マンマ・ミーア!
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
───な、そういったワケだ」
メローネの話を聞いていたペッシだが、そのアイデアはここでは使えない、と思った。この場合、『無かったことに』というのは、結局、きれいさっぱり部屋を片付けること。リゾットやホルマジオがしたようにビニルの口をあけ、駄目になったものを全て突っ込み、土をはき、花を別の入れ物に植え替え、水びたしの床をウェスで拭きあげる、途方も無い作業のことだ。
面倒な作業を簡単な一言で片付けるというメローネに内心悪態をついた。口で勝てる気がしなかったのと、これ以上救いのないお喋りに精神をすり減らしたくなかったからだ。
「お前がこんなことする義理はあるの?」
「ギアッチョからメールを受けとっている。十五時に着くバスに乗るのなら、洗濯物を取り込んでアジトの窓を閉めておけって」
「『必ずやる』と返信したのか?」
「……していない」
「上出来。なら、簡単だろ」
そっと差し出されたケータイを開き、カチカチとボタンを操り始めた。
まずギアッチョのメールを自分のケータイに転送し、削除。時間を三時間ほど戻して設定しなおし、アドレス欄の自分の名前部分を『ブチギレギアッチョ』に書き換える。次に自分のケータイを取り出し、ペッシにメールを送る。先ほど自分のケータイに転送したのを、そのまま。
「こんなモンでも、人って簡単にダマされるんだよね」
ポイと放って返されたケータイを何とか掴んで顔を上げたペッシの目は、神の奇跡に感謝する子羊そのものだった。
「メールは万能じゃあない。いつ確認されるかなんて、個人の裁量に寄るからな。自分が任されたことをペッシに押し付けて出て行ったギアッチョの過失ってことで」
にっこりと笑うメローネの髪からは、まだ水が垂れている。
ペッシの髪からも。服からも。
「神様!」
「いや、俺は神じゃあないから、見返りはもらうぜ」
「じゃあ偽の神様、まずはコーヒーでも」
怒りにまかせて放たれるギアッチョの鉄拳を一発回避できたとなれば、多少の出費はやむを得ない。天秤にかけても安くつく。
長居は無用、と、二人はまた雨の中に出て行った。どうせ濡れている、これ以上染みる水もない。
→
メローネの話を聞いていたペッシだが、そのアイデアはここでは使えない、と思った。この場合、『無かったことに』というのは、結局、きれいさっぱり部屋を片付けること。リゾットやホルマジオがしたようにビニルの口をあけ、駄目になったものを全て突っ込み、土をはき、花を別の入れ物に植え替え、水びたしの床をウェスで拭きあげる、途方も無い作業のことだ。
面倒な作業を簡単な一言で片付けるというメローネに内心悪態をついた。口で勝てる気がしなかったのと、これ以上救いのないお喋りに精神をすり減らしたくなかったからだ。
「お前がこんなことする義理はあるの?」
「ギアッチョからメールを受けとっている。十五時に着くバスに乗るのなら、洗濯物を取り込んでアジトの窓を閉めておけって」
「『必ずやる』と返信したのか?」
「……していない」
「上出来。なら、簡単だろ」
そっと差し出されたケータイを開き、カチカチとボタンを操り始めた。
まずギアッチョのメールを自分のケータイに転送し、削除。時間を三時間ほど戻して設定しなおし、アドレス欄の自分の名前部分を『ブチギレギアッチョ』に書き換える。次に自分のケータイを取り出し、ペッシにメールを送る。先ほど自分のケータイに転送したのを、そのまま。
「こんなモンでも、人って簡単にダマされるんだよね」
ポイと放って返されたケータイを何とか掴んで顔を上げたペッシの目は、神の奇跡に感謝する子羊そのものだった。
「メールは万能じゃあない。いつ確認されるかなんて、個人の裁量に寄るからな。自分が任されたことをペッシに押し付けて出て行ったギアッチョの過失ってことで」
にっこりと笑うメローネの髪からは、まだ水が垂れている。
ペッシの髪からも。服からも。
「神様!」
「いや、俺は神じゃあないから、見返りはもらうぜ」
「じゃあ偽の神様、まずはコーヒーでも」
怒りにまかせて放たれるギアッチョの鉄拳を一発回避できたとなれば、多少の出費はやむを得ない。天秤にかけても安くつく。
長居は無用、と、二人はまた雨の中に出て行った。どうせ濡れている、これ以上染みる水もない。
→