なんでもない3日間の出来事
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取っ手に括り付けられた札の言いつけ通り、ペッシはここまでアタッシュケースを運んできた。
メローネとギアッチョとイルーゾォは、ホルマジオとナナシを救出した直後から行方不明。
プロシュートは自らのスタンドで引き裂いた左腕の治療すら許されないまま、メローネたちに連行されていった。
ホルマジオとナナシ は、脱出直後、ワクチン投与のため軟禁状態。
リゾットはといえば、メンバー全員が帰還した時から……あるいはその前から、不在。
ペッシはバースデーケーキの蝋燭が一度に100本でも消せそうな深呼吸をした。
オーダーを取りに来たウエイトレスが携えたメニューは見ずに、握りしめたタグに書かれた通り、『オレンジキュラソ入りココア、生クリームを乗せてシナモンを一振りしたものに蜂蜜を添えて』とオーダーする。
どんな人間が取りに来るんだろうか。
一度も姿を現さないボスと、直接コンタクトを取っている人物なのか。
アタッシュケースの中身は何だろうか。
繊細な硝子の置物だったとして、あれだけの距離を移動する中で粉々になっていたら、この場で殺されやしないだろうか。
実は自分たちをハメる口実で、とんでもない麻薬が隠されていて、オマワリに捕まるよう手配されているんじゃあないか。
突然爆発するんじゃあないか。
深呼吸で吐き出したはずの緊張がまた襲ってきて落ち着かない。
カウンターに目をやると、名前通りの複雑なメニューを作るのに時間が掛かったようだったが、ウェイトレスがトレーにカップを乗せている所だった。
ほっとして視線を落とす。
と、先ほど足下に置いたアタッシュケースが無い。
―――盗られた!!
蒼白な顔で立ち上がったペッシに驚いて、ウェイトレスがカップを取り落としそうになった。
そして「お客様?」と声をかけると、ペッシの襟に挟まっていた紙を抜き抜いて手渡す。
「Ottimo lavoro (よくできました).」
どうやら、任務は完了したようだ。
力が抜けてガタン!と椅子にかけたペッシは、運ばれてきたカップに口を付け、ぐっと煽った。
そして、オレンジキュラソとココアと生クリームとシナモンと蜂蜜が混じってゲロの味になったココアを、ブゥウッと盛大にテーブルへ吹き出した。
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