ハロウィン
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普段ならチェーナの時間。
通りでは仮装した子供たちがトリートバックを持ち「トリックオアトリート!」と菓子をねだりながら家々を回る。
再びアジトに戻った二人はリゾットの自室の前にいた。
「じゃ、俺は帰るから上手くやれよ?」
「……」
なにも答えない魔女の肩をポンと叩いた切り裂き魔はクールに去っていく。
「うぅ」
縞のシャツの背中を見送って人の気配のなくなったアジトを一度見回すと、ナナシは意を決してリゾットの部屋のドアをノックする。
「何だ?」
長いマントにタキシード。口元にはみ出すセラミックの牙。
驚いたことに、リゾットは吸血鬼の格好をしている。
「どうしたんですかその格好!?」
「任務だ」
修道院で開かれるハロウィンパーティーの視察に訪れた偉い政治家の暗殺。
たしかにそんな事を言ってはいたが、まさか仮装までしていると思わなかった。
「それで、お前はどうした?」
ナナシはリゾットの厚い胸に手を当て、そこに倒れ込んだ。
リゾットがそれを反射的に抱き留める。
「トリック」
本物の血の匂いのする吸血鬼の胸で、惚れ薬すら作れない偽物の魔女が呟いた。
「トリック、ください」
かなりの間があったように思う。
頭の上でリゾットのため息が聞こえた。
タキシードのポケットから小さなチョコレートを一つ取り出してナナシの手に握らせる。
「これで我慢しろ」
静かに告げてそっと体を離すと、リゾットはナナシの横をすり抜けてアジトを出て行った。
手の中で握り締められたチョコレートの中のリキュールが、何よりも苦い媚薬のように溶けだしていた。
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