なんでもない3日間の出来事
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二人が大きな叫びを上げたところで、イルーゾォだけは冷静だった。
いや、そうではない。
禍々しい苛立ちを発する男の存在に気付き、そちらを恐る恐る振り向いて、口を開けずにいただけだ。
視線の先には、ざっくりと肉の裂けた腕を裂いたシャツで無理矢理止血して首から吊った、スーツを肩に羽織っただけの伊達男。
「……なァ、ペッシ。さっき使わなかったマシンガンが、車に乗ってたよなァ……」
地響きと聞き違えるようなプロシュートの低い唸りに、ペッシの顔色がサァッと青ざめた。
またメローネの胸ぐらを掴み、殴りかねない勢いでがなり立てていたギアッチョも、黙した。
もちろんイルーゾォも。
「目標物が見あたらねぇなら……ふッ飛ばしゃあいいんじゃあねぇか?」
口元は前歯を覗かせて笑っているが、古いコンクリートオブジェと化した噴水を睨み付ける目は尋常でなかった。
銜え煙草のフィルターが噛みつぶされている。
プロシュートに冗談のつもりは、ない。
「プロシュート、冷静に考えろよ、な。アンタがやると言ったら徹底的にやる男だってのは、よく、よォく解ってる。街のド真ん中でマシンガン乱射するわけにはいかないだろ、な?」
ややフレンドリーに振る舞いすぎで不気味なイルーゾォが、背中をポンと叩いた。
「……ヒッ!!」
プロシュートに触れた手が、枯れた流木の木肌状に衰えた。
冷静さを欠いたプロシュートの全身が、グレイトフル・デッドの能力が漏れ溢れさしているのだ。
「コンクリートの塊だぜ。マシンガンなんかじゃあ銃眼程度の穴開けるくれぇしか出来ねぇだろう……と、思……」
平静を装いながらギアッチョはマシンガンの威力を考察し完結に述べたが、語尾は聞こえるか聞こえないかの小さな声になっていた。
プロシュートのプライドをなるべく傷つけないよう、そして必要以上に刺激しないように。
しかしすべての言葉を飲んだうえでその阿修羅は、顔色ひとつ変えずに宣言した。
「弾薬の中に火薬が……山ほどあるんじゃあねぇのかァ……?」
『弾薬を全てバラせ』と無言の指図をする鈍色の目に、4人は顎のネジが弛んだクルミ割り人形よろしくカタカタと頷いた。
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