美オヤジを誘って囲われて救われる話
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今日は金曜日の夜で、あなたはヴィクトルの仕事終わりに迎えに来ていた。九時過ぎに、金融ビジネス街のビルが立ち並ぶ道脇に車を停める。
「ああ〜ここしか停められなかった。分かりづらいなぁ。メールしとこう」
小回りが利く車は彼の会社から数十メートル離れた場所にある。駐車枠があり時間も問題ないが、約束の時間を過ぎてもヴィクトルは現れなかった。
十分、二十分と待ちそわそわしたあなたは、車から降りてひとまず会社近くに向かう。
まさか正面に停めることは出来ないし、遠くから様子を眺めようと思っていると、近代的な高層ビルの玄関口は静かで誰もいなかった。
自動ドアの奥のほうに受付と警備員の姿が見えるだけだ。
「まだ終わってないのかな。やっぱり戻ろうかな。⋯⋯あっ、この会社だよね」
館内リストの上層部のいくつかのフロアを、彼が勤めるコンサルティング会社が占有しているようだ。
ここで働いてるんだ。そう現実味が増して、あたりの閑静なビル群を見上げながらドキドキした。
怪しまれないうちに帰ろう、そう思ったときに、建物内から青系の洒落たスーツの男性が現れた。
彼は手ぶらでラフな感じで歩いてきて、かなり屈強な体つきで背も高い。
首も太くスポーツマンのように見えたが、濃い金髪は爽やかに、でも攻めた感じでセットされていて、腕には高級時計も光っている。
「こんばんは」
軽やかに挨拶されたので、あなたも「こんばんは」と愛想よく返す。
そのまま折を見て去ろうとしたら、彼は笑みを浮かべて近づいてきた。
「大丈夫ですか? なにかお手伝いすることあります?」
「えっ! いえいえ、大丈夫です! あのちょっと、人を待っていて――」
そう言うべきではなかったのだが、不審に思われないように告げてしまった。
近くで見るとかなり筋肉の太さがわかる、がっちりした男性だ。年は30代半ばぐらいで、ヴィクトルと変わらないように思えた。
その男性は仕事終わりらしく、あなたと世間話を始めるような雰囲気を発してきた。
「待ち合わせですか。もしかして、うちの会社の人間かな。ソルヴェンテ・コンサルティングって言うんですが」
「⋯⋯あ! そうなんですか。えっと⋯⋯」
あなたは口ごもった。彼はヴィクトルと同じ会社の人だったのだ。そんな偶然にも驚いたが、彼の年代的に自分の存在が見つかったら面倒なことになるかもしれないと考えた。
しかし。
「あれ? もしかしてそうなんですね? ははは、俺の推測が正しければ、ヴィクトル・ヘイズかな?」
彼は歯を見せて笑い、気さくに話してくる。
あなたは心臓が飛び出そうになったが、ヴィクトルを明らかに知っている人物のようだった。
「え、あの、すみません!」
「いやなんで謝るの? 平気平気、心配いらないよ。俺怪しい奴じゃないから。ヴィクトルの友達なんだ」
スッとフレンドリーに入ってきた男性はにこにこしながら、あなたと程よい距離感で立ち、ジェスチャーを混じえて明るく説明した。
「⋯⋯彼のお友達なんですか? どうして私がその⋯⋯」
「それはねー、あいつに聞いたからさ。ものすごく可愛い恋人ができたって。いやその通りなんだと俺も今信じましたよ」
冗談ぽく明かされてあなたは真っ赤になる。完全なお世辞だとは分かっているけど、この人は自分のペースに相手を引き込んでしまう不思議な素質をもっていた。
「あ、はは。まさか彼が私のこと話してたとは。でも友人の方にご挨拶できて嬉しいです。すみません、こんなとこまで来てしまって」
「全然問題ないって。よかったらオフィスに案内しようか? あ、俺は同じ役員のマックス・チェンバーっていうんだ。よろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします。名無しといいます。あとオフィスなんて滅相もないので、お気遣いなく!」
ぶんぶんと首を振って断ると彼に楽しそうに笑われた。
外では一部の隙もなさそうなヴィクトルのイメージから、勝手に周りの人達も同じ雰囲気を想像していたけれど、この人は全然違うタイプに見える。
話を聞けば大学の同じボート部だったらしいので、同い年の40歳なのだが。ヴィクトルと同じくかなり若々しい。
「いやぁ会えてよかったな。ヴィクトルは今取引先との話し合いが延びてるんじゃないかな? でももうすぐ来ると思うよ」
「そうなんですか? 教えてくださってありがとうございます。じゃあ私は向こうで待ってますね――」
もう一度挨拶をし、きりのいいとこで去ろうとすると、建物の奥のほうからまた違う人物が現れた。
あなたは今度はしっかり足を止める。育ちのよさそうな30前後の男性で、金髪をきっちり横分けにしたクリスだ。
彼はヴィクトルの部下で以前ジムで会ったことがあり、二人で抱き合ってるところまで見られていた。
クリスは目を凝らし、まっすぐあなた達のもとに向かってきた。
「あぁ、名無しさんじゃないですか! こんばんは。大丈夫ですか? どうしたんです、この男性にまたナンパされてしまったんですか?」
「いえ! 全然違います!」
「またってなんだよクリス、お前彼女を知ってるのか?」
「そうですよ。あなたよりも先にヴィクトルに紹介されましたから」
ふふん、と鼻を鳴らしたクリスは、あなたに対してにっと笑みを作る。
「ヴィクトルはじきに来ると思いますよ。あぁでも僕が先に着いてよかったです。窓からあなたがマックスに絡まれている姿が見えましてね。こうして助けに来たんですよ」
「えっ! そうなんですか? いやなんて言えばいいのか⋯⋯ただご挨拶してただけなんですけど。なんかすみません! 皆さんのお邪魔をしてしまって!」
あなたが恐縮すると二人は大きい声で笑い始めた。クリスはスポーツマンというより知性的なエリートに見えるが、マックスの笑い方はヴィクトルを彷彿とさせる爆発的で快活なものだ。
「邪魔って、そんなことないって。真面目だなぁ名無しちゃんって。なぁクリス。この二人が付き合っていると想像するとなんだか面白くないか?」
「うわぁ、勝手に愛称で呼ぶのよくないですよ。ヴィクトルに怒られますよ。ごめんなさい名無しさん。彼は生まれつき馴れ馴れしい人なんです、だからこそ営業のトップなんですけどね」
「は、はあ。すごいなぁ」
「とにかく! こうして年若い女性をいい年した男の僕達が取り囲むのは健全ではありません。解放して差し上げましょうマックス」
「うるせえなぁ、お前が邪魔しに来たんだろうが。俺はちょっと彼女とお知り合いになろうと思っただけでなぁ」
年の違う同僚の二人が仲良さそうに話しているのをあなたは新鮮な思いで見つめる。前にヴィクトルも言っていたが、創業15年の会社で起業したメンバーは友人同士なため、そこまで堅苦しさをもたない社風の、雰囲気の良い職場なのだと想像できた。
「あのお二人とも、もうお仕事は終わりなんですか?」
「ええ、そうですよ。あっそうだ最後にこれだけ。名無しさん、我が社のクリスマス会に来ませんか? もちろんヴィクトルのパートナーとして」
「ええっ!?」
あなたは素で驚きおののいた。マックスもクリスも、それがいいという前向きな面持ちで佇んでいる。
「いやいや、無理ですよ! お邪魔ですし! 私部外者なので!」
「まったく部外者ではありませんよ。配偶者やパートナーがいる社員は連れてくるのがごく普通です。もちろん自由ですし一人で来られる方もいますが。そんな盛大すぎるものではなく、社内でシェフを呼んで気軽に立食するぐらいです。美味しいものやお酒がたくさん出ますよ〜社員もいつも特別メニューやケーキをプレゼントで帰りにもらえるので楽しみにしてるんです」
彼は笑顔であなたを誘い、とくに若い女子だからか食べ物で釣ろうとしてるらしかった。
きっとその場は素晴らしいものだろう。しかしどうしてもあなたには、自分は完全に場違いだと分かる。
「すっごく素晴らしいお誘いなんですけども、私なんかただのブティックの店員ですし、その場に行ってもヴィクトルのイメージを下げてしまうんじゃないかと思うので――」
かなり卑屈に聞こえてしまったかもしれないが、正直な思いだった。だが目の前の男性二人は瞬きをして見下ろしてくる。
「え? どこがですか? あぁ名無しさん! あなたのように謙虚で美しく、恋人を思いやる女性がイメージを下げるわけないじゃないですか! というか本気で言ってます? 芝居じゃないですよね?」
「いや、違うな。この子は天然かもしれない。俺の本能が告げている」
逆に芝居がかった態度のマックスが、神妙な顔つきで太い腕を組んだ。
「というか俺のほうが心配になってきたぜ。君、あいつに騙されてない? 大丈夫?」
「え! どっ、どういう意味ですか? ヴィクトルはそんな人じゃないですよね?」
「違いますよ、まったくそういう人じゃありません。高校時代から見る限り、非常に紳士的な方です」
クリスがマックスをたしなめてくれるが、あなたは段々と混乱してきた。
自分が抱いているヴィクトルと、少なくとも近い友人がもつ彼のイメージは違うのだろうか。
でも、男友達ならそんなものだろうし⋯とも考える。
「ああ彼女の瞳がぐるぐると回りだしてます。本当にすみません、困らせるつもりでは。結局こんな風に押しの強いうざ絡みをしてしまい」
「はは、そんなことないですよ、全然うざくないので大丈夫です。こうして彼のお友達とたくさんお話できてすごく嬉しいですから」
あなたは微笑みを浮かべて告げた。それは心の底からの本心である。彼らはかなり口が立つので圧倒はされるが、普通に会話できたことは有難く自信にも繋がった。
「こちらこそです、あなたは優しい方ですね。クリスマス会のことは頭の片隅にでも置いておいてくださいね、当日ぽんと立ち寄ることだって可能ですから」
ウインクして気を使ってくれたクリスと頷き合った。そして彼がまだ話し足りないマックスを連れて立ち去ろうとした時のことだ。
ようやくあなたの想い人が現れたのは。
緩やかな黒髪の長身男性が、ロビーの中から自動ドアを抜けて颯爽と向かってくる。
すらりとした完璧な体型はスーツ姿でも目立ち、とたんにその場がさらに華やかに染まるほどだ。
「ごめん、名無しちゃん! 遅くなってしまって――。⋯⋯ん⋯⋯? お前ら、何してるんだ⋯⋯?」
普段より砕けた口調になったヴィクトルが、若干青ざめた顔つきを引きつらせる。
同僚の二人は慌てることもなく彼に挨拶していたが、このあとの展開がどうなるのか、彼に会えてすごく嬉しかったあなたにも緊張をもたらした。
「ああ〜ここしか停められなかった。分かりづらいなぁ。メールしとこう」
小回りが利く車は彼の会社から数十メートル離れた場所にある。駐車枠があり時間も問題ないが、約束の時間を過ぎてもヴィクトルは現れなかった。
十分、二十分と待ちそわそわしたあなたは、車から降りてひとまず会社近くに向かう。
まさか正面に停めることは出来ないし、遠くから様子を眺めようと思っていると、近代的な高層ビルの玄関口は静かで誰もいなかった。
自動ドアの奥のほうに受付と警備員の姿が見えるだけだ。
「まだ終わってないのかな。やっぱり戻ろうかな。⋯⋯あっ、この会社だよね」
館内リストの上層部のいくつかのフロアを、彼が勤めるコンサルティング会社が占有しているようだ。
ここで働いてるんだ。そう現実味が増して、あたりの閑静なビル群を見上げながらドキドキした。
怪しまれないうちに帰ろう、そう思ったときに、建物内から青系の洒落たスーツの男性が現れた。
彼は手ぶらでラフな感じで歩いてきて、かなり屈強な体つきで背も高い。
首も太くスポーツマンのように見えたが、濃い金髪は爽やかに、でも攻めた感じでセットされていて、腕には高級時計も光っている。
「こんばんは」
軽やかに挨拶されたので、あなたも「こんばんは」と愛想よく返す。
そのまま折を見て去ろうとしたら、彼は笑みを浮かべて近づいてきた。
「大丈夫ですか? なにかお手伝いすることあります?」
「えっ! いえいえ、大丈夫です! あのちょっと、人を待っていて――」
そう言うべきではなかったのだが、不審に思われないように告げてしまった。
近くで見るとかなり筋肉の太さがわかる、がっちりした男性だ。年は30代半ばぐらいで、ヴィクトルと変わらないように思えた。
その男性は仕事終わりらしく、あなたと世間話を始めるような雰囲気を発してきた。
「待ち合わせですか。もしかして、うちの会社の人間かな。ソルヴェンテ・コンサルティングって言うんですが」
「⋯⋯あ! そうなんですか。えっと⋯⋯」
あなたは口ごもった。彼はヴィクトルと同じ会社の人だったのだ。そんな偶然にも驚いたが、彼の年代的に自分の存在が見つかったら面倒なことになるかもしれないと考えた。
しかし。
「あれ? もしかしてそうなんですね? ははは、俺の推測が正しければ、ヴィクトル・ヘイズかな?」
彼は歯を見せて笑い、気さくに話してくる。
あなたは心臓が飛び出そうになったが、ヴィクトルを明らかに知っている人物のようだった。
「え、あの、すみません!」
「いやなんで謝るの? 平気平気、心配いらないよ。俺怪しい奴じゃないから。ヴィクトルの友達なんだ」
スッとフレンドリーに入ってきた男性はにこにこしながら、あなたと程よい距離感で立ち、ジェスチャーを混じえて明るく説明した。
「⋯⋯彼のお友達なんですか? どうして私がその⋯⋯」
「それはねー、あいつに聞いたからさ。ものすごく可愛い恋人ができたって。いやその通りなんだと俺も今信じましたよ」
冗談ぽく明かされてあなたは真っ赤になる。完全なお世辞だとは分かっているけど、この人は自分のペースに相手を引き込んでしまう不思議な素質をもっていた。
「あ、はは。まさか彼が私のこと話してたとは。でも友人の方にご挨拶できて嬉しいです。すみません、こんなとこまで来てしまって」
「全然問題ないって。よかったらオフィスに案内しようか? あ、俺は同じ役員のマックス・チェンバーっていうんだ。よろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします。名無しといいます。あとオフィスなんて滅相もないので、お気遣いなく!」
ぶんぶんと首を振って断ると彼に楽しそうに笑われた。
外では一部の隙もなさそうなヴィクトルのイメージから、勝手に周りの人達も同じ雰囲気を想像していたけれど、この人は全然違うタイプに見える。
話を聞けば大学の同じボート部だったらしいので、同い年の40歳なのだが。ヴィクトルと同じくかなり若々しい。
「いやぁ会えてよかったな。ヴィクトルは今取引先との話し合いが延びてるんじゃないかな? でももうすぐ来ると思うよ」
「そうなんですか? 教えてくださってありがとうございます。じゃあ私は向こうで待ってますね――」
もう一度挨拶をし、きりのいいとこで去ろうとすると、建物の奥のほうからまた違う人物が現れた。
あなたは今度はしっかり足を止める。育ちのよさそうな30前後の男性で、金髪をきっちり横分けにしたクリスだ。
彼はヴィクトルの部下で以前ジムで会ったことがあり、二人で抱き合ってるところまで見られていた。
クリスは目を凝らし、まっすぐあなた達のもとに向かってきた。
「あぁ、名無しさんじゃないですか! こんばんは。大丈夫ですか? どうしたんです、この男性にまたナンパされてしまったんですか?」
「いえ! 全然違います!」
「またってなんだよクリス、お前彼女を知ってるのか?」
「そうですよ。あなたよりも先にヴィクトルに紹介されましたから」
ふふん、と鼻を鳴らしたクリスは、あなたに対してにっと笑みを作る。
「ヴィクトルはじきに来ると思いますよ。あぁでも僕が先に着いてよかったです。窓からあなたがマックスに絡まれている姿が見えましてね。こうして助けに来たんですよ」
「えっ! そうなんですか? いやなんて言えばいいのか⋯⋯ただご挨拶してただけなんですけど。なんかすみません! 皆さんのお邪魔をしてしまって!」
あなたが恐縮すると二人は大きい声で笑い始めた。クリスはスポーツマンというより知性的なエリートに見えるが、マックスの笑い方はヴィクトルを彷彿とさせる爆発的で快活なものだ。
「邪魔って、そんなことないって。真面目だなぁ名無しちゃんって。なぁクリス。この二人が付き合っていると想像するとなんだか面白くないか?」
「うわぁ、勝手に愛称で呼ぶのよくないですよ。ヴィクトルに怒られますよ。ごめんなさい名無しさん。彼は生まれつき馴れ馴れしい人なんです、だからこそ営業のトップなんですけどね」
「は、はあ。すごいなぁ」
「とにかく! こうして年若い女性をいい年した男の僕達が取り囲むのは健全ではありません。解放して差し上げましょうマックス」
「うるせえなぁ、お前が邪魔しに来たんだろうが。俺はちょっと彼女とお知り合いになろうと思っただけでなぁ」
年の違う同僚の二人が仲良さそうに話しているのをあなたは新鮮な思いで見つめる。前にヴィクトルも言っていたが、創業15年の会社で起業したメンバーは友人同士なため、そこまで堅苦しさをもたない社風の、雰囲気の良い職場なのだと想像できた。
「あのお二人とも、もうお仕事は終わりなんですか?」
「ええ、そうですよ。あっそうだ最後にこれだけ。名無しさん、我が社のクリスマス会に来ませんか? もちろんヴィクトルのパートナーとして」
「ええっ!?」
あなたは素で驚きおののいた。マックスもクリスも、それがいいという前向きな面持ちで佇んでいる。
「いやいや、無理ですよ! お邪魔ですし! 私部外者なので!」
「まったく部外者ではありませんよ。配偶者やパートナーがいる社員は連れてくるのがごく普通です。もちろん自由ですし一人で来られる方もいますが。そんな盛大すぎるものではなく、社内でシェフを呼んで気軽に立食するぐらいです。美味しいものやお酒がたくさん出ますよ〜社員もいつも特別メニューやケーキをプレゼントで帰りにもらえるので楽しみにしてるんです」
彼は笑顔であなたを誘い、とくに若い女子だからか食べ物で釣ろうとしてるらしかった。
きっとその場は素晴らしいものだろう。しかしどうしてもあなたには、自分は完全に場違いだと分かる。
「すっごく素晴らしいお誘いなんですけども、私なんかただのブティックの店員ですし、その場に行ってもヴィクトルのイメージを下げてしまうんじゃないかと思うので――」
かなり卑屈に聞こえてしまったかもしれないが、正直な思いだった。だが目の前の男性二人は瞬きをして見下ろしてくる。
「え? どこがですか? あぁ名無しさん! あなたのように謙虚で美しく、恋人を思いやる女性がイメージを下げるわけないじゃないですか! というか本気で言ってます? 芝居じゃないですよね?」
「いや、違うな。この子は天然かもしれない。俺の本能が告げている」
逆に芝居がかった態度のマックスが、神妙な顔つきで太い腕を組んだ。
「というか俺のほうが心配になってきたぜ。君、あいつに騙されてない? 大丈夫?」
「え! どっ、どういう意味ですか? ヴィクトルはそんな人じゃないですよね?」
「違いますよ、まったくそういう人じゃありません。高校時代から見る限り、非常に紳士的な方です」
クリスがマックスをたしなめてくれるが、あなたは段々と混乱してきた。
自分が抱いているヴィクトルと、少なくとも近い友人がもつ彼のイメージは違うのだろうか。
でも、男友達ならそんなものだろうし⋯とも考える。
「ああ彼女の瞳がぐるぐると回りだしてます。本当にすみません、困らせるつもりでは。結局こんな風に押しの強いうざ絡みをしてしまい」
「はは、そんなことないですよ、全然うざくないので大丈夫です。こうして彼のお友達とたくさんお話できてすごく嬉しいですから」
あなたは微笑みを浮かべて告げた。それは心の底からの本心である。彼らはかなり口が立つので圧倒はされるが、普通に会話できたことは有難く自信にも繋がった。
「こちらこそです、あなたは優しい方ですね。クリスマス会のことは頭の片隅にでも置いておいてくださいね、当日ぽんと立ち寄ることだって可能ですから」
ウインクして気を使ってくれたクリスと頷き合った。そして彼がまだ話し足りないマックスを連れて立ち去ろうとした時のことだ。
ようやくあなたの想い人が現れたのは。
緩やかな黒髪の長身男性が、ロビーの中から自動ドアを抜けて颯爽と向かってくる。
すらりとした完璧な体型はスーツ姿でも目立ち、とたんにその場がさらに華やかに染まるほどだ。
「ごめん、名無しちゃん! 遅くなってしまって――。⋯⋯ん⋯⋯? お前ら、何してるんだ⋯⋯?」
普段より砕けた口調になったヴィクトルが、若干青ざめた顔つきを引きつらせる。
同僚の二人は慌てることもなく彼に挨拶していたが、このあとの展開がどうなるのか、彼に会えてすごく嬉しかったあなたにも緊張をもたらした。
