なんでもない3日間の出来事
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手の平に乗るほど小さくなって、ホルマジオが侵入を果たす。
内側からの開錠は、思ったよりあっさりと、あっけなく行われた。
「何だよここ!臭ェ――!!」
足の裏にねばつくヘドロのようなものに、ホルマジオは大きな声で呻いてしまった。
「うわ!!何かのフンの臭い!?」
酷い醗酵とアンモニア臭に思わず口と鼻を手でおおい、ナナシもウっと顔をしかめる。
「まぁ、いい。早く出ようぜ……」
ファイルを持ち上げ、ライトがぐるりと部屋を一周回ってガラス扉の出口を向く。
部屋の隅に固まっていた『闇』が、ザワリと蠢いた。
次の瞬間、わだかまっていた『闇』は、散り散りに砕け、個々が狂ったように舞い上がった!
「何だこいつらッ!!」
「―――コウモリ!?」
羽ばたき、仲間同士羽根が叩き付け合ってバタバタと喧しい。
飛び散った糞尿からあがるアンモニア臭が、いっそうキツく舞い上げられる。
掴んだファイルを頭の上で振り回し、振り払った。が、鋭い爪は何本もひっかき傷をつける。
リトル・フィートの狙いが定まらず、ホルマジオは壁に立てかけてあったパイプ椅子を掴んで闇雲に振り回した。
「チクショウ、しつけェんだよ吸血野郎ッ!!」
突進を繰り返す黒い悪魔の群れ。
パイプ椅子の脚のスイングが、薬棚のガラス戸をやぶった。
同時に、巻き添えをくった何本かの薬瓶が割れ、フンが醗酵して立ち上らせるアンモニア臭の中に清涼な消毒液の匂いを混じらせる。
踊るように部屋を照らしたホルマジオのマグライトが、口の開いた分厚い箱を捉えた。
もちろん、人が逃げ込めるサイズではない。
しかし…
「飛び込むぞ!!」
「D'a…ccold(了解)!」
振り払うことに限界を感じたホルマジオが叫び、パイプ椅子を投げ捨てる。
掴んだナナシの腕を引きながら、リトル・フィートがザクリとそこを切り裂いた。
襲いかかるコウモリの隙間で、振り上げた腕に焼けるような痛みが走る。
無事な薬瓶とナナシの腕をつかみ、小さくなったホルマジオとナナシは口を開けた鉄の箱へと転がり込んだ。
コウモリの群れの体当たりが、僅かに開いていた扉を、かちりと隙間なく閉めた。
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