美オヤジを誘って囲われて救われる話
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あなたが静かになったことを不思議に思ったヴィクトルは、展望台でパンフレットをポケットに押し込んで振り向く。
彼はそこにあるはずの物が無くなったことに気づき、血相を変えた。
しかし同時にあなたがその大事な物を手にしている姿を見て、さらに狼狽した。
「…………あっ!!」
ヴィクトルは思わず声を出して硬直する。
あなたは彼の目をゆっくり見つめた。
二人とも、言葉がすぐに出てこなかった。
「あっ……これ、ヴィクトルのポケットから落ちて……」
「……そ、そうなんだ。それは俺が、持ってきたもので……」
これほど彼が思考能力を一瞬で失った姿は稀である。自分の計画が無に帰してしまったと思われたからだ。
でもあなたは、まったく違う反応をした。
ずっと胸にあった、不安や期待が入り混じった感情が、自然とあふれていく。
視線を落とした先の両手には、白いリボンがかかった淡いピンクの小さな箱。
「私の勘違いじゃなかったから、もしかして、これは……」
「勘違いじゃないさ!」
ヴィクトルはとっさにあなたの正面に立った。
両手を下から包みこんできて、彼の緊張と温もりが伝わる。
黒い瞳を見上げると、もう彼は覚悟を決めた眼差しをしていた。
「君に渡そうと思って、持ってたんだ。こんな形になると思ってなかったけど――でも、俺の気持ちを真剣に伝えたくて」
あなたの瞳がじわりと潤んでいく。
雪山の広大な景色も周りの喧騒も耳に入らず、二人だけの世界だった。
「どんな形でもいいよ、ヴィクトル」
「……本当? じゃあ伝えさせて、名無しちゃん」
両手に熱く力がこめられる。
「君のことを心から愛している。俺が想うのは一生君ひとりだ。許されるなら、このままずっとそばにいさせてほしい。君を絶対に幸せにする」
そう言って彼はその場にひざまずく。
まるで己の愛と忠誠を誓うように、ヴィクトルがあなただけをまっすぐ瞳に映した。
「名無しちゃん、俺と結婚してくれますか?」
その言葉を聞いた瞬間、あなたの瞳からこらえきれずに涙があふれだした。
それは嬉しさと安心の両方の気持ちだった。
「はい。ずっと一緒にいたいです。ありがとう、ヴィクトル。ありがとう……」
泣いてしまったあなたは、すぐに立ち上がって抱きしめてくれたヴィクトルの胸の中にうずまる。
彼は喜びが爆発して笑顔なはずだが、ぎゅうっと抱擁されて見えなかった。
「俺もありがとう、名無しちゃん、嬉しいよ」
声がちょっと揺れてたので、彼ももらい泣きしてるのかと思った。
気になって見上げると、瞳が赤くなっている。
それを見て、あなたの緊張が少しほぐれて二人の笑みも溶け出した。
「ほんとに俺と結婚してくれる?」
「うん……! する! 結婚する!」
目尻の濡れた笑顔で頷くと、彼が抱き上げる勢いであなたをハグする。
気づくと、周りの何人かの観光客がこっちを見ていた。
二人はそれに気づき、慌てて見渡す。
「おめでとう〜」と言ってくれるカップルや、親指をぐっと立ててくれる老夫婦の姿が印象的だった。
「はは、完全に見られちゃった」
「ほんとだ。いや、ごめん。俺の想定と違う場所になっちゃって」
ヴィクトルはもう少し静かで風景が望める最適ポイントを見つけていたのだが、急遽ここでやるしかないと決めたようだった。
あなたはそれを聞いて、微笑みが止まない幸せな気分の中でこう伝えた。
「ありがとう、ヴィクトル。場所はどこでも嬉しいよ。家でも旅先でも道端でも。どんなタイミングでも嬉しい。だってヴィクトルの言葉だもん」
そう本音を伝えながらも、相当の準備をしてくれた彼に深く感謝をした。
このプロポーズは、彼が色んな思いの中で考えに考えぬいて出した答えだったのだ。
「そう言ってもらえて俺もすごく嬉しい。……ああ、ものすごく安心した。……夢じゃないよな」
彼は今更実感が湧いてきた様子で、あなたの両手を自分の指でまた包みこむ。
「あっ! すごく冷たい。ごめんね、早く中に入ろう!」
慌てた彼に連れられ、屋内の店が並ぶロッジに二人は向かった。
細い丸太が積み上げられた、冬のぬくもりたっぷりのカフェだ。
キルトが飾られた二人でゆっくりできる丸型のソファ席に、並んで座った。
あなたは赤色が薄まってきた頬で、両手にホットチョコレートのカップを握り、嬉しそうな表情をしている。
軽く頬杖をついて、愛おしそうにそれを見つめるヴィクトルは、頼んだコーヒーに手をつける時間もないほど、幸福に満たされた様子だった。
「ふふ。夢みたいだなぁ。さっきのこと、本当に起こったの?」
「それは俺の台詞だよ。信じられない。幸せの絶頂だ」
あなたは彼の言葉にさらに瞳を柔らかくする。
ああ、こんなことがあるんだ。
誕生日の出来事だけでもありえないほどたくさんの幸せをもらったのに、求婚までされるとは。
自分はどうやってこの先お返しすればいいのだろう――。
「ねえ名無しちゃん。君の返事をもらったのは俺の最高の喜びなんだけど……中身見なくて大丈夫?」
彼は穏やかに、あなたのそばに大事にちょこんと置いてあるピンクの箱に目線をやった。
「あっそうだ! ごめん失礼だよね、すぐに開けなくて。でもなんかちょっと、緊張しちゃって。だってヴィクトル、昨日もこんなに素敵なネックレスもらったばかりだよ」
あなたはブラウスの首元に光る、ハート型のルビーに触れる。
すると彼はにこりと笑った。
「それは誕生日プレゼントだからね。これは君への気持ちの表明の一部だから、別々のものだよ。……あっでも、やっぱり重い…? ごめんね、正直に言うと、タイミングは迷ったんだ。でもクリスマスよりかは、もっと特別なこの旅行のほうがいいんじゃないかって」
彼が正直な思いを話してくれて、あなたはきちんと聞き入る。
ヴィクトルは更にさらけ出すように、「気持ちを我慢できなかった」とも話してくれた。
「ガキだよね。君のことをもっと考えるべきだろとか、色んなことが頭にまわってさ」
「ううん。そんなことないよ。さっきも言ったけど、ほんとに嬉しいんだ。私も二人の将来、ずっと気になってたから。でも、やっぱり中々言えなくて、ヴィクトルの事情はどうだろうとか考えて」
互いに思いやってた事が分かり、だが気遣うあまりにはっきり言い出せないところも似ていたのだった。
「でもプロポーズ2回目だから安心したんだ。あぁ嬉しかったぁ」
「……えっ? 2回目? 誰が君にしたの?」
突然放たれた情報に彼の目の色が変わる。
「あっ。いや違うよ。相手はヴィクトルだから」
「……俺!? ちょっと待って、話がまったく分からない」
混乱する彼を落ち着かせながら、あなたは前にあったことを告げる。
彼が風邪を引いて寝込んだあの夜、寝言で呟いていたことを。
嘘のような話だが真実なのだ。
彼は呆然と口元を押さえ、だんだん顔を赤らめていった。
「……馬鹿じゃないのか俺は」
「え! 嬉しかったよ私は。だからくっついて私もだよ、って返事したの」
その夜のことを思い出して勝手に顔がにやける。
すると彼はより赤く染まっていったが、徐々に面持ちがじっと迫真的なものに変わった。
「名無しちゃん……どうして君はそういう大事なことを言わないんだい」
「ええと、だってさ。夢見てるだけかもしれないし、もし本当でもプレッシャーになること言いたくないでしょう? だから嬉しいんだけどモヤモヤしたまま…」
「プレッシャーかけていいよ! むしろかけてくれ!」
前のめりになって顔を近づける彼に驚きつつも申し訳ない笑みが出る。
「そっか……私も言えばよかったな。ねえいつにするのヴィクトルぅ?ってさ…」
「それすごく可愛いね」
「そう? セリアちゃんのアドバイスの真似なんだけど」
「最高だよ」
言い切る彼が面白くて、しばらく楽しく会話をした。
しかし話を元に戻さなければ。
あなたは再び緊張しつつも、さきほど彼から頂いた箱に手をかける。
「本当にいいの? いくらそういう習慣とはいえ私だけもらうのおかしいよね。……あっそうだ! じゃあ私もヴィクトルに婚約の証として何かあげるね」
緊張してペラペラ喋るが彼はあなたをにこにこと愛おしげに見つめている。
「ふふ、ありがとう。気持ちだけでも嬉しいけどな。あっそうだ、二人のペアのものはほしいね」
「それいい! 絶対買おうね!」
しっかり約束をして、いざ覚悟を決めて視線を箱の中に落とす。
普通の段取りとはかけ離れてしまったが、あなたの驚きはそんな事情を優に超えていった。
「うわ……すごい。綺麗……ダイヤが3つ輝いてる……」
銀色のリングに、大きすぎないがまばゆい輝きを放つ確かなダイヤモンドが、わずかな弧を描くように3つ並んでいる。
真ん中のだけ大きめで、間には繊細な細工があしらわれていて、デザインも可憐かつエレガントで愛らしい。
ヴィクトルがあなたに抱いている、柔らかでしなやかな、だけれど愛にあふれた優しさを表現した、ふさわしい婚約指輪だった。
「…………」
「名無しちゃん? それ、大丈夫? デザインとか石とか……」
「……えっ? あぁ! 素晴らしいに決まってるよ! ごめん、見とれちゃって、どう喜びを表現したらいいのか」
あなたは慌てて返事をし、でもまた引き込まれるように指輪を見つめた。
そしてもう一度じわりと瞳が濡れてくる。
するとヴィクトルがもう少し距離を詰めて、あなたの隣から優しく肩を抱いた。
店内なのに、近くに人がいないからか優しく顎を取り、唇にキスを重ねる。
「んっ! ヴィクトル…!」
「ごめんね。どうしても今したくなった」
彼があまりに自然に微笑むから、あなたも表情が緩んできて彼の肩口にそっと頭を預ける。
そうしてしばらく慣れ親しんだ温もりの中で、二人で過ごしていた。
やがてヴィクトルが指輪を取り、あなたの指にそっとはめてくれる。
それを見つめたあなたは、熱いため息を吐いて現実がようやく目の前に現れた気がした。
「ありがとう、ヴィクトル。こんなに素敵なもの……私がつけていいのかな? まだ早くない…? 言葉だけでも十分なのに」
「早くないよ。というか、俺が言葉も指輪も急いじゃっただけだからね。早く君に伝えたくてさ」
だから自分の勝手でしてしまったことなのだと彼は言う。
「ねえ。いつ結婚するの?」
「それは……俺はいつでも準備万端なんだけど、名無しちゃんのタイミングが大事だからね」
だから君の心の準備が出来たときに、そして環境が大丈夫なときに――そう彼は伝えてくれたが、あなたの性格上自分のタイミング中心になどとても出来ない。
彼自身や仕事などの状況をまず考えてしまうからだ。
そう思うこともヴィクトルはなんとなく分かっているため、こう言ってくれた。
「二人でまた一緒に考えよう。……本当はね、プロポーズするときも重くならないように、結婚を前提にお付き合いを続けてくださいって言うつもりだったんだ。……でもあの状況で、君を見つめていたら。考えもふっとんだし、とにかく心にある気持ちを全部伝えたくなった。だから結婚してほしいってストレートに言っちゃったんだ」
彼は照れくさそうに本音を話してくれた。
あなたはもっと感情を揺さぶられて、胸に抱きつく。
そしてぎゅっとハグをしたあと、彼の瞳を捉えた。
「すごく嬉しかった。ありがとう、ヴィクトル。これからもよろしくね。私もあなたのことを一生懸命支えるよ。死ぬまであなた一人を愛するからね」
「…………あっ、名無しちゃん」
こんな場所でそんな真剣に、熱く気持ちを返されると思わず、ヴィクトルはあなたに改めて惚れ込んでいく。
「うん。ありがとう。……まいったな。今の俺より良い求婚じゃなかったか?」
「ふふっ、そんなことないよ。二人ともよかったよ」
そうやってあなたが笑うと、彼はこの日一番気が抜けたみたいな、素直な柔らかい表情で笑い、頷いてくれた。
彼はそこにあるはずの物が無くなったことに気づき、血相を変えた。
しかし同時にあなたがその大事な物を手にしている姿を見て、さらに狼狽した。
「…………あっ!!」
ヴィクトルは思わず声を出して硬直する。
あなたは彼の目をゆっくり見つめた。
二人とも、言葉がすぐに出てこなかった。
「あっ……これ、ヴィクトルのポケットから落ちて……」
「……そ、そうなんだ。それは俺が、持ってきたもので……」
これほど彼が思考能力を一瞬で失った姿は稀である。自分の計画が無に帰してしまったと思われたからだ。
でもあなたは、まったく違う反応をした。
ずっと胸にあった、不安や期待が入り混じった感情が、自然とあふれていく。
視線を落とした先の両手には、白いリボンがかかった淡いピンクの小さな箱。
「私の勘違いじゃなかったから、もしかして、これは……」
「勘違いじゃないさ!」
ヴィクトルはとっさにあなたの正面に立った。
両手を下から包みこんできて、彼の緊張と温もりが伝わる。
黒い瞳を見上げると、もう彼は覚悟を決めた眼差しをしていた。
「君に渡そうと思って、持ってたんだ。こんな形になると思ってなかったけど――でも、俺の気持ちを真剣に伝えたくて」
あなたの瞳がじわりと潤んでいく。
雪山の広大な景色も周りの喧騒も耳に入らず、二人だけの世界だった。
「どんな形でもいいよ、ヴィクトル」
「……本当? じゃあ伝えさせて、名無しちゃん」
両手に熱く力がこめられる。
「君のことを心から愛している。俺が想うのは一生君ひとりだ。許されるなら、このままずっとそばにいさせてほしい。君を絶対に幸せにする」
そう言って彼はその場にひざまずく。
まるで己の愛と忠誠を誓うように、ヴィクトルがあなただけをまっすぐ瞳に映した。
「名無しちゃん、俺と結婚してくれますか?」
その言葉を聞いた瞬間、あなたの瞳からこらえきれずに涙があふれだした。
それは嬉しさと安心の両方の気持ちだった。
「はい。ずっと一緒にいたいです。ありがとう、ヴィクトル。ありがとう……」
泣いてしまったあなたは、すぐに立ち上がって抱きしめてくれたヴィクトルの胸の中にうずまる。
彼は喜びが爆発して笑顔なはずだが、ぎゅうっと抱擁されて見えなかった。
「俺もありがとう、名無しちゃん、嬉しいよ」
声がちょっと揺れてたので、彼ももらい泣きしてるのかと思った。
気になって見上げると、瞳が赤くなっている。
それを見て、あなたの緊張が少しほぐれて二人の笑みも溶け出した。
「ほんとに俺と結婚してくれる?」
「うん……! する! 結婚する!」
目尻の濡れた笑顔で頷くと、彼が抱き上げる勢いであなたをハグする。
気づくと、周りの何人かの観光客がこっちを見ていた。
二人はそれに気づき、慌てて見渡す。
「おめでとう〜」と言ってくれるカップルや、親指をぐっと立ててくれる老夫婦の姿が印象的だった。
「はは、完全に見られちゃった」
「ほんとだ。いや、ごめん。俺の想定と違う場所になっちゃって」
ヴィクトルはもう少し静かで風景が望める最適ポイントを見つけていたのだが、急遽ここでやるしかないと決めたようだった。
あなたはそれを聞いて、微笑みが止まない幸せな気分の中でこう伝えた。
「ありがとう、ヴィクトル。場所はどこでも嬉しいよ。家でも旅先でも道端でも。どんなタイミングでも嬉しい。だってヴィクトルの言葉だもん」
そう本音を伝えながらも、相当の準備をしてくれた彼に深く感謝をした。
このプロポーズは、彼が色んな思いの中で考えに考えぬいて出した答えだったのだ。
「そう言ってもらえて俺もすごく嬉しい。……ああ、ものすごく安心した。……夢じゃないよな」
彼は今更実感が湧いてきた様子で、あなたの両手を自分の指でまた包みこむ。
「あっ! すごく冷たい。ごめんね、早く中に入ろう!」
慌てた彼に連れられ、屋内の店が並ぶロッジに二人は向かった。
細い丸太が積み上げられた、冬のぬくもりたっぷりのカフェだ。
キルトが飾られた二人でゆっくりできる丸型のソファ席に、並んで座った。
あなたは赤色が薄まってきた頬で、両手にホットチョコレートのカップを握り、嬉しそうな表情をしている。
軽く頬杖をついて、愛おしそうにそれを見つめるヴィクトルは、頼んだコーヒーに手をつける時間もないほど、幸福に満たされた様子だった。
「ふふ。夢みたいだなぁ。さっきのこと、本当に起こったの?」
「それは俺の台詞だよ。信じられない。幸せの絶頂だ」
あなたは彼の言葉にさらに瞳を柔らかくする。
ああ、こんなことがあるんだ。
誕生日の出来事だけでもありえないほどたくさんの幸せをもらったのに、求婚までされるとは。
自分はどうやってこの先お返しすればいいのだろう――。
「ねえ名無しちゃん。君の返事をもらったのは俺の最高の喜びなんだけど……中身見なくて大丈夫?」
彼は穏やかに、あなたのそばに大事にちょこんと置いてあるピンクの箱に目線をやった。
「あっそうだ! ごめん失礼だよね、すぐに開けなくて。でもなんかちょっと、緊張しちゃって。だってヴィクトル、昨日もこんなに素敵なネックレスもらったばかりだよ」
あなたはブラウスの首元に光る、ハート型のルビーに触れる。
すると彼はにこりと笑った。
「それは誕生日プレゼントだからね。これは君への気持ちの表明の一部だから、別々のものだよ。……あっでも、やっぱり重い…? ごめんね、正直に言うと、タイミングは迷ったんだ。でもクリスマスよりかは、もっと特別なこの旅行のほうがいいんじゃないかって」
彼が正直な思いを話してくれて、あなたはきちんと聞き入る。
ヴィクトルは更にさらけ出すように、「気持ちを我慢できなかった」とも話してくれた。
「ガキだよね。君のことをもっと考えるべきだろとか、色んなことが頭にまわってさ」
「ううん。そんなことないよ。さっきも言ったけど、ほんとに嬉しいんだ。私も二人の将来、ずっと気になってたから。でも、やっぱり中々言えなくて、ヴィクトルの事情はどうだろうとか考えて」
互いに思いやってた事が分かり、だが気遣うあまりにはっきり言い出せないところも似ていたのだった。
「でもプロポーズ2回目だから安心したんだ。あぁ嬉しかったぁ」
「……えっ? 2回目? 誰が君にしたの?」
突然放たれた情報に彼の目の色が変わる。
「あっ。いや違うよ。相手はヴィクトルだから」
「……俺!? ちょっと待って、話がまったく分からない」
混乱する彼を落ち着かせながら、あなたは前にあったことを告げる。
彼が風邪を引いて寝込んだあの夜、寝言で呟いていたことを。
嘘のような話だが真実なのだ。
彼は呆然と口元を押さえ、だんだん顔を赤らめていった。
「……馬鹿じゃないのか俺は」
「え! 嬉しかったよ私は。だからくっついて私もだよ、って返事したの」
その夜のことを思い出して勝手に顔がにやける。
すると彼はより赤く染まっていったが、徐々に面持ちがじっと迫真的なものに変わった。
「名無しちゃん……どうして君はそういう大事なことを言わないんだい」
「ええと、だってさ。夢見てるだけかもしれないし、もし本当でもプレッシャーになること言いたくないでしょう? だから嬉しいんだけどモヤモヤしたまま…」
「プレッシャーかけていいよ! むしろかけてくれ!」
前のめりになって顔を近づける彼に驚きつつも申し訳ない笑みが出る。
「そっか……私も言えばよかったな。ねえいつにするのヴィクトルぅ?ってさ…」
「それすごく可愛いね」
「そう? セリアちゃんのアドバイスの真似なんだけど」
「最高だよ」
言い切る彼が面白くて、しばらく楽しく会話をした。
しかし話を元に戻さなければ。
あなたは再び緊張しつつも、さきほど彼から頂いた箱に手をかける。
「本当にいいの? いくらそういう習慣とはいえ私だけもらうのおかしいよね。……あっそうだ! じゃあ私もヴィクトルに婚約の証として何かあげるね」
緊張してペラペラ喋るが彼はあなたをにこにこと愛おしげに見つめている。
「ふふ、ありがとう。気持ちだけでも嬉しいけどな。あっそうだ、二人のペアのものはほしいね」
「それいい! 絶対買おうね!」
しっかり約束をして、いざ覚悟を決めて視線を箱の中に落とす。
普通の段取りとはかけ離れてしまったが、あなたの驚きはそんな事情を優に超えていった。
「うわ……すごい。綺麗……ダイヤが3つ輝いてる……」
銀色のリングに、大きすぎないがまばゆい輝きを放つ確かなダイヤモンドが、わずかな弧を描くように3つ並んでいる。
真ん中のだけ大きめで、間には繊細な細工があしらわれていて、デザインも可憐かつエレガントで愛らしい。
ヴィクトルがあなたに抱いている、柔らかでしなやかな、だけれど愛にあふれた優しさを表現した、ふさわしい婚約指輪だった。
「…………」
「名無しちゃん? それ、大丈夫? デザインとか石とか……」
「……えっ? あぁ! 素晴らしいに決まってるよ! ごめん、見とれちゃって、どう喜びを表現したらいいのか」
あなたは慌てて返事をし、でもまた引き込まれるように指輪を見つめた。
そしてもう一度じわりと瞳が濡れてくる。
するとヴィクトルがもう少し距離を詰めて、あなたの隣から優しく肩を抱いた。
店内なのに、近くに人がいないからか優しく顎を取り、唇にキスを重ねる。
「んっ! ヴィクトル…!」
「ごめんね。どうしても今したくなった」
彼があまりに自然に微笑むから、あなたも表情が緩んできて彼の肩口にそっと頭を預ける。
そうしてしばらく慣れ親しんだ温もりの中で、二人で過ごしていた。
やがてヴィクトルが指輪を取り、あなたの指にそっとはめてくれる。
それを見つめたあなたは、熱いため息を吐いて現実がようやく目の前に現れた気がした。
「ありがとう、ヴィクトル。こんなに素敵なもの……私がつけていいのかな? まだ早くない…? 言葉だけでも十分なのに」
「早くないよ。というか、俺が言葉も指輪も急いじゃっただけだからね。早く君に伝えたくてさ」
だから自分の勝手でしてしまったことなのだと彼は言う。
「ねえ。いつ結婚するの?」
「それは……俺はいつでも準備万端なんだけど、名無しちゃんのタイミングが大事だからね」
だから君の心の準備が出来たときに、そして環境が大丈夫なときに――そう彼は伝えてくれたが、あなたの性格上自分のタイミング中心になどとても出来ない。
彼自身や仕事などの状況をまず考えてしまうからだ。
そう思うこともヴィクトルはなんとなく分かっているため、こう言ってくれた。
「二人でまた一緒に考えよう。……本当はね、プロポーズするときも重くならないように、結婚を前提にお付き合いを続けてくださいって言うつもりだったんだ。……でもあの状況で、君を見つめていたら。考えもふっとんだし、とにかく心にある気持ちを全部伝えたくなった。だから結婚してほしいってストレートに言っちゃったんだ」
彼は照れくさそうに本音を話してくれた。
あなたはもっと感情を揺さぶられて、胸に抱きつく。
そしてぎゅっとハグをしたあと、彼の瞳を捉えた。
「すごく嬉しかった。ありがとう、ヴィクトル。これからもよろしくね。私もあなたのことを一生懸命支えるよ。死ぬまであなた一人を愛するからね」
「…………あっ、名無しちゃん」
こんな場所でそんな真剣に、熱く気持ちを返されると思わず、ヴィクトルはあなたに改めて惚れ込んでいく。
「うん。ありがとう。……まいったな。今の俺より良い求婚じゃなかったか?」
「ふふっ、そんなことないよ。二人ともよかったよ」
そうやってあなたが笑うと、彼はこの日一番気が抜けたみたいな、素直な柔らかい表情で笑い、頷いてくれた。
