巨体の人外に助けられて世話される話
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実験的な三日間、ルドガーはあなたを抱かずに耐えた。
スキンシップはやたら増えていたが、その分四日目の彼の勢いはすごかった。
まだ体は回復途中のため細心の注意を払ったものの、二人は心満たされるまで愛し合うことができた。
「ふう……今日で休暇も終わりなんだねえ。こんなこと言ったらダメだけど、寂しいなあ」
「ああ……俺も寂しい。お前とこんなに長く、二人きりで過ごせたのは初めてだからな」
居間のソファで寄り添い、感慨にふける。
「だが休暇はまた取れる。そのときは、もっと楽しいことが待っているんだからな」
「うんっ。そうだよね。そのためにもまず、元気にならないとね」
二人で微笑みを見合わせ、大きさの違う手をぎゅっと握り合った。
そして五日目の朝。
期待していた出来事が、怒涛のごとく押し寄せてきた。
「見て! やっぱり体が治ってる!」
「本当だ……!! 指も動かせるか? つま先も…! 名無し、やったぞ!!」
今度こそ二人は一点の曇りもなく大喜びした。
あなたは三週間ぶりに立ち上がり、彼の胸へ飛び込む。
自分の頭が胸下にすっぽり入るほどの身長差があるのだと、久し振りに思い出した。
「よかったよぉ……ううっ」
「ああ、泣くな。もう大丈夫なんだ。お前は回復した。これからは自由だぞ、俺もいる」
治ってもそんなふうに伝えてくれるルドガーに、愛しさと感謝で胸が一杯だ。
再び動けるようになったこれからは、自分が彼にお返ししていきたいと思った。
その日は朝早く起きて、久々に自分で身支度をした。
彼にはまだ休んでいろと言われたが、二人のご飯まで用意できることが嬉しかった。
ルドガーは今日から休暇が終わり、さっそく出勤なのだ。
濃色の制服に着替えたが、すぐには出かけない。
もうすぐフォロ医師が来てくれるためだった。
「私が動いてるの見たら、びっくりするかな? ふふふっ」
「するだろう。それにお前の魔力だ、すごいことになってるぞ」
「ええっ、またあ!?」
あなたは大興奮して、体中からエネルギーがあふれるのを感じた。
医師が来る前に、一人でバルコニーに出てみる。
まだ冬の薄暗がりの朝だが、キラキラと霧の一粒一粒が輝いて見えた。
それに、遠くも以前より見渡せている。
黒い鳥が数羽駆け回るのも微笑ましく思い、やけに空気が澄んでるように感じた。
「ああ~こんなに魔界の空気って美味しかったっけ。瘴気って素晴らしいんだなぁ」
自分でもその台詞に若干違和感を覚えつつ、まあいいやと思いながら室内に入った。
するとちょうど、フォロ医師が到着していた。
彼は朝早くにも関わらず、いつもと同じく若々しい体躯を白衣に包み、溌剌としていた。
あなたを見て一瞬目を丸くしたが、手をあげて微笑んでくれる。
「先生! 来てくれてありがとうございます」
「おはよう名無しさん。驚いたよ、すっかりパワーがみなぎってるね」
「そうなんです! なんだか目に映るものがすべて新しく見えて、生まれ変わったみたいに!」
すると彼は優しい顔つきで、あなたをじっと興味深そうに見つめた。
「うん……そうか。素晴らしいことだよ。二人には私からもよく頑張った、おめでとうと伝えたい」
彼がそう言ってくれて、そばであなたを見守るように立っていたルドガーと一緒に、もう一度喜びを浮かべた。
そのあとの診察も滞りなく終わる。
体に異常はなく、筋力も戻り完全な健康体だ。
「先生、私ってまだ人間のままですかね?」
あなたが真面目にそう尋ねると、医術師は穏やかに苦笑した。
「そうだよ、君はちゃんとした人間だ。……魔族というのはね、肉体からして強靭で、人間の体とはかなりかけ離れているんだ。我々はたとえば一週間近く飲食をしなくても生きていられる。そして精神的にも道徳的にも、人間の柔らかな心とは少し異なるものがあるのさ」
ふむふむ、とあなたは素直に聞き入る。
若干がっかりしたのは事実だけれど、自分の体が前より強くなったことは明らかなようだった。
ルドガーはそんなあなたの気持ちを知ってか知らずか、優しげな笑みを浮かべている。
「先生、名無しは今すごく元気なんだ。どうしてそんなに魔族になりたいのかは知らないが」
「ちょっと、なんで笑うのよ。だって魔族になったら皆と肩を並べられるし、もっと可能性が生まれるでしょう?」
一生懸命主張するも、彼は大人びた顔で「そうだな」と笑った。
なんだか子供のようにあしらわれた気がするが、ルドガーの興味も尽きたわけじゃない。
彼は再び魔力量について医術師に尋ねた。
一連の出来事の核心である。
「君も感じているように、また増えているよ。基礎魔法ならば、なんなく使える程度にはね」
「本当ですかっ?」
「ああ。でも訓練するときはあまり急がず、休み休みね。君はまだ回復したてなんだから」
彼の言うことを肝に銘じて、絶対に無理はしないと約束する。
「だが結局、断言はできないな。ルドガー、君の力が影響している可能性は高そうだ。けれど君に他者に分け与えられるような魔力はないからね。……申し訳ない、私としても、不可思議なことが起きているとしか言えないな」
「そうか……。ならばきっと、俺たちの運命的な絆が、相互に作用しているのだろう。瘴気は名無しの魔力を増やしたが、俺の力もそれを助ける要因になっているのかもしれない」
前向きな彼がそう言うと、医術師も納得して笑んだ。
「うん。その見方は気に入ったよ。君達がベストパートナーだということは、私も同意しよう」
信頼できる人の力強い言葉に、二人は目を輝かせる。
「へへ、よかった~。嬉しいね、ルドガー」
「そうだな。俺達を応援してくれる存在が、また増えたぞ」
彼は本来周りなんて気にしなそうだが、そうやって一緒に思ってくれていることに、心が温かくなった。
――応援してくれる存在。
その一言に、あなたはこっそり思い出したように、鼓動がやや反応していたが。
スキンシップはやたら増えていたが、その分四日目の彼の勢いはすごかった。
まだ体は回復途中のため細心の注意を払ったものの、二人は心満たされるまで愛し合うことができた。
「ふう……今日で休暇も終わりなんだねえ。こんなこと言ったらダメだけど、寂しいなあ」
「ああ……俺も寂しい。お前とこんなに長く、二人きりで過ごせたのは初めてだからな」
居間のソファで寄り添い、感慨にふける。
「だが休暇はまた取れる。そのときは、もっと楽しいことが待っているんだからな」
「うんっ。そうだよね。そのためにもまず、元気にならないとね」
二人で微笑みを見合わせ、大きさの違う手をぎゅっと握り合った。
そして五日目の朝。
期待していた出来事が、怒涛のごとく押し寄せてきた。
「見て! やっぱり体が治ってる!」
「本当だ……!! 指も動かせるか? つま先も…! 名無し、やったぞ!!」
今度こそ二人は一点の曇りもなく大喜びした。
あなたは三週間ぶりに立ち上がり、彼の胸へ飛び込む。
自分の頭が胸下にすっぽり入るほどの身長差があるのだと、久し振りに思い出した。
「よかったよぉ……ううっ」
「ああ、泣くな。もう大丈夫なんだ。お前は回復した。これからは自由だぞ、俺もいる」
治ってもそんなふうに伝えてくれるルドガーに、愛しさと感謝で胸が一杯だ。
再び動けるようになったこれからは、自分が彼にお返ししていきたいと思った。
その日は朝早く起きて、久々に自分で身支度をした。
彼にはまだ休んでいろと言われたが、二人のご飯まで用意できることが嬉しかった。
ルドガーは今日から休暇が終わり、さっそく出勤なのだ。
濃色の制服に着替えたが、すぐには出かけない。
もうすぐフォロ医師が来てくれるためだった。
「私が動いてるの見たら、びっくりするかな? ふふふっ」
「するだろう。それにお前の魔力だ、すごいことになってるぞ」
「ええっ、またあ!?」
あなたは大興奮して、体中からエネルギーがあふれるのを感じた。
医師が来る前に、一人でバルコニーに出てみる。
まだ冬の薄暗がりの朝だが、キラキラと霧の一粒一粒が輝いて見えた。
それに、遠くも以前より見渡せている。
黒い鳥が数羽駆け回るのも微笑ましく思い、やけに空気が澄んでるように感じた。
「ああ~こんなに魔界の空気って美味しかったっけ。瘴気って素晴らしいんだなぁ」
自分でもその台詞に若干違和感を覚えつつ、まあいいやと思いながら室内に入った。
するとちょうど、フォロ医師が到着していた。
彼は朝早くにも関わらず、いつもと同じく若々しい体躯を白衣に包み、溌剌としていた。
あなたを見て一瞬目を丸くしたが、手をあげて微笑んでくれる。
「先生! 来てくれてありがとうございます」
「おはよう名無しさん。驚いたよ、すっかりパワーがみなぎってるね」
「そうなんです! なんだか目に映るものがすべて新しく見えて、生まれ変わったみたいに!」
すると彼は優しい顔つきで、あなたをじっと興味深そうに見つめた。
「うん……そうか。素晴らしいことだよ。二人には私からもよく頑張った、おめでとうと伝えたい」
彼がそう言ってくれて、そばであなたを見守るように立っていたルドガーと一緒に、もう一度喜びを浮かべた。
そのあとの診察も滞りなく終わる。
体に異常はなく、筋力も戻り完全な健康体だ。
「先生、私ってまだ人間のままですかね?」
あなたが真面目にそう尋ねると、医術師は穏やかに苦笑した。
「そうだよ、君はちゃんとした人間だ。……魔族というのはね、肉体からして強靭で、人間の体とはかなりかけ離れているんだ。我々はたとえば一週間近く飲食をしなくても生きていられる。そして精神的にも道徳的にも、人間の柔らかな心とは少し異なるものがあるのさ」
ふむふむ、とあなたは素直に聞き入る。
若干がっかりしたのは事実だけれど、自分の体が前より強くなったことは明らかなようだった。
ルドガーはそんなあなたの気持ちを知ってか知らずか、優しげな笑みを浮かべている。
「先生、名無しは今すごく元気なんだ。どうしてそんなに魔族になりたいのかは知らないが」
「ちょっと、なんで笑うのよ。だって魔族になったら皆と肩を並べられるし、もっと可能性が生まれるでしょう?」
一生懸命主張するも、彼は大人びた顔で「そうだな」と笑った。
なんだか子供のようにあしらわれた気がするが、ルドガーの興味も尽きたわけじゃない。
彼は再び魔力量について医術師に尋ねた。
一連の出来事の核心である。
「君も感じているように、また増えているよ。基礎魔法ならば、なんなく使える程度にはね」
「本当ですかっ?」
「ああ。でも訓練するときはあまり急がず、休み休みね。君はまだ回復したてなんだから」
彼の言うことを肝に銘じて、絶対に無理はしないと約束する。
「だが結局、断言はできないな。ルドガー、君の力が影響している可能性は高そうだ。けれど君に他者に分け与えられるような魔力はないからね。……申し訳ない、私としても、不可思議なことが起きているとしか言えないな」
「そうか……。ならばきっと、俺たちの運命的な絆が、相互に作用しているのだろう。瘴気は名無しの魔力を増やしたが、俺の力もそれを助ける要因になっているのかもしれない」
前向きな彼がそう言うと、医術師も納得して笑んだ。
「うん。その見方は気に入ったよ。君達がベストパートナーだということは、私も同意しよう」
信頼できる人の力強い言葉に、二人は目を輝かせる。
「へへ、よかった~。嬉しいね、ルドガー」
「そうだな。俺達を応援してくれる存在が、また増えたぞ」
彼は本来周りなんて気にしなそうだが、そうやって一緒に思ってくれていることに、心が温かくなった。
――応援してくれる存在。
その一言に、あなたはこっそり思い出したように、鼓動がやや反応していたが。
