巨体の人外に助けられて世話される話
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森のログハウスで生活し始めてから、一週間が経った。
今日は朝から獣のルドガーは遠出をするという。
狩りの前に獣医であるゲアト医師のところへ行って、体を診てもらうのだ。
これは換毛期の経過観察をするためのもので、毎年のことらしかった。
「じゃあ行ってくる、名無し。夕方には帰るからな。くつろいで過ごすんだぞ」
「うん、ありがとう。ルドガーも気をつけてね。ゲアト先生とセアちゃんにもよろしくね」
あなたは木扉前で彼の毛並みにハグをし、笑顔で見送った。
濃い青の大きな獣は、徐々にスピードを出して森の奥へと駆けていく。
この生活にもだいぶ慣れて、違和感はもうほとんどない。
種族の異なる番に対して、ルドガーもあなたも、互いに気遣いや優しさがあるから上手くいっているのだと思う。
「ふう、出かけちゃった。なんかこうしてみると、騎士団にいる時と変わらないよね」
笑みをこぼしながら、あなたは暖かく快適なログハウスの中でまったり過ごす。
集めた毛で一個だけクッションを作ろうと勤しんでいて、ようやく完成した。
白い布張りの簡易的なものだが、お気に入りのふかふかだ。
「できたあ! ……ああ、きもちいいー」
それを抱えて暖炉の前でゴロゴロする。
そのあとは昼ごはんを食べて、リビングのガラス張りの前に座った。
今日は深い森の情景が広がり、木漏れ日が美しい。
時折ガラス窓の近くに縞模様のリスがやって来て、あなたは手でなぞって笑いかけた。
「可愛いなぁ。私って結構、動物に好かれやすいのかな。それとも人間だから、めずらしいの?」
前向きに考えて笑みがこぼれる。
動物もこちらを怖がってないと分かったとき、さらに温かい気持ちになるのだと知った。
そうして一人で過ごしていると、この間ルドガーが言ったことが過る。
「人化した自分のことも忘れるな」なんて、とても意外で驚き、あなたは赤面してしまった。
彼があんなことを言ったものだから、めったに夢を見ないあなたでも、人化した彼と獣の彼が同時に夢に出てくるなんておかしな体験もした。
獣の彼と戯れているあなたに、遠くにいるルドガーが腕を組み、複雑そうな顔で見つめている夢だ。
「あれは焦るよねえ……でも別に私悪いことしてないのに……」
汗がにじむ苦笑をして、温かい飲み物のカップを口に持っていったときだった。
突然、あの声が脳内に割り込んできたのだ。
『名無し。お前、今どこにいるのだ?』
「ひゃあぁぁっ」
独り言をずっと言っていたので、急に違う人に話しかけられてびっくりする。
だが、その落ち着いた貫禄のある声はあきらかにあの守護者だった。
あなたはつい周りの状況を確認したあと、深呼吸をして返事をした。
「……あの、守護者さまですか? お久しぶりです~。またずいぶん時間が空きましたね」
『まあな。ようやく暇な時間が取れたのだ。……お前はいつも、こちらの手が届きにくいところにいるな。……さすがルドガーといったところか』
なにやらもったいぶった話し方は健在だ。
しかし彼女はどうやら、こちらの様子は把握できなくとも、セヴァの私有地が厳格に隔離された区域だということを感じ取ってるようだった。
「今ルドガーの毛が生え変わってるんです。獣の彼と毎日仲良く過ごしてるんですよ。すごくないですか?」
『ふふ。お前もさすがだな。獣に愛される由縁がわかる』
どういう意味だろう。そう思いつつもあなたは興奮気味に話を続ける。
気になることがたくさんあったのだ。
「守護者さま、素敵なハンカチありがとうございます! ほら、肌身離さず持ってるんですよ! 嬉しかったぁ~あなたって、ほんとに実在したんですね!」
ポケットから白い上質なハンカチを取り出して見せびらかす。
彼女の機嫌よさそうな笑い声が響いた。
『お前が喜んでくれてよかった。なるべく負担にならないようにしたつもりだ』
「なるわけないですって! ……あれ、でも、どういう意味ですか? そういえばあの場所って、貴族とかしか入れないところですよね。あの綺麗な魔術師さんも……守護者さまって、やっぱり偉い方なんでしょうか?」
あなたが何個も質問すると、彼女は黙った。
やっぱり重要なことは教えてくれないか……そう思った矢先、彼女はこんなことを言った。
『会ったときに教えてやる。いいか名無し……お前とルドガーの結婚式に出るのが、私の夢なのだ……』
突然のしんみりした台詞に、あなたは鼓動が跳ね上がった。
「……えっ? いやそれは嬉しいですけど、急にどうしたんです。なんか遺言みたいに聞こえますよ、……守護者さま、死にませんよね!? やめてくださいよ!」
『……あのな。お前は考えが飛躍しすぎだ。私は願っても死ねない体なのだよ』
そっちの爆弾発言のほうが驚いてしまい、あなたは言葉に詰まった。
「ど、どうしてそんなこと言うんですか。……守護者さま、大丈夫ですか? 寂しいなら飛んでいきますからね!」
なんだか今日は彼女の言葉が哀愁に満ちた感じだった。
いつもの圧の強い威厳がなりを潜めている。
『ふん、寂しくなどない。孤独は最上の贅沢だ。私はそれを愛している。……でも、お前に会うのは楽しみにしているぞ。それは本当だ』
彼女の美学と一緒に、あなたへの気持ちも教えてもらい、胸がじんわりと熱くなっていった。
そう言ってもらうことが、自分にとって支えになっていることは確かなのだ。
そのぐらい、守護者はもういつの間にか、あなたと切り離すことのできない存在となっていた。
「ふふっ。嬉しいです。じゃあ絶対に会いましょうね。……あっそうだ、まだ切らないでくださいよ。……あの~実は、同じ女性同士だし、ちょっと守護者さまに恋愛相談したいなって思ってたんですよ」
『……なに? 私に恋愛相談だと……?』
「はいっ。だって経験すごそうですよね、大人の色気がいつも声からむんむんしてますもん」
過剰に褒めた感じはあったが、守護者は若いあなたの提案に呆れながらも、話を聞いてくれそうだった。
内容はルドガーの気持ちのことだ。
獣の彼のことを守護者に聞いても分からないと思ったが、男心を理解するヒントが見つかればいいと考えた。
なのであなたは最近あったことを、彼女に簡単に説明した。
『なるほどな……だが、何を悩むことがあるのだ? あいつがそう願ったように、人化したあいつを求めて愛してやればいいだけの話だろう』
「え。いやでも、そんな単純なことなんですかね? 私は獣化した彼も、人化した彼も、同じぐらい大切にしたいと思ってるんですよ」
心からの思いを述べると、彼女はいったん考えたあと、こんなことを言った。
『お前はそれがもう出来ているのではないか。話を聞くと、一緒に森を散策したり、食事したり、ブラッシングをしたり、狩りに送り出したり。お前が思うよりも、十分以上のことをやっているぞ。きっとルドガーも、それを感じている。……私が思うに、あいつは獣の自分も愛されているという充足を得たんだ。だからこそ、人化した自分の存在をまた示したくなったのだろう』
彼女の言葉に、あなたははっとなった。
すべてが胸にするすると落ちていく。
つまりルドガーは、あなたの愛を確信できたからこそ、「自分がこう愛したい」という願いをまっすぐとぶつけることが出来たのだと。
あくまで推測ではあるが、自然と腑に落ちていった。
「すごいです、守護者さま……本当にそうなのかも。ルドガー、獣のときも今はすごくリラックスして、私を迎えてくれるんですよ。……ふふ、だから覚えていてほしいって、そういうことだったのかな」
あなたが笑みをこぼすと、向こう側でもふっと優しい吐息が聞こえた。
「それにしても、守護者さまも動物の心が分かるんですね。もしかしてあなたも獣だったりしませんよね?」
『……ははははは!』
彼女の初めて聞く快活な笑い声に、あなたはびくっとなった。
『お前、この私に対し、とんでもなく失礼なことを言える女だな』
「も、申し訳ございません。つい気が緩んでしまいまして」
『構わん。褒めているのだ。……ふふふ。獣か。まあある意味、間違ってはいないか……』
気になることを呟かれたが、怖いのでもう突っ込むのはやめることにした。
なんだかゼイランのような気高さがある人だ。会えば教えてくれると言われたが、そのとき自分はどうなってしまうのか、想像がつかなかった。
『そういえばお前たちの保護者、いるだろう。ゼイランだ。あの男はもうすぐ、私に近づくかもしれん』
「……えっ? そうなんですか? どうやって?」
『ふん……たどり着けるものなら、たどり着いてみればいいさ。……ではな、名無し。長話をしすぎた』
そう言って急に守護者はまた消える気配をかもしだした。
あなたは慌てて引き止める。
「あっ、これだけ! 守護者さま、セロさんとナザルさん、あの紫髪の魔術師の方にも伝えましたけど、うちにいますからね!」
『ああ、あいつらか。どうでもいい』
「えぇっそんな!」
『今のうちに羽を伸ばしておくがいい。そう言っておけ』
彼女はこれまでの和やかな雰囲気を一変させ、まるで厳しい飼い主のような声音で告げた。
それきり、会話は途切れてしまった。
あなたはひとり、リビングのカーペットに座ったまま、放心する。
今日はすごく長く話が出来た。
嬉しくもあるが、色々と彼女は気になることも言っていた。
ためになるアドバイスもだけれど、彼女自身の考えや環境も、少しずつ紐解かれるようだ。
「うん。私もいつか守護者さまに会ったときに、もう少し今より成長できるように頑張ろうっと」
ルドガーと向き合うこと。
互いを支え合いながら、二人で仲良く暮らしていくこと。
こうしてたくさんの助けてくれる人たちに、いつか恩返しができるように、生きていくこと。
今回の会話のあとは、いつもよりももっと、朗らかな気分に満たされていた。
今日は朝から獣のルドガーは遠出をするという。
狩りの前に獣医であるゲアト医師のところへ行って、体を診てもらうのだ。
これは換毛期の経過観察をするためのもので、毎年のことらしかった。
「じゃあ行ってくる、名無し。夕方には帰るからな。くつろいで過ごすんだぞ」
「うん、ありがとう。ルドガーも気をつけてね。ゲアト先生とセアちゃんにもよろしくね」
あなたは木扉前で彼の毛並みにハグをし、笑顔で見送った。
濃い青の大きな獣は、徐々にスピードを出して森の奥へと駆けていく。
この生活にもだいぶ慣れて、違和感はもうほとんどない。
種族の異なる番に対して、ルドガーもあなたも、互いに気遣いや優しさがあるから上手くいっているのだと思う。
「ふう、出かけちゃった。なんかこうしてみると、騎士団にいる時と変わらないよね」
笑みをこぼしながら、あなたは暖かく快適なログハウスの中でまったり過ごす。
集めた毛で一個だけクッションを作ろうと勤しんでいて、ようやく完成した。
白い布張りの簡易的なものだが、お気に入りのふかふかだ。
「できたあ! ……ああ、きもちいいー」
それを抱えて暖炉の前でゴロゴロする。
そのあとは昼ごはんを食べて、リビングのガラス張りの前に座った。
今日は深い森の情景が広がり、木漏れ日が美しい。
時折ガラス窓の近くに縞模様のリスがやって来て、あなたは手でなぞって笑いかけた。
「可愛いなぁ。私って結構、動物に好かれやすいのかな。それとも人間だから、めずらしいの?」
前向きに考えて笑みがこぼれる。
動物もこちらを怖がってないと分かったとき、さらに温かい気持ちになるのだと知った。
そうして一人で過ごしていると、この間ルドガーが言ったことが過る。
「人化した自分のことも忘れるな」なんて、とても意外で驚き、あなたは赤面してしまった。
彼があんなことを言ったものだから、めったに夢を見ないあなたでも、人化した彼と獣の彼が同時に夢に出てくるなんておかしな体験もした。
獣の彼と戯れているあなたに、遠くにいるルドガーが腕を組み、複雑そうな顔で見つめている夢だ。
「あれは焦るよねえ……でも別に私悪いことしてないのに……」
汗がにじむ苦笑をして、温かい飲み物のカップを口に持っていったときだった。
突然、あの声が脳内に割り込んできたのだ。
『名無し。お前、今どこにいるのだ?』
「ひゃあぁぁっ」
独り言をずっと言っていたので、急に違う人に話しかけられてびっくりする。
だが、その落ち着いた貫禄のある声はあきらかにあの守護者だった。
あなたはつい周りの状況を確認したあと、深呼吸をして返事をした。
「……あの、守護者さまですか? お久しぶりです~。またずいぶん時間が空きましたね」
『まあな。ようやく暇な時間が取れたのだ。……お前はいつも、こちらの手が届きにくいところにいるな。……さすがルドガーといったところか』
なにやらもったいぶった話し方は健在だ。
しかし彼女はどうやら、こちらの様子は把握できなくとも、セヴァの私有地が厳格に隔離された区域だということを感じ取ってるようだった。
「今ルドガーの毛が生え変わってるんです。獣の彼と毎日仲良く過ごしてるんですよ。すごくないですか?」
『ふふ。お前もさすがだな。獣に愛される由縁がわかる』
どういう意味だろう。そう思いつつもあなたは興奮気味に話を続ける。
気になることがたくさんあったのだ。
「守護者さま、素敵なハンカチありがとうございます! ほら、肌身離さず持ってるんですよ! 嬉しかったぁ~あなたって、ほんとに実在したんですね!」
ポケットから白い上質なハンカチを取り出して見せびらかす。
彼女の機嫌よさそうな笑い声が響いた。
『お前が喜んでくれてよかった。なるべく負担にならないようにしたつもりだ』
「なるわけないですって! ……あれ、でも、どういう意味ですか? そういえばあの場所って、貴族とかしか入れないところですよね。あの綺麗な魔術師さんも……守護者さまって、やっぱり偉い方なんでしょうか?」
あなたが何個も質問すると、彼女は黙った。
やっぱり重要なことは教えてくれないか……そう思った矢先、彼女はこんなことを言った。
『会ったときに教えてやる。いいか名無し……お前とルドガーの結婚式に出るのが、私の夢なのだ……』
突然のしんみりした台詞に、あなたは鼓動が跳ね上がった。
「……えっ? いやそれは嬉しいですけど、急にどうしたんです。なんか遺言みたいに聞こえますよ、……守護者さま、死にませんよね!? やめてくださいよ!」
『……あのな。お前は考えが飛躍しすぎだ。私は願っても死ねない体なのだよ』
そっちの爆弾発言のほうが驚いてしまい、あなたは言葉に詰まった。
「ど、どうしてそんなこと言うんですか。……守護者さま、大丈夫ですか? 寂しいなら飛んでいきますからね!」
なんだか今日は彼女の言葉が哀愁に満ちた感じだった。
いつもの圧の強い威厳がなりを潜めている。
『ふん、寂しくなどない。孤独は最上の贅沢だ。私はそれを愛している。……でも、お前に会うのは楽しみにしているぞ。それは本当だ』
彼女の美学と一緒に、あなたへの気持ちも教えてもらい、胸がじんわりと熱くなっていった。
そう言ってもらうことが、自分にとって支えになっていることは確かなのだ。
そのぐらい、守護者はもういつの間にか、あなたと切り離すことのできない存在となっていた。
「ふふっ。嬉しいです。じゃあ絶対に会いましょうね。……あっそうだ、まだ切らないでくださいよ。……あの~実は、同じ女性同士だし、ちょっと守護者さまに恋愛相談したいなって思ってたんですよ」
『……なに? 私に恋愛相談だと……?』
「はいっ。だって経験すごそうですよね、大人の色気がいつも声からむんむんしてますもん」
過剰に褒めた感じはあったが、守護者は若いあなたの提案に呆れながらも、話を聞いてくれそうだった。
内容はルドガーの気持ちのことだ。
獣の彼のことを守護者に聞いても分からないと思ったが、男心を理解するヒントが見つかればいいと考えた。
なのであなたは最近あったことを、彼女に簡単に説明した。
『なるほどな……だが、何を悩むことがあるのだ? あいつがそう願ったように、人化したあいつを求めて愛してやればいいだけの話だろう』
「え。いやでも、そんな単純なことなんですかね? 私は獣化した彼も、人化した彼も、同じぐらい大切にしたいと思ってるんですよ」
心からの思いを述べると、彼女はいったん考えたあと、こんなことを言った。
『お前はそれがもう出来ているのではないか。話を聞くと、一緒に森を散策したり、食事したり、ブラッシングをしたり、狩りに送り出したり。お前が思うよりも、十分以上のことをやっているぞ。きっとルドガーも、それを感じている。……私が思うに、あいつは獣の自分も愛されているという充足を得たんだ。だからこそ、人化した自分の存在をまた示したくなったのだろう』
彼女の言葉に、あなたははっとなった。
すべてが胸にするすると落ちていく。
つまりルドガーは、あなたの愛を確信できたからこそ、「自分がこう愛したい」という願いをまっすぐとぶつけることが出来たのだと。
あくまで推測ではあるが、自然と腑に落ちていった。
「すごいです、守護者さま……本当にそうなのかも。ルドガー、獣のときも今はすごくリラックスして、私を迎えてくれるんですよ。……ふふ、だから覚えていてほしいって、そういうことだったのかな」
あなたが笑みをこぼすと、向こう側でもふっと優しい吐息が聞こえた。
「それにしても、守護者さまも動物の心が分かるんですね。もしかしてあなたも獣だったりしませんよね?」
『……ははははは!』
彼女の初めて聞く快活な笑い声に、あなたはびくっとなった。
『お前、この私に対し、とんでもなく失礼なことを言える女だな』
「も、申し訳ございません。つい気が緩んでしまいまして」
『構わん。褒めているのだ。……ふふふ。獣か。まあある意味、間違ってはいないか……』
気になることを呟かれたが、怖いのでもう突っ込むのはやめることにした。
なんだかゼイランのような気高さがある人だ。会えば教えてくれると言われたが、そのとき自分はどうなってしまうのか、想像がつかなかった。
『そういえばお前たちの保護者、いるだろう。ゼイランだ。あの男はもうすぐ、私に近づくかもしれん』
「……えっ? そうなんですか? どうやって?」
『ふん……たどり着けるものなら、たどり着いてみればいいさ。……ではな、名無し。長話をしすぎた』
そう言って急に守護者はまた消える気配をかもしだした。
あなたは慌てて引き止める。
「あっ、これだけ! 守護者さま、セロさんとナザルさん、あの紫髪の魔術師の方にも伝えましたけど、うちにいますからね!」
『ああ、あいつらか。どうでもいい』
「えぇっそんな!」
『今のうちに羽を伸ばしておくがいい。そう言っておけ』
彼女はこれまでの和やかな雰囲気を一変させ、まるで厳しい飼い主のような声音で告げた。
それきり、会話は途切れてしまった。
あなたはひとり、リビングのカーペットに座ったまま、放心する。
今日はすごく長く話が出来た。
嬉しくもあるが、色々と彼女は気になることも言っていた。
ためになるアドバイスもだけれど、彼女自身の考えや環境も、少しずつ紐解かれるようだ。
「うん。私もいつか守護者さまに会ったときに、もう少し今より成長できるように頑張ろうっと」
ルドガーと向き合うこと。
互いを支え合いながら、二人で仲良く暮らしていくこと。
こうしてたくさんの助けてくれる人たちに、いつか恩返しができるように、生きていくこと。
今回の会話のあとは、いつもよりももっと、朗らかな気分に満たされていた。
