美オヤジを誘って囲われて救われる話
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――自分には何でも話してほしい。
それはヴィクトルにとって、これまでより踏み込んだ発言だった。
あなたのプレッシャーになってしまわないか。行動を強制し、思いを押しつけてしまってないか。
悩みながらも、言わざるを得なかった。それだけ今回の出来事は、責任感の強いヴィクトルの根幹を揺るがす問題だったのだ。
「ヴィクトル。年が明けて、来月末の欧州出張なんですが。各国の企業との会合スケジュールの都合がつきました。やっぱり2週間ほどの予定を組むことになりそうです」
「ああ。そうか⋯⋯」
オフィスに報告に来た小綺麗なスーツの金髪の青年、クリスは上司の顔色をちらりと伺った。
いつもと変わらず仕事では妥協しない冷静沈着なビジネスマンではあるが、浮かない顔をしている。
「どうしたんです? まさか⋯⋯あなたともあろう仕事人間が、彼女に会えなくて寂しい⋯なんてこと言いませんよね? 若い部下の前で」
「言わないよ」
ヴィクトルは呆れ気味にぼやき、渡された書類を隅々まで確認する。
いつもなら「君は詮索好きな暇人だねえ」とか余裕ぶった笑みを見せる彼だが、それがない。
そんな姿を見て色々察したクリスは、早々に退散することにした。
一言だけ付け加えて。
「あ、そうだ。ヴィクトル。年末の忘年会のことは忘れないでくださいよ。あなたの家でやるんですからね」
「え? またか? 毎年うちじゃないか⋯⋯たまには君の家でやれよ」
「僕はおまけで参加させてもらってるんですよ。それに皆さんの豪邸に比べたら恥ずかしくて恥ずかしくて」
ヴィクトルは思ってもないことを、とじろっとした瞳を向けたが、社長の弟クリスは茶目っ気を見せて笑い部屋を後にした。
「忘年会か⋯⋯。そんなことより、出張がやっぱり長引いたな。⋯⋯ああ、くそ⋯⋯」
どさりと椅子の背もたれに体を預け、彼はため息を吐く。
仕事に私情は持ち込まない。彼の信念だったはずが、ここ最近は色んなことが起こり心が落ち着かなかった。
ヴィクトルはひとまず頭を切り替えて、今は仕事納めに集中し、じきに来るクリスマスにあなたと会うことを思い描いた。
翌週になると、厳かなクリスマスイブを迎えた。
南欧なので雪は降らないが、寒さの中ヴィクトルはあなたと二人外に出かけていた。
都市部の伝統的なクリスマスマーケットを訪れていたのだ。
明るい子供たちの声が響き、人々の幸せそうな笑顔があふれかえっている。
雪やモミの枝が装飾された小屋の出店が連なり、まるで中世を思わす迷路のようだ。
ヴィクトルは綿飴をほおばるあなたのことを、隣で微笑ましそうに見つめていた。
「ん? ヴィクトルも食べる? はい」
「う、むっ。美味しいけど、やたら突っ込んできたね。甘いなこれ」
「美味しいよね〜。小さい時を思い出すなぁ」
あどけない表情で喜ぶあなたを見ているだけで、ヴィクトルの心は癒されていた。
聖夜はとても大事な日で、こうして一緒に過ごせることに感謝する。
二人とも、実家に帰るのは明日の25日から26日だ。
しかしまた年末年始に会う約束をしているし、楽しみにしていた。
「ねえねえあそこに座ろう。私、ホットワイン買ってくるね。記念の年数入りで持ち帰れるんだよ」
「うん、それは嬉しいけど、待って。俺も行くよ」
今日はいつもよりはしゃいでいるあなたに、彼は慌ててついていく。
「買うのは私だよ」と言いながら店の前で楽しそうにメニューを選ぶ恋人の姿を、彼は後ろで穏やかに待っていた。
「はい。熱いから気をつけてね。⋯って、あっ。手袋してるから大丈夫か、はは」
「そうだね。君からもらった手袋とマフラー、すごく暖かくて気持ちいいよ」
「よかったぁ。私もヴィクトルからもらったこのイヤーマフラー、もこもこですっごく可愛くて気に入ったよ。ありがとうね」
照れたようにはにかむあなたのことを、思わず抱きしめたくなる。
しかし今回も手が塞がっていたため、諦めて自分も礼を言った。
石畳の休憩スペースへ戻ってきて、二人で飲み物を抱えながら温まる。
遠くにはライトアップされた大聖堂と、移動式遊園地があり、まさに冬ならではの景観だ。
中でも広場の中央にそびえ立つ天然のクリスマスツリーは眩く彩られ、驚くほどに美しく見えた。
きっと隣で目を輝かせて感動しているあなたがいるからだろう。
「⋯⋯⋯⋯」
「ねえ。今日もあんまり元気無くない? ヴィクトル」
「⋯⋯えっ? そんなことないよ。元気だよ俺は」
「本当に?」
あなたのくりっとした瞳が可愛らしく近づいてきて、ヴィクトルは苦笑した。
「参ったね。君には隠せないな。⋯⋯名無しちゃん。実はね、来月の出張、2週間に延びちゃったんだ」
「えっ、ほんとう? そんなに長いの? 大変だねヴィクトル」
思ったよりも普通に反応されて、ヴィクトルは黒い瞳を瞬かせる。
「え⋯⋯なんかあっさりしてないかい? 俺はものすごく寂しいんだけどね、今から」
「⋯⋯あっ! もちろん私も寂しいよ。でも仕事だし、寂しい〜やだ〜とか言えないでしょう? そんなのわがまま女だよ」
そんなことはない。すごく可愛らしい。
あなたがもしそうやって抱きついてきたら、きっと彼は有頂天になるだろう。
「⋯⋯いやいや。俺は、どうかしている。ああ⋯⋯君のことが好きすぎて、最近調子が⋯⋯」
「ちょっと、大丈夫? もう心配ないよ。ヴィクトルになんでも言うし、私のことも心配いらないよ。ね?」
だから思い悩まないで、と手をぎゅっと握られて、ヴィクトルは一瞬だけ手袋を外して握り返した。
「君の手冷たいよ、名無しちゃん。なんで早く言わないの」
「ふふ。照れてる? ヴィクトル」
年が大きく離れた若いあなたにそう微笑まれて、彼は気恥ずかしそうに緩やかな黒髪を掻いた。
あなたといると、余裕がどんどん失われていく。
しかしそれは悪いことだけではなく、そんな自分も彼は最近受け入れられていた。
なぜなら途方もない幸福を一緒に感じられているからだ。
「君の都合が合えば、時間があるとき顔が見たいな」
さりげなく横目で見つめ、口元を上げて伝えてみると、あなたはさっと頬を赤くした。
瞳をさまよわせたのち、小さく頷く。
「うん、私もそうしたいよ。忙しくないとき、通話しようね。楽しみ」
「うん。ありがとうね。名無しちゃん」
彼はほっとした笑みを浮かべて、少し身を寄せてあなたの頬に軽くキスをした。
にこりと笑いかけると、あなたはまた照れが募った柔らかい笑顔になる。
付き合ってしばらく経つが、いつも自分にドキドキしてくれる愛らしいあなたのことが、ヴィクトルは本当に好きだった。触れるたびに大切にしなければいけないと、より強く思っていた。
「――わあ、寒くなってきたね。電車の時間もあるし、そろそろ帰ろうか」
「うん。もう欲しいものない? お菓子とか、スナックとか」
「へへ。だよねえ。どうしよう、帰りにローストアーモンド買っていこうかな。家でつまもうよ」
明日はゆっくり実家に帰るし。
そう楽しそうに話すあなたの手を、ヴィクトルはしっかり繋いで歩き出す。
だが、そんな時に予想外のことが起きた。
人混みで背の高い男性が多い中でも、ヴィクトルの視界はあなたより高く遠くを見渡せる。
彼は、道の向こうから歩いてくる数人の若者たちが目にとまった。
その中の金髪の男に瞬時に眉をひそめ、言葉が途切れる。
あなたの元彼である、マティアスがいたのだ。
友人らしき男性らと話しながら、手に酒を持って歩いている。
今日という日に最も有名なマーケットで出くわすことは、あり得ないことではない。
しかし軟派な風貌をした相手のふてぶてしい顔を見た途端に、あの日のことが蘇り、怒りが再燃しそうになった。
「ヴィクトル?」
「――ああ、うん。名無しちゃん、こっちの道に入ろう。まだ歩いてなかったよね」
「そうだね、ここまだ見てないや。あっすごい、綺麗なロウソク屋さんもあるよ」
あなたは装飾品に視線を移して彼と通りへ入っていく。
ヴィクトルはまださっきの道を見つめながら警戒していた。
自然と顔が険しくなる。
これは彼にとっては、当然の対処だ。きっと相手を見つけたら動揺するだろうし、あなたをあれほど傷つけた男にはもう会わせたくなかった。
「一袋ください、甘いやつで。――他にもいる?」
「ううん、ありがとう。美味しそう〜」
両手で嬉しそうに受け取る姿を見てほっとする。
しばらく店先のミニテーブルに留まり、帰るまでのちょっとした時間を二人で味見をしながら和やかに過ごした。
「やっぱり帰るの寂しくなってきた。幻想的で綺麗だよね、クリスマスマーケット。⋯⋯またヴィクトルと来たいな。来年も来る?」
「もちろん。来年も再来年も。毎年一緒に来ようね」
「⋯⋯うん!」
とびきり喜びにあふれた表情が、全身に触れてくる。
この笑顔を、失いたくない。
いつまでも自分のものにしてしまいたくなる。
たった短い間でも、離れ離れになることが今からヴィクトルの心をざわめかせていた。
それはヴィクトルにとって、これまでより踏み込んだ発言だった。
あなたのプレッシャーになってしまわないか。行動を強制し、思いを押しつけてしまってないか。
悩みながらも、言わざるを得なかった。それだけ今回の出来事は、責任感の強いヴィクトルの根幹を揺るがす問題だったのだ。
「ヴィクトル。年が明けて、来月末の欧州出張なんですが。各国の企業との会合スケジュールの都合がつきました。やっぱり2週間ほどの予定を組むことになりそうです」
「ああ。そうか⋯⋯」
オフィスに報告に来た小綺麗なスーツの金髪の青年、クリスは上司の顔色をちらりと伺った。
いつもと変わらず仕事では妥協しない冷静沈着なビジネスマンではあるが、浮かない顔をしている。
「どうしたんです? まさか⋯⋯あなたともあろう仕事人間が、彼女に会えなくて寂しい⋯なんてこと言いませんよね? 若い部下の前で」
「言わないよ」
ヴィクトルは呆れ気味にぼやき、渡された書類を隅々まで確認する。
いつもなら「君は詮索好きな暇人だねえ」とか余裕ぶった笑みを見せる彼だが、それがない。
そんな姿を見て色々察したクリスは、早々に退散することにした。
一言だけ付け加えて。
「あ、そうだ。ヴィクトル。年末の忘年会のことは忘れないでくださいよ。あなたの家でやるんですからね」
「え? またか? 毎年うちじゃないか⋯⋯たまには君の家でやれよ」
「僕はおまけで参加させてもらってるんですよ。それに皆さんの豪邸に比べたら恥ずかしくて恥ずかしくて」
ヴィクトルは思ってもないことを、とじろっとした瞳を向けたが、社長の弟クリスは茶目っ気を見せて笑い部屋を後にした。
「忘年会か⋯⋯。そんなことより、出張がやっぱり長引いたな。⋯⋯ああ、くそ⋯⋯」
どさりと椅子の背もたれに体を預け、彼はため息を吐く。
仕事に私情は持ち込まない。彼の信念だったはずが、ここ最近は色んなことが起こり心が落ち着かなかった。
ヴィクトルはひとまず頭を切り替えて、今は仕事納めに集中し、じきに来るクリスマスにあなたと会うことを思い描いた。
翌週になると、厳かなクリスマスイブを迎えた。
南欧なので雪は降らないが、寒さの中ヴィクトルはあなたと二人外に出かけていた。
都市部の伝統的なクリスマスマーケットを訪れていたのだ。
明るい子供たちの声が響き、人々の幸せそうな笑顔があふれかえっている。
雪やモミの枝が装飾された小屋の出店が連なり、まるで中世を思わす迷路のようだ。
ヴィクトルは綿飴をほおばるあなたのことを、隣で微笑ましそうに見つめていた。
「ん? ヴィクトルも食べる? はい」
「う、むっ。美味しいけど、やたら突っ込んできたね。甘いなこれ」
「美味しいよね〜。小さい時を思い出すなぁ」
あどけない表情で喜ぶあなたを見ているだけで、ヴィクトルの心は癒されていた。
聖夜はとても大事な日で、こうして一緒に過ごせることに感謝する。
二人とも、実家に帰るのは明日の25日から26日だ。
しかしまた年末年始に会う約束をしているし、楽しみにしていた。
「ねえねえあそこに座ろう。私、ホットワイン買ってくるね。記念の年数入りで持ち帰れるんだよ」
「うん、それは嬉しいけど、待って。俺も行くよ」
今日はいつもよりはしゃいでいるあなたに、彼は慌ててついていく。
「買うのは私だよ」と言いながら店の前で楽しそうにメニューを選ぶ恋人の姿を、彼は後ろで穏やかに待っていた。
「はい。熱いから気をつけてね。⋯って、あっ。手袋してるから大丈夫か、はは」
「そうだね。君からもらった手袋とマフラー、すごく暖かくて気持ちいいよ」
「よかったぁ。私もヴィクトルからもらったこのイヤーマフラー、もこもこですっごく可愛くて気に入ったよ。ありがとうね」
照れたようにはにかむあなたのことを、思わず抱きしめたくなる。
しかし今回も手が塞がっていたため、諦めて自分も礼を言った。
石畳の休憩スペースへ戻ってきて、二人で飲み物を抱えながら温まる。
遠くにはライトアップされた大聖堂と、移動式遊園地があり、まさに冬ならではの景観だ。
中でも広場の中央にそびえ立つ天然のクリスマスツリーは眩く彩られ、驚くほどに美しく見えた。
きっと隣で目を輝かせて感動しているあなたがいるからだろう。
「⋯⋯⋯⋯」
「ねえ。今日もあんまり元気無くない? ヴィクトル」
「⋯⋯えっ? そんなことないよ。元気だよ俺は」
「本当に?」
あなたのくりっとした瞳が可愛らしく近づいてきて、ヴィクトルは苦笑した。
「参ったね。君には隠せないな。⋯⋯名無しちゃん。実はね、来月の出張、2週間に延びちゃったんだ」
「えっ、ほんとう? そんなに長いの? 大変だねヴィクトル」
思ったよりも普通に反応されて、ヴィクトルは黒い瞳を瞬かせる。
「え⋯⋯なんかあっさりしてないかい? 俺はものすごく寂しいんだけどね、今から」
「⋯⋯あっ! もちろん私も寂しいよ。でも仕事だし、寂しい〜やだ〜とか言えないでしょう? そんなのわがまま女だよ」
そんなことはない。すごく可愛らしい。
あなたがもしそうやって抱きついてきたら、きっと彼は有頂天になるだろう。
「⋯⋯いやいや。俺は、どうかしている。ああ⋯⋯君のことが好きすぎて、最近調子が⋯⋯」
「ちょっと、大丈夫? もう心配ないよ。ヴィクトルになんでも言うし、私のことも心配いらないよ。ね?」
だから思い悩まないで、と手をぎゅっと握られて、ヴィクトルは一瞬だけ手袋を外して握り返した。
「君の手冷たいよ、名無しちゃん。なんで早く言わないの」
「ふふ。照れてる? ヴィクトル」
年が大きく離れた若いあなたにそう微笑まれて、彼は気恥ずかしそうに緩やかな黒髪を掻いた。
あなたといると、余裕がどんどん失われていく。
しかしそれは悪いことだけではなく、そんな自分も彼は最近受け入れられていた。
なぜなら途方もない幸福を一緒に感じられているからだ。
「君の都合が合えば、時間があるとき顔が見たいな」
さりげなく横目で見つめ、口元を上げて伝えてみると、あなたはさっと頬を赤くした。
瞳をさまよわせたのち、小さく頷く。
「うん、私もそうしたいよ。忙しくないとき、通話しようね。楽しみ」
「うん。ありがとうね。名無しちゃん」
彼はほっとした笑みを浮かべて、少し身を寄せてあなたの頬に軽くキスをした。
にこりと笑いかけると、あなたはまた照れが募った柔らかい笑顔になる。
付き合ってしばらく経つが、いつも自分にドキドキしてくれる愛らしいあなたのことが、ヴィクトルは本当に好きだった。触れるたびに大切にしなければいけないと、より強く思っていた。
「――わあ、寒くなってきたね。電車の時間もあるし、そろそろ帰ろうか」
「うん。もう欲しいものない? お菓子とか、スナックとか」
「へへ。だよねえ。どうしよう、帰りにローストアーモンド買っていこうかな。家でつまもうよ」
明日はゆっくり実家に帰るし。
そう楽しそうに話すあなたの手を、ヴィクトルはしっかり繋いで歩き出す。
だが、そんな時に予想外のことが起きた。
人混みで背の高い男性が多い中でも、ヴィクトルの視界はあなたより高く遠くを見渡せる。
彼は、道の向こうから歩いてくる数人の若者たちが目にとまった。
その中の金髪の男に瞬時に眉をひそめ、言葉が途切れる。
あなたの元彼である、マティアスがいたのだ。
友人らしき男性らと話しながら、手に酒を持って歩いている。
今日という日に最も有名なマーケットで出くわすことは、あり得ないことではない。
しかし軟派な風貌をした相手のふてぶてしい顔を見た途端に、あの日のことが蘇り、怒りが再燃しそうになった。
「ヴィクトル?」
「――ああ、うん。名無しちゃん、こっちの道に入ろう。まだ歩いてなかったよね」
「そうだね、ここまだ見てないや。あっすごい、綺麗なロウソク屋さんもあるよ」
あなたは装飾品に視線を移して彼と通りへ入っていく。
ヴィクトルはまださっきの道を見つめながら警戒していた。
自然と顔が険しくなる。
これは彼にとっては、当然の対処だ。きっと相手を見つけたら動揺するだろうし、あなたをあれほど傷つけた男にはもう会わせたくなかった。
「一袋ください、甘いやつで。――他にもいる?」
「ううん、ありがとう。美味しそう〜」
両手で嬉しそうに受け取る姿を見てほっとする。
しばらく店先のミニテーブルに留まり、帰るまでのちょっとした時間を二人で味見をしながら和やかに過ごした。
「やっぱり帰るの寂しくなってきた。幻想的で綺麗だよね、クリスマスマーケット。⋯⋯またヴィクトルと来たいな。来年も来る?」
「もちろん。来年も再来年も。毎年一緒に来ようね」
「⋯⋯うん!」
とびきり喜びにあふれた表情が、全身に触れてくる。
この笑顔を、失いたくない。
いつまでも自分のものにしてしまいたくなる。
たった短い間でも、離れ離れになることが今からヴィクトルの心をざわめかせていた。
