なんでもない3日間の出来事
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時計がない。
もともと残り少なかったオイルを使い果たし、頼りないながらも明かりを灯していたライターは使えなくなった。
「何だか、息苦しく感じるね」
「……あぁ」
長いこと黙っていたナナシが、深い息を吐きながら言った。
接地面から体温を全て吸い取ろうとする冷たい金属の床。
傷口が訴える痛み。
一点の光源もない暗黒がもたらす圧迫感。
しかし。
酸素が薄く感じるのは、気が滅入るばかりの闇だけが原因ではないことに、ホルマジオも薄々勘づいていた。
確かに、息苦しい。
『まさかだろ……』
お互い確信に触れはしなかったが、現状は、ナナシが考えるよりずっと悲惨な事態にあるようだった。
ホルマジオの懸念が自分よりひとつ多いことを、ナナシは未だ知らないが。
『少し考えりゃあ、解る気もするけどよ』
『財産を守る金庫』という物の至ってシンプルな存在理由を、ホルマジオの頭はぼんやりと考えた。
クエスチョン・ワン。なぜ鍵がかかるか。
アンサー、第三者が容易に開けられないようにするため。
クエスチョン、ツー。なぜ内側から開かないのか。
アンサー、そもそも、人間が入れるようなサイズではないため。
クエスチョン、スリー。なぜ重いか。
アンサー、水害時、容易に流されないため。
クエスチョン、フォー。なぜ密封するか。
アンサー、火災時、内部の財産を燃やさないため。
アンサー、……
密 封 さ れ て い る 。
『早く気が付いてりゃあ、ライターなんか付けなかったのによ』
逃れようのない最悪の事態を享受するしかなく、ホルマジオはあえて口には出さなかった。
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