美オヤジを誘って囲われて救われる話
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海外出張初日。数時間のフライトを経て東欧入りしたヴィクトルは、市内の高級ホテルへチェックインした。
一か国目となる地には現地支社があり、昼からミーティングの予定だ。
彼の目的は国際事業部の統括として、新規契約の承認をすること。ほかにも既存クライアントとの面談がある。
本社から同行したプロジェクトリーダーのクリスは、明日大事な大口契約が控えていたが、いつも通り落ち着いて笑顔を浮かべていた。
「ああ、あなたと一緒だとビジネス乗れて得した気分ですよ。たった数時間なのに幹部って贅沢ですよねえ」
「俺たちは体がでかくてエコノミーがつらいんだよ。若いころは平気だったけどな、慣れたらもう無理なのさ」
上質なコートをまとった彼が部屋へ向かう途中、肩をすくめると、一回り若いクリスはけたけたと笑った。
「そういえば、そろそろ聞いてもいいですか? その指輪。アクセサリーつけてるとこなんて見たことないんですが」
「ああこれか? よくぞ聞いてくれたね。もっと早く聞けよ。これは名無しちゃんが数日前に婚約の証として渡してくれた唯一無二の品で――」
「やっぱそうでしたか、恰好いいなぁ。なんだかちょっと色気ありますよね。裏社会っぽさが滲んでません?」
「はっはっは! 前に彼女にも言われたことあるな。俺はそんなに悪そうな雰囲気出てるかい?」
「黒髪で彫りの深いラテン系に見えるからじゃないですか? ていうか今日テンション高いですよねヴィクトル。もっと沈んでるかと思ったのに、愛の力はすごいなぁ。……あっ、ここあなたの部屋ですか。ええっ、豪華すぎますよ! 僕のと絶対違いますよね、こんないい部屋泊ってるのずるい!」
昔馴染みとはいえ上司といるのに、どちらがテンションが高いのだろう。
彼は目の前でわめくクリスの肩をやんわりどかし、部屋へ荷物を入れて眺めを見渡した。
確かに広々として格式があり、家具や装飾の隅々まで手入れの行き届いた部屋だ。
あなたと出会ったときに連れてきた部屋より、さらにグレードが高い。
仕事でホテルへ泊まると、自然とあなたとの日々を思い出した。
そしてやや感傷に浸るのだ。今は一人でいることに。
「ああ、なんだか頭が冷えてきたよ。さあ仕事だぞクリス。緊張感を持って挑もう。現地社員も待ってるからね」
「はい! 任せてください部長!」
調子のいい彼にわざとらしく呼ばれ、ヴィクトルは仕事モードの大人びた表情でふっと笑った。
まだ創立三年のオフィスの社員らは、ヴィクトル達を温かく迎えてくれた。
若手中心の彼らの熱心な仕事ぶりと活気を見るたび、成長を感じて嬉しくなるものだ。
だが今回のような大口契約は、資金や信用、条件などあらゆる面で確認が必要であり、本社の承認は不可欠だった。
初日の夜には現地マネージャーらと食事をし、話を詰めることもできた。
そして翌日、もともと密に連絡を取り合い計画を進めてきた責任者のクリスは、周囲の期待通り、滞りなく面談を終えることが出来たのだった。
「うまくいきそうですね、クリスさん。あの現場をしきる老舗オーナーの質問攻めに、よく耐えたと思いますよ」
「ええ、ありがとうございます。彼女の仕事に対する勤勉さを、こちらも調べ尽くしましたから。あなた方の土台調査が素晴らしかったんですよ」
社屋から出て興奮気味に話す二人のことを、ヴィクトルも満足げに見つめている。
「そうだね。今回は製造業の昔気質の経営者だったから、もう少し難航するかと思ったんだけどな。一日目であそこまでまとまったのは、かなりの成果だ。予定通り明日の施設視察のあとは、契約締結までいくだろう。よくやったね二人とも。クリス、君のプレゼンも見事だったよ」
「……ありがとうございます!」
クリスは目を輝かせ、ほっとした表情で頷いた。
自信に満ちてはいたが、昨日からやけに口数が多かったし、彼なりに緊張はしていたのだろう。
ヴィクトルは帰り道、手短にフロリアンに報告メールを打つ。弟の手応えを社長もきっと喜ぶだろうと口元を上げた。
そして翌日、新規大口契約が最終決定の運びとなり、この旅のメインの目的のひとつは無事に済むこととなる。
一つ目の山を越え、ヴィクトル自身も一瞬気が休まっていた。
その日も遅くまで仕事をし、クライアントとの夕食も済ませ、ようやく帰ってきたのは日付が変わる頃だ。
出張が始まり三日が経っていたが、ヴィクトルは毎晩かかさず恋人のあなたにメールをしている。
普段は一日二回していたものが、今は互いに一通となり少し寂しさはあったが、あなたの変わりない気遣いに感謝していた。
『ただいま名無しちゃん。元気かな? 今日はクリスのプロジェクトが無事に契約出来たんだ。君が心配してくれてたから、いい結果を伝えられてほっとしたよ』
そう打っていると、なんとすぐに返信が来た。
『ほんとっ? おめでとう!!』
彼は一瞬で疲れた心に温かな火が灯り、体が生き返る心地がした。
目には光が宿り、あなたの文字を追っている。
『喜んでくれて嬉しいよ。起きてたんだね。何してたの?』
『お風呂から出て牛乳飲んでたよ』
一見普通の文面なのだが、なんて可愛いセリフなのだろうと、その姿を想像したヴィクトルは微笑む。
『ヴィクトルはちゃんと食べた?』
『うん。毎日食べ過ぎてるよ。帰ったら鍛えないとな』
『はは、大丈夫だよ。いつもいい体なんだから😉』
自分は馬鹿かと思いつつも、体に言及されるとドキッとする。
そのあとも二人で色んな話をした。今日あったことや、旅先でのちょっとした発見、文化的な面白さなどだ。
『もうこんな時間だね。早く寝たほうがいいよ。明日も早いんだよね?』
『そうだね、早いけど……』
寂しい。もっと話していたい。
四十の男が対面ならまだしも、文章でそんなことを言えるはずもない。
『じゃあまた明日メールするからね。名無しちゃんもたっぷり眠ってね。お仕事のあとはリラックスもしてね☺️』
『愛してるよ』
そう続けて打つと、少し間があったあとにあなたはこう言った。
『うん。ありがとう。私もヴィクトルのこと大好き。愛してるよ😻』
彼の顔が緩むと、締めのメッセージが綴られていく。
『じゃあおやすみ。よく眠れますように』
『君もね。Kiss』
彼は真剣な顔で口づけの言葉を書いた。
するとしばらくして「キス」の絵文字とハートマークが返ってきた。
そうして二人の親密な時間はいったん幕を閉じる。
きっと今恥ずかしそうな顔をしていそうだ。
そうヴィクトルは妙に大人びた、熱のこもった瞳で思いを馳せる。
時間を見ると、三十分ほどやり取りをしていた。
十分な時間なのだろうが、あっという間である。
仕事をしているときは、たまに背中に張り付くように長々しく感じるのになぜだろう。
ソファにもたれかかるように背を預け、静まり返った部屋の天井を見つめる。
「ああ、顔が見たい……限界が早いな。俺は……」
彼女はこんなにも落ち着いて、強い包容力を見せてくれているというのに。
あと十三日もこの試練に耐えられるのか。
ヴィクトルは己の苦悩に頭を抱え始めていた。
一か国目となる地には現地支社があり、昼からミーティングの予定だ。
彼の目的は国際事業部の統括として、新規契約の承認をすること。ほかにも既存クライアントとの面談がある。
本社から同行したプロジェクトリーダーのクリスは、明日大事な大口契約が控えていたが、いつも通り落ち着いて笑顔を浮かべていた。
「ああ、あなたと一緒だとビジネス乗れて得した気分ですよ。たった数時間なのに幹部って贅沢ですよねえ」
「俺たちは体がでかくてエコノミーがつらいんだよ。若いころは平気だったけどな、慣れたらもう無理なのさ」
上質なコートをまとった彼が部屋へ向かう途中、肩をすくめると、一回り若いクリスはけたけたと笑った。
「そういえば、そろそろ聞いてもいいですか? その指輪。アクセサリーつけてるとこなんて見たことないんですが」
「ああこれか? よくぞ聞いてくれたね。もっと早く聞けよ。これは名無しちゃんが数日前に婚約の証として渡してくれた唯一無二の品で――」
「やっぱそうでしたか、恰好いいなぁ。なんだかちょっと色気ありますよね。裏社会っぽさが滲んでません?」
「はっはっは! 前に彼女にも言われたことあるな。俺はそんなに悪そうな雰囲気出てるかい?」
「黒髪で彫りの深いラテン系に見えるからじゃないですか? ていうか今日テンション高いですよねヴィクトル。もっと沈んでるかと思ったのに、愛の力はすごいなぁ。……あっ、ここあなたの部屋ですか。ええっ、豪華すぎますよ! 僕のと絶対違いますよね、こんないい部屋泊ってるのずるい!」
昔馴染みとはいえ上司といるのに、どちらがテンションが高いのだろう。
彼は目の前でわめくクリスの肩をやんわりどかし、部屋へ荷物を入れて眺めを見渡した。
確かに広々として格式があり、家具や装飾の隅々まで手入れの行き届いた部屋だ。
あなたと出会ったときに連れてきた部屋より、さらにグレードが高い。
仕事でホテルへ泊まると、自然とあなたとの日々を思い出した。
そしてやや感傷に浸るのだ。今は一人でいることに。
「ああ、なんだか頭が冷えてきたよ。さあ仕事だぞクリス。緊張感を持って挑もう。現地社員も待ってるからね」
「はい! 任せてください部長!」
調子のいい彼にわざとらしく呼ばれ、ヴィクトルは仕事モードの大人びた表情でふっと笑った。
まだ創立三年のオフィスの社員らは、ヴィクトル達を温かく迎えてくれた。
若手中心の彼らの熱心な仕事ぶりと活気を見るたび、成長を感じて嬉しくなるものだ。
だが今回のような大口契約は、資金や信用、条件などあらゆる面で確認が必要であり、本社の承認は不可欠だった。
初日の夜には現地マネージャーらと食事をし、話を詰めることもできた。
そして翌日、もともと密に連絡を取り合い計画を進めてきた責任者のクリスは、周囲の期待通り、滞りなく面談を終えることが出来たのだった。
「うまくいきそうですね、クリスさん。あの現場をしきる老舗オーナーの質問攻めに、よく耐えたと思いますよ」
「ええ、ありがとうございます。彼女の仕事に対する勤勉さを、こちらも調べ尽くしましたから。あなた方の土台調査が素晴らしかったんですよ」
社屋から出て興奮気味に話す二人のことを、ヴィクトルも満足げに見つめている。
「そうだね。今回は製造業の昔気質の経営者だったから、もう少し難航するかと思ったんだけどな。一日目であそこまでまとまったのは、かなりの成果だ。予定通り明日の施設視察のあとは、契約締結までいくだろう。よくやったね二人とも。クリス、君のプレゼンも見事だったよ」
「……ありがとうございます!」
クリスは目を輝かせ、ほっとした表情で頷いた。
自信に満ちてはいたが、昨日からやけに口数が多かったし、彼なりに緊張はしていたのだろう。
ヴィクトルは帰り道、手短にフロリアンに報告メールを打つ。弟の手応えを社長もきっと喜ぶだろうと口元を上げた。
そして翌日、新規大口契約が最終決定の運びとなり、この旅のメインの目的のひとつは無事に済むこととなる。
一つ目の山を越え、ヴィクトル自身も一瞬気が休まっていた。
その日も遅くまで仕事をし、クライアントとの夕食も済ませ、ようやく帰ってきたのは日付が変わる頃だ。
出張が始まり三日が経っていたが、ヴィクトルは毎晩かかさず恋人のあなたにメールをしている。
普段は一日二回していたものが、今は互いに一通となり少し寂しさはあったが、あなたの変わりない気遣いに感謝していた。
『ただいま名無しちゃん。元気かな? 今日はクリスのプロジェクトが無事に契約出来たんだ。君が心配してくれてたから、いい結果を伝えられてほっとしたよ』
そう打っていると、なんとすぐに返信が来た。
『ほんとっ? おめでとう!!』
彼は一瞬で疲れた心に温かな火が灯り、体が生き返る心地がした。
目には光が宿り、あなたの文字を追っている。
『喜んでくれて嬉しいよ。起きてたんだね。何してたの?』
『お風呂から出て牛乳飲んでたよ』
一見普通の文面なのだが、なんて可愛いセリフなのだろうと、その姿を想像したヴィクトルは微笑む。
『ヴィクトルはちゃんと食べた?』
『うん。毎日食べ過ぎてるよ。帰ったら鍛えないとな』
『はは、大丈夫だよ。いつもいい体なんだから😉』
自分は馬鹿かと思いつつも、体に言及されるとドキッとする。
そのあとも二人で色んな話をした。今日あったことや、旅先でのちょっとした発見、文化的な面白さなどだ。
『もうこんな時間だね。早く寝たほうがいいよ。明日も早いんだよね?』
『そうだね、早いけど……』
寂しい。もっと話していたい。
四十の男が対面ならまだしも、文章でそんなことを言えるはずもない。
『じゃあまた明日メールするからね。名無しちゃんもたっぷり眠ってね。お仕事のあとはリラックスもしてね☺️』
『愛してるよ』
そう続けて打つと、少し間があったあとにあなたはこう言った。
『うん。ありがとう。私もヴィクトルのこと大好き。愛してるよ😻』
彼の顔が緩むと、締めのメッセージが綴られていく。
『じゃあおやすみ。よく眠れますように』
『君もね。Kiss』
彼は真剣な顔で口づけの言葉を書いた。
するとしばらくして「キス」の絵文字とハートマークが返ってきた。
そうして二人の親密な時間はいったん幕を閉じる。
きっと今恥ずかしそうな顔をしていそうだ。
そうヴィクトルは妙に大人びた、熱のこもった瞳で思いを馳せる。
時間を見ると、三十分ほどやり取りをしていた。
十分な時間なのだろうが、あっという間である。
仕事をしているときは、たまに背中に張り付くように長々しく感じるのになぜだろう。
ソファにもたれかかるように背を預け、静まり返った部屋の天井を見つめる。
「ああ、顔が見たい……限界が早いな。俺は……」
彼女はこんなにも落ち着いて、強い包容力を見せてくれているというのに。
あと十三日もこの試練に耐えられるのか。
ヴィクトルは己の苦悩に頭を抱え始めていた。
