美オヤジを誘って囲われて救われる話
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「あ、もしもしお父さん? ごめんね急に電話しちゃって。お母さんとイリスさんが結構酔っちゃってさ」
あなたは皆に背を向け、早めに通話に出てくれた父と会話する。
一瞬驚かれたものの、すぐに事態を飲み込んだようだった。
「ほんと? 来てくれるの? ありがとう! ええと、ここどこだっけ、駅から十五分ぐらいの――」
説明しようとするが、初めて来た場所で分からない。
すると、テーブルで母達を見てくれていたヴィクトルに「かわろうか?」と声をかけられた。
あなたはドキっとしたが、彼のほうが上手く伝えられるかもと思い、ありがたくスマホを渡す。
ヴィクトルは軽く咳払いをした後、真剣な表情で父と話し始めた。
「どうも、はじめまして。ヴィクトル・ヘイズです。急にお電話してすみません。――はい、大通りの映画館を曲がって三つ目の角を――」
詳細な道のりを丁寧に伝えている。
スムーズなやり取りが続いたあと、彼はほっとした表情で頷いた。
「ありがとうございます、お待ちしています」
緊急時のため短い会話だったが、あなたはスマホを再び手にしてヴィクトルの様子をうかがう。
「大丈夫?」
「うん、全然大丈夫だったよ。すぐ来てくれるって」
彼がにこっと微笑んだので一安心する。
でもすぐに、これから行われる父とヴィクトルの初対面が気になった。
到着予定時間が迫ると、皆でロビーのソファに移動した。
ヴィクトルは奥のカウンターでお会計をしてくれている。
親族の奔放な様子を見られてしまったことも、かなり恥ずかしく申し訳ない。
でも彼は「まったく問題ないよ。俺に任せて」と言ってくれて、あなたはひとまず酔いと笑いで賑やかな二人の相手をしていた。
「もう帰るの~もっといいじゃない~。あれ、ヴィクトルどこ行った?」
「今ちょっと向こうにいるよ、もうすぐお父さん来るからねお母さん」
「あれー? ていうかもう来たんじゃない? あーっステファンさん! 久しぶり~!」
イリスの明るい声が響き、ちょうど入り口の扉の鐘が響いた。
大きな体格をくぐらせて現れたのは、パーカー姿の父だ。三人を見つけるなり、急いでこちらへ向かってきた。
「名無し! 電話ありがとな。二人とも、大丈夫かっ? 飲みすぎたのか」
怒るよりも不安を浮かべた表情の父が、母達の無事を知ると、胸を撫でおろしていた。
「大丈夫だってばー、二人が優しいから心配しちゃってね。こんなのいつものことなのに」
「今日はしっかりしてないとダメだろう、エレーネ。俺もいなかったんだから――」
ソファでぐでる母の肩に触れ、見下ろしていた父のもとに、もう一人の背の高い男がやってくる。
ヴィクトルのびしっとした顔つきに、あなたも固唾をのんで見守った。
「急にお呼びしてすみません、ステファンさん。はじめまして、ヴィクトルです」
「あっ、ああ、君か。いや、電話をくれてありがとう。……すまなかったな、大変だっただろう。こんな風に二人が酔ってしまって」
父とヴィクトルは目線を合わせ、その場でしっかり握手を交わした。
「とんでもないです。たくさん楽しんで頂けて嬉しかったです。でも、すみません。僕がもっと気をつけていられたらよかったんですが」
彼が反省した様子で告げると、父は軽く口元を上げて笑んだ。
「それは無理だな。俺の手にも負えない子たちだ。⋯⋯二人とも、俺はもう少し威厳をもって登場したかったんだぞ、どうしてくれるんだ?」
父が横目で母達を見やると、皆は呆気に取られたが、一斉に吹き出した。
ヴィクトルも遠慮がちに笑っている。
「威厳は十分だから大丈夫よ、ねえ」
「そうだよお父さん。来てくれてありがとう、助かったよ」
「いいよ、よくあることだ。⋯⋯そうだ、会計は済ませたのか?」
父が気がかりな様子で尋ねたため、ヴィクトルがすでに終わらせたと伝えた。
「すまん、俺が出すよ。今日はこちらの招待だったんだ」
「いえいえ、大丈夫ですよ。お二人にはとても美味しい夕食をご馳走になったんです、本当にありがとうございました」
彼が柔らかな笑みで告げると、父も若干言葉に詰まる。
「そうか⋯? すまないな。この様子だと、皆楽しんでいたのがよく分かるよ。――名無し、どうだったんだ?」
父に穏やかに聞かれて、あなたは瞳を輝かせる。
「すごく面白かったよ! レストランでもたくさんお喋りできたし、ここでも盛り上がってね、皆でデュエットしたの」
「はは、そうか。よかった。お前の顔から嬉しいのが伝わってくるよ」
からかわれるように言われて、あなたは今日一番ほっとした気分だった。
父はどう見ても普通の状態だ。
前に実家に帰ったときに、ヴィクトルとの仲を確かめてやるなんて言われたから、内心ドキドキしていた。
母とイリスも初対面の二人の様子を、好奇心たっぷりに見つめている。
「ステファンさん、名無しちゃんとヴィクトルの歌動画撮ったのよ、あとで見せてあげる~」
「ああ、見るよ」
「ステファン、ヴィクトルってすっごく優しくていい人なのよ~」
「ああ。もうなんとなく分かるよ」
二人に絡まれた父は、素っ気ない様子で答えたが、少し照れ隠しも入っているとその場の女達は皆気づいていた。
その後、父に送っていくかと聞かれたが、あなた達は自分達で帰れるため母達のことをお願いした。
バーから出て、別れるときのことだ。
「ヴィクトル、今日は皆が世話になったな。また会ったときにゆっくり話そう」
「あ、はい……! ありがとうございます、ぜひお願いします」
ヴィクトルは瞳を揺らし、しっかりと会釈をする。
だが、父はとんでもないことを付け加えた。
「……そうだな。じゃあ、今度うちに来たらどうだ? 泊まりで。それがいいんじゃないか」
「――えっ? 泊まりぃ!?」
それまで大人しくしていたあなたの素っ頓狂な声が割って入る。
「いや、そんな、実家に泊まりって。いきなりすぎじゃないのお父さん」
「そうか? 俺達もご馳走したいし、家なら腹を割って話せるだろう」
「それいいわねー、なんか楽しそう」
分厚い胸の前で腕を組む父に、母もにこやかに応じる。
あなたはゆっくりヴィクトルを見やった。
彼は感激のあまり、その場に立ち尽くしているように見えた。
「本当ですか? ぜひお伺いしたいです、ありがとうございます、ステファンさん、エレーネさん!」
「え、いや、でも、うち狭いし部屋も綺麗じゃないし……その…」
「おい。うちは綺麗だぞ。ちゃんと掃除もしてるし、俺が建てた立派な一軒家だぞ」
「もちろん! それはそうだね、ごめんごめんっ、私の部屋があんまり綺麗じゃないというか…」
彼の豪邸と比べると、自分の今のアパートはさておき、実家の部屋はあまりに簡素な女子の一人部屋だ。
そんなとこを見られたら、普通に恥ずかしい。
「それにゲストルームなんかもないよ。物置になってるよ」
「ちょっと、バラさないでよ。別に名無しの部屋で寝ればいいでしょう。ちゃんと片付けなさいよ」
「はい……」
親子の会話に、ヴィクトルは横から興味津々に見つめてくる。
「ほんとにいいの? ヴィクトル……」
「うん。嬉しいよ。俺どこでも寝れるから大丈夫だよ、名無しちゃん」
すっかり喜びに舞い上がってる彼を見て、あなたも素直に喜ばざるを得ない状況になっていた。
そうして皆と別れ、二人きりになった。
駅前でタクシーを待っている間、今日の話に花が咲く。
「はーっ、終わったねえ。ちょっとハプニング続きだったね。ヴィクトル、うちの身内に引いたんじゃない?」
「あのねえ。まったく問題ないよ。いいかい名無しちゃん、俺達の飲み会はあんなもんじゃない」
真面目な顔で断言されると、こちらもくすくすと笑いがもれる。
彼がそう言ってくれて、本当に安堵した。
結婚したら、恥ずかしい場面もいつかは見られてしまうだろうから、ある意味よかったのかもしれないけれど。
「ああ……嬉しいな。君のご両親は、ほんとに素敵な人達だったね。もちろんイリスさんも」
そう話すヴィクトルの横顔をちらりと見つめる。
賑やかな場面を回想するように、今はもう完全にリラックスしてるようだ。
「ありがとう、私も嬉しい。でもヴィクトルのおかげだよ。皆やっぱり大好きになったね。ふふ」
「…そうかな? だったらいいんだけどなぁ」
鼻をかいて瞳を細める彼がいとおしい。
最後の父の誘いにも、心から喜んでいる様子だった。
「ほんとにうち来るんだ……あぁ……恥ずかしいんだけど」
「もう、どうして? 名無しちゃんが育った家で一緒に過ごさせてもらえるの、俺はすごく楽しみだよ」
高さの違う肩が優しく小突いてきて、あなたは照れた顔になる。
「…じゃあいいか。でも笑わないでね」
「またそれかい。俺どんなイメージなんだろう」
「だってヴィクトルのおうちと絶対違うもん。……あっ、ヴィクトルのお母さんお父さんにもご挨拶しないとね」
あなたは話題を移り変わらせ、両手にぎゅっと力を入れる。
彼はそっちの問題はほとんどないというように、あなたの肩を抱き寄せた。
「心配しないで、まず君の家族と過ごす時間が大切だからね。それからでいいよ、俺のとこは」
「本当?」
「うん。結婚するんだからお前はきちんとしろ、が今の親の口癖だからね。……よし、頑張るぞ名無しちゃん!」
ヴィクトルはまだまだ頼もしいやる気モードだ。
あなたはそんな彼に自然に顔がほころび、肩に頭をちょこんと乗せて癒されていた。
あなたは皆に背を向け、早めに通話に出てくれた父と会話する。
一瞬驚かれたものの、すぐに事態を飲み込んだようだった。
「ほんと? 来てくれるの? ありがとう! ええと、ここどこだっけ、駅から十五分ぐらいの――」
説明しようとするが、初めて来た場所で分からない。
すると、テーブルで母達を見てくれていたヴィクトルに「かわろうか?」と声をかけられた。
あなたはドキっとしたが、彼のほうが上手く伝えられるかもと思い、ありがたくスマホを渡す。
ヴィクトルは軽く咳払いをした後、真剣な表情で父と話し始めた。
「どうも、はじめまして。ヴィクトル・ヘイズです。急にお電話してすみません。――はい、大通りの映画館を曲がって三つ目の角を――」
詳細な道のりを丁寧に伝えている。
スムーズなやり取りが続いたあと、彼はほっとした表情で頷いた。
「ありがとうございます、お待ちしています」
緊急時のため短い会話だったが、あなたはスマホを再び手にしてヴィクトルの様子をうかがう。
「大丈夫?」
「うん、全然大丈夫だったよ。すぐ来てくれるって」
彼がにこっと微笑んだので一安心する。
でもすぐに、これから行われる父とヴィクトルの初対面が気になった。
到着予定時間が迫ると、皆でロビーのソファに移動した。
ヴィクトルは奥のカウンターでお会計をしてくれている。
親族の奔放な様子を見られてしまったことも、かなり恥ずかしく申し訳ない。
でも彼は「まったく問題ないよ。俺に任せて」と言ってくれて、あなたはひとまず酔いと笑いで賑やかな二人の相手をしていた。
「もう帰るの~もっといいじゃない~。あれ、ヴィクトルどこ行った?」
「今ちょっと向こうにいるよ、もうすぐお父さん来るからねお母さん」
「あれー? ていうかもう来たんじゃない? あーっステファンさん! 久しぶり~!」
イリスの明るい声が響き、ちょうど入り口の扉の鐘が響いた。
大きな体格をくぐらせて現れたのは、パーカー姿の父だ。三人を見つけるなり、急いでこちらへ向かってきた。
「名無し! 電話ありがとな。二人とも、大丈夫かっ? 飲みすぎたのか」
怒るよりも不安を浮かべた表情の父が、母達の無事を知ると、胸を撫でおろしていた。
「大丈夫だってばー、二人が優しいから心配しちゃってね。こんなのいつものことなのに」
「今日はしっかりしてないとダメだろう、エレーネ。俺もいなかったんだから――」
ソファでぐでる母の肩に触れ、見下ろしていた父のもとに、もう一人の背の高い男がやってくる。
ヴィクトルのびしっとした顔つきに、あなたも固唾をのんで見守った。
「急にお呼びしてすみません、ステファンさん。はじめまして、ヴィクトルです」
「あっ、ああ、君か。いや、電話をくれてありがとう。……すまなかったな、大変だっただろう。こんな風に二人が酔ってしまって」
父とヴィクトルは目線を合わせ、その場でしっかり握手を交わした。
「とんでもないです。たくさん楽しんで頂けて嬉しかったです。でも、すみません。僕がもっと気をつけていられたらよかったんですが」
彼が反省した様子で告げると、父は軽く口元を上げて笑んだ。
「それは無理だな。俺の手にも負えない子たちだ。⋯⋯二人とも、俺はもう少し威厳をもって登場したかったんだぞ、どうしてくれるんだ?」
父が横目で母達を見やると、皆は呆気に取られたが、一斉に吹き出した。
ヴィクトルも遠慮がちに笑っている。
「威厳は十分だから大丈夫よ、ねえ」
「そうだよお父さん。来てくれてありがとう、助かったよ」
「いいよ、よくあることだ。⋯⋯そうだ、会計は済ませたのか?」
父が気がかりな様子で尋ねたため、ヴィクトルがすでに終わらせたと伝えた。
「すまん、俺が出すよ。今日はこちらの招待だったんだ」
「いえいえ、大丈夫ですよ。お二人にはとても美味しい夕食をご馳走になったんです、本当にありがとうございました」
彼が柔らかな笑みで告げると、父も若干言葉に詰まる。
「そうか⋯? すまないな。この様子だと、皆楽しんでいたのがよく分かるよ。――名無し、どうだったんだ?」
父に穏やかに聞かれて、あなたは瞳を輝かせる。
「すごく面白かったよ! レストランでもたくさんお喋りできたし、ここでも盛り上がってね、皆でデュエットしたの」
「はは、そうか。よかった。お前の顔から嬉しいのが伝わってくるよ」
からかわれるように言われて、あなたは今日一番ほっとした気分だった。
父はどう見ても普通の状態だ。
前に実家に帰ったときに、ヴィクトルとの仲を確かめてやるなんて言われたから、内心ドキドキしていた。
母とイリスも初対面の二人の様子を、好奇心たっぷりに見つめている。
「ステファンさん、名無しちゃんとヴィクトルの歌動画撮ったのよ、あとで見せてあげる~」
「ああ、見るよ」
「ステファン、ヴィクトルってすっごく優しくていい人なのよ~」
「ああ。もうなんとなく分かるよ」
二人に絡まれた父は、素っ気ない様子で答えたが、少し照れ隠しも入っているとその場の女達は皆気づいていた。
その後、父に送っていくかと聞かれたが、あなた達は自分達で帰れるため母達のことをお願いした。
バーから出て、別れるときのことだ。
「ヴィクトル、今日は皆が世話になったな。また会ったときにゆっくり話そう」
「あ、はい……! ありがとうございます、ぜひお願いします」
ヴィクトルは瞳を揺らし、しっかりと会釈をする。
だが、父はとんでもないことを付け加えた。
「……そうだな。じゃあ、今度うちに来たらどうだ? 泊まりで。それがいいんじゃないか」
「――えっ? 泊まりぃ!?」
それまで大人しくしていたあなたの素っ頓狂な声が割って入る。
「いや、そんな、実家に泊まりって。いきなりすぎじゃないのお父さん」
「そうか? 俺達もご馳走したいし、家なら腹を割って話せるだろう」
「それいいわねー、なんか楽しそう」
分厚い胸の前で腕を組む父に、母もにこやかに応じる。
あなたはゆっくりヴィクトルを見やった。
彼は感激のあまり、その場に立ち尽くしているように見えた。
「本当ですか? ぜひお伺いしたいです、ありがとうございます、ステファンさん、エレーネさん!」
「え、いや、でも、うち狭いし部屋も綺麗じゃないし……その…」
「おい。うちは綺麗だぞ。ちゃんと掃除もしてるし、俺が建てた立派な一軒家だぞ」
「もちろん! それはそうだね、ごめんごめんっ、私の部屋があんまり綺麗じゃないというか…」
彼の豪邸と比べると、自分の今のアパートはさておき、実家の部屋はあまりに簡素な女子の一人部屋だ。
そんなとこを見られたら、普通に恥ずかしい。
「それにゲストルームなんかもないよ。物置になってるよ」
「ちょっと、バラさないでよ。別に名無しの部屋で寝ればいいでしょう。ちゃんと片付けなさいよ」
「はい……」
親子の会話に、ヴィクトルは横から興味津々に見つめてくる。
「ほんとにいいの? ヴィクトル……」
「うん。嬉しいよ。俺どこでも寝れるから大丈夫だよ、名無しちゃん」
すっかり喜びに舞い上がってる彼を見て、あなたも素直に喜ばざるを得ない状況になっていた。
そうして皆と別れ、二人きりになった。
駅前でタクシーを待っている間、今日の話に花が咲く。
「はーっ、終わったねえ。ちょっとハプニング続きだったね。ヴィクトル、うちの身内に引いたんじゃない?」
「あのねえ。まったく問題ないよ。いいかい名無しちゃん、俺達の飲み会はあんなもんじゃない」
真面目な顔で断言されると、こちらもくすくすと笑いがもれる。
彼がそう言ってくれて、本当に安堵した。
結婚したら、恥ずかしい場面もいつかは見られてしまうだろうから、ある意味よかったのかもしれないけれど。
「ああ……嬉しいな。君のご両親は、ほんとに素敵な人達だったね。もちろんイリスさんも」
そう話すヴィクトルの横顔をちらりと見つめる。
賑やかな場面を回想するように、今はもう完全にリラックスしてるようだ。
「ありがとう、私も嬉しい。でもヴィクトルのおかげだよ。皆やっぱり大好きになったね。ふふ」
「…そうかな? だったらいいんだけどなぁ」
鼻をかいて瞳を細める彼がいとおしい。
最後の父の誘いにも、心から喜んでいる様子だった。
「ほんとにうち来るんだ……あぁ……恥ずかしいんだけど」
「もう、どうして? 名無しちゃんが育った家で一緒に過ごさせてもらえるの、俺はすごく楽しみだよ」
高さの違う肩が優しく小突いてきて、あなたは照れた顔になる。
「…じゃあいいか。でも笑わないでね」
「またそれかい。俺どんなイメージなんだろう」
「だってヴィクトルのおうちと絶対違うもん。……あっ、ヴィクトルのお母さんお父さんにもご挨拶しないとね」
あなたは話題を移り変わらせ、両手にぎゅっと力を入れる。
彼はそっちの問題はほとんどないというように、あなたの肩を抱き寄せた。
「心配しないで、まず君の家族と過ごす時間が大切だからね。それからでいいよ、俺のとこは」
「本当?」
「うん。結婚するんだからお前はきちんとしろ、が今の親の口癖だからね。……よし、頑張るぞ名無しちゃん!」
ヴィクトルはまだまだ頼もしいやる気モードだ。
あなたはそんな彼に自然に顔がほころび、肩に頭をちょこんと乗せて癒されていた。
