美オヤジを誘って囲われて救われる話
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12月30日の夜、予期せぬことが起きた。
ヴィクトルの家で会社の忘年会が行われる中、同僚のマックスから突然あなたも来ないかと誘われたのだ。
そうして今は高級マンションの玄関前で、鼓動を抑えるように立っている。
「ああ、緊張してきたよ⋯⋯皆もう中にいるんだよね。私の格好変じゃない?」
「ぜーんぜん! 可愛い名無し〜。早く入ろうよ〜へへへへ」
体をくねらせて腕にまきつく親友セリアを見やり、口元がひくつく。
心配の種は仲間内の会に飛び込むことだけでなく、この酔っ払いもだった。
「⋯⋯セリアちゃんっ、頼むから行儀よくね! エリックさんも彼女のことよろしくお願いね!」
「うん、わかったよ名無しさん。僕がきちんと掴んでるからね」
黒髪眼鏡の穏やかなセリアの彼は、自分達より4つ上の頼れる男性でもある。
まだ付き合いは浅いが、今日の三人のお食事会でもっと打ち解けることが出来ていた。
「よし、いくよっ。⋯⋯あっ、お邪魔しまーす」
「おっ!! 名無しさん達来たぞ、お前ら! そこちゃんと片付けろ!」
号令のように叫ばれ目を見張ると、廊下の奥からド派手なシャツの金髪マックスが現れた。
彼は優雅に手を広げ三人を歓迎する。
「やあやあ名無しさん、急に呼んですまないね。また会えて嬉しいよ」
「私もです、こんばんわ!」
笑顔で握手を交わした彼はセリアとエリックにも熱い歓迎をしてくれた。
ドキドキしながらリビングへ向かうと、立ち上がって迎える四人の男性達がいて、スーツ姿ではなく普段着にも関わらず、堂々としたオーラに圧倒される。
「皆さんお久しぶりです! 今日は途中からお誘いを頂きありがとうございます、お邪魔します!」
「いやいや名無しさん、ここもう君達2人の家だよね? 邪魔してるの俺らだから」
マックスがおどけて突っ込むと、皆も笑ってくれたので気が緩む。
あなたは一緒に来た二人のことも紹介した。
「どうもはじめまして〜。名無しの親友で劇団員のセリアでーっす! こっちは彼氏のエリック26才レストランマネージャーですぅ。皆様お手柔らかに〜あははは」
「どうも皆さん、はじめまして。よかったらこれ、うちの店の魚料理なんですが食べてください」
「おっすげえ、燻製のコースじゃん! 酒に合うぜ!」
エリックが実家の魚レストランから差し入れをしてくれて、皆は沸き立った。
そしてあなたも持ってきたデザートを渡す。
「これもセリアちゃんと作ったチョコレートケーキなんです。ちょっと食べちゃってるんですけど、よかったら皆さんでどうぞ」
3人分が欠けた大きなホールケーキに、皆は目の色を変えた。
一際食いついたのは初対面のミロである。
「うわぁ美味しそうだなぁ〜ありがとう名無しさん! 俺君のクッキーの大ファンなんだよ。ヴィクトルの食い尽くしてものすごい怒られちゃったけど。あ、ところで初めましてだよね。会えて嬉しいな」
にこりと笑って飛んできてくれて、目線が少し上ぐらいのフレンドリーな彼にあなたも笑みが出る。
「初めまして、私もすごく嬉しいです! クッキーも喜んでもらえて作った甲斐がありました」
2人は和やかに握手をし、なんだか人のよさそうな彼に親近感を覚えた。
それぞれエリオやアンドレイ、クリスとも挨拶し、あなたはキョロキョロと恋人の姿を探す。
一方リビングは騒がしく、テーブルに置かれたケーキを皆が取り囲んでいた。
「僕から提案です。ヴィクトルのを一番大きめに切ってあげましょう」
「そうだな。それが一番平和だと思うよ、クリス」
「ですよねエリオ」
「はぁ? あいつはいつでも食えんだろ! 皆平等にしようぜ」
「うわ〜マックス、最悪。作ってくれた女性達の前でそんなぞんざいな言い方すんなよ。お前ほんとはモテないだろ?」
「っせえなミロ、俺を疑うな。食い意地が張ってるだけだ」
「あっはっはっは! 皆面白〜い! ヴィクトルさんのお友達だからすんごい真面目で葉巻吸ってるイケオジ集団なのかと思ったら、結構普通の男子なんですねぇ〜」
すでにテーブル前に居座り、ビール瓶を拝借しているセリアにあなたはぎょっとする。
「ちょっセリアちゃん! 失礼でしょう!」
しかし何かがウケたのか、大人の男性達の笑い声がどっと巻き起こる。
「い、イケオジ? それ俺もはいってるの? 俺だけお兄さんだよね? ね? 名無しさんはどう思う?」
「えっ。あ、はい。そうですよもちろん、マックスさんはお兄さんですよ! ⋯⋯あ、いえ皆さんそうだと思いますよ!」
口走ったあなたが慌てふためくと、また皆は楽しそうに笑ってくれた。
懐の深い人達でよかった⋯そう思いつつ、セリアはエリックにたしなめられ面倒を見られている。
皆がああだこうだいいながらケーキを取り分けている中、クリスが近づいてきた。
「名無しさん。来てくれてありがとうございます。さっきはすみません、彼にスマホを取られてしまいまして」
「いいんですよクリスさん。私もご迷惑じゃないかと心配したんですけど、皆さんに温かく迎えて頂いて嬉しかったですから」
彼の物腰柔らかい気遣いに感謝しながら、ふと兄のフロリアンについて尋ねたが、家庭のある彼は一足先に帰ったようだ。
「名無しさん達が来てくださったことを知ったら、うちの兄貴も後悔するでしょうねえ。また別の機会に会ってやってください」
そう言われ、こちらこそとお願いする。
するとクリスはこっそりあなたに教えてくれた。
「ヴィクトルは少し酔ってしまったみたいですが、寝室にいると思うので大丈夫ですよ。どうぞごゆっくり、こちらはお任せくださいね」
「えっ? あ、はいありがとうございますっ」
急にドキリとしたまま、その言葉に甘えたあなたは皆から離れ、別の廊下奥にある彼の寝室へ向かう。
なんだかヴィクトルがいなくて大丈夫だろうかと心配したが、やっぱりクリスマス会で接した時のように、皆優しくていい人達である。
この興奮も伝えたいし、早く彼の顔が見たい。
そうワクワクしながら扉を開けると、世にも珍しい姿を見つけた。
「あ⋯⋯あれ? ほんとに寝ちゃってる⋯⋯」
サイドランプが灯るいつもの白い大きなベッドに、彼は横向きに寝転がっていた。
普段の大人な凛々しい顔立ちでなく、少し赤らんだあどけない横顔で寝息を立てている。
「うっ、可愛いなぁヴィクトル⋯⋯おはよう〜朝だよ〜」
小声で嘘をついてみるが、まったく反応がなかった。
珍しい姿をまじまじと見つめたあと、あなたは微笑んで彼の額にそっとキスを落とした。
「ふふ。おやすみヴィクトル。休んでね」
休みに入ってからも家で仕事をする時があると言っていたから、疲れもあるのだろう。
そんな中でクリスマスを含め、自分との時間を作ってくれた彼のことが、なおさら愛おしく感じる。
肩まで薄いブランケットをかけて、あなたは静かに部屋を出ていった。
ーーー
彼が寝てるということは、これから1人で乗り切れるだろうか。
ちょっぴりまた緊張が宿ってきたが、リビングとその近くのオープンキッチンには、驚きの光景が広がっていた。
テレビ前の対面ソファでは、マックスとミロ、そしてセリアが騒がしく乾杯している。
若々しい彼らのノリは合うようだ。
そしてキッチンには、二人とも黒縁眼鏡のエリオとエリックが珈琲を入れて運ぶところだった。
「あっ、ケーキにですか? すみません私も手伝いますよ!」
「大丈夫だよ名無しさん、これで最後だから。――ところで彼はあの著名なレストランの次男なんだってね。道理で珈琲の淹れ方が卓越しているはずだ」
「そうなんですよ。エリックさんの淹れてくれた物すごく美味しいんです。ていうか飲み物全部!」
あなたが興奮して伝えるとエリックは照れて謙遜していた。
エリオも珈琲やワインに造詣が深いらしく、なんだか名前も近いしあなたは和んでくる。
「そういえばなんとなく雰囲気も似てますよね〜。お二人ともキリッとして眼鏡も素敵だし、洋服の色使いもばっちりだし」
褒めたつもりなのだが2人が一瞬目を丸くしたので我に返る。
「あっすみません馴れ馴れしくて、つい職業柄装いに触れてしまって⋯!」
「いや構わないよ、プロに褒められるのは悪い気しないな。うん、確かに君には親近感がわくかもしれない、エリック。アンドレイ、君はどう思う?」
彼の言葉に皆がキッチンカウンターの中を見やる。そこには物静かに、かなりの長身で体格に恵まれた坊主頭の男性がいたのだ。
「ああ。⋯⋯似ているな。きっと俺達と波長が合うはずだ。あちらのテーブルよりな」
寡黙な彼の鋭い指摘に、エリック含め皆はくすりと笑った。
あなたは珈琲を運ぶ彼らを見送り、アンドレイのもとに向かった。
彼の手元を見て、あっと驚いたのだ。
「わあ、それもしかして抹茶ですか? いい香り〜。アンドレイさん、抹茶淹れられるんですか」
「そうだ。アジアの茶全般を好んでいるが、最近は抹茶にはまっている」
やや抑揚のない台詞だったが、あなたは隣で彼を見上げてはしゃいだ。
「私も抹茶好きです、セリアちゃんも! 美味しいですよね〜苦みとコクが同時に合って。でも高価で中々手が届かないんですよね」
「⋯⋯会社の近くに入手しやすく質の良い店がある。2ブロック先だ」
「本当ですか? ありがとうございます! 後で調べてみようっと」
思わぬ情報を得てあなたは浮かれていた。
一度プレゼント交換をしたからだろうか、アンドレイの迫力に気圧されることもなく、なぜか話しやすかった。
そしてリビングではもう皆ケーキを食べていた。好む者がいれば、抹茶もきっと食後に合うだろう。
2人でカウンターから運んでいると、後ろから気配がした。背の高い黒髪の男が、ゆっくりと背中を掻きながら歩いてくる。
珍しく目つきが悪く、まだ寝ぼけた様子だ。
「⋯⋯今何時だ?」
低くかすれた声で問うが、先に気づいたのはあなただった。
声が一瞬止まってしまうほど、今この瞬間にヴィクトルに会えたことに感動していた。
「⋯⋯んっ?」
そして彼もこちらを振り返って、一瞬で覚醒したようだ。
あなたの隣で仲よく茶碗を持った巨体のアンドレイを交互に見やる。
「え。名無しちゃん? これ夢か」
「ううん! 夢じゃないよ、おはようヴィクトル〜!」
あなたは喜びにあふれた笑みで話し、急いでテーブルに飲み物を置いて戻ってきた。
「来たの!?」
「そうだよ。お邪魔しまーす。びっくりした? セリアちゃんとエリックさんもいるよ。クリスさんとマックスさんにお誘いされてね――」
嬉しくてたまらないあなたは、彼の前で身振り手振りで説明した。
ヴィクトルはまだ夢でも見てるかのように呆然としていたが、突然あなたのことを抱きしめる。
ふわっと彼の香りに包まれ、鼓動が飛び跳ねた。
「ちょっ、どうしたの!」
「ああ⋯⋯信じられない。さっき君が夢に出てきてね。目覚めて寂しくなったんだが、まさか現実の君がここにも⋯⋯」
まだ夢心地な彼の耳越しに、緩やかな黒髪の寝癖を見て微笑む。
「よかった〜、内緒で来ちゃったから大丈夫かなって思ったんだ。皆さんも歓迎してくれたよ」
「そりゃそうだよ。君は大人気なんだからね、名無しちゃん」
細めた瞳に見つめられ照れてしまうが、そんな2人に構わずアンドレイは配膳をしてくれていた。
「アンドレイ、彼女と抹茶を入れたのか」
「ああ。お前は寝ていたからな。抹茶の話が合ったぞ」
そうシンプルに報告されてヴィクトルは朗らかに笑った。
「本当かい? 君も抹茶好きなの? 知らなかったよ」
「はは。ヴィクトルが好きか分からなかったから。好みが分かれるんだよね。あ、アンドレイさんがいいお店も教えてくれたんだよ!」
「本当? それはよかった。じゃあ今度一緒に行こうか」
「うん!」
あなたは彼の周りで嬉しそうに答えたが、じっと音もなくアンドレイが立っているのに気づく。
「あっ⋯⋯今のすごい子供っぽかったですよね、恥ずかしい、あんまり見ないでください⋯」
「⋯⋯俺に言っているのか。別に何も思っていない。だが、君はヴィクトルの前だともっと無邪気だな。名無し」
「⋯⋯そ、そうですかっ?」
赤くなってしまうと、隣のヴィクトルは嬉しそうに声を出して笑っていた。
普段あまり感想を言わないアンドレイの言葉なのが、よけいに彼にとって真実味を帯びていたのだろう。
「おっ、ヴィクトル起きたのか! 早くこっち来いよ、つうかお前俺に感謝しろよ! お前が寂しい寂しい言うから名無しさん呼んでやったんだぞ!」
「⋯⋯おい。俺を幼児みたいに言うな。まあ確かにかなりびっくりはしたが、お前でも善行をすることがあるんだなマックス。ありがとう」
ヴィクトルは普段仲間の前ではしない美しい笑みを浮かべ、それを間近で見たあなたは笑いをこらえた。
「ほら言っただろクリス! 俺の勝ちな、今度酒おごれよ!」
「えぇ⋯⋯分かりましたよ。はぁ、僕はヴィクトルの愛を甘く見てましたね。この人結果良ければなんでもいいんじゃないか⋯?」
1人でぶつぶつ分析するクリスを尻目に、皆はすでに甘いものを楽しんでいる。
あなたとヴィクトルも、微笑みを見合わせて輪の中に加わったのだった。
ヴィクトルの家で会社の忘年会が行われる中、同僚のマックスから突然あなたも来ないかと誘われたのだ。
そうして今は高級マンションの玄関前で、鼓動を抑えるように立っている。
「ああ、緊張してきたよ⋯⋯皆もう中にいるんだよね。私の格好変じゃない?」
「ぜーんぜん! 可愛い名無し〜。早く入ろうよ〜へへへへ」
体をくねらせて腕にまきつく親友セリアを見やり、口元がひくつく。
心配の種は仲間内の会に飛び込むことだけでなく、この酔っ払いもだった。
「⋯⋯セリアちゃんっ、頼むから行儀よくね! エリックさんも彼女のことよろしくお願いね!」
「うん、わかったよ名無しさん。僕がきちんと掴んでるからね」
黒髪眼鏡の穏やかなセリアの彼は、自分達より4つ上の頼れる男性でもある。
まだ付き合いは浅いが、今日の三人のお食事会でもっと打ち解けることが出来ていた。
「よし、いくよっ。⋯⋯あっ、お邪魔しまーす」
「おっ!! 名無しさん達来たぞ、お前ら! そこちゃんと片付けろ!」
号令のように叫ばれ目を見張ると、廊下の奥からド派手なシャツの金髪マックスが現れた。
彼は優雅に手を広げ三人を歓迎する。
「やあやあ名無しさん、急に呼んですまないね。また会えて嬉しいよ」
「私もです、こんばんわ!」
笑顔で握手を交わした彼はセリアとエリックにも熱い歓迎をしてくれた。
ドキドキしながらリビングへ向かうと、立ち上がって迎える四人の男性達がいて、スーツ姿ではなく普段着にも関わらず、堂々としたオーラに圧倒される。
「皆さんお久しぶりです! 今日は途中からお誘いを頂きありがとうございます、お邪魔します!」
「いやいや名無しさん、ここもう君達2人の家だよね? 邪魔してるの俺らだから」
マックスがおどけて突っ込むと、皆も笑ってくれたので気が緩む。
あなたは一緒に来た二人のことも紹介した。
「どうもはじめまして〜。名無しの親友で劇団員のセリアでーっす! こっちは彼氏のエリック26才レストランマネージャーですぅ。皆様お手柔らかに〜あははは」
「どうも皆さん、はじめまして。よかったらこれ、うちの店の魚料理なんですが食べてください」
「おっすげえ、燻製のコースじゃん! 酒に合うぜ!」
エリックが実家の魚レストランから差し入れをしてくれて、皆は沸き立った。
そしてあなたも持ってきたデザートを渡す。
「これもセリアちゃんと作ったチョコレートケーキなんです。ちょっと食べちゃってるんですけど、よかったら皆さんでどうぞ」
3人分が欠けた大きなホールケーキに、皆は目の色を変えた。
一際食いついたのは初対面のミロである。
「うわぁ美味しそうだなぁ〜ありがとう名無しさん! 俺君のクッキーの大ファンなんだよ。ヴィクトルの食い尽くしてものすごい怒られちゃったけど。あ、ところで初めましてだよね。会えて嬉しいな」
にこりと笑って飛んできてくれて、目線が少し上ぐらいのフレンドリーな彼にあなたも笑みが出る。
「初めまして、私もすごく嬉しいです! クッキーも喜んでもらえて作った甲斐がありました」
2人は和やかに握手をし、なんだか人のよさそうな彼に親近感を覚えた。
それぞれエリオやアンドレイ、クリスとも挨拶し、あなたはキョロキョロと恋人の姿を探す。
一方リビングは騒がしく、テーブルに置かれたケーキを皆が取り囲んでいた。
「僕から提案です。ヴィクトルのを一番大きめに切ってあげましょう」
「そうだな。それが一番平和だと思うよ、クリス」
「ですよねエリオ」
「はぁ? あいつはいつでも食えんだろ! 皆平等にしようぜ」
「うわ〜マックス、最悪。作ってくれた女性達の前でそんなぞんざいな言い方すんなよ。お前ほんとはモテないだろ?」
「っせえなミロ、俺を疑うな。食い意地が張ってるだけだ」
「あっはっはっは! 皆面白〜い! ヴィクトルさんのお友達だからすんごい真面目で葉巻吸ってるイケオジ集団なのかと思ったら、結構普通の男子なんですねぇ〜」
すでにテーブル前に居座り、ビール瓶を拝借しているセリアにあなたはぎょっとする。
「ちょっセリアちゃん! 失礼でしょう!」
しかし何かがウケたのか、大人の男性達の笑い声がどっと巻き起こる。
「い、イケオジ? それ俺もはいってるの? 俺だけお兄さんだよね? ね? 名無しさんはどう思う?」
「えっ。あ、はい。そうですよもちろん、マックスさんはお兄さんですよ! ⋯⋯あ、いえ皆さんそうだと思いますよ!」
口走ったあなたが慌てふためくと、また皆は楽しそうに笑ってくれた。
懐の深い人達でよかった⋯そう思いつつ、セリアはエリックにたしなめられ面倒を見られている。
皆がああだこうだいいながらケーキを取り分けている中、クリスが近づいてきた。
「名無しさん。来てくれてありがとうございます。さっきはすみません、彼にスマホを取られてしまいまして」
「いいんですよクリスさん。私もご迷惑じゃないかと心配したんですけど、皆さんに温かく迎えて頂いて嬉しかったですから」
彼の物腰柔らかい気遣いに感謝しながら、ふと兄のフロリアンについて尋ねたが、家庭のある彼は一足先に帰ったようだ。
「名無しさん達が来てくださったことを知ったら、うちの兄貴も後悔するでしょうねえ。また別の機会に会ってやってください」
そう言われ、こちらこそとお願いする。
するとクリスはこっそりあなたに教えてくれた。
「ヴィクトルは少し酔ってしまったみたいですが、寝室にいると思うので大丈夫ですよ。どうぞごゆっくり、こちらはお任せくださいね」
「えっ? あ、はいありがとうございますっ」
急にドキリとしたまま、その言葉に甘えたあなたは皆から離れ、別の廊下奥にある彼の寝室へ向かう。
なんだかヴィクトルがいなくて大丈夫だろうかと心配したが、やっぱりクリスマス会で接した時のように、皆優しくていい人達である。
この興奮も伝えたいし、早く彼の顔が見たい。
そうワクワクしながら扉を開けると、世にも珍しい姿を見つけた。
「あ⋯⋯あれ? ほんとに寝ちゃってる⋯⋯」
サイドランプが灯るいつもの白い大きなベッドに、彼は横向きに寝転がっていた。
普段の大人な凛々しい顔立ちでなく、少し赤らんだあどけない横顔で寝息を立てている。
「うっ、可愛いなぁヴィクトル⋯⋯おはよう〜朝だよ〜」
小声で嘘をついてみるが、まったく反応がなかった。
珍しい姿をまじまじと見つめたあと、あなたは微笑んで彼の額にそっとキスを落とした。
「ふふ。おやすみヴィクトル。休んでね」
休みに入ってからも家で仕事をする時があると言っていたから、疲れもあるのだろう。
そんな中でクリスマスを含め、自分との時間を作ってくれた彼のことが、なおさら愛おしく感じる。
肩まで薄いブランケットをかけて、あなたは静かに部屋を出ていった。
ーーー
彼が寝てるということは、これから1人で乗り切れるだろうか。
ちょっぴりまた緊張が宿ってきたが、リビングとその近くのオープンキッチンには、驚きの光景が広がっていた。
テレビ前の対面ソファでは、マックスとミロ、そしてセリアが騒がしく乾杯している。
若々しい彼らのノリは合うようだ。
そしてキッチンには、二人とも黒縁眼鏡のエリオとエリックが珈琲を入れて運ぶところだった。
「あっ、ケーキにですか? すみません私も手伝いますよ!」
「大丈夫だよ名無しさん、これで最後だから。――ところで彼はあの著名なレストランの次男なんだってね。道理で珈琲の淹れ方が卓越しているはずだ」
「そうなんですよ。エリックさんの淹れてくれた物すごく美味しいんです。ていうか飲み物全部!」
あなたが興奮して伝えるとエリックは照れて謙遜していた。
エリオも珈琲やワインに造詣が深いらしく、なんだか名前も近いしあなたは和んでくる。
「そういえばなんとなく雰囲気も似てますよね〜。お二人ともキリッとして眼鏡も素敵だし、洋服の色使いもばっちりだし」
褒めたつもりなのだが2人が一瞬目を丸くしたので我に返る。
「あっすみません馴れ馴れしくて、つい職業柄装いに触れてしまって⋯!」
「いや構わないよ、プロに褒められるのは悪い気しないな。うん、確かに君には親近感がわくかもしれない、エリック。アンドレイ、君はどう思う?」
彼の言葉に皆がキッチンカウンターの中を見やる。そこには物静かに、かなりの長身で体格に恵まれた坊主頭の男性がいたのだ。
「ああ。⋯⋯似ているな。きっと俺達と波長が合うはずだ。あちらのテーブルよりな」
寡黙な彼の鋭い指摘に、エリック含め皆はくすりと笑った。
あなたは珈琲を運ぶ彼らを見送り、アンドレイのもとに向かった。
彼の手元を見て、あっと驚いたのだ。
「わあ、それもしかして抹茶ですか? いい香り〜。アンドレイさん、抹茶淹れられるんですか」
「そうだ。アジアの茶全般を好んでいるが、最近は抹茶にはまっている」
やや抑揚のない台詞だったが、あなたは隣で彼を見上げてはしゃいだ。
「私も抹茶好きです、セリアちゃんも! 美味しいですよね〜苦みとコクが同時に合って。でも高価で中々手が届かないんですよね」
「⋯⋯会社の近くに入手しやすく質の良い店がある。2ブロック先だ」
「本当ですか? ありがとうございます! 後で調べてみようっと」
思わぬ情報を得てあなたは浮かれていた。
一度プレゼント交換をしたからだろうか、アンドレイの迫力に気圧されることもなく、なぜか話しやすかった。
そしてリビングではもう皆ケーキを食べていた。好む者がいれば、抹茶もきっと食後に合うだろう。
2人でカウンターから運んでいると、後ろから気配がした。背の高い黒髪の男が、ゆっくりと背中を掻きながら歩いてくる。
珍しく目つきが悪く、まだ寝ぼけた様子だ。
「⋯⋯今何時だ?」
低くかすれた声で問うが、先に気づいたのはあなただった。
声が一瞬止まってしまうほど、今この瞬間にヴィクトルに会えたことに感動していた。
「⋯⋯んっ?」
そして彼もこちらを振り返って、一瞬で覚醒したようだ。
あなたの隣で仲よく茶碗を持った巨体のアンドレイを交互に見やる。
「え。名無しちゃん? これ夢か」
「ううん! 夢じゃないよ、おはようヴィクトル〜!」
あなたは喜びにあふれた笑みで話し、急いでテーブルに飲み物を置いて戻ってきた。
「来たの!?」
「そうだよ。お邪魔しまーす。びっくりした? セリアちゃんとエリックさんもいるよ。クリスさんとマックスさんにお誘いされてね――」
嬉しくてたまらないあなたは、彼の前で身振り手振りで説明した。
ヴィクトルはまだ夢でも見てるかのように呆然としていたが、突然あなたのことを抱きしめる。
ふわっと彼の香りに包まれ、鼓動が飛び跳ねた。
「ちょっ、どうしたの!」
「ああ⋯⋯信じられない。さっき君が夢に出てきてね。目覚めて寂しくなったんだが、まさか現実の君がここにも⋯⋯」
まだ夢心地な彼の耳越しに、緩やかな黒髪の寝癖を見て微笑む。
「よかった〜、内緒で来ちゃったから大丈夫かなって思ったんだ。皆さんも歓迎してくれたよ」
「そりゃそうだよ。君は大人気なんだからね、名無しちゃん」
細めた瞳に見つめられ照れてしまうが、そんな2人に構わずアンドレイは配膳をしてくれていた。
「アンドレイ、彼女と抹茶を入れたのか」
「ああ。お前は寝ていたからな。抹茶の話が合ったぞ」
そうシンプルに報告されてヴィクトルは朗らかに笑った。
「本当かい? 君も抹茶好きなの? 知らなかったよ」
「はは。ヴィクトルが好きか分からなかったから。好みが分かれるんだよね。あ、アンドレイさんがいいお店も教えてくれたんだよ!」
「本当? それはよかった。じゃあ今度一緒に行こうか」
「うん!」
あなたは彼の周りで嬉しそうに答えたが、じっと音もなくアンドレイが立っているのに気づく。
「あっ⋯⋯今のすごい子供っぽかったですよね、恥ずかしい、あんまり見ないでください⋯」
「⋯⋯俺に言っているのか。別に何も思っていない。だが、君はヴィクトルの前だともっと無邪気だな。名無し」
「⋯⋯そ、そうですかっ?」
赤くなってしまうと、隣のヴィクトルは嬉しそうに声を出して笑っていた。
普段あまり感想を言わないアンドレイの言葉なのが、よけいに彼にとって真実味を帯びていたのだろう。
「おっ、ヴィクトル起きたのか! 早くこっち来いよ、つうかお前俺に感謝しろよ! お前が寂しい寂しい言うから名無しさん呼んでやったんだぞ!」
「⋯⋯おい。俺を幼児みたいに言うな。まあ確かにかなりびっくりはしたが、お前でも善行をすることがあるんだなマックス。ありがとう」
ヴィクトルは普段仲間の前ではしない美しい笑みを浮かべ、それを間近で見たあなたは笑いをこらえた。
「ほら言っただろクリス! 俺の勝ちな、今度酒おごれよ!」
「えぇ⋯⋯分かりましたよ。はぁ、僕はヴィクトルの愛を甘く見てましたね。この人結果良ければなんでもいいんじゃないか⋯?」
1人でぶつぶつ分析するクリスを尻目に、皆はすでに甘いものを楽しんでいる。
あなたとヴィクトルも、微笑みを見合わせて輪の中に加わったのだった。
