美オヤジを誘って囲われて救われる話
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翌日、あなたはベッドのサイドテーブルにあるスマホに手を伸ばした。
「ううう゛……今何時……えっ……もう昼過ぎてる……」
かすれたうなり声をあげて目を擦る。
その時、部屋がいつもより落ち着いたモノトーンの風景なことに気づいた。
「あっ……!!」
ここはヴィクトルの家の寝室だ。
ゆっくりと半身をひねらせると、まだ彼が平穏に眠っている。
昨日の酔って休んでいる姿を思い出し、自然と顔が緩んだ。
「こんな時間まで寝ちゃってるの、めずらしい……かわいい」
彼の寝顔が最近自分の中でヒットしており、しばらく微笑み眺めていた。
だがそんなことをしてる時間はない。
あなたは急いで起き上がり、洗面所へ向かおうとした。
恐ろしいことに、ランジェリーすらつけていない裸だったのだ。
床に落ちた服を拾おうとしたところ、手首をそっと伸びてきた手に握られた。
「わああッ」
「ごめん……俺はいつも君のつぶやきで起きるみたいだ」
笑いをこらえた様子で告げられ、あなたはとっさに顔と体を布団で隠して振り向いた。
「おはようヴィクトル」
「おはよう名無しちゃん。どうして隠してるの?」
彼がゆったりと筋肉質な裸体を起こそうとしたので、あなたは余計に顔を覆った。
「ひどい顔なの! 昨日飲みすぎたし!」
「見せて……全然大丈夫。とっても可愛いよ」
シーツの上にあぐらをかいた後、彼は優しい顔でのぞき込んでくる。
あなたは赤く染まりながらも、もうその言葉を信じることにした。
「ごめんヴィクトル……昨日⋯⋯やばかったよね」
「ああ……皆が帰ってからのこと?」
やっぱりそうなのだと卒倒しそうになりつつ、あなたは小さく頷く。
すると彼はおもむろに首を振った。
「確かにすごかったけどね。……ああ、すごかった。君は……」
「何が!?」
「覚えてないのかい。悲しいな」
くすくすと笑う彼の胸が広い腕とともに開かれたから、あなたは吸い込まれるように寄りかかる。
「恋人同士なんだから問題ないでしょう? たまに酔って互いに大胆になっても、俺は幸せだなって思うだけだよ」
なだめるように笑み、あなたの髪ごと撫でてくれる。
ヴィクトルは互いにと言ってくれたが、昨日は自分だけかなり乱れてしまい、むしろ彼には手厚く介抱されてたように思う。
「恥ずかしい……でもありがとう……私も幸せ……だよ…」
「おいおい名無しちゃん。そんな消え入りそうな声で。大丈夫、変なことしてないから。元気だして」
遠い目をしていると、面白い慰め方をされる。
あなたは申し訳なさとともに彼の深い愛を嚙み締めた。しばらくして顔を上げ、踏ん切りのついた表情をする。
「……よしっ! 今日は大晦日だ! なにする? 花火?」
「急に元気出たね。ははっ、ほんと可愛いな君は。花火はね、バルコニーから見るって約束したでしょ。それとも俺が打ち上げるとこ見たかった?」
「い、いやいい。花火怖い。他の人の見るだけにしよう」
「はっはっは!」
彼の大好きな笑い声が響き、あなたも段々気が抜けてきて肩を揺らした。
昨日の忘年会に参加したことも、大きな驚きだった。
その上こうして今年最後の日を彼と楽しく目覚められるなんて、本当に自分は幸運だ。
この国では、一年の最大イベントは家族が集まるクリスマスである。それが終われば年越しも新年も、だいたい皆好きなように過ごす。
あなたも一人暮らしを始めてからは、友人とパーティーをしたり、去年までは元カレと過ごしたりしていた。
今年の大晦日はテーブルに用意した夕食のご馳走を見ながら、ふと物思いにふけっていた。
「名無しちゃん、本当にフォンデュでよかったの?」
「……うん! ヴィクトルのおうちの伝統なんだよね。うちはラクレットだったから新鮮だなぁ、見てみて美味しそう~。お肉もいいお肉使ってるねえ!」
「一緒に食べるから奮発しちゃったよ、シーフードもあるんだ」
「やったー!」
あなたはたっぷりのとろけるチーズに、彼の真似をして具のついた銀の串を差し入れ、熱々のまま口に運ぶ。
どれも素晴らしい風味で、冬の特別なディナーにぴったりだと思った。
開放的なリビングにある食卓の向かい側では、部屋着姿のヴィクトルがくつろぎ、微笑みを向けて食事している。
こんな幸福があるだろうか。
去年の大晦日とは大違いだ。
その時も元カレとひと悶着あり、一人悲しい年末を過ごしていたのを思い出す。
「……そういえばヴィクトルは、いつもどんな年末年始だったの?」
「俺はねえ、昔は家族とか友人と集まってって感じだったけど。昨日みたいなね。でもここ最近はずっと一人だったな。仕事したり家で飲んだり。あんまり行事を感じる雰囲気でもなかったね」
彼がやや自分を憐れむ口調で苦笑したため、あなたは驚いて見つめる。
「そうなの⋯?」
「うん。だから今年はこんな風に、幸せの絶頂みたいに過ごしている自分が信じられないよ」
そう話す照れくさそうな笑顔に、あなたは胸がやたらと締めつけられた。
自分と勝手に重ねてしまったからというよりも、なにか強い想いに突き動かされる。
そうしてテーブルにあった彼の手を握った。
「おっ……どうしたの?」
「これからはいつも一緒だね。二人とも、もう寂しくないよね」
彼は寂しいなんて言ってないのに、一緒こたにしてあなたは微笑もうとする。
なぜだか分からないけれど、少し物悲しい気分になっていた。
人は幸せを感じすぎると、感傷的になるのだろうか。
「名無しちゃん、こっちにおいで」
「…えっ? こっちってどっち?」
「俺の膝の上」
食事中にそう言われてあなたはまごつきながらも、言うとおりにした。
ゆったり開いた彼の太ももの上にお尻を乗せ、視線を合わせた。
彼の普段涼やかな黒い瞳は優しく、けれど少し心配そうな愛情深さを浮かべている。
あなたはこの眼差しに弱かった。
また顔を隠すように、彼の首に腕を回した。
「ヴィクトル……」
「うん」
背中を優しく撫でられて、ちょっぴり情けなさもあったが、感謝の気持ちがそれ以上にあふれ出てくる。
「⋯⋯去年まで寂しかった」
「うん……」
背中に当てられていた手があなたをそのまま優しく抱きしめる。
「君が今言ってくれたように、これからは一緒だからね。君もだし、俺も。もう寂しいことは起こらないよ」
とても真面目な声が断言してきて、あなたは目尻が濡れながらも口元が笑んできた。
彼の優しさにいつも救われている。
「ありがとう。ごめんね。お酒飲んだ次の日って、なんかしんみりしちゃうの」
「わかるよ。二人ともすごい飲んだからな。でも楽しかったよね。今日も君といられて嬉しいよ、俺は」
「⋯⋯うん。私もだよ」
間近で見つめ合って、互いの瞳は柔らかく変化していく。
彼の唇があなたの口に触れ、あなたはしっかりと膝の上に座ったまま、しばらくキスをしていた。
・・・
初めての二人の年越しは、こんなふうに特別な雰囲気だった。
しかし深夜十二時が近づいてくると、自然と二人の気分は高揚していった。
冬真っ只中の寒いバルコニーに出て、ダウンを着込み、街と空の境界線を眺める。
「わあっ、花火の音がすごい! あっ、もう始まっちゃってる!」
「ほんとだ。気が早い奴らだな」
笑いながらヴィクトルは同じように空を見やり、カウントダウンを心待ちにした。
腕時計を見つめ、にこやかな表情であなたに伝える。
「もうすぐだ、いくよ名無しちゃん!」
「うん! 5、4、3、2、1……新年おめでとうーっ!!」
「おめでとう!! 今年もよろしくね、愛してるよ!」
隣から熱烈な告白をいの一番にされて、唇を奪われる。
あなたはとろけそうな視界の端に打ちあがる丸い花火を見た。
何発も空に舞い上がり、ひゅるひゅると風情のある音のすぐに、大きな爆発音にびっくりする。
「きゃぁっ! やっぱり音でかいって! 怖いよ、やりすぎだよ! 近所の人おかしいでしょう!」
「はっはっは! 楽しそうだよね、来年は俺もやろう」
「ええーっ」
「一緒にやろうよ、面白いよ!」
まるで少年のように目を輝かせ、テンションがものすごく上がっているヴィクトルを初めて見た気がする。
自ら打ち上げる花火の爆音は恐ろしいが、彼と一緒ならばもしかして気が変わってしまうかもしれない…とも思った。
新年の祝砲は、三十分以上も続いた。
あなた達はスパークリングワインで乾杯し、寒空を忘れるほど朗らかにお喋りをする。
そんな中、彼がこんな事を口にした。
「ねえ名無しちゃん。俺達いつ結婚する?」
「うーんと、そうだな。今年したい!」
「ほんとっ?」
すると彼がまばゆい笑みで見つめてきて、あなたは思い切って言ってよかったと思った。
「よし、今年しよう。約束ね」
「うんっ。でも仕事大丈夫?」
「もちろん大丈夫さ。休暇だってばっちり取るからね」
やる気に満ちている横顔がすでに頼もしい。
「でも君の仕事のほうこそ大丈夫かな? なんでも言ってね。一緒に調整しよう」
「うん、ありがとう。……ふふ、楽しみだなぁ。ほんとうに夫婦になるんだね、私たち。信じられないなぁ」
その特別な関係を表す言葉は、二人にいっそうの笑顔をもたらした。
「ねえねえ結婚したらどこに住むの? ここ? ……あっ、ヴィクトルの家なのに図々しいか。ってすでに悠々自適にくつろいじゃってるけど、はは」
「いや全然いいよ。ここはもう二人の家なんだから。……でもつまらなくない? リフォームしてもいいし、どこかに家を買って、そこを一から作っても――」
「えええっ!?」
あなたは隣でいろいろとイメージを広げるヴィクトルに仰天した。
「ちょっ、ちょっ、無理無理無理! そこまでのお金は……!」
当たり前だが持ってない。
自立した社会人とはいえ二十代前半の自分と、ただでさえ経済的な開きがある年上の彼では、感覚も違うのだろうけれど。
「もちろん、ゆっくり考えよう。ねっ、名無しちゃん。何も心配いらないから」
「う、うん…?」
彼の包み込むような表情が気になる。
けれど今これ以上議論してもうまくいかない気がした。
先延ばしにしても同じなのだが。
愛する人と一生を共にする覚悟も愛も、十分ある。
それでも結婚というのは、考えれば考えるほど現実的な事柄なのだ。
ドキドキしながら、あなたはまだ鳴りやまぬ花火の下で、彼の温かな手に繋いでいた。
「ううう゛……今何時……えっ……もう昼過ぎてる……」
かすれたうなり声をあげて目を擦る。
その時、部屋がいつもより落ち着いたモノトーンの風景なことに気づいた。
「あっ……!!」
ここはヴィクトルの家の寝室だ。
ゆっくりと半身をひねらせると、まだ彼が平穏に眠っている。
昨日の酔って休んでいる姿を思い出し、自然と顔が緩んだ。
「こんな時間まで寝ちゃってるの、めずらしい……かわいい」
彼の寝顔が最近自分の中でヒットしており、しばらく微笑み眺めていた。
だがそんなことをしてる時間はない。
あなたは急いで起き上がり、洗面所へ向かおうとした。
恐ろしいことに、ランジェリーすらつけていない裸だったのだ。
床に落ちた服を拾おうとしたところ、手首をそっと伸びてきた手に握られた。
「わああッ」
「ごめん……俺はいつも君のつぶやきで起きるみたいだ」
笑いをこらえた様子で告げられ、あなたはとっさに顔と体を布団で隠して振り向いた。
「おはようヴィクトル」
「おはよう名無しちゃん。どうして隠してるの?」
彼がゆったりと筋肉質な裸体を起こそうとしたので、あなたは余計に顔を覆った。
「ひどい顔なの! 昨日飲みすぎたし!」
「見せて……全然大丈夫。とっても可愛いよ」
シーツの上にあぐらをかいた後、彼は優しい顔でのぞき込んでくる。
あなたは赤く染まりながらも、もうその言葉を信じることにした。
「ごめんヴィクトル……昨日⋯⋯やばかったよね」
「ああ……皆が帰ってからのこと?」
やっぱりそうなのだと卒倒しそうになりつつ、あなたは小さく頷く。
すると彼はおもむろに首を振った。
「確かにすごかったけどね。……ああ、すごかった。君は……」
「何が!?」
「覚えてないのかい。悲しいな」
くすくすと笑う彼の胸が広い腕とともに開かれたから、あなたは吸い込まれるように寄りかかる。
「恋人同士なんだから問題ないでしょう? たまに酔って互いに大胆になっても、俺は幸せだなって思うだけだよ」
なだめるように笑み、あなたの髪ごと撫でてくれる。
ヴィクトルは互いにと言ってくれたが、昨日は自分だけかなり乱れてしまい、むしろ彼には手厚く介抱されてたように思う。
「恥ずかしい……でもありがとう……私も幸せ……だよ…」
「おいおい名無しちゃん。そんな消え入りそうな声で。大丈夫、変なことしてないから。元気だして」
遠い目をしていると、面白い慰め方をされる。
あなたは申し訳なさとともに彼の深い愛を嚙み締めた。しばらくして顔を上げ、踏ん切りのついた表情をする。
「……よしっ! 今日は大晦日だ! なにする? 花火?」
「急に元気出たね。ははっ、ほんと可愛いな君は。花火はね、バルコニーから見るって約束したでしょ。それとも俺が打ち上げるとこ見たかった?」
「い、いやいい。花火怖い。他の人の見るだけにしよう」
「はっはっは!」
彼の大好きな笑い声が響き、あなたも段々気が抜けてきて肩を揺らした。
昨日の忘年会に参加したことも、大きな驚きだった。
その上こうして今年最後の日を彼と楽しく目覚められるなんて、本当に自分は幸運だ。
この国では、一年の最大イベントは家族が集まるクリスマスである。それが終われば年越しも新年も、だいたい皆好きなように過ごす。
あなたも一人暮らしを始めてからは、友人とパーティーをしたり、去年までは元カレと過ごしたりしていた。
今年の大晦日はテーブルに用意した夕食のご馳走を見ながら、ふと物思いにふけっていた。
「名無しちゃん、本当にフォンデュでよかったの?」
「……うん! ヴィクトルのおうちの伝統なんだよね。うちはラクレットだったから新鮮だなぁ、見てみて美味しそう~。お肉もいいお肉使ってるねえ!」
「一緒に食べるから奮発しちゃったよ、シーフードもあるんだ」
「やったー!」
あなたはたっぷりのとろけるチーズに、彼の真似をして具のついた銀の串を差し入れ、熱々のまま口に運ぶ。
どれも素晴らしい風味で、冬の特別なディナーにぴったりだと思った。
開放的なリビングにある食卓の向かい側では、部屋着姿のヴィクトルがくつろぎ、微笑みを向けて食事している。
こんな幸福があるだろうか。
去年の大晦日とは大違いだ。
その時も元カレとひと悶着あり、一人悲しい年末を過ごしていたのを思い出す。
「……そういえばヴィクトルは、いつもどんな年末年始だったの?」
「俺はねえ、昔は家族とか友人と集まってって感じだったけど。昨日みたいなね。でもここ最近はずっと一人だったな。仕事したり家で飲んだり。あんまり行事を感じる雰囲気でもなかったね」
彼がやや自分を憐れむ口調で苦笑したため、あなたは驚いて見つめる。
「そうなの⋯?」
「うん。だから今年はこんな風に、幸せの絶頂みたいに過ごしている自分が信じられないよ」
そう話す照れくさそうな笑顔に、あなたは胸がやたらと締めつけられた。
自分と勝手に重ねてしまったからというよりも、なにか強い想いに突き動かされる。
そうしてテーブルにあった彼の手を握った。
「おっ……どうしたの?」
「これからはいつも一緒だね。二人とも、もう寂しくないよね」
彼は寂しいなんて言ってないのに、一緒こたにしてあなたは微笑もうとする。
なぜだか分からないけれど、少し物悲しい気分になっていた。
人は幸せを感じすぎると、感傷的になるのだろうか。
「名無しちゃん、こっちにおいで」
「…えっ? こっちってどっち?」
「俺の膝の上」
食事中にそう言われてあなたはまごつきながらも、言うとおりにした。
ゆったり開いた彼の太ももの上にお尻を乗せ、視線を合わせた。
彼の普段涼やかな黒い瞳は優しく、けれど少し心配そうな愛情深さを浮かべている。
あなたはこの眼差しに弱かった。
また顔を隠すように、彼の首に腕を回した。
「ヴィクトル……」
「うん」
背中を優しく撫でられて、ちょっぴり情けなさもあったが、感謝の気持ちがそれ以上にあふれ出てくる。
「⋯⋯去年まで寂しかった」
「うん……」
背中に当てられていた手があなたをそのまま優しく抱きしめる。
「君が今言ってくれたように、これからは一緒だからね。君もだし、俺も。もう寂しいことは起こらないよ」
とても真面目な声が断言してきて、あなたは目尻が濡れながらも口元が笑んできた。
彼の優しさにいつも救われている。
「ありがとう。ごめんね。お酒飲んだ次の日って、なんかしんみりしちゃうの」
「わかるよ。二人ともすごい飲んだからな。でも楽しかったよね。今日も君といられて嬉しいよ、俺は」
「⋯⋯うん。私もだよ」
間近で見つめ合って、互いの瞳は柔らかく変化していく。
彼の唇があなたの口に触れ、あなたはしっかりと膝の上に座ったまま、しばらくキスをしていた。
・・・
初めての二人の年越しは、こんなふうに特別な雰囲気だった。
しかし深夜十二時が近づいてくると、自然と二人の気分は高揚していった。
冬真っ只中の寒いバルコニーに出て、ダウンを着込み、街と空の境界線を眺める。
「わあっ、花火の音がすごい! あっ、もう始まっちゃってる!」
「ほんとだ。気が早い奴らだな」
笑いながらヴィクトルは同じように空を見やり、カウントダウンを心待ちにした。
腕時計を見つめ、にこやかな表情であなたに伝える。
「もうすぐだ、いくよ名無しちゃん!」
「うん! 5、4、3、2、1……新年おめでとうーっ!!」
「おめでとう!! 今年もよろしくね、愛してるよ!」
隣から熱烈な告白をいの一番にされて、唇を奪われる。
あなたはとろけそうな視界の端に打ちあがる丸い花火を見た。
何発も空に舞い上がり、ひゅるひゅると風情のある音のすぐに、大きな爆発音にびっくりする。
「きゃぁっ! やっぱり音でかいって! 怖いよ、やりすぎだよ! 近所の人おかしいでしょう!」
「はっはっは! 楽しそうだよね、来年は俺もやろう」
「ええーっ」
「一緒にやろうよ、面白いよ!」
まるで少年のように目を輝かせ、テンションがものすごく上がっているヴィクトルを初めて見た気がする。
自ら打ち上げる花火の爆音は恐ろしいが、彼と一緒ならばもしかして気が変わってしまうかもしれない…とも思った。
新年の祝砲は、三十分以上も続いた。
あなた達はスパークリングワインで乾杯し、寒空を忘れるほど朗らかにお喋りをする。
そんな中、彼がこんな事を口にした。
「ねえ名無しちゃん。俺達いつ結婚する?」
「うーんと、そうだな。今年したい!」
「ほんとっ?」
すると彼がまばゆい笑みで見つめてきて、あなたは思い切って言ってよかったと思った。
「よし、今年しよう。約束ね」
「うんっ。でも仕事大丈夫?」
「もちろん大丈夫さ。休暇だってばっちり取るからね」
やる気に満ちている横顔がすでに頼もしい。
「でも君の仕事のほうこそ大丈夫かな? なんでも言ってね。一緒に調整しよう」
「うん、ありがとう。……ふふ、楽しみだなぁ。ほんとうに夫婦になるんだね、私たち。信じられないなぁ」
その特別な関係を表す言葉は、二人にいっそうの笑顔をもたらした。
「ねえねえ結婚したらどこに住むの? ここ? ……あっ、ヴィクトルの家なのに図々しいか。ってすでに悠々自適にくつろいじゃってるけど、はは」
「いや全然いいよ。ここはもう二人の家なんだから。……でもつまらなくない? リフォームしてもいいし、どこかに家を買って、そこを一から作っても――」
「えええっ!?」
あなたは隣でいろいろとイメージを広げるヴィクトルに仰天した。
「ちょっ、ちょっ、無理無理無理! そこまでのお金は……!」
当たり前だが持ってない。
自立した社会人とはいえ二十代前半の自分と、ただでさえ経済的な開きがある年上の彼では、感覚も違うのだろうけれど。
「もちろん、ゆっくり考えよう。ねっ、名無しちゃん。何も心配いらないから」
「う、うん…?」
彼の包み込むような表情が気になる。
けれど今これ以上議論してもうまくいかない気がした。
先延ばしにしても同じなのだが。
愛する人と一生を共にする覚悟も愛も、十分ある。
それでも結婚というのは、考えれば考えるほど現実的な事柄なのだ。
ドキドキしながら、あなたはまだ鳴りやまぬ花火の下で、彼の温かな手に繋いでいた。
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