男達の騒がしい声もピークだ。
ときおり目が覚めたあなたは起き上がり、毛布を抱きしめてぼうっとする。
「ルドガー、大丈夫かな。危険な目に合ってるのかな」
心配が募り、落ち着かなくなってきた。
立ち上がりうろうろしていると、急に上の階が騒がしくなった。
男達の激しい口論が聞こえる。
耳を澄ますと、ルドガーらしき男の怒鳴り声が聞こえてきた。
もしかして、帰ってきた?
あなたは檻に手をかけて、彼の名前を叫ぶ。
助けてほしいというよりも、早く無事な姿を見たかった。
するとバタン!と地下室への扉が乱暴に放たれる音がした。
「おい、待てルドガー! 落ち着け!」
「落ち着けるか! お前らは早く帰れ!」
「ああ、わかったよ。だが、彼女は無事だし、俺達は任務の成功を祝いたかっただけなんだ――」
「分かってるさ、だが今は礼を言う気分じゃない! 話は今度にしてくれ!」
ルドガーは大きな足音で階段を駆け下りてきて、あの虎獣人セヴァを振り切ったあと姿を現した。
彼は想像とは違い、血みどろでもなく、綺麗な制服を着ていた。セヴァと似たような、灰色の詰襟軍装にシャツ、ズボン姿だ。
朝と違う服装に驚いたが、檻に入ったあなたの姿を見て、最も瞳を揺らしたのは彼のほうだった。
前日からぴりぴりしていたし、きっと遠方で戦う仕事なのだろう。
あなたは応援しかできないが、彼の無事の帰還を祈って送り出した。
朝から晩まで、小屋でひとり待つ。
体が動けるので家事をしたり、本棚にある図鑑の絵だけ見て過ごしたりした。
丸時計の針は夜八時になり、そわそわする。
もうすぐかな。
そう思って窓から外の森を覗くと、足音と話し声が近づいてきた。
「ん⋯⋯? 誰かと喋ってる⋯?」
またお医者さんか誰かだろうか。
ルドガーが帰ってきたと一瞬心が弾むものの、じっと耳を澄ませた。
すると小屋の石扉がガタゴトと揺れる。
知らない男達の声もした。
「アァ? なんで鍵かかってんだ? おかしいな。いつも開けっ放しなのによ」
「ほんとだ、まあいいや。ブチ壊せ」
信じがたい台詞が聞こえてきて、あなたは即座に身の危険を感じる。
心臓が飛び出そうになりながら、居間の奥にある台所の棚裏に隠れた。
――嘘でしょ。誰? 盗賊?
恐怖にまみれて、本当にドアを力づくで開けた男の集団が押し入ってくる。
鎖はちぎれ床にガシャンと散らばった。
あなたはぞっとして口を自ら塞ぎながら、居間をのぞき見た。
そこでは人間じゃない男達が酒瓶やら、酒や食い物が入った箱やらを持って食卓を囲み始めている。
もう終わりだ。見つかったら殺される――。
泣きそうな目を見開き息をのんでいると、彼らは自由に乾杯し煙草を吸い、宴会を始めた。
しかし問題は、どう見ても彼らが獣人なのだ。
体つきは巨体のルドガーと大差なく、全員が胸囲も脚も太く大きい。
だが顔だけは犬に似た者もいるし、虎に似た者もいるし、服装は人間風だが獣なのだとわかった。
「おい。なんか匂わねえか?」
「ああ⋯⋯? なんの匂いだ?」
「メスの匂いがする」
そう言って立ち上がったのは、犬顔で牙と舌を出した大男だった。
あなたは背をすくめて震える。
しかし彼が立ち上がり鼻を動かしてこちらへ向かってくると、他の七人ぐらいの男たちもついてきた。
確信を得た犬顔が棚を軽々と動かすと、怯えたあなたと目があった。
「きゃああぁぁッ!!」
あなたはワンピースをはいた尻で後ずさり、もう腰が抜けたように感じる。
男達は目を丸くしたあと、すぐにいやらしい目つきになった。
「へっへっへっ⋯⋯どうしてこんな所に人間のメスがいるんだ?」
「はははは、本当だぜ。あの野郎、どっからこの女を連れ込んできたんだ?」
下卑た笑いの波が生まれ、あなたは首をふってどうにか逃れようとする。
「やめて、殺さないで! あっちにいって!」
叫ぶものの男達は意に介さず腕組みをし、品定めをするように見下ろしている。
獰猛な獣の檻に突如放り込まれたかのような、恐怖と重圧に襲われた。
だが一番うしろから、虎顔の大男が彼らをかきわけてあなたの前に現れた。
彼は背を曲げて、じろじろと見てくる。凛々しい顔立ちながらルドガーの鋭い金の目とは違い、澄んだ青い瞳をしている。
「皆止めないか。かわいそうに怖がっているだろう。お嬢さん、なぜここにいるんだ? ルドガーの知り合いかい?」
「⋯⋯えっ。はい、そうです⋯⋯っ」
あなたは一番話が通じそうな虎獣人に相づちを打つ。
すると周りの男達はニヤニヤし始めた。
「てことはあれか。あいつは仕事中にお楽しみをしてたってわけか。堅物に見えてやっぱ獣だねえ」
「⋯⋯きゃあっ!」
酔っ払った他の獣人が手を伸ばしそうとしたため、あなたは叫んで避けようとした。
するとその手首を虎獣人が握る。
「やめろと言っているだろう。我々が触れたら人間は簡単に壊れてしまうぞ。とくに若い娘さんには優しくしろ。それに、ルドガーに殺されたいのか?」
「それは勘弁だけどなぁ。冗談だろう隊長さんよ。あんたも真面目なんだから」
周りは口々に喋り、隊長と呼ばれた虎獣人をからかうように笑い出す。
助けてくれた彼はため息をつき、あなたを違う場所に移動させることにした。
後ろから男達のガヤが聞こえてきたが、なぜか小屋の間取りを知っている彼は、地下へ続く階段を下りていく。
「ひっ⋯⋯暗いし怖い⋯⋯」
彼についていくあなたがそう呟くと、地下室に着いてから明かりを灯してくれた。
こちらに向きなおり、探してきた毛布を手渡してくる。
彼は綺麗に整った白毛に丸い耳がある虎だった。佇まいから戦闘も強そうで服装も一人だけ灰色の制服をまとっている。
他の者達よりは信用できそうだが、地下室を見渡すと鉄の檻があってあなたは恐怖した。
「そう怖がらなくていい。ここに入っていたほうが安全だ。皆酔っ払うからな。ほら、鍵は君が持っていなさい」
「⋯⋯でも⋯⋯あなたはルドガーを知っているの? 皆、何しに来たの? 彼に会いに⋯?」
尋ねると、虎獣人は頷いた。
「そうなんだ。今日はルドガーが活躍する任務の日でね。俺達はこうしてたまに祝って宴会することがある。今日はちょうど時間が合うもの同士、サプライズのつもりで早く来たんだが⋯⋯まさか君のような娘がいたとは知らなかった。驚かせてごめんよ」
偏見かもしれないが、驚くほど理知的で穏やかな話し声だ。その誠実な態度と眼差しから、あなたは彼を信じることにした。
「ううん。ありがとうございます。私は後から来た人間だから。彼に拾ってもらったんです、この森で倒れてて⋯⋯」
「そうか。だからルドガーも秘密にしていたんだろうな。大変だったね」
彼はあなたを気遣うように見つめてくる。
その時、ちょうどいい機会だと思っていくつか質問することにした。ルドガーは外の世界について、あまり語りたがらないからだ。
「あの、こういうことってあるんですか? 人間がここに現れたりとかって。ここって普通の世界じゃないですよね」
「うん⋯⋯ここは魔界だからね。きっと君は夜の森に入って、こちらの世界に紛れ込んでしまったんじゃないかな。原理は俺にも分からないよ。かなり珍しい話だ」
あなたは率直に話してもらい感謝したものの、やはり詳細は分からず肩を落とした。
魔界のことは知っている。おとぎ話の類だが、魔物や悪魔、吸血鬼や獣人などが住む世界のことだろう。
でも自分のことは、名前以外記憶がない。常識的な知識はあるのに。
そう説明すると彼に同情された。
名前を聞かれたので教えて、この虎獣人の名前も聞いておく。
「セヴァさんっていうんですね。ルドガーと仲がいいんですか?」
「俺はそう思っているけど、彼はどうかな。立場的にはこちらが上だが、ルドガーの能力は誰にも代えられないものなんだ」
ふっと笑いながら話してくれたが、彼はそろそろ上に戻ると言った。仕事の話はあまり漏らせないらしい。
「あのっ、ルドガーが帰ってきたらすぐに教えてください!」
「わかった。こんなところに閉じこめてすまないね。少しだけ辛抱してくれ」
最後まで親切だったセヴァは階段を上がっていき、あなたは自ら檻に入って鍵を閉める。
部屋は明かりが灯っているが、肌寒く毛布にくるまった。
「⋯⋯彼にも彼の生活があるんだもんね」
呟いて膝にため息を吐く。
まったく教えてくれなかったのはどうしてだろう。
強そうな男達だが、たくさん仲間がいるのも知らなかった。
あなたはしばらく目を閉じて、低い寝台に横たわっていた。
そういえばこの檻も、なんのためにあるのだろう。
人質を捕まえるため?
よく分からない。
自分も彼に見初められていなければ、ただの人質だったのだろうか。
「はあ。⋯⋯でも別に、怖くないもん」
二人のときの、段々感情豊かになってきたルドガーを思い出す。
また戻ってきたら、自分を抱き上げて「怖い目にあわせて悪かった」と謝ってくれるはずだ。
そんなふうにいつの間にか彼のことを信頼していた。
宴会が始まってから三時間ほどが経った。
もう夜も更けて、男達の騒がしい声もピークだ。
ときおり目が覚めたあなたは起き上がり、毛布を抱きしめてぼうっとする。
「ルドガー、大丈夫かな。危険な目に合ってるのかな」
心配が募り、落ち着かなくなってきた。
立ち上がりうろうろしていると、急に上の階が騒がしくなった。
男達の激しい口論が聞こえる。
耳を澄ますと、ルドガーらしき男の怒鳴り声が聞こえてきた。
もしかして、帰ってきた?
あなたは檻に手をかけて、彼の名前を叫ぶ。
助けてほしいというよりも、早く無事な姿を見たかった。
するとバタン!と地下室への扉が乱暴に放たれる音がした。
「おい、待てルドガー! 落ち着け!」
「落ち着けるか! お前らは早く帰れ!」
「ああ、わかったよ。だが、彼女は無事だし、俺達は任務の成功を祝いたかっただけなんだ――」
「分かってるさ、だが今は礼を言う気分じゃない! 話は今度にしてくれ!」
ルドガーは大きな足音で階段を駆け下りてきて、あの虎獣人セヴァを振り切ったあと姿を現した。
彼は想像とは違い、血みどろでもなく、綺麗な制服を着ていた。セヴァと似たような、灰色の詰襟軍装にシャツ、ズボン姿だ。
朝と違う服装に驚いたが、檻に入ったあなたの姿を見て、最も瞳を揺らしたのは彼のほうだった。
