巨体の人外に助けられて世話される話
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色々な出来事を経て、再び平穏な日々が戻ってきた。
仲間たちは皆、それぞれの場所で元気に過ごしている。
そしてあなたもルドガーとの暮らしを、一日一日大切に過ごしていた。
そんなある日、ルドガーがこんなことを言った。
「名無し。お前が加護を授かったら、ずっと連れていきたかった場所がある。俺と行かないか?」
「ほんとう? 行きたい!」
思わぬ誘いを受けて、ものすごくわくわくしていた。
二人はさっそく、休日に一泊で出かけることになった。
そこは街中ではなく、自然の中のハイキングらしい。
だからあなたは可愛らしいお洒落な服というより、動きやすい軽装に身を包んだ。
「わあ、ルドガー。やっぱりあなたは軍人だね、かっこいいね。でも武器はいらないでしょう、さすがに」
「そうか? じゃあもらった短剣だけにしよう。お前もちゃんと持ったか?」
「うん!」
二人で大事な剣を見せ合い、笑顔を交わす。
この騎士団へ来た当初からは考えられないほど、あなたは逞しくなった。
ルドガーにふさわしくなりたい一心で、ここまでやってこれた。
でもひとつだけ、心残りがある。
それはまだ転移魔法の欠片すら使えないことだ。
けれど時間はこれからもあるし、一歩一歩頑張るしかない。
「よし出発しよう~!」
「ああ、行くぞ名無し! 夫婦最初の山登りだ!」
「はい先生!」
訓練を思い出し、おかしなテンションであなたはルドガーについていった。
二人は馬車に乗り、魔界にある山のふもとまで行った。
そこから先は自力で上まで登らなければならない。
ここは軍に管理された安全な山で、魔物も出ず、自然の生き物が暮らしている。
けれど崖すれすれの険しい道もあるし、あなたは終始おっかなびっくりだった。
「ひゃああっ、ここ無理! ルドガーおんぶして~!」
「よし任せろ!」
素直に甘えるあなたのことを彼は背負い、ものすごいスピードで走り抜けていく。
後ろにいるだけでも怖かったが、足元を見ないようにして掴まった。
さすが人化した獣の彼は、普段の任務での動きが想像できるほど、軽やかな身のこなしだった。
「もうすぐだ、お前に見せたい景色がある!」
「……ほんとっ? ……わあ! すごい、マグマだー!」
頂上に辿りつくと、ルドガーはあなたのことを頑丈な柵の前でゆっくり下ろした。
目の前に広がる絶景に圧倒される。
黒い溶岩の真ん中に、ふつふつと湧き上がり、炎を噴いているオレンジ色の塊。
色が本当に鮮やかで、背景に広がる紫色の空とのコントラストが美しかった。
「きれーい……ふふっ、ルドガーってやっぱり男の子だねえ。ここ、見せてくれたかったんだね」
「そうだぞ。俺も最初ここを知ったとき、胸が躍って忘れられなかった。……お前は華奢で可愛らしいが、俺みたいに冒険も好きなとこがあると思ってな。だから、きっと気に入ってくれるんじゃないかと思ったんだ」
彼の素直な気持ちを聞かされると、もっと喜びがわき、隣を見上げる。
「ありがとう……すごく気に入ったよ! これからも、あなたの好きな場所たくさん知りたいな」
「もちろんだ。全部連れてってやる。それだけじゃない、二人で好きな場所もたくさん増やしていくぞ!」
「……うんっ!」
重なる未来が嬉しい。
幸せがまだまだ波のように届いてくる。
ルドガーは、あなたにとって、そんな大きな存在だった。
二人は場所を移して、少し開けたところにテントを張った。
夜は近くにシートを敷いて、山々を包む星空を眺めながらまったりする。
心地よい気候の中、あなたはルドガーの肩に寄りかかっていた。
「こうしてると、あの夜を思い出すねえ。ゲアト先生の庭園」
「そうだな。俺達が番になった、特別な夜だ。一生忘れないだろう」
そう言ってルドガーは、あなたの頬をそっと取り、顔を寄せる。
口づけをされて、二人は暗がりの明かりのもと、うっすら顔が染まった。
彼はあなたの首元の重なったネックレスに、瞳を細めて触れる。
獣の顔と、ピンク色の花。
自分たちはいつまでも一緒だと、象徴するものだ。
あなたも彼に優しい笑みを向け、彼の手を大事そうに握っていた。
「名無し、お前に言わなければならないことがあるんだ」
「……なあに?」
聞き返すと、彼は少し真面目な顔になったのでドキリとした。
「俺はな、守護者にあることを聞いた。俺達の、寿命の話を」
「……えっ……」
あなたは言葉に詰まる。
急に胸が鼓動を鳴らし、喉をごくりと飲み込んだ。
――二人の、時間のこと。
今まで考えなかったわけではない。
でもどうしても、考えると不安がよぎっていた。
「う、うん。聞いてくれたんだね、ありがとう……どうだった?」
そんな大事なことを勇気をだして尋ねてくれたのだと、感謝する。
自分には怖くて出来なかったからだ。
「俺は魔獣で、寿命が魔族よりは少し短いが、数百年ぐらいあるんだ」
「⋯⋯そうなの?」
知らなかった事実に目を見開く。
ルドガーの時はまだまだ続くと知り、心から安堵して、嬉しくなった。
けれど同時に、自分のことを考えると胸がしめつけられる。
「ごめんね……私人間だから、きっと全然短いよね⋯⋯」
あなたの悲し気な眼差しに、ルドガーは首を勢いよく振る。
「違うんだ! そうじゃない。俺は、そこで守護者に聞いた。そうしたら守護者は、このことを俺からお前に言ってくれと言った」
彼はあることを話し始めた。真剣に、あなたの瞳を見つめながら。
「守護者はお前を魔界に連れてきて、俺のもとに送り出そうと決めたとき、お前の体を少し作り変えたらしい。……お前は人間で、魔族じゃない。体も強くはないし、普通の人間だ。⋯⋯でも、お前の寿命は、俺と同じぐらい生きられるようにしたと言っていた」
あなたの瞳は彼を映したまま、ぽろりと涙が落ちる。
「……ほんとうに……?」
「ああ、本当だ。名無し」
「じゃあ私……ルドガーと一緒に、これからも長く生きられる……?」
「そうだ、一緒に長く生きていくんだぞ」
そう言って、がっしりと腕の中に抱き寄せてくれる。
あなたは安心して、目の前がぼやけていた。
景色もかすんで、彼の体温と濃い紫の空しか分からない。
「うっ……嬉しいよ……っ……ありがとう……ありがとう……!」
「俺も嬉しいぞ……っ」
体を離したルドガーも、金色の瞳から涙が流れている。
あなたはそれを見て口元を震わせながら、指でそっと拭った。
「ふふっ……ルドガーがこうやって泣いたの、私の体がよくなった時ぶりに見たかも……」
「当然だ……! 俺は、お前が思う以上に、お前のことでいつも頭がいっぱいなんだ……!」
彼が力強く宣言して、またぎゅっと抱きしめてくる。
喜びの気持ちがあふれてきて、ルドガーの大きな体と愛が、いつもと同じく包みこんでくれた。
しばらくそうしていたが、あなたはその場に立ち上がる。
ルドガーは繋いだ手を伸ばしたまま、夜景に向かって片手を口元に添えるあなたを見上げた。
あなたは息を大きく吸い込み、「よしっ」と言う。
「この魔界で生きていくぞー!! ルドガーと一緒に!!」
出したこともないような大声で叫ぶと、ルドガーは「おおッ」とびっくりしていた。
「どうした急に、名無し!」
「へへっ。気持ちいいよ! ルドガーもやるっ?」
誘うと彼も瞳を大きく輝かせた。
立ち上がり、大柄な体躯から轟くようなよく通る声が響いた。
「俺も一緒に生きていくぞ!! 名無し、愛してるぞ!!」
「わぁっ! 声すごい! ⋯⋯嬉しい、私もあなたを愛してる! ルドガーは私の番だー!!」
呼応して叫ぶと、ルドガーはこれまでで一番嬉しそうな顔を見せ、満面の笑みを浮かべた。
そうして二人で手を繋ぎ、同じところを見つめる。
「俺達は魔界で最高の番だーー!!」
「番だー!!」
ルドガーとあなたの声は重なり合い、まるで世界から返事をもらったように、こだまして返ってきた。
彼はあなたを軽々と持ち上げて、腕に抱える。
二人は幸せそうな顔を近づけて、大切に大切に、キスを交わした。
仲間たちは皆、それぞれの場所で元気に過ごしている。
そしてあなたもルドガーとの暮らしを、一日一日大切に過ごしていた。
そんなある日、ルドガーがこんなことを言った。
「名無し。お前が加護を授かったら、ずっと連れていきたかった場所がある。俺と行かないか?」
「ほんとう? 行きたい!」
思わぬ誘いを受けて、ものすごくわくわくしていた。
二人はさっそく、休日に一泊で出かけることになった。
そこは街中ではなく、自然の中のハイキングらしい。
だからあなたは可愛らしいお洒落な服というより、動きやすい軽装に身を包んだ。
「わあ、ルドガー。やっぱりあなたは軍人だね、かっこいいね。でも武器はいらないでしょう、さすがに」
「そうか? じゃあもらった短剣だけにしよう。お前もちゃんと持ったか?」
「うん!」
二人で大事な剣を見せ合い、笑顔を交わす。
この騎士団へ来た当初からは考えられないほど、あなたは逞しくなった。
ルドガーにふさわしくなりたい一心で、ここまでやってこれた。
でもひとつだけ、心残りがある。
それはまだ転移魔法の欠片すら使えないことだ。
けれど時間はこれからもあるし、一歩一歩頑張るしかない。
「よし出発しよう~!」
「ああ、行くぞ名無し! 夫婦最初の山登りだ!」
「はい先生!」
訓練を思い出し、おかしなテンションであなたはルドガーについていった。
二人は馬車に乗り、魔界にある山のふもとまで行った。
そこから先は自力で上まで登らなければならない。
ここは軍に管理された安全な山で、魔物も出ず、自然の生き物が暮らしている。
けれど崖すれすれの険しい道もあるし、あなたは終始おっかなびっくりだった。
「ひゃああっ、ここ無理! ルドガーおんぶして~!」
「よし任せろ!」
素直に甘えるあなたのことを彼は背負い、ものすごいスピードで走り抜けていく。
後ろにいるだけでも怖かったが、足元を見ないようにして掴まった。
さすが人化した獣の彼は、普段の任務での動きが想像できるほど、軽やかな身のこなしだった。
「もうすぐだ、お前に見せたい景色がある!」
「……ほんとっ? ……わあ! すごい、マグマだー!」
頂上に辿りつくと、ルドガーはあなたのことを頑丈な柵の前でゆっくり下ろした。
目の前に広がる絶景に圧倒される。
黒い溶岩の真ん中に、ふつふつと湧き上がり、炎を噴いているオレンジ色の塊。
色が本当に鮮やかで、背景に広がる紫色の空とのコントラストが美しかった。
「きれーい……ふふっ、ルドガーってやっぱり男の子だねえ。ここ、見せてくれたかったんだね」
「そうだぞ。俺も最初ここを知ったとき、胸が躍って忘れられなかった。……お前は華奢で可愛らしいが、俺みたいに冒険も好きなとこがあると思ってな。だから、きっと気に入ってくれるんじゃないかと思ったんだ」
彼の素直な気持ちを聞かされると、もっと喜びがわき、隣を見上げる。
「ありがとう……すごく気に入ったよ! これからも、あなたの好きな場所たくさん知りたいな」
「もちろんだ。全部連れてってやる。それだけじゃない、二人で好きな場所もたくさん増やしていくぞ!」
「……うんっ!」
重なる未来が嬉しい。
幸せがまだまだ波のように届いてくる。
ルドガーは、あなたにとって、そんな大きな存在だった。
二人は場所を移して、少し開けたところにテントを張った。
夜は近くにシートを敷いて、山々を包む星空を眺めながらまったりする。
心地よい気候の中、あなたはルドガーの肩に寄りかかっていた。
「こうしてると、あの夜を思い出すねえ。ゲアト先生の庭園」
「そうだな。俺達が番になった、特別な夜だ。一生忘れないだろう」
そう言ってルドガーは、あなたの頬をそっと取り、顔を寄せる。
口づけをされて、二人は暗がりの明かりのもと、うっすら顔が染まった。
彼はあなたの首元の重なったネックレスに、瞳を細めて触れる。
獣の顔と、ピンク色の花。
自分たちはいつまでも一緒だと、象徴するものだ。
あなたも彼に優しい笑みを向け、彼の手を大事そうに握っていた。
「名無し、お前に言わなければならないことがあるんだ」
「……なあに?」
聞き返すと、彼は少し真面目な顔になったのでドキリとした。
「俺はな、守護者にあることを聞いた。俺達の、寿命の話を」
「……えっ……」
あなたは言葉に詰まる。
急に胸が鼓動を鳴らし、喉をごくりと飲み込んだ。
――二人の、時間のこと。
今まで考えなかったわけではない。
でもどうしても、考えると不安がよぎっていた。
「う、うん。聞いてくれたんだね、ありがとう……どうだった?」
そんな大事なことを勇気をだして尋ねてくれたのだと、感謝する。
自分には怖くて出来なかったからだ。
「俺は魔獣で、寿命が魔族よりは少し短いが、数百年ぐらいあるんだ」
「⋯⋯そうなの?」
知らなかった事実に目を見開く。
ルドガーの時はまだまだ続くと知り、心から安堵して、嬉しくなった。
けれど同時に、自分のことを考えると胸がしめつけられる。
「ごめんね……私人間だから、きっと全然短いよね⋯⋯」
あなたの悲し気な眼差しに、ルドガーは首を勢いよく振る。
「違うんだ! そうじゃない。俺は、そこで守護者に聞いた。そうしたら守護者は、このことを俺からお前に言ってくれと言った」
彼はあることを話し始めた。真剣に、あなたの瞳を見つめながら。
「守護者はお前を魔界に連れてきて、俺のもとに送り出そうと決めたとき、お前の体を少し作り変えたらしい。……お前は人間で、魔族じゃない。体も強くはないし、普通の人間だ。⋯⋯でも、お前の寿命は、俺と同じぐらい生きられるようにしたと言っていた」
あなたの瞳は彼を映したまま、ぽろりと涙が落ちる。
「……ほんとうに……?」
「ああ、本当だ。名無し」
「じゃあ私……ルドガーと一緒に、これからも長く生きられる……?」
「そうだ、一緒に長く生きていくんだぞ」
そう言って、がっしりと腕の中に抱き寄せてくれる。
あなたは安心して、目の前がぼやけていた。
景色もかすんで、彼の体温と濃い紫の空しか分からない。
「うっ……嬉しいよ……っ……ありがとう……ありがとう……!」
「俺も嬉しいぞ……っ」
体を離したルドガーも、金色の瞳から涙が流れている。
あなたはそれを見て口元を震わせながら、指でそっと拭った。
「ふふっ……ルドガーがこうやって泣いたの、私の体がよくなった時ぶりに見たかも……」
「当然だ……! 俺は、お前が思う以上に、お前のことでいつも頭がいっぱいなんだ……!」
彼が力強く宣言して、またぎゅっと抱きしめてくる。
喜びの気持ちがあふれてきて、ルドガーの大きな体と愛が、いつもと同じく包みこんでくれた。
しばらくそうしていたが、あなたはその場に立ち上がる。
ルドガーは繋いだ手を伸ばしたまま、夜景に向かって片手を口元に添えるあなたを見上げた。
あなたは息を大きく吸い込み、「よしっ」と言う。
「この魔界で生きていくぞー!! ルドガーと一緒に!!」
出したこともないような大声で叫ぶと、ルドガーは「おおッ」とびっくりしていた。
「どうした急に、名無し!」
「へへっ。気持ちいいよ! ルドガーもやるっ?」
誘うと彼も瞳を大きく輝かせた。
立ち上がり、大柄な体躯から轟くようなよく通る声が響いた。
「俺も一緒に生きていくぞ!! 名無し、愛してるぞ!!」
「わぁっ! 声すごい! ⋯⋯嬉しい、私もあなたを愛してる! ルドガーは私の番だー!!」
呼応して叫ぶと、ルドガーはこれまでで一番嬉しそうな顔を見せ、満面の笑みを浮かべた。
そうして二人で手を繋ぎ、同じところを見つめる。
「俺達は魔界で最高の番だーー!!」
「番だー!!」
ルドガーとあなたの声は重なり合い、まるで世界から返事をもらったように、こだまして返ってきた。
彼はあなたを軽々と持ち上げて、腕に抱える。
二人は幸せそうな顔を近づけて、大切に大切に、キスを交わした。
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