なんでもない3日間の出来事
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一本に編み込んだ長い髪を背中に垂らした少年が、ひとり。
古書店の二階に間借りした自室でチェスの駒を取り上げた。
少年の目の前には誰もいない。
が、相手がいるように並べた黒のポーンを取って手前に進めた。
「……そこは勘弁してくれませんかァ、ボス」
自分の持ち分の白いクイン(女王)が危機に晒され、少年は情けない声を発した。
少年は電話を耳に当てている。
一人将棋に興じているように見えたが、『ボス』と呼ぶ人物相手に電話越しでチェスを指しているようだ。
馬の頭がついた白い駒をこねくり回しつつ、少年はやや姿勢を正す。
「…伝え忘れていました。『例のもの』の受け渡しは、滞りなく済んだようです」
『そうか。次の手は?』
「ナイト(騎兵)をディーの四に。チェックメイトです」
『あぁ』
受話器から、低く唸るように返事が返ってくる。
少年は口元に笑みを浮かべたが、先に述べた『ボス』という呼称による上下関係のためか、それが伝わってしまわないよう喉を引き締めた。
「これで三勝三敗、チェスの腕前はボスと互角みたいですね」
『お前が相手じゃあ、勝っても負けても利益にならんがな』
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