美オヤジを誘って囲われて救われる話
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「ん、んん、ヴィクトル⋯⋯!」
あなたはホテルのジムから部屋に帰るなり、彼の腕に囲われ、情熱的な口づけをされていた。
「⋯⋯んっ、はぁ、はぁ⋯⋯」
熱でかすむ視界を開くと、ヴィクトルも吐息まじりにうっとりと見つめてくる。
「ごめんね、さっきの言葉が嬉しくて」
抱きしめる力がこめられ、また唇を優しく重ねられた。
二人は見つめ合い、ひとまず自制したヴィクトルは、あなたと一緒に部屋のソファに座る。
「⋯⋯あ、あのね」
「うん。なんだい、名無しちゃん。何でも聞くよ。それに俺に聞きたいことがあったら教えて。どんなことでも話すからね」
彼が真剣に伝えてくれた表情には、少なからず緊張感が漂う。
きっとあなたが告白の返事を保留したにも関わらず、「好きだ」という気持ちを告げてしまったからだろう。
すぐに付き合えない理由が自分にあると思ったのかもしれない。
そうではないのだが、心のどこかで気がかりなことは確かにあった。だからまず、あなたは率直に尋ねてみようと考える。
「あの⋯⋯ヴィクトルって、遊び人なの?」
とはいえこの聞き方は、あまりに失礼だろうと、彼のぎょっと見開かれた瞳で気付いた。
彼の顔つきがみるみるうちに焦っていく。
「やっぱり、俺の懸念ってそれかい?」
「い、いや。だって女の子の扱いが上手だし、クリスさんも夜の付き合いがって言ってたし」
責めるつもりなどなかったけれど、こちらも焦って説明する。
ヴィクトルは身を乗り出し、こんなことを言った。
「女の子の扱いは分からないけど、この年だからある程度の経験はあるよ。でもさっきのクリスの話は、あれはただの仕事終わりの付き合いなんだ。⋯⋯正直に言うと、ラウンジで女性たちと飲むことはよくあった。だがその後にどうこうってことは一度もないんだ」
どうにか信じてもらおうと、こんな美しい大人の男性が懸命にあなたに訴えてくる。
「⋯⋯そうなの?」
「ああ、本当だよ。俺はあんまり心を開くタイプじゃないからね。軽く見えるかもしれないけど」
彼が苦笑する姿は余裕のある大人そのもので、少しじれったい思いがする。
「じゃあどうしてあの時、私のことは受け入れてくれたの?」
彼は一瞬言葉に詰まる。
こうしてはっきりと核心に触れたことはなかった。
「それはね、名無しちゃん。君を一目見て、可愛いなと思ったのは事実だ。けどそれ以上に、俺を不安げに見上げてきたから、無性に気になったんだよな。⋯⋯慣れてるのか慣れてないのか、分からないというか。一瞬のことだったけれど、君の内面に強く興味を惹かれたんだよ」
ヴィクトルは当時のことを真っ直ぐに答えてくれた。
自分で聞いておいて気恥ずかしくなり、あなたは口ごもる。
すると彼は頬を優しく撫で、気持ちをなだめようとしてくれた。
「今となっては君の不安も分かったけれどね。その後のことは、知っている通りさ。どんどん君のことが好きになって、もうこんな状態だ。⋯⋯それにさっきの話だけど、俺のことは心配することないよ。君に出会ってから、そういう所にも行かなくなったんだ」
「行ってもいいよ、別に。仕事ならしょうがないし⋯」
あなたは気持ちとは裏腹なことを言う。自分は若いからそれだけで追いつけないし、理解がある人間だと背伸びしたかったのだ。
しかしヴィクトルは悲しみを隠さなかった。
ふたたび彼の胸にぎゅうっと抱き寄せられる。
「そんなこと言わないで、名無しちゃん。もっと俺を束縛してくれよ」
「⋯⋯ええっ。無理だよそんなの。私なんか、ヴィクトルのそばにいていいのかなって思うんだもん」
抱擁に包まれ、弱い心が顔を出す。
根本はそれだった。彼のそばにいていい自信がなくて、ずっと踏みとどまっていたのだ。
「いて欲しいに決まってるだろう? 俺のほうが、君にはふさわしくないよなって毎日悩んでるのに。⋯⋯でもそれ以上に一緒にいたいからさ。ごめんね、俺しつこくて」
「ううん⋯っ」
彼も悩んでるんだ⋯⋯。そんなことを明かされたのは初めてだった。
「本当に私でいいの? 私なにも持ってないよ。ただのブティックの店員だし、あっ、お店は素晴らしくて誇りはあるけど、でも、給料もそんなにないし。家もまだ決まってないし」
だんだん言ってて悲しくなってくるが、自分も弱みをさらけ出す。すると目の前のヴィクトルは、眉が優しく下がってきて、なんだか愛情深い顔つきになった。
「そんなこと気にしてるの。今言ったことのどれも、君の素晴らしさを損なうものじゃないだろう。俺は毎日仕事に真摯に取り組む君がすごいなって思うよ。それに自分がここに帰ってきて、おかえりって笑顔で言ってくれるの見て、生きててよかったって思うぐらいの存在なんだよ?」
「ええ! それは言い過ぎだよ!」
こちらが仰天するとヴィクトルはくすくすと笑う。
褒められすぎて恥ずかしくなったが、こんな自分でも大丈夫なんだって、彼の嬉しそうな顔を見ているとだんだん気分が和らいできた。
あなたは自分からヴィクトルの胸にもぐりこむ。
「どうしたの? 可愛いな」
「⋯⋯一緒にいたいよ。ヴィクトル」
抱きかかえられ目を閉じたまま、勇気を出して告げた。
彼は一瞬黙り、あなたの頬に手を添える。
「本当? じゃあ俺の⋯⋯恋人になってくれる?」
互いの瞳に吸い込まれるように、見つめ合った。
あなたがすべてを受け入れて頷くと、彼は喜びに満ちあふれる。
「ああ、嬉しいな。信じられないぐらいだ。ありがとう、名無しちゃん」
「ん、んんっ、私も⋯⋯!」
しばらく熱い抱擁とキスを受けて、体がふらふらになった。
大きな体に抱き込まれ、離してもらえそうにない。
本当に、恋人になっちゃったんだ。
気持ちがまっすぐ繋がって、ほかを超越してしまった感覚がある。
問題は色々残ってそうだけど――。
「あっ!!」
「⋯⋯えっ? なにっ?」
あなたの大声にヴィクトルはびくりと肩を揺らした。
まだ大事なことを言っていない。
そもそもその話を先にしようと思っていたのだが。
「どうしたいんだい。まだ俺に心配事ある? なんでも言って」
「ううん違うの。私の問題なんだ。あのね、ヴィクトル。私、ここから出ていこうと思って」
強い覚悟をもって伝えると、彼は相当なショックを受けて固まった。
「⋯⋯え? どうして? たった今気持ちを交わしあったのに」
「うんっ。だから余計に、もっとちゃんとしないとって。いつまでもここにお世話になってたら申し訳ないし、アパートも候補見つけたんだ。⋯⋯離れるのはさみしいけど⋯⋯」
気持ちがしょんぼりとしてくる。
本当に大げさじゃなく、この部屋で彼と過ごせたことは、人生の中で一番楽しくて素晴らしい時間だったのだ。
「そうか⋯⋯。そうだよね。ずっとここでなんて、現実的じゃないよな。⋯⋯でもね名無しちゃん。実は俺も、このホテルは解約しようと思ってたんだ」
「⋯⋯えっ? どういうこと?」
「だって、いつまでも大切な君をここに住ませるわけにはいかないだろう? だから――」
突然の話を耳にして、あなたは急に目の前が真っ暗になる。
不安に駆られたようにヴィクトルの腕を掴んだ。
「そんなのだめだよ! 私のせいで、ヴィクトルの生活に影響出ちゃったら、ほんとにどうすればいいのっ?」
「いや、違うよ、落ち着いて」
想像と違った反応を受け、ヴィクトルは慌てる。
事情を詳しく聞くと、彼にも考えがあるらしかった。
「もちろん君とのことを勝手に考えてしまった俺のせいなんだけど、これは自分自身の問題でもあってね。ホテルに住んでるのは今、会社のプロジェクトが忙しいっていうのもあるんだが、なんというか、仕事以外のことを考えるのが面倒でさ。自分を放棄してた面が強いんだ」
彼は考え込むように指を組み、こうなった経緯を切々と語ってくれた。
「俺は大学の友人達と共同で会社を立ち上げて、創業時からの役員だから、朝から晩まで忙しくてね。仕事は好きだからいいんだけど、それ以外の自分はどんなだろうって、もう長く忘れてしまっていた。そこに興味も意義も見出さないまま、ただやるべきことをこなして過ごしてきたよ。⋯⋯でも君に出会って、それを思い出したんだ。同時にこのままじゃいけないと思った。もっと人間的に生活して、君にふさわしくならなきゃって。そうやってもっと俺を知ってもらって、好きになってもらえたらなって⋯⋯願ってしまったんだ」
あなたはじっと話を聞いていた。彼の熱い思いと決意が迫ってくる。
ヴィクトルは仕事に邁進してきたが、一方で自分らしさをどこかに置き去りにしてしまったと告白した。
それに気づき取り戻したいと思ったのは、他ならぬあなたとの出会いだったのだと、彼は教えてくれたのだった。
「⋯⋯私はもうヴィクトルのこと、たくさん知ってるよ。外でも本当に完璧で素敵だし、きっと仕事中も惚れ惚れしちゃうんだろうなって想像できる。でも、二人でいるときも大好きだな。とくにいきなり大声で笑うところ。あと、クールな風に見えてすごい心配性なところも」
「ははっ。ありがとう。それは君にだけだけどね。⋯⋯ほんとに名無しちゃんにだけだよ。俺は本来冷たいと思う」
「冷たくないよ。温かい人だよ、ヴィクトルは。だからこんなに惹かれたんだ」
あなたは膝で立ちヴィクトルを抱きしめる。
自分の胸に招き、黒髪の後ろを撫でていると、もっと繋がりが深まった気がした。
「⋯⋯ああ、君と離れるのが本当に堪える。本当に出ていってしまうのかい? 俺の家においでよ。一緒に住もう? ⋯⋯ダメ?」
目線が下な大人の彼に願われると、決心が揺らぐ。
「で、でも⋯⋯もう決めたから」
「そんな。君は結構頑固だな。⋯⋯分かったぞ、じゃあ一回うちに遊びに来るのはどうだい? ねっ? それで決めよう」
本当に離れたくない様子だ。
その世にも珍しい必死さに、あなたは思わず笑みがこぼれる。
「ヴィクトルの家に行ってもいいの?」
「もちろん。広いから君のスペースは全然あるよ。⋯⋯まあ一緒に過ごすなら俺は狭いほうがいいけどね」
あなたが家に来てくれそうだと分かれば、途端に彼は余裕を漂わせウインクする。
これからどうなることやら、また分からなくなった。
あなたはホテルのジムから部屋に帰るなり、彼の腕に囲われ、情熱的な口づけをされていた。
「⋯⋯んっ、はぁ、はぁ⋯⋯」
熱でかすむ視界を開くと、ヴィクトルも吐息まじりにうっとりと見つめてくる。
「ごめんね、さっきの言葉が嬉しくて」
抱きしめる力がこめられ、また唇を優しく重ねられた。
二人は見つめ合い、ひとまず自制したヴィクトルは、あなたと一緒に部屋のソファに座る。
「⋯⋯あ、あのね」
「うん。なんだい、名無しちゃん。何でも聞くよ。それに俺に聞きたいことがあったら教えて。どんなことでも話すからね」
彼が真剣に伝えてくれた表情には、少なからず緊張感が漂う。
きっとあなたが告白の返事を保留したにも関わらず、「好きだ」という気持ちを告げてしまったからだろう。
すぐに付き合えない理由が自分にあると思ったのかもしれない。
そうではないのだが、心のどこかで気がかりなことは確かにあった。だからまず、あなたは率直に尋ねてみようと考える。
「あの⋯⋯ヴィクトルって、遊び人なの?」
とはいえこの聞き方は、あまりに失礼だろうと、彼のぎょっと見開かれた瞳で気付いた。
彼の顔つきがみるみるうちに焦っていく。
「やっぱり、俺の懸念ってそれかい?」
「い、いや。だって女の子の扱いが上手だし、クリスさんも夜の付き合いがって言ってたし」
責めるつもりなどなかったけれど、こちらも焦って説明する。
ヴィクトルは身を乗り出し、こんなことを言った。
「女の子の扱いは分からないけど、この年だからある程度の経験はあるよ。でもさっきのクリスの話は、あれはただの仕事終わりの付き合いなんだ。⋯⋯正直に言うと、ラウンジで女性たちと飲むことはよくあった。だがその後にどうこうってことは一度もないんだ」
どうにか信じてもらおうと、こんな美しい大人の男性が懸命にあなたに訴えてくる。
「⋯⋯そうなの?」
「ああ、本当だよ。俺はあんまり心を開くタイプじゃないからね。軽く見えるかもしれないけど」
彼が苦笑する姿は余裕のある大人そのもので、少しじれったい思いがする。
「じゃあどうしてあの時、私のことは受け入れてくれたの?」
彼は一瞬言葉に詰まる。
こうしてはっきりと核心に触れたことはなかった。
「それはね、名無しちゃん。君を一目見て、可愛いなと思ったのは事実だ。けどそれ以上に、俺を不安げに見上げてきたから、無性に気になったんだよな。⋯⋯慣れてるのか慣れてないのか、分からないというか。一瞬のことだったけれど、君の内面に強く興味を惹かれたんだよ」
ヴィクトルは当時のことを真っ直ぐに答えてくれた。
自分で聞いておいて気恥ずかしくなり、あなたは口ごもる。
すると彼は頬を優しく撫で、気持ちをなだめようとしてくれた。
「今となっては君の不安も分かったけれどね。その後のことは、知っている通りさ。どんどん君のことが好きになって、もうこんな状態だ。⋯⋯それにさっきの話だけど、俺のことは心配することないよ。君に出会ってから、そういう所にも行かなくなったんだ」
「行ってもいいよ、別に。仕事ならしょうがないし⋯」
あなたは気持ちとは裏腹なことを言う。自分は若いからそれだけで追いつけないし、理解がある人間だと背伸びしたかったのだ。
しかしヴィクトルは悲しみを隠さなかった。
ふたたび彼の胸にぎゅうっと抱き寄せられる。
「そんなこと言わないで、名無しちゃん。もっと俺を束縛してくれよ」
「⋯⋯ええっ。無理だよそんなの。私なんか、ヴィクトルのそばにいていいのかなって思うんだもん」
抱擁に包まれ、弱い心が顔を出す。
根本はそれだった。彼のそばにいていい自信がなくて、ずっと踏みとどまっていたのだ。
「いて欲しいに決まってるだろう? 俺のほうが、君にはふさわしくないよなって毎日悩んでるのに。⋯⋯でもそれ以上に一緒にいたいからさ。ごめんね、俺しつこくて」
「ううん⋯っ」
彼も悩んでるんだ⋯⋯。そんなことを明かされたのは初めてだった。
「本当に私でいいの? 私なにも持ってないよ。ただのブティックの店員だし、あっ、お店は素晴らしくて誇りはあるけど、でも、給料もそんなにないし。家もまだ決まってないし」
だんだん言ってて悲しくなってくるが、自分も弱みをさらけ出す。すると目の前のヴィクトルは、眉が優しく下がってきて、なんだか愛情深い顔つきになった。
「そんなこと気にしてるの。今言ったことのどれも、君の素晴らしさを損なうものじゃないだろう。俺は毎日仕事に真摯に取り組む君がすごいなって思うよ。それに自分がここに帰ってきて、おかえりって笑顔で言ってくれるの見て、生きててよかったって思うぐらいの存在なんだよ?」
「ええ! それは言い過ぎだよ!」
こちらが仰天するとヴィクトルはくすくすと笑う。
褒められすぎて恥ずかしくなったが、こんな自分でも大丈夫なんだって、彼の嬉しそうな顔を見ているとだんだん気分が和らいできた。
あなたは自分からヴィクトルの胸にもぐりこむ。
「どうしたの? 可愛いな」
「⋯⋯一緒にいたいよ。ヴィクトル」
抱きかかえられ目を閉じたまま、勇気を出して告げた。
彼は一瞬黙り、あなたの頬に手を添える。
「本当? じゃあ俺の⋯⋯恋人になってくれる?」
互いの瞳に吸い込まれるように、見つめ合った。
あなたがすべてを受け入れて頷くと、彼は喜びに満ちあふれる。
「ああ、嬉しいな。信じられないぐらいだ。ありがとう、名無しちゃん」
「ん、んんっ、私も⋯⋯!」
しばらく熱い抱擁とキスを受けて、体がふらふらになった。
大きな体に抱き込まれ、離してもらえそうにない。
本当に、恋人になっちゃったんだ。
気持ちがまっすぐ繋がって、ほかを超越してしまった感覚がある。
問題は色々残ってそうだけど――。
「あっ!!」
「⋯⋯えっ? なにっ?」
あなたの大声にヴィクトルはびくりと肩を揺らした。
まだ大事なことを言っていない。
そもそもその話を先にしようと思っていたのだが。
「どうしたいんだい。まだ俺に心配事ある? なんでも言って」
「ううん違うの。私の問題なんだ。あのね、ヴィクトル。私、ここから出ていこうと思って」
強い覚悟をもって伝えると、彼は相当なショックを受けて固まった。
「⋯⋯え? どうして? たった今気持ちを交わしあったのに」
「うんっ。だから余計に、もっとちゃんとしないとって。いつまでもここにお世話になってたら申し訳ないし、アパートも候補見つけたんだ。⋯⋯離れるのはさみしいけど⋯⋯」
気持ちがしょんぼりとしてくる。
本当に大げさじゃなく、この部屋で彼と過ごせたことは、人生の中で一番楽しくて素晴らしい時間だったのだ。
「そうか⋯⋯。そうだよね。ずっとここでなんて、現実的じゃないよな。⋯⋯でもね名無しちゃん。実は俺も、このホテルは解約しようと思ってたんだ」
「⋯⋯えっ? どういうこと?」
「だって、いつまでも大切な君をここに住ませるわけにはいかないだろう? だから――」
突然の話を耳にして、あなたは急に目の前が真っ暗になる。
不安に駆られたようにヴィクトルの腕を掴んだ。
「そんなのだめだよ! 私のせいで、ヴィクトルの生活に影響出ちゃったら、ほんとにどうすればいいのっ?」
「いや、違うよ、落ち着いて」
想像と違った反応を受け、ヴィクトルは慌てる。
事情を詳しく聞くと、彼にも考えがあるらしかった。
「もちろん君とのことを勝手に考えてしまった俺のせいなんだけど、これは自分自身の問題でもあってね。ホテルに住んでるのは今、会社のプロジェクトが忙しいっていうのもあるんだが、なんというか、仕事以外のことを考えるのが面倒でさ。自分を放棄してた面が強いんだ」
彼は考え込むように指を組み、こうなった経緯を切々と語ってくれた。
「俺は大学の友人達と共同で会社を立ち上げて、創業時からの役員だから、朝から晩まで忙しくてね。仕事は好きだからいいんだけど、それ以外の自分はどんなだろうって、もう長く忘れてしまっていた。そこに興味も意義も見出さないまま、ただやるべきことをこなして過ごしてきたよ。⋯⋯でも君に出会って、それを思い出したんだ。同時にこのままじゃいけないと思った。もっと人間的に生活して、君にふさわしくならなきゃって。そうやってもっと俺を知ってもらって、好きになってもらえたらなって⋯⋯願ってしまったんだ」
あなたはじっと話を聞いていた。彼の熱い思いと決意が迫ってくる。
ヴィクトルは仕事に邁進してきたが、一方で自分らしさをどこかに置き去りにしてしまったと告白した。
それに気づき取り戻したいと思ったのは、他ならぬあなたとの出会いだったのだと、彼は教えてくれたのだった。
「⋯⋯私はもうヴィクトルのこと、たくさん知ってるよ。外でも本当に完璧で素敵だし、きっと仕事中も惚れ惚れしちゃうんだろうなって想像できる。でも、二人でいるときも大好きだな。とくにいきなり大声で笑うところ。あと、クールな風に見えてすごい心配性なところも」
「ははっ。ありがとう。それは君にだけだけどね。⋯⋯ほんとに名無しちゃんにだけだよ。俺は本来冷たいと思う」
「冷たくないよ。温かい人だよ、ヴィクトルは。だからこんなに惹かれたんだ」
あなたは膝で立ちヴィクトルを抱きしめる。
自分の胸に招き、黒髪の後ろを撫でていると、もっと繋がりが深まった気がした。
「⋯⋯ああ、君と離れるのが本当に堪える。本当に出ていってしまうのかい? 俺の家においでよ。一緒に住もう? ⋯⋯ダメ?」
目線が下な大人の彼に願われると、決心が揺らぐ。
「で、でも⋯⋯もう決めたから」
「そんな。君は結構頑固だな。⋯⋯分かったぞ、じゃあ一回うちに遊びに来るのはどうだい? ねっ? それで決めよう」
本当に離れたくない様子だ。
その世にも珍しい必死さに、あなたは思わず笑みがこぼれる。
「ヴィクトルの家に行ってもいいの?」
「もちろん。広いから君のスペースは全然あるよ。⋯⋯まあ一緒に過ごすなら俺は狭いほうがいいけどね」
あなたが家に来てくれそうだと分かれば、途端に彼は余裕を漂わせウインクする。
これからどうなることやら、また分からなくなった。
