美オヤジを誘って囲われて救われる話
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自室から出て、暗がりの階段をひたひたと降りていく。緊張感がありながら決意に動かされていた。
すると父と母の話し声がキッチンから聞こえてきた。
「――だから俺が言ってるのは、年齢だけの話じゃないんだよ。あいつはな、自分の気持ちを主張できるタイプじゃないだろう? そこが心配なんだ。相手が経験豊富な年上男ならなおさらだよ、いつか言いなりになって傷つくことになったらどうするんだ」
「まあさ、その心配はわかるわよ。でもね――」
あなたは二人の会話に目を剥く。
さっきまで怒り心頭だった父の参ったような声音に、はっと気付かされた瞬間だった。
「あの子変わったと思うよ。さっきも少し教えたじゃない、自分の意見はっきり伝えられてたって。私も驚いたけど、この目で見たもん。今の彼が支えになってくれてるのよ絶対。それにさ、昨日から思ったんだけど前よりよく笑うようになったよ。親としては嬉しいよ、今幸せそうな雰囲気すごい出ててさ」
それは勘とかじゃなく実感としてあるものだと、母が力説してくれていた。
あなたは両親からそれぞれ子を切に思う気持ちを感じ取り、じんわり心に噛みしめる。
その瞬間、勝手に体が階段を降りてキッチンへと向かっていた。
「大丈夫だよ! 二人とも、そんなふうに考えてくれてたの? ありがとう、心配かけてごめんねっ」
「――あぁ゛ッ! なんだお前、聞いてたのかっ!?」
「あ。ごめん驚かせて。今来たとこだよ」
キッチンのテーブルスペースで酒を飲んでいた父は、仰天して上体をのけぞらせた。
母も目を丸くしたが、すぐに包み込むような笑顔に変わる。
「来たんだね。じゃあ私お風呂に入ってこよ〜っと。二人でゆっくり話しなね」
父の両肩に手をのせて優しくほぐし、あなたにも微笑みかけて母は軽やかにその場から去っていった。
親子が残され、父は気まずそうに後頭部をかいていたが、あなたはそそくさと斜め隣の椅子に腰を下ろす。
もう気詰まりはなくなり、背を前に傾けて真剣に父に話をした。
「お父さんの気持ちわかった。ありがとうね。でも私、お母さんの言ってくれた通りでね。前よりも言いたいこと、我慢せずに言えるようになってきたんだ」
「⋯⋯そうか。それは俺もさっき少しは感じたよ」
父はまだ視線を落としていたが、態度は明らかに軟化している。
「そいつの影響ってことか? そのヴィクトルってやつは、どんな奴なんだ。裏表はなさそうなのか」
「ううん、ないよ。彼は仕事がすごくできて、会社でも重要な役割を担ってる人だけど、一緒にいるとき一番心が安らげるって言ってくれる。私もそうなんだ、彼といるときは一番安心できて、お互いに弱いところも見せあえる関係なんだよ。でもそれは、最近とくにそう感じるようになってきて、一緒にいる中で育んできたような気もする」
端から見たら短い期間だろうけど、彼と過ごした時間はたくさんあり、ひとつひとつがあなたの中に大切に刻まれている。
そのことを少しでも、大事な家族である両親に伝えられたらと思った。
話を聞いていた父の顔つきは、だんだんと寂しそうな、でも納得せざるを得ないような落ち着きに変わっていった。
「安心か⋯⋯。お前にとっては、それが一番重要だな。親である俺達にとってもそうだ。⋯⋯対等なのはいいことだ。けどな、お前のことを一番に考えてくれるか? 守ってくれるのか。古い考えかもしれんが、大事なことだぞ」
「うんっ。わかってるよ、お父さんの心配は。ヴィクトルはすごく私のこと考えて、守りたいって言ってくれてるよ。でも私も同じだし、彼のことそばで支えたいんだ。若いし力不足かもしれないけど」
「そんなわけあるか。名無し、お前がいてくれたら百人力だよ。卑下するな」
まるで自分はそうだったと言いたげな父が胸を張って両腕をぐっと組んだため、あなたはふっと気の抜けた笑みになる。
「⋯⋯仕方ないな。会うことにしよう、そのヴィクトルとかいういい年した男にな」
「ほんとっ? ありがとうお父さん! でもそういうチクチクするのやめてね、優しい態度にしてね」
「最初から注文が多いな⋯⋯わかったよ。努力するよ」
「ほんとう? まあいいけどさ」
あなたはようやくほっと胸の中のつかえが取れてきて、明るく父と話すことが出来た。
でも父は最後にこんなことも付け加えてきた。
「まああれだ。お前にほんとにふさわしいのか、俺が見極めてやるからな。安心していいぞ名無し。それから結婚するかどうか決めればいいんだから」
「いやすることはもう決まってるんだってば。見極めるとかさ、セリアちゃんみたいなこと言わないでよお父さん」
あなたがつっこむと、父は「あの子面白いよな。もう会ったのか? なんて言ってた?」と普通の調子で笑いかけてきたので、そこもこっそり安心した。
そしてちゃんと親友も認めてくれて、応援してくれていると教えておいた。
こうして父との問題は嵐のようにやって来て、ひとまず目の前からは去ってくれた。
ヴィクトルを実際に紹介するときも緊張するだろうが、むしろ会ってからのほうが両親は安心するだろうと、あなたは前向きに想像していた。
ーーー
家の中はほとんど普段の空気に戻り、一安心だ。あなたは家族と喋ったあと、自室へ戻ってきた。
壁を背にしてベッドに座り、スマホを触る。今は夜9時でヴィクトルは何してるのか気になった。
二人とも朝夜に1日2往復ぐらいのやり取りをするが、ちょうどヴィクトルから返信が入っていた。
『名無しちゃん、昼食楽しめたかな? たくさん食べてご両親とゆっくり過ごしてね。俺はもう家に帰ってきちゃったよ。これから映画でも見て寝るか。早く君に会いたいな。おやすみ☺️愛してるよ』
彼の素直なメールにあなたの顔はにやける。でも同時にとても驚いた。
「ヴィクトル、もう帰ってきたんだ。電話してみようかな?」
あなたはドキドキしながら、きちんと返信をしたあとに「時間あったら電話してもいい?」と尋ねてみた。
するとほとんど待たないうちにスマホが鳴る。彼からの着信だ。
「⋯⋯あっ、ヴィクトル? 今大丈夫? ありがとうかけてくれて」
『大丈夫だよ、どうしたの? 何かあった?』
彼の真剣味のある声音にあなたは慌てて否定する。完全に違うとは言えなかったけれど。
「平気平気。もう大丈夫だから」
『⋯⋯もうっ!? って何? 教えて名無しちゃん、大丈夫だよ俺覚悟してるから』
切羽詰まったヴィクトルはきっと、最悪の想像をしたのかもしれない。今日初めて父に直接二人の交際について話すと彼にも言っていたからだ。
『お父さん、怒ってた? やっぱり、反対していたかな』
「いやっ、違う違う。その、最初心配すごくされてて、ちょっと一悶着あったんだけど、もう大丈夫。ちゃんと話せたから。詳しくは会った時に伝えたいな。いい?」
『うん! もちろん。そうか⋯⋯ごめんね、名無しちゃん。一人で大変だったよな⋯⋯本当は俺がきちんと説明しないといけないのに、挨拶が遅れてて――』
「そんなことないよ、皆忙しくてタイミングを図ってただけだし、問題ないよヴィクトル。不安にさせちゃってごめんね、でも全然大丈夫だから。明後日全部話すよ。ねっ?」
あなたの深刻ではない伝え方に、彼も幾分か落ち着いたのかもしれない。しっかりと分かったと言ってくれた。
問題といえば親の話だけでなく元カレのこともあったのだが、それも会った時に話そう。
今日起きた重い事柄は、以前の自分ならウジウジして一人で抱え込んでいたかもしれない。でも今はヴィクトルがいてくれて安堵感が芽生えていた。
彼なら自分の色んな思いも受け止めて、一緒に向き合ってくれるという信頼も生まれていたのだ。
「あの、そういえばヴィクトルのご両親は大丈夫だった? 二人とも別々にクリスマスお祝いすることになったのかな?」
『いやそれがね、俺も驚いたんだけどさ。お袋が家にいたんだよ。親父が明らかに嬉しそうでやけに俺に優しくしてくるから、なんか気持ち悪くてね。それで早く帰ってきたんだ』
「ええっ?」
一見面白い話なのだが、彼が言うには自分達の交際の話題がきっかけで、父と母は以前よりも話をすることが増えたそうだ。
長らく1人だった独身息子の変化に、普段表に出さなかった心配や喜びなどの親心が顔を出しているのだろう。
「そっかぁ。私も詳しくは知らないけど、話すことが増えたなら嬉しいなぁ。ヴィクトルのお父さんはお母さんに戻ってきてほしいんだもんね」
『だと思うよ、素直じゃないけどね。会うたびにグタグタ言ってたからこれでうまくまとまるといいんだけどな』
そうため息まじりの彼にあなたも深く共感して頷く。皆少しずつ良い方向に変わってきているサインは、実際に喜ばしいことだ。
『ああ、早く君に会いたいな。不思議だね、昨日の朝まで一緒にいたのにすごく遠くのことに思える』
「そうだねぇ。私も変な感じするよ、ヴィクトルがいるのが当たり前だったからかな。実家にいると余計に寂しく感じるんだよね」
二人で話していて、ふと思った。もう彼は家族と同じぐらい、もしくは自分の中でそれ以上に大きな存在になっているのだと。
親への愛情とはまた違う、特別な親愛と深い愛慕が、体に備わっている感覚だ。
「ヴィクトル、愛してる!」
『うぉっ。急にどうした名無しちゃん。嬉しいよ、俺も愛してる。大好きだからね』
彼の照れた声から優しい表情が浮かんできて、自然と頬が緩む。
その夜は少し長めにお喋りをした。そして明後日会うの楽しみだねと再び言葉を交わして、ちょっぴり寂しさを感じながら、おやすみを伝え合った。
「あー⋯⋯早く顔が見たいなぁ」
電話を終えたあと、あなたはまたベッドに寝転がる。
今日の目まぐるしい感情の最後に、彼を想って目を閉じた。
このまま眠りにつきたいほど、胸のうちは和らぎ、安らぎに満ちていく夜だった。
すると父と母の話し声がキッチンから聞こえてきた。
「――だから俺が言ってるのは、年齢だけの話じゃないんだよ。あいつはな、自分の気持ちを主張できるタイプじゃないだろう? そこが心配なんだ。相手が経験豊富な年上男ならなおさらだよ、いつか言いなりになって傷つくことになったらどうするんだ」
「まあさ、その心配はわかるわよ。でもね――」
あなたは二人の会話に目を剥く。
さっきまで怒り心頭だった父の参ったような声音に、はっと気付かされた瞬間だった。
「あの子変わったと思うよ。さっきも少し教えたじゃない、自分の意見はっきり伝えられてたって。私も驚いたけど、この目で見たもん。今の彼が支えになってくれてるのよ絶対。それにさ、昨日から思ったんだけど前よりよく笑うようになったよ。親としては嬉しいよ、今幸せそうな雰囲気すごい出ててさ」
それは勘とかじゃなく実感としてあるものだと、母が力説してくれていた。
あなたは両親からそれぞれ子を切に思う気持ちを感じ取り、じんわり心に噛みしめる。
その瞬間、勝手に体が階段を降りてキッチンへと向かっていた。
「大丈夫だよ! 二人とも、そんなふうに考えてくれてたの? ありがとう、心配かけてごめんねっ」
「――あぁ゛ッ! なんだお前、聞いてたのかっ!?」
「あ。ごめん驚かせて。今来たとこだよ」
キッチンのテーブルスペースで酒を飲んでいた父は、仰天して上体をのけぞらせた。
母も目を丸くしたが、すぐに包み込むような笑顔に変わる。
「来たんだね。じゃあ私お風呂に入ってこよ〜っと。二人でゆっくり話しなね」
父の両肩に手をのせて優しくほぐし、あなたにも微笑みかけて母は軽やかにその場から去っていった。
親子が残され、父は気まずそうに後頭部をかいていたが、あなたはそそくさと斜め隣の椅子に腰を下ろす。
もう気詰まりはなくなり、背を前に傾けて真剣に父に話をした。
「お父さんの気持ちわかった。ありがとうね。でも私、お母さんの言ってくれた通りでね。前よりも言いたいこと、我慢せずに言えるようになってきたんだ」
「⋯⋯そうか。それは俺もさっき少しは感じたよ」
父はまだ視線を落としていたが、態度は明らかに軟化している。
「そいつの影響ってことか? そのヴィクトルってやつは、どんな奴なんだ。裏表はなさそうなのか」
「ううん、ないよ。彼は仕事がすごくできて、会社でも重要な役割を担ってる人だけど、一緒にいるとき一番心が安らげるって言ってくれる。私もそうなんだ、彼といるときは一番安心できて、お互いに弱いところも見せあえる関係なんだよ。でもそれは、最近とくにそう感じるようになってきて、一緒にいる中で育んできたような気もする」
端から見たら短い期間だろうけど、彼と過ごした時間はたくさんあり、ひとつひとつがあなたの中に大切に刻まれている。
そのことを少しでも、大事な家族である両親に伝えられたらと思った。
話を聞いていた父の顔つきは、だんだんと寂しそうな、でも納得せざるを得ないような落ち着きに変わっていった。
「安心か⋯⋯。お前にとっては、それが一番重要だな。親である俺達にとってもそうだ。⋯⋯対等なのはいいことだ。けどな、お前のことを一番に考えてくれるか? 守ってくれるのか。古い考えかもしれんが、大事なことだぞ」
「うんっ。わかってるよ、お父さんの心配は。ヴィクトルはすごく私のこと考えて、守りたいって言ってくれてるよ。でも私も同じだし、彼のことそばで支えたいんだ。若いし力不足かもしれないけど」
「そんなわけあるか。名無し、お前がいてくれたら百人力だよ。卑下するな」
まるで自分はそうだったと言いたげな父が胸を張って両腕をぐっと組んだため、あなたはふっと気の抜けた笑みになる。
「⋯⋯仕方ないな。会うことにしよう、そのヴィクトルとかいういい年した男にな」
「ほんとっ? ありがとうお父さん! でもそういうチクチクするのやめてね、優しい態度にしてね」
「最初から注文が多いな⋯⋯わかったよ。努力するよ」
「ほんとう? まあいいけどさ」
あなたはようやくほっと胸の中のつかえが取れてきて、明るく父と話すことが出来た。
でも父は最後にこんなことも付け加えてきた。
「まああれだ。お前にほんとにふさわしいのか、俺が見極めてやるからな。安心していいぞ名無し。それから結婚するかどうか決めればいいんだから」
「いやすることはもう決まってるんだってば。見極めるとかさ、セリアちゃんみたいなこと言わないでよお父さん」
あなたがつっこむと、父は「あの子面白いよな。もう会ったのか? なんて言ってた?」と普通の調子で笑いかけてきたので、そこもこっそり安心した。
そしてちゃんと親友も認めてくれて、応援してくれていると教えておいた。
こうして父との問題は嵐のようにやって来て、ひとまず目の前からは去ってくれた。
ヴィクトルを実際に紹介するときも緊張するだろうが、むしろ会ってからのほうが両親は安心するだろうと、あなたは前向きに想像していた。
ーーー
家の中はほとんど普段の空気に戻り、一安心だ。あなたは家族と喋ったあと、自室へ戻ってきた。
壁を背にしてベッドに座り、スマホを触る。今は夜9時でヴィクトルは何してるのか気になった。
二人とも朝夜に1日2往復ぐらいのやり取りをするが、ちょうどヴィクトルから返信が入っていた。
『名無しちゃん、昼食楽しめたかな? たくさん食べてご両親とゆっくり過ごしてね。俺はもう家に帰ってきちゃったよ。これから映画でも見て寝るか。早く君に会いたいな。おやすみ☺️愛してるよ』
彼の素直なメールにあなたの顔はにやける。でも同時にとても驚いた。
「ヴィクトル、もう帰ってきたんだ。電話してみようかな?」
あなたはドキドキしながら、きちんと返信をしたあとに「時間あったら電話してもいい?」と尋ねてみた。
するとほとんど待たないうちにスマホが鳴る。彼からの着信だ。
「⋯⋯あっ、ヴィクトル? 今大丈夫? ありがとうかけてくれて」
『大丈夫だよ、どうしたの? 何かあった?』
彼の真剣味のある声音にあなたは慌てて否定する。完全に違うとは言えなかったけれど。
「平気平気。もう大丈夫だから」
『⋯⋯もうっ!? って何? 教えて名無しちゃん、大丈夫だよ俺覚悟してるから』
切羽詰まったヴィクトルはきっと、最悪の想像をしたのかもしれない。今日初めて父に直接二人の交際について話すと彼にも言っていたからだ。
『お父さん、怒ってた? やっぱり、反対していたかな』
「いやっ、違う違う。その、最初心配すごくされてて、ちょっと一悶着あったんだけど、もう大丈夫。ちゃんと話せたから。詳しくは会った時に伝えたいな。いい?」
『うん! もちろん。そうか⋯⋯ごめんね、名無しちゃん。一人で大変だったよな⋯⋯本当は俺がきちんと説明しないといけないのに、挨拶が遅れてて――』
「そんなことないよ、皆忙しくてタイミングを図ってただけだし、問題ないよヴィクトル。不安にさせちゃってごめんね、でも全然大丈夫だから。明後日全部話すよ。ねっ?」
あなたの深刻ではない伝え方に、彼も幾分か落ち着いたのかもしれない。しっかりと分かったと言ってくれた。
問題といえば親の話だけでなく元カレのこともあったのだが、それも会った時に話そう。
今日起きた重い事柄は、以前の自分ならウジウジして一人で抱え込んでいたかもしれない。でも今はヴィクトルがいてくれて安堵感が芽生えていた。
彼なら自分の色んな思いも受け止めて、一緒に向き合ってくれるという信頼も生まれていたのだ。
「あの、そういえばヴィクトルのご両親は大丈夫だった? 二人とも別々にクリスマスお祝いすることになったのかな?」
『いやそれがね、俺も驚いたんだけどさ。お袋が家にいたんだよ。親父が明らかに嬉しそうでやけに俺に優しくしてくるから、なんか気持ち悪くてね。それで早く帰ってきたんだ』
「ええっ?」
一見面白い話なのだが、彼が言うには自分達の交際の話題がきっかけで、父と母は以前よりも話をすることが増えたそうだ。
長らく1人だった独身息子の変化に、普段表に出さなかった心配や喜びなどの親心が顔を出しているのだろう。
「そっかぁ。私も詳しくは知らないけど、話すことが増えたなら嬉しいなぁ。ヴィクトルのお父さんはお母さんに戻ってきてほしいんだもんね」
『だと思うよ、素直じゃないけどね。会うたびにグタグタ言ってたからこれでうまくまとまるといいんだけどな』
そうため息まじりの彼にあなたも深く共感して頷く。皆少しずつ良い方向に変わってきているサインは、実際に喜ばしいことだ。
『ああ、早く君に会いたいな。不思議だね、昨日の朝まで一緒にいたのにすごく遠くのことに思える』
「そうだねぇ。私も変な感じするよ、ヴィクトルがいるのが当たり前だったからかな。実家にいると余計に寂しく感じるんだよね」
二人で話していて、ふと思った。もう彼は家族と同じぐらい、もしくは自分の中でそれ以上に大きな存在になっているのだと。
親への愛情とはまた違う、特別な親愛と深い愛慕が、体に備わっている感覚だ。
「ヴィクトル、愛してる!」
『うぉっ。急にどうした名無しちゃん。嬉しいよ、俺も愛してる。大好きだからね』
彼の照れた声から優しい表情が浮かんできて、自然と頬が緩む。
その夜は少し長めにお喋りをした。そして明後日会うの楽しみだねと再び言葉を交わして、ちょっぴり寂しさを感じながら、おやすみを伝え合った。
「あー⋯⋯早く顔が見たいなぁ」
電話を終えたあと、あなたはまたベッドに寝転がる。
今日の目まぐるしい感情の最後に、彼を想って目を閉じた。
このまま眠りにつきたいほど、胸のうちは和らぎ、安らぎに満ちていく夜だった。
