美オヤジを誘って囲われて救われる話
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アパートを出たあと、車の中は重い空気だった。
難しい顔で運転していたヴィクトルに話しかけづらかったが、やがて車が道脇に停まった。
「⋯⋯ごめんね、名無しちゃん。最後我慢できなくなって。怖がらせちゃったよな」
彼は苦悶を浮かべて助手席のあなたへ向く。
でもあなたは勢いよく首を振った。
「ううん! そんなことないよ。こっちこそ、不快な目に合わせちゃってごめんね。⋯⋯でもヴィクトルが本気で怒ってくれて、嬉しかったよ」
あなたはなんとか明るく振る舞おうとし、微笑みを浮かべた。彼に対する申し訳なさは、消えようもないけれど。
するとヴィクトルはあなたの方に身を寄せ、体を抱きしめる。
「当然だよ。もうあんな風に、君を誰かに傷つけさせるなんてしないから。俺が一緒にいるからさ」
彼の心は痛んだ様子だった。そして同時に、あなたへの強い思いを再確認して、腕に力がこもる。
ヴィクトルに抱かれていると、さっきまでの吹き荒れた心が途端に治まり、心地よい安堵に包まれるから不思議だ。
「ふふっ⋯⋯ありがとう」
「⋯⋯ん? 名無しちゃん、笑ってる?」
心配になったのか胸から離し、彼が顔色をうかがうようにのぞきこんでくる。
なぜだか、あなたの表情には微笑みが浮かぶ。
苦痛から救われたことによるのだろうか。きっとすべては、彼のもとにいて気が抜けてしまったからだ。
「俺は本気だよ? あれ、もしかしてさっきの冗談だと思ってる? あいつを挑発しただけとか」
だが何も知らないヴィクトルは、大人らしさの仮面が取れ、焦りがにじむ。
あなたは彼の発言の真意を疑ったわけではなかったが、そこに触れられるとどうしていいか分からなかった。
「あの、本気って⋯⋯どういうこと?」
「いやあのね。伝わってなかったか⋯? 困ったな」
彼はぶつぶつと話し始め、しかし急に何かを思いついたようだった。
「――いやこんな場所じゃだめだな。俺はもっとちゃんとしたいんだ。⋯⋯そうだ名無しちゃん、お腹空かない? なにか食べて帰ろうか。こんな日はぱぁっとやらないとさ」
いきなり食事の誘いを美しく細められた横目に受ける。
「お腹⋯⋯確かに空いたね。わかった! 今日はたくさん迷惑かけちゃったし、私にご馳走させて、お願い」
「いやダメだよ。俺そんなつもりで言ったんじゃないからね。あ、そうだ。中華なんかどうかな。行きつけのところがあるんだよ」
やたらと慌ただしく提案する彼が、少し不自然に映る。
しかしきっと元気づけようとしてくれてるのだろうと考え、彼に同意した。
そうして車はホテルから遠くない、街の中華料理屋へ向かった。
ーーー
ヴィクトルとレストランへ行くのは、今回が初めてだ。ホテルの食事は部屋で食べたことがあるが、彼は普段仕事先で夕食も予定が組まれていることが多かったためである。
あなたはもしすごい高級店だったらどうしようと戦々恐々としていたけれど、到着したのはオシャレながら家族連れでも入れそうなモダンな料理屋だった。
「ここなんだね。いい雰囲気だし美味しそうな匂いがするなぁ。ドレスコードあったらどうしようかと思っちゃったよ」
「あのねえ。君は俺のことなんだと思ってるんだい? 毎日そんな堅苦しいとこなんか行かないよ。俺はジャンクフードも大好きだからね」
「うそ!」
入口で驚くと彼は「ほんと」と悪戯っぽく笑った。
まだまだ知らないことが多すぎる。話によるとヴィクトルはプライベートでは気取らない場所のほうが好きらしかった。
思ったより共通点があるかもしれないと、あなたは和む。
二人は店員に案内されたのだが、そのときに気になることがあった。
「おおヴィクトルさん、こんな時間に珍しいねえ」
「ごめんねヤンさん。予約してないんだが、二人席空いてるかな?」
「空いてるよ空いてるよ。特等席にどうぞ。⋯⋯フフッ」
彼より一回り上ほどの中国人の男性が、あなたを見てにんまりと笑みを浮かべる。
何事かと思ったがそそくさとテーブル席に案内された。
外のライトアップされたテラスがよく見える、落ち着ける席だ。
「うわぁお洒落だね。こんなところで中華食べれるんだ」
「うん。名無しちゃんも中華好き?」
「好き! っていってもテイクアウトが多いけど」
あなたは照れてはにかむ。
今までは確実な経済格差を感じてあまり自分のことを話さなかったが、思いきって明かした。
すると彼は「へえ、俺もアジアの焼きそば好きだよ」と意気投合してくれたので嬉しかった。
やがて食事も運ばれてきて、あなたはヴィクトルとの初の外食を楽しんだ。
「ああやっぱりいいねえ。君とのデートは絶対楽しいと思ってたよ俺は」
「これってデートなの?」
「違うの?」
大人な雰囲気むんむんの彼が目を丸くする。
どうやらあなたの素の態度に翻弄されることが多いようだ。
「名無しちゃん。食べ終わったら外にでない? ここからの風景結構きれいなんだよ」
彼に誘われて、二人はやがて外のテラスへ出た。
教えられたとおり、小高い丘にあるレストランは、街のきらきらした明かりや橋、遠くの河川まで一望できる。
「すごーい、きれい⋯⋯ここいいスポットだねえ」
あなたは見とれるように感嘆した。
今日の怒涛の心の動きが、静まっていくようだった。
寒空に息をふうと吐くと、ヴィクトルがスーツのジャケットを脱いであなたの肩にかけてくれる。
彼の優しさと香りに包まれて、笑顔でお礼を言った。
一瞬、こういうことに慣れてるのかな?
とも思ったが、彼は立派な大人の男だ。モテるだろうし当然だろうとも考える。
そう思うと、少し切ない気分にもなった。
「名無しちゃん。さっきの話の続きなんだけど⋯⋯」
「んっ?」
風景に気を取られていたあなたは、彼の緊張を浮かべた表情にドキリとする。
あなたは忘れたわけでもなければ、とぼけてるわけでもない。若いが恋愛経験のある女性なのだ。自分も誠実に向き直り、耳を傾けた。
「俺は、君のことが本気だ。名無しちゃんのことが好きで、ここのところは毎日、君のことばかり考えてしまってる。⋯⋯あいつが言ったように、こんな浮ついた見た目の、おっさんだけれどね。⋯⋯でも本気で⋯⋯ああ、自分で言ってて情けないな――」
ヴィクトルは普段、もっとキザで完璧な男性のはずだ。少なくとも初めて駅で声をかけたときは、そうだった。
しかし今は、あなたを前にしてまるで初めての恋のごとく、もがき、真剣に気持ちを伝えようとしている。
「こんな俺だけど、君に交際を申し込みたい。だめだろうか⋯⋯?」
あなたは彼の前で、深く聞き入りながらも、立ち尽くしていた。
そんな様子にヴィクトルも段々表情に不安が入り混じる。
「あの⋯⋯⋯⋯」
あなたは言いかけたが、なんと話し始めていいか迷っていた。色々な思いがよぎる。
そのひとつひとつが膨らみすぎて、どう言葉にすればいいか頭がパンクしてしまったのだ。
そんな状態に、ヴィクトルは動揺したのかもしれない。きっと経験豊富な彼が直面したことのない時間だったのだろう。
「わかった。ごめん、急にこんなことを言って。⋯⋯そうだよな。あんな別れ話を元彼としたあとに、たたみかけるように⋯⋯本当に俺は馬鹿だ。自分のことしか考えていない」
「い、いや⋯⋯ちが――」
「悪かった、名無しちゃん! そうだ、俺の気持ちのことは頭の隅にでも考えておいてくれないか? 返事は急がないよ。⋯⋯俺のことを見て、決めてもらえたら嬉しいな。君にもっと好きになってもらえるように頑張るからさ」
ヴィクトルにそう表明されて、あなたは瞬きをする。
しかし彼の黒い瞳は本気で見つめてきて、固く決意したようだった。
難しい顔で運転していたヴィクトルに話しかけづらかったが、やがて車が道脇に停まった。
「⋯⋯ごめんね、名無しちゃん。最後我慢できなくなって。怖がらせちゃったよな」
彼は苦悶を浮かべて助手席のあなたへ向く。
でもあなたは勢いよく首を振った。
「ううん! そんなことないよ。こっちこそ、不快な目に合わせちゃってごめんね。⋯⋯でもヴィクトルが本気で怒ってくれて、嬉しかったよ」
あなたはなんとか明るく振る舞おうとし、微笑みを浮かべた。彼に対する申し訳なさは、消えようもないけれど。
するとヴィクトルはあなたの方に身を寄せ、体を抱きしめる。
「当然だよ。もうあんな風に、君を誰かに傷つけさせるなんてしないから。俺が一緒にいるからさ」
彼の心は痛んだ様子だった。そして同時に、あなたへの強い思いを再確認して、腕に力がこもる。
ヴィクトルに抱かれていると、さっきまでの吹き荒れた心が途端に治まり、心地よい安堵に包まれるから不思議だ。
「ふふっ⋯⋯ありがとう」
「⋯⋯ん? 名無しちゃん、笑ってる?」
心配になったのか胸から離し、彼が顔色をうかがうようにのぞきこんでくる。
なぜだか、あなたの表情には微笑みが浮かぶ。
苦痛から救われたことによるのだろうか。きっとすべては、彼のもとにいて気が抜けてしまったからだ。
「俺は本気だよ? あれ、もしかしてさっきの冗談だと思ってる? あいつを挑発しただけとか」
だが何も知らないヴィクトルは、大人らしさの仮面が取れ、焦りがにじむ。
あなたは彼の発言の真意を疑ったわけではなかったが、そこに触れられるとどうしていいか分からなかった。
「あの、本気って⋯⋯どういうこと?」
「いやあのね。伝わってなかったか⋯? 困ったな」
彼はぶつぶつと話し始め、しかし急に何かを思いついたようだった。
「――いやこんな場所じゃだめだな。俺はもっとちゃんとしたいんだ。⋯⋯そうだ名無しちゃん、お腹空かない? なにか食べて帰ろうか。こんな日はぱぁっとやらないとさ」
いきなり食事の誘いを美しく細められた横目に受ける。
「お腹⋯⋯確かに空いたね。わかった! 今日はたくさん迷惑かけちゃったし、私にご馳走させて、お願い」
「いやダメだよ。俺そんなつもりで言ったんじゃないからね。あ、そうだ。中華なんかどうかな。行きつけのところがあるんだよ」
やたらと慌ただしく提案する彼が、少し不自然に映る。
しかしきっと元気づけようとしてくれてるのだろうと考え、彼に同意した。
そうして車はホテルから遠くない、街の中華料理屋へ向かった。
ーーー
ヴィクトルとレストランへ行くのは、今回が初めてだ。ホテルの食事は部屋で食べたことがあるが、彼は普段仕事先で夕食も予定が組まれていることが多かったためである。
あなたはもしすごい高級店だったらどうしようと戦々恐々としていたけれど、到着したのはオシャレながら家族連れでも入れそうなモダンな料理屋だった。
「ここなんだね。いい雰囲気だし美味しそうな匂いがするなぁ。ドレスコードあったらどうしようかと思っちゃったよ」
「あのねえ。君は俺のことなんだと思ってるんだい? 毎日そんな堅苦しいとこなんか行かないよ。俺はジャンクフードも大好きだからね」
「うそ!」
入口で驚くと彼は「ほんと」と悪戯っぽく笑った。
まだまだ知らないことが多すぎる。話によるとヴィクトルはプライベートでは気取らない場所のほうが好きらしかった。
思ったより共通点があるかもしれないと、あなたは和む。
二人は店員に案内されたのだが、そのときに気になることがあった。
「おおヴィクトルさん、こんな時間に珍しいねえ」
「ごめんねヤンさん。予約してないんだが、二人席空いてるかな?」
「空いてるよ空いてるよ。特等席にどうぞ。⋯⋯フフッ」
彼より一回り上ほどの中国人の男性が、あなたを見てにんまりと笑みを浮かべる。
何事かと思ったがそそくさとテーブル席に案内された。
外のライトアップされたテラスがよく見える、落ち着ける席だ。
「うわぁお洒落だね。こんなところで中華食べれるんだ」
「うん。名無しちゃんも中華好き?」
「好き! っていってもテイクアウトが多いけど」
あなたは照れてはにかむ。
今までは確実な経済格差を感じてあまり自分のことを話さなかったが、思いきって明かした。
すると彼は「へえ、俺もアジアの焼きそば好きだよ」と意気投合してくれたので嬉しかった。
やがて食事も運ばれてきて、あなたはヴィクトルとの初の外食を楽しんだ。
「ああやっぱりいいねえ。君とのデートは絶対楽しいと思ってたよ俺は」
「これってデートなの?」
「違うの?」
大人な雰囲気むんむんの彼が目を丸くする。
どうやらあなたの素の態度に翻弄されることが多いようだ。
「名無しちゃん。食べ終わったら外にでない? ここからの風景結構きれいなんだよ」
彼に誘われて、二人はやがて外のテラスへ出た。
教えられたとおり、小高い丘にあるレストランは、街のきらきらした明かりや橋、遠くの河川まで一望できる。
「すごーい、きれい⋯⋯ここいいスポットだねえ」
あなたは見とれるように感嘆した。
今日の怒涛の心の動きが、静まっていくようだった。
寒空に息をふうと吐くと、ヴィクトルがスーツのジャケットを脱いであなたの肩にかけてくれる。
彼の優しさと香りに包まれて、笑顔でお礼を言った。
一瞬、こういうことに慣れてるのかな?
とも思ったが、彼は立派な大人の男だ。モテるだろうし当然だろうとも考える。
そう思うと、少し切ない気分にもなった。
「名無しちゃん。さっきの話の続きなんだけど⋯⋯」
「んっ?」
風景に気を取られていたあなたは、彼の緊張を浮かべた表情にドキリとする。
あなたは忘れたわけでもなければ、とぼけてるわけでもない。若いが恋愛経験のある女性なのだ。自分も誠実に向き直り、耳を傾けた。
「俺は、君のことが本気だ。名無しちゃんのことが好きで、ここのところは毎日、君のことばかり考えてしまってる。⋯⋯あいつが言ったように、こんな浮ついた見た目の、おっさんだけれどね。⋯⋯でも本気で⋯⋯ああ、自分で言ってて情けないな――」
ヴィクトルは普段、もっとキザで完璧な男性のはずだ。少なくとも初めて駅で声をかけたときは、そうだった。
しかし今は、あなたを前にしてまるで初めての恋のごとく、もがき、真剣に気持ちを伝えようとしている。
「こんな俺だけど、君に交際を申し込みたい。だめだろうか⋯⋯?」
あなたは彼の前で、深く聞き入りながらも、立ち尽くしていた。
そんな様子にヴィクトルも段々表情に不安が入り混じる。
「あの⋯⋯⋯⋯」
あなたは言いかけたが、なんと話し始めていいか迷っていた。色々な思いがよぎる。
そのひとつひとつが膨らみすぎて、どう言葉にすればいいか頭がパンクしてしまったのだ。
そんな状態に、ヴィクトルは動揺したのかもしれない。きっと経験豊富な彼が直面したことのない時間だったのだろう。
「わかった。ごめん、急にこんなことを言って。⋯⋯そうだよな。あんな別れ話を元彼としたあとに、たたみかけるように⋯⋯本当に俺は馬鹿だ。自分のことしか考えていない」
「い、いや⋯⋯ちが――」
「悪かった、名無しちゃん! そうだ、俺の気持ちのことは頭の隅にでも考えておいてくれないか? 返事は急がないよ。⋯⋯俺のことを見て、決めてもらえたら嬉しいな。君にもっと好きになってもらえるように頑張るからさ」
ヴィクトルにそう表明されて、あなたは瞬きをする。
しかし彼の黒い瞳は本気で見つめてきて、固く決意したようだった。
