美オヤジを誘って囲われて救われる話
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セリアとの夕食後、帰宅したあなたは急いで風呂に入った。
どうしようか迷ったが、鏡のすっぴんを見てるうちに、控えめながらも可愛く見えるようにメイクを施した。
フェミニンなロングワンピースの部屋着をまとい、通話アプリを開く。
夜十時から、ヴィクトルとのビデオ通話が始まるのだ。
「やばい、なぜか緊張してきた……」
五分前から鼓動が鳴り出し、頻繁に鏡をチェックして待機する。
すると彼からの通話ボタンが画面に出てきて、あなたはすぐさま押した。
「お、名無しちゃん?」
「ヴィクトル! 大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。…あっ、見えた!」
ビデオに切り替えると、彼の笑顔がスマホの縦画面に現れる。
あなたは感動に胸が詰まり、しばらくほんのり染まった顔で見入ってしまった。
「ああ、やっと君に会えた。信じられないほど長かったよ。まったく、なんて可愛いんだ?」
独り言のようにまじまじとこちらを見つめ、表情が自然と緩んでいく男性に、あなたはただ魅せられる。
「……んっ? 大丈夫かい。どうしたの、元気ない?」
心配げに笑む彼の黒髪は濡れてウェーブが取れ、後ろに流すようにしていて色っぽい。
どうやら彼もお風呂上がりだったようだ。
質の良いシャツのボタンは上二つが開いており、つい鎖骨と胸元に目がいってしまう。
「いや、あの、ヴィクトルの顔こんな感じだったっけって、ぼうっとしちゃって……」
「えっ? おいおい、俺のこと忘れちゃったの、嘘でしょう」
彼が愕然とショックを受けたような面持ちになったため、あなたは大慌てで否定した。
「違う! そうじゃないの! あのね、知ってたけど、ものすごい格好良くて素敵で……改めてびっくりしちゃっただけ」
前にそういう話を聞いたことがあるのだ。恋をしすぎると相手の顔を思い出そうとした時、ぼやけてしまうのだとか。
彼に話したことはなかったが、実際付き合って最初の月は、離れているとき自分がどこか、夢うつつの気分になっていることがあった。
「本当? 嬉しいけど、俺はもっと君のそばにいなきゃダメだな。心配になってきた。忘れられたくないよ」
「大丈夫大丈夫、絶対忘れないよ。だって毎日……考えてるもん」
あなたはようやく照れる余裕が生まれ、カメラの前で小さくはにかむ。
その姿を見たヴィクトルも、ほっと安堵に包まれ、穏やかな笑みを浮かべた。
「それは嬉しいな。俺も同じだからさ。ずっと君のことが頭から離れなくてね」
「本当…? 仕事は大丈夫?」
「ははっ、平気だよ。もう慣れてるから。大切なお守りもあるしね」
彼が指輪を見つめ目配せしたため、あなたも嬉しくなる。それにこんなことも付け加えられた。
「ほら見て、これも財布に入れてるんだ」
「……ええ! ちょっ、それ私の写真っ? 何してるのヴィクトル! 誰かに見られちゃうよっ」
「見られてもいいだろう? 今日なんて俺、店員に君の写真見せたよ」
「はぁっ? 何それどういう状況っ?」
あなたが素で聞き返すと彼は笑っていたが、「いやなんでもない。忘れてね、帰ったら話すよ」とごまかされ、首を傾げる。
そして気づいたら、いつもの調子で楽しく会話していて、もう最初の緊張は薄れ、温かい愛情だけが二人の間を漂っていた。
「まあいいか。ヴィクトルが元気そうで安心したな。えっと、じゃあ今日はお休みだったんだよね」
「そうなんだ。クリスと観光したんだけど、まあいつもの感じだよ。イレギュラーがないのは良いことだけど」
苦笑している姿を前に、あなたはふと思ってしまった。
――たとえばどんな事をしていたんだろう、と。
でもいちいち聞いたら怪しいかもしれない。
でも、気軽に「ふーん何してたの?」と笑顔で聞けばよかったのかもしれない。
そんなことを一瞬のうちにぐるぐると考えていた。
「……んっ? また考え事してるように見えるな。もしかして疲れてるんじゃない?」
「ううん、すごい元気だよ」
せっかくの久々の二人の時間に、こんなことを考えてしまってる自分が嫌になる。
しかしヴィクトルはなんでも話してと、前に言ってくれた。
だからそれを信じて、甘えてもいいのかな。
そう思うまでに、こういうとき中々気持ちを表せない自分は、より多くの勇気を要した。
「ヴィクトル、くだらないこと尋ねてもいい?」
「何? いいよ全然、教えて名無しちゃん」
彼が瞬間的にちょっと真面目な顔を作ったのを見て、あなたは安心する。
「あのっ……ほんとに勝手な心配で申し訳ないんだけど、……お……女の子がいるとことか、行かないよね…?」
あなたは顔がかあっと赤らみ、質問自体を恥じて瞳が伏せがちになってしまった。声も最後小さい。
すると沈黙が生まれたため、恐る恐る画面を見やる。
彼は衝撃が走ったかのごとく目を見開いていた。
だがすぐに我に返り、身を乗り出す。そしてこう即答した。
「行かない。絶対そんなところ行かないよ、俺は。ああ、心配になっていたのかい? ごめんね、でも大丈夫、ありえないから。いいかい、よく聞いて」
「……ほんとう?」
「うん。本当だよ。まったく心配しなくていい。俺はそういう変なことは絶対にしないって、ここにある君への愛に誓うよ」
彼は左胸を掴むようにして、揺るぎない眼差しで訴えた。
それと同時に、あなたの表情が光を得たように明るくなっていく。
「そっか……よかったぁ。ごめんね、今そばにいないから、変な想像しちゃっただけなんだ」
「わかるよ。それは普通のことだからね。それにクリスと一緒だと言ったら、気になるのも当然だよね。でもね名無しちゃん、実はこれには訳があるんだ」
そう言ってヴィクトルは詳しく話してくれた。
元々二人で過去に色んなラウンジを訪れ飲んでいたのは、あまり女性慣れしていないクリスが彼女達とのコミュニケーションに慣れるためだったのだと。
「えっ……そうだったの? クリスさん、すごく慣れてるように見えたよ。物腰もソフトで紳士的だし」
「はは、そう言ったら彼も喜ぶだろうな。まあそうした練習のおかげかもね」
ヴィクトルは気軽に告げたが、すぐに反省した顔つきに戻る。
「でも、俺も場を盛り上げて呑気に飲んでいたのは事実さ。今よりも全然、きちんとした大人ではなかった。軽率だったよ」
そんなふうに省みる彼の話を、あなたも真摯に受け止めている。
「けれど、名無しちゃん。今はもう社交場には行かないからね。俺には君がいるんだから。傷つけることは絶対にしないよ」
「……ヴィクトル……ありがとう」
あなたは小さく頷いて、やがて彼を信じる笑顔を浮かべた。
「ああ、俺は大馬鹿だ。今すぐ君を抱きしめたい。なぜこんな遠くの国にいるんだろう」
「……大丈夫だよ、ヴィクトル。あと9日だし。すぐだよ。そのときになったら……。うぅ、ごめんね大変な仕事中に。本気で忙しく仕事してる人に、私は自分のことばっかり考えちゃって……」
じわじわと反省に呑まれ、自責の念に駆られる。
だが彼はあなたに対して、包み込むように瞳を細めた。
「いいや、そんなことない。君は俺のことを考えてくれただけでしょう? 君を不安にさせたのに、焼きもち妬いてくれたのかななんて、密かにドキドキしてしまった。ごめんね」
「……う、ううん。その通りだし……だって嫌なんだもん、ヴィクトルのそばに可愛い女の子がいたら……」
思わず本音をこぼしてしまうと、彼は黒く美しい瞳を余裕なく揺らした。
「あぁ、名無しちゃん……君以外のどこに可愛い子がいるんだい。俺はそんなの見たことがない」
「ふふっ。甘いなぁ…ヴィクトルは。たくさんいるよ」
「いないよ。今目の前にしかいないね」
本気で告げられる甘い台詞に、あなたは視線をさまよわせたあと、こっそりと口元を緩めた。
曇っていた心はいつもこんな風に、彼によって、いつの間にか取り払われてしまうのだ。
「なんだか嬉しいなぁ、こうやって話すの。メッセージも毎日すごく幸せで大切なんだ。でもやっぱりビデオ通話のパワーってすごいね」
「そうだね。これがなかったら俺は確実に干からびてただろうね」
冗談まじりに肩をすくめられ、つい吹き出してしまう。
そのあとも二人の話は尽きなかった。お互いのことを話していたら、あっという間に一時間以上が過ぎ去る。
「もうこんな時間だね。朝早いんだよね」
「……名無しちゃん、またその台詞で締めくくろうとするの。いやだよ、俺は……」
「でも寝ないとだめでしょう。朝何時に起きるの?」
「6時。出来る限りジムに行ってるんだ。君に喜んでもらいたくて。まだいい体だから安心してね」
「もうっ、何言ってるのっ」
「あれ、何を想像したのかな?」
頬を染めたあなたを見て、ヴィクトルはからかうように笑う。
これだけ冗談が言えるなら大丈夫だとあなたは思った。
でもやはり、時間が近づいてくると心細くなってくる。
「おやすみヴィクトル……」
「うん……待って、一緒に寝る?」
「無理だよそんなのっ」
「やっぱそうか」
中々切りたがらないお互いに困っていると、あなたはもう一つ彼に言い出したかったことを思い出した。
今がチャンスだと感じたのだ。
「あの、ヴィクトル。もしよかったら、帰り、迎えに行ってもいい?」
「えっ! 空港に?」
彼が驚いて聞き返すと、あなたはドキドキして頷いた。
彼の瞳にみるみる生気が宿り始める。
「でも大変じゃない? 着くのは夜だし、遅れるかもしれない。次の日は君も仕事だし――」
「ダメ?」
「いや来てほしい。すぐに会いたい。君に」
そんなふうにまっすぐ、飾り気もなく欲求を伝えられたのは初めてだった。
とんでもなく嬉しい気持ちが心に広がっていく。
「よかったぁ。じゃあ行くね。嬉しいなぁ。すぐに顔が見れるんだ、ふふっ。――あ、クリスさんのことももし良かったら送っていくからね」
「ありがとう。でもどうだろうね、たぶん気を使って別れると思うよ」
彼は思わせぶりなウインクをしてきて、早くも二人の世界に浸っている様子だ。
そうと決まれば、あなたもヴィクトルも残りの日数を乗り切れる気がしてくる。
二人の愛情も絆も、何があろうとけっして解かれることはないと、もうすでに分かっていたからである。
どうしようか迷ったが、鏡のすっぴんを見てるうちに、控えめながらも可愛く見えるようにメイクを施した。
フェミニンなロングワンピースの部屋着をまとい、通話アプリを開く。
夜十時から、ヴィクトルとのビデオ通話が始まるのだ。
「やばい、なぜか緊張してきた……」
五分前から鼓動が鳴り出し、頻繁に鏡をチェックして待機する。
すると彼からの通話ボタンが画面に出てきて、あなたはすぐさま押した。
「お、名無しちゃん?」
「ヴィクトル! 大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。…あっ、見えた!」
ビデオに切り替えると、彼の笑顔がスマホの縦画面に現れる。
あなたは感動に胸が詰まり、しばらくほんのり染まった顔で見入ってしまった。
「ああ、やっと君に会えた。信じられないほど長かったよ。まったく、なんて可愛いんだ?」
独り言のようにまじまじとこちらを見つめ、表情が自然と緩んでいく男性に、あなたはただ魅せられる。
「……んっ? 大丈夫かい。どうしたの、元気ない?」
心配げに笑む彼の黒髪は濡れてウェーブが取れ、後ろに流すようにしていて色っぽい。
どうやら彼もお風呂上がりだったようだ。
質の良いシャツのボタンは上二つが開いており、つい鎖骨と胸元に目がいってしまう。
「いや、あの、ヴィクトルの顔こんな感じだったっけって、ぼうっとしちゃって……」
「えっ? おいおい、俺のこと忘れちゃったの、嘘でしょう」
彼が愕然とショックを受けたような面持ちになったため、あなたは大慌てで否定した。
「違う! そうじゃないの! あのね、知ってたけど、ものすごい格好良くて素敵で……改めてびっくりしちゃっただけ」
前にそういう話を聞いたことがあるのだ。恋をしすぎると相手の顔を思い出そうとした時、ぼやけてしまうのだとか。
彼に話したことはなかったが、実際付き合って最初の月は、離れているとき自分がどこか、夢うつつの気分になっていることがあった。
「本当? 嬉しいけど、俺はもっと君のそばにいなきゃダメだな。心配になってきた。忘れられたくないよ」
「大丈夫大丈夫、絶対忘れないよ。だって毎日……考えてるもん」
あなたはようやく照れる余裕が生まれ、カメラの前で小さくはにかむ。
その姿を見たヴィクトルも、ほっと安堵に包まれ、穏やかな笑みを浮かべた。
「それは嬉しいな。俺も同じだからさ。ずっと君のことが頭から離れなくてね」
「本当…? 仕事は大丈夫?」
「ははっ、平気だよ。もう慣れてるから。大切なお守りもあるしね」
彼が指輪を見つめ目配せしたため、あなたも嬉しくなる。それにこんなことも付け加えられた。
「ほら見て、これも財布に入れてるんだ」
「……ええ! ちょっ、それ私の写真っ? 何してるのヴィクトル! 誰かに見られちゃうよっ」
「見られてもいいだろう? 今日なんて俺、店員に君の写真見せたよ」
「はぁっ? 何それどういう状況っ?」
あなたが素で聞き返すと彼は笑っていたが、「いやなんでもない。忘れてね、帰ったら話すよ」とごまかされ、首を傾げる。
そして気づいたら、いつもの調子で楽しく会話していて、もう最初の緊張は薄れ、温かい愛情だけが二人の間を漂っていた。
「まあいいか。ヴィクトルが元気そうで安心したな。えっと、じゃあ今日はお休みだったんだよね」
「そうなんだ。クリスと観光したんだけど、まあいつもの感じだよ。イレギュラーがないのは良いことだけど」
苦笑している姿を前に、あなたはふと思ってしまった。
――たとえばどんな事をしていたんだろう、と。
でもいちいち聞いたら怪しいかもしれない。
でも、気軽に「ふーん何してたの?」と笑顔で聞けばよかったのかもしれない。
そんなことを一瞬のうちにぐるぐると考えていた。
「……んっ? また考え事してるように見えるな。もしかして疲れてるんじゃない?」
「ううん、すごい元気だよ」
せっかくの久々の二人の時間に、こんなことを考えてしまってる自分が嫌になる。
しかしヴィクトルはなんでも話してと、前に言ってくれた。
だからそれを信じて、甘えてもいいのかな。
そう思うまでに、こういうとき中々気持ちを表せない自分は、より多くの勇気を要した。
「ヴィクトル、くだらないこと尋ねてもいい?」
「何? いいよ全然、教えて名無しちゃん」
彼が瞬間的にちょっと真面目な顔を作ったのを見て、あなたは安心する。
「あのっ……ほんとに勝手な心配で申し訳ないんだけど、……お……女の子がいるとことか、行かないよね…?」
あなたは顔がかあっと赤らみ、質問自体を恥じて瞳が伏せがちになってしまった。声も最後小さい。
すると沈黙が生まれたため、恐る恐る画面を見やる。
彼は衝撃が走ったかのごとく目を見開いていた。
だがすぐに我に返り、身を乗り出す。そしてこう即答した。
「行かない。絶対そんなところ行かないよ、俺は。ああ、心配になっていたのかい? ごめんね、でも大丈夫、ありえないから。いいかい、よく聞いて」
「……ほんとう?」
「うん。本当だよ。まったく心配しなくていい。俺はそういう変なことは絶対にしないって、ここにある君への愛に誓うよ」
彼は左胸を掴むようにして、揺るぎない眼差しで訴えた。
それと同時に、あなたの表情が光を得たように明るくなっていく。
「そっか……よかったぁ。ごめんね、今そばにいないから、変な想像しちゃっただけなんだ」
「わかるよ。それは普通のことだからね。それにクリスと一緒だと言ったら、気になるのも当然だよね。でもね名無しちゃん、実はこれには訳があるんだ」
そう言ってヴィクトルは詳しく話してくれた。
元々二人で過去に色んなラウンジを訪れ飲んでいたのは、あまり女性慣れしていないクリスが彼女達とのコミュニケーションに慣れるためだったのだと。
「えっ……そうだったの? クリスさん、すごく慣れてるように見えたよ。物腰もソフトで紳士的だし」
「はは、そう言ったら彼も喜ぶだろうな。まあそうした練習のおかげかもね」
ヴィクトルは気軽に告げたが、すぐに反省した顔つきに戻る。
「でも、俺も場を盛り上げて呑気に飲んでいたのは事実さ。今よりも全然、きちんとした大人ではなかった。軽率だったよ」
そんなふうに省みる彼の話を、あなたも真摯に受け止めている。
「けれど、名無しちゃん。今はもう社交場には行かないからね。俺には君がいるんだから。傷つけることは絶対にしないよ」
「……ヴィクトル……ありがとう」
あなたは小さく頷いて、やがて彼を信じる笑顔を浮かべた。
「ああ、俺は大馬鹿だ。今すぐ君を抱きしめたい。なぜこんな遠くの国にいるんだろう」
「……大丈夫だよ、ヴィクトル。あと9日だし。すぐだよ。そのときになったら……。うぅ、ごめんね大変な仕事中に。本気で忙しく仕事してる人に、私は自分のことばっかり考えちゃって……」
じわじわと反省に呑まれ、自責の念に駆られる。
だが彼はあなたに対して、包み込むように瞳を細めた。
「いいや、そんなことない。君は俺のことを考えてくれただけでしょう? 君を不安にさせたのに、焼きもち妬いてくれたのかななんて、密かにドキドキしてしまった。ごめんね」
「……う、ううん。その通りだし……だって嫌なんだもん、ヴィクトルのそばに可愛い女の子がいたら……」
思わず本音をこぼしてしまうと、彼は黒く美しい瞳を余裕なく揺らした。
「あぁ、名無しちゃん……君以外のどこに可愛い子がいるんだい。俺はそんなの見たことがない」
「ふふっ。甘いなぁ…ヴィクトルは。たくさんいるよ」
「いないよ。今目の前にしかいないね」
本気で告げられる甘い台詞に、あなたは視線をさまよわせたあと、こっそりと口元を緩めた。
曇っていた心はいつもこんな風に、彼によって、いつの間にか取り払われてしまうのだ。
「なんだか嬉しいなぁ、こうやって話すの。メッセージも毎日すごく幸せで大切なんだ。でもやっぱりビデオ通話のパワーってすごいね」
「そうだね。これがなかったら俺は確実に干からびてただろうね」
冗談まじりに肩をすくめられ、つい吹き出してしまう。
そのあとも二人の話は尽きなかった。お互いのことを話していたら、あっという間に一時間以上が過ぎ去る。
「もうこんな時間だね。朝早いんだよね」
「……名無しちゃん、またその台詞で締めくくろうとするの。いやだよ、俺は……」
「でも寝ないとだめでしょう。朝何時に起きるの?」
「6時。出来る限りジムに行ってるんだ。君に喜んでもらいたくて。まだいい体だから安心してね」
「もうっ、何言ってるのっ」
「あれ、何を想像したのかな?」
頬を染めたあなたを見て、ヴィクトルはからかうように笑う。
これだけ冗談が言えるなら大丈夫だとあなたは思った。
でもやはり、時間が近づいてくると心細くなってくる。
「おやすみヴィクトル……」
「うん……待って、一緒に寝る?」
「無理だよそんなのっ」
「やっぱそうか」
中々切りたがらないお互いに困っていると、あなたはもう一つ彼に言い出したかったことを思い出した。
今がチャンスだと感じたのだ。
「あの、ヴィクトル。もしよかったら、帰り、迎えに行ってもいい?」
「えっ! 空港に?」
彼が驚いて聞き返すと、あなたはドキドキして頷いた。
彼の瞳にみるみる生気が宿り始める。
「でも大変じゃない? 着くのは夜だし、遅れるかもしれない。次の日は君も仕事だし――」
「ダメ?」
「いや来てほしい。すぐに会いたい。君に」
そんなふうにまっすぐ、飾り気もなく欲求を伝えられたのは初めてだった。
とんでもなく嬉しい気持ちが心に広がっていく。
「よかったぁ。じゃあ行くね。嬉しいなぁ。すぐに顔が見れるんだ、ふふっ。――あ、クリスさんのことももし良かったら送っていくからね」
「ありがとう。でもどうだろうね、たぶん気を使って別れると思うよ」
彼は思わせぶりなウインクをしてきて、早くも二人の世界に浸っている様子だ。
そうと決まれば、あなたもヴィクトルも残りの日数を乗り切れる気がしてくる。
二人の愛情も絆も、何があろうとけっして解かれることはないと、もうすでに分かっていたからである。
