クリスマス
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クリスマスの日の午後。
メローネの目が一番に捉えたのは、すらりとした長身、線の細い女だった。
モデル並み、いや、彼女の本職はきっとモデルに違いないと勝手に決めつける。
ロングワンレングスのブリュネットが肩にかかる。
こんな冬の空の下でも、日に焼けることを気にしてか、ふんわりとした水玉オーガンジーのリボンにカメリアのモチーフがついたウールの帽子を目深にかぶる。
ツンと生意気そうな鼻も、淡いルージュをのせた唇もいい。
リボンタイを首もとで結び、コートはウンガロ風のたっぷりとした袖で、色は白。
黒いタイトスカートがくるぶしまで来ているのはとても(とても)やぼったく、また彼女をコンサバヴィティブに見せていて残念な気もするが、「脱がす」事を前提としている助平男としては、固そうな女を鳴かせる楽しみ方をすでに頭の中でシミュレートしていた。
スカートと同じ黒の手袋ごしにも、細く長い指をしているのが解る。
きっと繊細で器用、その指に睾丸を絡め取られて、先端の吐精口を指と舌先でイジられたら…
「キミ、可愛いな。ファッションモデル?好きなブランドは?」
本能に身を任せ、ほんのりと女の香水が漂う位置にまで近づいて声をかけた。
白い息を弾ませるメローネを無視し、女はツンとすました鼻先をこ進行方向へ向けたまま無視を決め込む。
「綺麗な黒髪だ、どこの出身?すごくエキゾチックでいいね。シャンプーは何を使ってるの、入浴中は音楽をかけるタイプ?」
こんな質問はうんざりするほど繰り返しているはずだが、癖なのだから仕方がない。
そして無視されるほど燃えてくるのは、征服欲を満足させなければ気が済まないタチのエスなのか、冷たくあしらわれることにさえ快感を覚えるタチのエムなのか、自分自身理解しあぐねているところだ。
「女優のN・クラリッサに似ているっていわれない?あぁ、それから、R・レナーダにも似てる、雰囲気が」
ぴたりと止まったヒールの先に、メローネは一抹の希望を見出す。
すかさず、行く手を阻むように、さっと前方へ回り込む。
が、 ギリっと噛みしめて威嚇するようにむき出した女の前歯からは、聞き覚えのある声が絞り出された。
「……~~メローネッ!邪 魔 だ ッ!!」
「イルーゾォ!?」
つばの奥から睨みつける鳶色の瞳は、最新流行のマスカラとアイライナーによって大きく縁取られ、上品な光沢のアイシャドウがさらりと、不気味に塗られている。
張ったほお骨が目立たないようにメイクを施した顔が台無しになるほど、怒り、いや殺意をむき出していた。
「お前、ついにソノ趣味に目覚めたのか! ディ、モールト」
ベネ(よし)、真っ先にオレに相談してくれたらもっと刺激的で似合う格好をさせてあげたのに、惜しい、実に惜しいよ!!
…などと続くはずだった語尾は、音も臭いもない空間へ引っ張り込まれて消えた。
捨てられていた椅子を雄々しく掴み上げたおかま女がナンパ男にそれを振り下ろす音は、鏡の外へは聞こえなかった。
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