巨体の人外に助けられて世話される話
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森の私有地に来て数日が経った。
あなたはすっかり獣化したルドガーにも慣れ、毎日を落ちてる毛の掃除から始める。
「よし、隅に集めてっと。わー、かなり溜まったねえ。クッションとか作れそう」
部屋の隅にふわふわ絹のような美しい毛が置いてある。
それを見ているだけで癒されていた。
ルドガーは今は外で食事中だ。
あなたも昼食を作って食べたあと、身支度をした。
動きやすい服装に着替え、胸元の二つ重なった花と獣のネックレスを触る。
「ふふ。今はこの通りの二人だね」
そう思い描きながら、ふと頭の中には、人化したいつものルドガーが現れた。
あの屈強な褐色の体に、黒い髪と黒い角。
精悍で整った顔立ちは、たまに嫉妬して怒ったり、拗ねたり、でもすごく気持ちのいい可愛い笑顔も見せてくれる。
彼は今、どこにいるんだろう?
――なんておかしなことをたまに考えたりした。
ルドガーが狩りから帰ってきたあと、あなたは喜びにわいて外に出た。
薄紫色の空には雲もなく、空気も澄んでいて美味しい。
「おかえり! 大丈夫だった?」
「ああ。このへんは広いが、もうだいたい覚えた。一緒に歩いても安全だぞ」
獣姿の彼はそう断言してくれて、あなたは飛び跳ねる。
本当にわくわくした。小屋に住んでいたときの森は、魔物が出る危険な区域で、軍人のルドガーはパトロールの仕事で滞在していたのだ。
でもここでは自由に二人で散策できるようだ。
こんなチャンスはめったになかった。
二人は手を繋ぐかわりにぴたっと隣に寄り添い、森へと出かけた。
ルドガーは森ではまるで自分の庭のように、あなたを案内してくれた。
「この木の実は食べれるぞ。うまかった」
「ほんとう? ケーキにしたら美味しそうだね」
お喋りしながら風の気持ちいい木々の間を歩いていく。
なんて楽しいのだろう。
騎士団も緑豊かで素敵なところだが、ここはスケールが違った。
静かなのに森のざわめきや葉のこすれ合う音、鳥や虫の鳴き声に包まれ、全身がリフレッシュする。
「はあー。気持ちいい……ルドガー、いつもこんな気分で過ごせたんだね。いいなぁ」
「ははっ。お前は思ったより自然の子だな。都会が合っているのかと思ったが」
そばに腰を下ろす青い獣の彼に言われ、あなたは照れた。
確かに不思議なほど、懐かしい気分になっていた。
歩いていくと、小川を見つける。
ルドガーはここで最初の日、魚を獲ってくれたようだ。
「ねえ、どうやって取るの? 手?」
「いや、口だ。見ていろ」
彼がわりと流れのある真ん中の所まで入っていき、水面をじっと見下ろした。
ドキドキして見ていると、狙いを定めた彼は口を素早く川に潜らせてあっという間に魚を獲る。
石の上でぴちぴちと跳ねる魚に、あなたは感動して近寄って行った。
「わあ、すごいすごい! 慣れてるねルドガー」
「ははっ、そうか? お前と出会ってから身につけたワザなんだ。俺は本来肉しか食わないからな」
魚好きのあなたのために、彼が出会った当初から努力してくれていたことを知り、嬉しい気持ちがふわぁっと広がっていく。
「ありがとー、ルドガー。優しい、好き」
あなたは彼の胴に腕を広げ抱きつき、すりすりと頬をこすりつけた。
彼の尻尾は喜んだようにぱたぱたと揺れていた。
魚はミニ冷蔵ボックスに入れ、夕食にすることにした。
帰り道、ここで休もうと言われ、大木の下に二人で座りこむ。
夜は一緒には寝られないけれど、ルドガーは横たわる自分の胸元で、あなたの頭を抱えてくれた。
長くボリュームのある尻尾が丸まっていて、彼もくつろいでいるのが分かる。
「……ねえねえ、いつもと違う過ごし方だと思うけど、いいの? 大丈夫だった?」
「俺は嬉しい。この顔じゃ分からないだろうけどな。ものすごく喜んでるんだ」
「ふふふ。よかった。わかるよ、ルドガーの獣の表情」
あなたは振り向いて、ちょうど目の前にあった狼のような凛々しい顔の口元に、そっと唇を触れさせた。
この彼にキスするのは二回目だ。
彼はわずかに瞬きをし、三角の獣耳を細かく揺らした。
あのときのように、気恥ずかしそうな様子であなたの頬をぺろっと舐める。
「お前は変わっている、名無し。この俺にも、優しくて愛情深い。本当に怖くないんだな」
「あたりまえでしょう」
「どうしてだ?」
真面目な声音で尋ねられて、答えに困った。愛おしい人だから。
それ以外に何があるのだろう。
微笑み口を開こうとすると、ルドガーの腰のあたりに鳥が止まった。
あなたは彼の一瞬煩わしそうにした表情にも気が付く。
黄色い小さな鳥だ。二匹やってきたため、彼と目で合図をし、まじまじと見つめた。大声を出したら飛んでってしまいそうだからだ。
するとなんと、あなたの頭にも三匹目が止まった。
「おい。お前にもなついてるぞ。……不思議だな」
「……本当だ。ねえ、写真機借りてくればよかったね」
小声で言うと、冷静なルドガーに「誰が撮るんだ」と突っ込まれてしまった。
思わず吹き出すと、鳥たちは全員いなくなった。
彼らが羽ばたいていってしまうのを見て、なんてのどかで、幸せな時間だろうと感じた。
あなたは獣のルドガーとの日々も、大切に噛み締めたいと思っていた。
夜になり、またひと悶着が起こる。
彼の獣毛は一日中抜けたり生えたりしていて、忙しそうだ。
あなたが夜の日課のブラッシングをしていると、もう彼は観念して気持ちよさそうに寝そべっていた。
「ねえねえ、これでクッション作るのどう? セヴァさん、知ってか知らずか裁縫道具まで入れといてくれたんだよ」
「……なぜそんな余計なことを。いいか、名無し。俺は水浴びもしてるしこの毛は清潔だ。だがな、お前は獣の俺に慣れすぎている」
なぜか文句のように言われ、あなたは首を傾げた。
どうして慣れたらダメなのだろうか。
「いいことでしょう。獣のルドガーを好きになっちゃだめなの?」
「それはいい。嬉しいぞ。けどな……」
彼はこちらを振り向いて、少し拗ねたような顔でこういった。
「俺はお前のオスなんだぞ。人化したら、こんな姿よりお前をもっともっと夢中にしてみせる。それだけは忘れるなよ」
そう宣言されて、ドキっとした。
あなたは目をきょろきょろと動かし、照れた頬が染まっていくのが分かった。
「忘れるわけないよ、人化したあなたのこと。あんなに恰好よくて、頼もしくて、力強くて……」
なぜか本人の前なのに、語っていると熱くなった。
「……俺が恋しいか?」
獣化した彼が鼻先を近づけ、まるで「恋しいと言え」というふうに迫ってくる。
「うん……恋しい。ぎゅってしてほしい」
あなたは素直に吐露した。
そういう話題はよくないと思っていた。
今のルドガーには、このあふれ出る本物の愛を伝えたいし、そうすべきだと思っていたのだ。
しかしルドガーはいつも自分の気持ちにまっすぐで、彼の願いも常にあなたにしか向いていない。
「わかった。終わったら絶対にお前をたくさん抱きしめてやる。すぐだぞ」
彼は誇らしく伝えてくれた。
この姿で愛を示されて、あなたは余計に気恥ずかしく、真っ赤に染まってしまった。
あなたはすっかり獣化したルドガーにも慣れ、毎日を落ちてる毛の掃除から始める。
「よし、隅に集めてっと。わー、かなり溜まったねえ。クッションとか作れそう」
部屋の隅にふわふわ絹のような美しい毛が置いてある。
それを見ているだけで癒されていた。
ルドガーは今は外で食事中だ。
あなたも昼食を作って食べたあと、身支度をした。
動きやすい服装に着替え、胸元の二つ重なった花と獣のネックレスを触る。
「ふふ。今はこの通りの二人だね」
そう思い描きながら、ふと頭の中には、人化したいつものルドガーが現れた。
あの屈強な褐色の体に、黒い髪と黒い角。
精悍で整った顔立ちは、たまに嫉妬して怒ったり、拗ねたり、でもすごく気持ちのいい可愛い笑顔も見せてくれる。
彼は今、どこにいるんだろう?
――なんておかしなことをたまに考えたりした。
ルドガーが狩りから帰ってきたあと、あなたは喜びにわいて外に出た。
薄紫色の空には雲もなく、空気も澄んでいて美味しい。
「おかえり! 大丈夫だった?」
「ああ。このへんは広いが、もうだいたい覚えた。一緒に歩いても安全だぞ」
獣姿の彼はそう断言してくれて、あなたは飛び跳ねる。
本当にわくわくした。小屋に住んでいたときの森は、魔物が出る危険な区域で、軍人のルドガーはパトロールの仕事で滞在していたのだ。
でもここでは自由に二人で散策できるようだ。
こんなチャンスはめったになかった。
二人は手を繋ぐかわりにぴたっと隣に寄り添い、森へと出かけた。
ルドガーは森ではまるで自分の庭のように、あなたを案内してくれた。
「この木の実は食べれるぞ。うまかった」
「ほんとう? ケーキにしたら美味しそうだね」
お喋りしながら風の気持ちいい木々の間を歩いていく。
なんて楽しいのだろう。
騎士団も緑豊かで素敵なところだが、ここはスケールが違った。
静かなのに森のざわめきや葉のこすれ合う音、鳥や虫の鳴き声に包まれ、全身がリフレッシュする。
「はあー。気持ちいい……ルドガー、いつもこんな気分で過ごせたんだね。いいなぁ」
「ははっ。お前は思ったより自然の子だな。都会が合っているのかと思ったが」
そばに腰を下ろす青い獣の彼に言われ、あなたは照れた。
確かに不思議なほど、懐かしい気分になっていた。
歩いていくと、小川を見つける。
ルドガーはここで最初の日、魚を獲ってくれたようだ。
「ねえ、どうやって取るの? 手?」
「いや、口だ。見ていろ」
彼がわりと流れのある真ん中の所まで入っていき、水面をじっと見下ろした。
ドキドキして見ていると、狙いを定めた彼は口を素早く川に潜らせてあっという間に魚を獲る。
石の上でぴちぴちと跳ねる魚に、あなたは感動して近寄って行った。
「わあ、すごいすごい! 慣れてるねルドガー」
「ははっ、そうか? お前と出会ってから身につけたワザなんだ。俺は本来肉しか食わないからな」
魚好きのあなたのために、彼が出会った当初から努力してくれていたことを知り、嬉しい気持ちがふわぁっと広がっていく。
「ありがとー、ルドガー。優しい、好き」
あなたは彼の胴に腕を広げ抱きつき、すりすりと頬をこすりつけた。
彼の尻尾は喜んだようにぱたぱたと揺れていた。
魚はミニ冷蔵ボックスに入れ、夕食にすることにした。
帰り道、ここで休もうと言われ、大木の下に二人で座りこむ。
夜は一緒には寝られないけれど、ルドガーは横たわる自分の胸元で、あなたの頭を抱えてくれた。
長くボリュームのある尻尾が丸まっていて、彼もくつろいでいるのが分かる。
「……ねえねえ、いつもと違う過ごし方だと思うけど、いいの? 大丈夫だった?」
「俺は嬉しい。この顔じゃ分からないだろうけどな。ものすごく喜んでるんだ」
「ふふふ。よかった。わかるよ、ルドガーの獣の表情」
あなたは振り向いて、ちょうど目の前にあった狼のような凛々しい顔の口元に、そっと唇を触れさせた。
この彼にキスするのは二回目だ。
彼はわずかに瞬きをし、三角の獣耳を細かく揺らした。
あのときのように、気恥ずかしそうな様子であなたの頬をぺろっと舐める。
「お前は変わっている、名無し。この俺にも、優しくて愛情深い。本当に怖くないんだな」
「あたりまえでしょう」
「どうしてだ?」
真面目な声音で尋ねられて、答えに困った。愛おしい人だから。
それ以外に何があるのだろう。
微笑み口を開こうとすると、ルドガーの腰のあたりに鳥が止まった。
あなたは彼の一瞬煩わしそうにした表情にも気が付く。
黄色い小さな鳥だ。二匹やってきたため、彼と目で合図をし、まじまじと見つめた。大声を出したら飛んでってしまいそうだからだ。
するとなんと、あなたの頭にも三匹目が止まった。
「おい。お前にもなついてるぞ。……不思議だな」
「……本当だ。ねえ、写真機借りてくればよかったね」
小声で言うと、冷静なルドガーに「誰が撮るんだ」と突っ込まれてしまった。
思わず吹き出すと、鳥たちは全員いなくなった。
彼らが羽ばたいていってしまうのを見て、なんてのどかで、幸せな時間だろうと感じた。
あなたは獣のルドガーとの日々も、大切に噛み締めたいと思っていた。
夜になり、またひと悶着が起こる。
彼の獣毛は一日中抜けたり生えたりしていて、忙しそうだ。
あなたが夜の日課のブラッシングをしていると、もう彼は観念して気持ちよさそうに寝そべっていた。
「ねえねえ、これでクッション作るのどう? セヴァさん、知ってか知らずか裁縫道具まで入れといてくれたんだよ」
「……なぜそんな余計なことを。いいか、名無し。俺は水浴びもしてるしこの毛は清潔だ。だがな、お前は獣の俺に慣れすぎている」
なぜか文句のように言われ、あなたは首を傾げた。
どうして慣れたらダメなのだろうか。
「いいことでしょう。獣のルドガーを好きになっちゃだめなの?」
「それはいい。嬉しいぞ。けどな……」
彼はこちらを振り向いて、少し拗ねたような顔でこういった。
「俺はお前のオスなんだぞ。人化したら、こんな姿よりお前をもっともっと夢中にしてみせる。それだけは忘れるなよ」
そう宣言されて、ドキっとした。
あなたは目をきょろきょろと動かし、照れた頬が染まっていくのが分かった。
「忘れるわけないよ、人化したあなたのこと。あんなに恰好よくて、頼もしくて、力強くて……」
なぜか本人の前なのに、語っていると熱くなった。
「……俺が恋しいか?」
獣化した彼が鼻先を近づけ、まるで「恋しいと言え」というふうに迫ってくる。
「うん……恋しい。ぎゅってしてほしい」
あなたは素直に吐露した。
そういう話題はよくないと思っていた。
今のルドガーには、このあふれ出る本物の愛を伝えたいし、そうすべきだと思っていたのだ。
しかしルドガーはいつも自分の気持ちにまっすぐで、彼の願いも常にあなたにしか向いていない。
「わかった。終わったら絶対にお前をたくさん抱きしめてやる。すぐだぞ」
彼は誇らしく伝えてくれた。
この姿で愛を示されて、あなたは余計に気恥ずかしく、真っ赤に染まってしまった。
