美オヤジを誘って囲われて救われる話
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あなたは今日、一人でブティックに立っていた。
主要駅からほど近く、立地は悪くないが、知る人ぞ知る裏路地にひっそり佇む、アンティーク調のお店だ。
店内には十八世紀を思わせる家具や照明が並び、飾られた服はモノトーンや黒を基調にした、シックでエレガントなものばかりだった。
「これいいわぁ、この間ここで買ったブーツにぴったり」
「私もそう思います、黒のミドルブーツですよね? このワンピース色違いもあるんですよ。それもご覧になりますか?」
「本当? ぜひ見たいわ」
常連の小洒落たマダムと鏡を見ながら、あなたは接客をしていた。結果彼女は色違いを気に入り、満足げに購入していった。
「ありがとう。ここに来たらついたくさん買っちゃうのよね。珍しいデザインなのにセンスよくって。またよろしくね、名無しさん」
「はい! ありがとうございました。またぜひお越しくださいね。本格的な冬物もまだまだ入荷しますので」
店先でお辞儀をし、笑顔で見送る。
夕方すぎ、最後のお客さんだった。
あなたの服装は、この店にぴったりの黒いロングドレスだ。ゴシックエレガントな雰囲気が漂い、外出時とは違うメイクに髪をアップにして、ぐっと大人っぽく見える。
上質で価格も高めのため、客層は三十代から五十代が中心だが、上限は特にない。オーナー自身が海外で仕入れた希少なデザインを揃え、シックな淑女をイメージしたブティックである。
あなたは、そんな個性的なこの店を気に入っていた。
「あぁ、この服も可愛いなぁ。1ヶ月に一回だけ、ご褒美に買ってるけど。これにしようかな」
誰もいない店内で、全身鏡を見ながら素早くチェックする。
店に立つ時の服は見本品で貸し出しだ。しかし従業員割引で、気に入ったものは割安で購入できる。
普段の若者らしい手頃な服装とは違うけれど、あなたにとってブティックの服は背伸びができる、特別な憧れでもあった。
「名無しちゃん、お疲れ様。どう、今日の客足は」
「⋯⋯わっ! いたんですか、オーナー。今日もよかったですよ、秋物も冬物もよく売れました」
店の奥から出てきた中年女性に挨拶する。
彼女はイリスという名のブティックの経営者だ。ジャケットとレースのついたロングスカートをまとっていて、少しぽっちゃりした妖艶な美女である。
「ふふふ、よかったわ。他の二店舗も調子いいのよ。やっぱり寒い時期こそ本領発揮ね、私達の店は。コートも可愛いでしょ」
「そうなんですよ〜。これなんか売れ行きもよくて!」
彼女と服の話をしているときや、美しい服に囲まれて接客しているときは、あなたにとって至福のひとときだった。
夢中で会話をしていると、イリスの緑の瞳がじっと覗き込んでくる。
「ちょっと、もう二人なんだから敬語よしてよ。昔みたいにおばちゃんでいいからさ」
「えっ⋯⋯いやおばちゃんは勤務先で失礼だよね⋯。まあいいか。イリスさんと二人だし」
あなたは頭に手をやって、素をだして笑った。
にこにこする彼女は母親の高校からの親友であり、物心つく前から知っている人物だ。
本当の叔母のように、身近で信頼のおける女性だった。
「そういえば誕生日の有給、取っていいからね」
「本当っ? やった〜」
「ふふ。喜んじゃって。なに、二日間彼氏と過ごすの? ママから聞いちゃった」
あなたは急に突っ込まれて咳き込みそうになる。
一瞬赤らんでしまったが、彼女はのんびりした母よりも押しが強くはっきりしたタイプだ。
「ま、まあ⋯⋯そんなとこだけど。もしかして全部聞いたの?」
「二十歳上の素敵な男性ってこと? なんで早く教えてくれないのよ〜」
「十八歳だけどね。だってさ⋯⋯イリスさんは家族みたいなものだし、逆に恥ずかしくて⋯」
「なによ、後ろめたいの? 別にいいじゃない、私だって十歳年下の男と事実婚よ? そう考えるとさ、あなたの彼と同い年なんだけど! 片や五十の女と、片や二十代の若い子となんて、男って面白いわね〜」
ははは!と軽快にしてるので、あなたもつられて控え目に笑ってしまった。
「そうか。イリスさんの彼氏とヴィクトルって同い年なんだな。あのお兄さんも面白い人だったよね。元気? 昔一回遊んでもらったね」
「全然元気よ。いつも趣味にかけまわってるわ。たぶん名無しちゃんのそのヴィクトルとは全く違うタイプだろうけどね」
にやにやされて反応に困る。イリスはよくこうしてからかってくるのだ。
「でもさ、いい人なんでしょ?」
「うん! とってもね」
「よかったわ。浪費とか束縛とか女遊びとか大丈夫なのよね?」
「ぜ、全然大丈夫」
「なら平気だわ! まあ万が一失敗してもさ、若いうちは当たって砕けろって言うし」
軽やかで容赦ないセリフに、あなたは顔がさっと曇っていく。
「砕けちゃやだよ!」
「あ、ごめん。だいじょーぶよ名無しちゃんしっかりしてるんだから。でも今度はちゃんと吟味しなさいよ。どう転ぶにせよ、二十代前半で出会う男は大事だからね」
彼女の言葉には経験からくる重みがあった。
イリスは独身だが長年年下の恋人と生活している。仕事の仕方も生き方も、小気味よく魅力的な人柄も、あなたが強い憧れをもつ存在だ。
違うほうに転びたくないな、そう思いつつ、あなたは真剣に頷いた。
ーーー
勤務が終わり、電車で自宅へ向かった。
今日は平日の水曜日で、いつもの習慣でヴィクトルに仕事が終わったことを伝え、彼にも気をつけてねとメールした。
彼はつい最近、手掛けていたプロジェクトが成功に終わり、今日はその祝いを皆でするのだと聞いていた。
きっと楽しくお酒も飲んでるだろうし、盛大にお祝いしてほしいとあなたも嬉しくなりながら考えていた。
しかし、しばらくして返ってきたヴィクトルからの返事は、奇妙だった。
駅から歩いてアパートへ着き、一息いれてからスマホを見ると。
『ごめん、しばらく会えない。俺は大丈夫。家に来ちゃだめだよ』
そう書かれていた。
あなたは目を疑い、しばし画面を食い入るように見つめながら固まってしまった。
「⋯⋯⋯⋯え? なにこれ。どういうこと⋯⋯? なんかおかしい⋯⋯よね?」
一瞬頭が真っ白になったが、ひとつずつ考えた。
しばらく会えないのはどうしてだろう?
仕事で何かあったのだろうか。ヴィクトルは大丈夫だと言ってるのは、どういう意味?心配いらないってこと?
どうして家に来ちゃだめなの?
ぐるぐる思考が回りながら、今日のイリスとの会話を思い出し、まさか――自分のことがいきなり嫌になった?――とまで考えてしまった。
「違うよね、考えすぎだよね。⋯⋯でも家に来るなって、なんでなの⋯?」
いてもたってもいられず、すぐに電話をした。
しかし彼は出なかった。
まだ仕事なのかもしれないが、お祝いの最中で、家で皆と飲んでいるのだろうか。それとも見知らぬ女性を呼んでるとか?
「違う違う⋯⋯そんなわけないよ。だってヴィクトルは誠実な人だもん! ⋯⋯けど、どうして電話に出ないんだろう⋯?」
自分はしつこい恋人にはなりたくない。
でもこれは何かが裏で起きていると感じた。
だからあなたは、来るなと言われたけれど、すぐに彼の家へ向かうことにした。
彼のことが、二人の行く末が、心配でたまらなくなっていた。
主要駅からほど近く、立地は悪くないが、知る人ぞ知る裏路地にひっそり佇む、アンティーク調のお店だ。
店内には十八世紀を思わせる家具や照明が並び、飾られた服はモノトーンや黒を基調にした、シックでエレガントなものばかりだった。
「これいいわぁ、この間ここで買ったブーツにぴったり」
「私もそう思います、黒のミドルブーツですよね? このワンピース色違いもあるんですよ。それもご覧になりますか?」
「本当? ぜひ見たいわ」
常連の小洒落たマダムと鏡を見ながら、あなたは接客をしていた。結果彼女は色違いを気に入り、満足げに購入していった。
「ありがとう。ここに来たらついたくさん買っちゃうのよね。珍しいデザインなのにセンスよくって。またよろしくね、名無しさん」
「はい! ありがとうございました。またぜひお越しくださいね。本格的な冬物もまだまだ入荷しますので」
店先でお辞儀をし、笑顔で見送る。
夕方すぎ、最後のお客さんだった。
あなたの服装は、この店にぴったりの黒いロングドレスだ。ゴシックエレガントな雰囲気が漂い、外出時とは違うメイクに髪をアップにして、ぐっと大人っぽく見える。
上質で価格も高めのため、客層は三十代から五十代が中心だが、上限は特にない。オーナー自身が海外で仕入れた希少なデザインを揃え、シックな淑女をイメージしたブティックである。
あなたは、そんな個性的なこの店を気に入っていた。
「あぁ、この服も可愛いなぁ。1ヶ月に一回だけ、ご褒美に買ってるけど。これにしようかな」
誰もいない店内で、全身鏡を見ながら素早くチェックする。
店に立つ時の服は見本品で貸し出しだ。しかし従業員割引で、気に入ったものは割安で購入できる。
普段の若者らしい手頃な服装とは違うけれど、あなたにとってブティックの服は背伸びができる、特別な憧れでもあった。
「名無しちゃん、お疲れ様。どう、今日の客足は」
「⋯⋯わっ! いたんですか、オーナー。今日もよかったですよ、秋物も冬物もよく売れました」
店の奥から出てきた中年女性に挨拶する。
彼女はイリスという名のブティックの経営者だ。ジャケットとレースのついたロングスカートをまとっていて、少しぽっちゃりした妖艶な美女である。
「ふふふ、よかったわ。他の二店舗も調子いいのよ。やっぱり寒い時期こそ本領発揮ね、私達の店は。コートも可愛いでしょ」
「そうなんですよ〜。これなんか売れ行きもよくて!」
彼女と服の話をしているときや、美しい服に囲まれて接客しているときは、あなたにとって至福のひとときだった。
夢中で会話をしていると、イリスの緑の瞳がじっと覗き込んでくる。
「ちょっと、もう二人なんだから敬語よしてよ。昔みたいにおばちゃんでいいからさ」
「えっ⋯⋯いやおばちゃんは勤務先で失礼だよね⋯。まあいいか。イリスさんと二人だし」
あなたは頭に手をやって、素をだして笑った。
にこにこする彼女は母親の高校からの親友であり、物心つく前から知っている人物だ。
本当の叔母のように、身近で信頼のおける女性だった。
「そういえば誕生日の有給、取っていいからね」
「本当っ? やった〜」
「ふふ。喜んじゃって。なに、二日間彼氏と過ごすの? ママから聞いちゃった」
あなたは急に突っ込まれて咳き込みそうになる。
一瞬赤らんでしまったが、彼女はのんびりした母よりも押しが強くはっきりしたタイプだ。
「ま、まあ⋯⋯そんなとこだけど。もしかして全部聞いたの?」
「二十歳上の素敵な男性ってこと? なんで早く教えてくれないのよ〜」
「十八歳だけどね。だってさ⋯⋯イリスさんは家族みたいなものだし、逆に恥ずかしくて⋯」
「なによ、後ろめたいの? 別にいいじゃない、私だって十歳年下の男と事実婚よ? そう考えるとさ、あなたの彼と同い年なんだけど! 片や五十の女と、片や二十代の若い子となんて、男って面白いわね〜」
ははは!と軽快にしてるので、あなたもつられて控え目に笑ってしまった。
「そうか。イリスさんの彼氏とヴィクトルって同い年なんだな。あのお兄さんも面白い人だったよね。元気? 昔一回遊んでもらったね」
「全然元気よ。いつも趣味にかけまわってるわ。たぶん名無しちゃんのそのヴィクトルとは全く違うタイプだろうけどね」
にやにやされて反応に困る。イリスはよくこうしてからかってくるのだ。
「でもさ、いい人なんでしょ?」
「うん! とってもね」
「よかったわ。浪費とか束縛とか女遊びとか大丈夫なのよね?」
「ぜ、全然大丈夫」
「なら平気だわ! まあ万が一失敗してもさ、若いうちは当たって砕けろって言うし」
軽やかで容赦ないセリフに、あなたは顔がさっと曇っていく。
「砕けちゃやだよ!」
「あ、ごめん。だいじょーぶよ名無しちゃんしっかりしてるんだから。でも今度はちゃんと吟味しなさいよ。どう転ぶにせよ、二十代前半で出会う男は大事だからね」
彼女の言葉には経験からくる重みがあった。
イリスは独身だが長年年下の恋人と生活している。仕事の仕方も生き方も、小気味よく魅力的な人柄も、あなたが強い憧れをもつ存在だ。
違うほうに転びたくないな、そう思いつつ、あなたは真剣に頷いた。
ーーー
勤務が終わり、電車で自宅へ向かった。
今日は平日の水曜日で、いつもの習慣でヴィクトルに仕事が終わったことを伝え、彼にも気をつけてねとメールした。
彼はつい最近、手掛けていたプロジェクトが成功に終わり、今日はその祝いを皆でするのだと聞いていた。
きっと楽しくお酒も飲んでるだろうし、盛大にお祝いしてほしいとあなたも嬉しくなりながら考えていた。
しかし、しばらくして返ってきたヴィクトルからの返事は、奇妙だった。
駅から歩いてアパートへ着き、一息いれてからスマホを見ると。
『ごめん、しばらく会えない。俺は大丈夫。家に来ちゃだめだよ』
そう書かれていた。
あなたは目を疑い、しばし画面を食い入るように見つめながら固まってしまった。
「⋯⋯⋯⋯え? なにこれ。どういうこと⋯⋯? なんかおかしい⋯⋯よね?」
一瞬頭が真っ白になったが、ひとつずつ考えた。
しばらく会えないのはどうしてだろう?
仕事で何かあったのだろうか。ヴィクトルは大丈夫だと言ってるのは、どういう意味?心配いらないってこと?
どうして家に来ちゃだめなの?
ぐるぐる思考が回りながら、今日のイリスとの会話を思い出し、まさか――自分のことがいきなり嫌になった?――とまで考えてしまった。
「違うよね、考えすぎだよね。⋯⋯でも家に来るなって、なんでなの⋯?」
いてもたってもいられず、すぐに電話をした。
しかし彼は出なかった。
まだ仕事なのかもしれないが、お祝いの最中で、家で皆と飲んでいるのだろうか。それとも見知らぬ女性を呼んでるとか?
「違う違う⋯⋯そんなわけないよ。だってヴィクトルは誠実な人だもん! ⋯⋯けど、どうして電話に出ないんだろう⋯?」
自分はしつこい恋人にはなりたくない。
でもこれは何かが裏で起きていると感じた。
だからあなたは、来るなと言われたけれど、すぐに彼の家へ向かうことにした。
彼のことが、二人の行く末が、心配でたまらなくなっていた。
