なんでもない3日間の出来事
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そこにいた誰もがそう思った。
しかし。
プロシュートの細い肢体はミンチになることなく、執念深くそこにブラ下がっていた。
橋桁を留める大きなビスの、わずか一センチほどの段差にグレイトフル・デッドの爪を引っかけて。
反対の爪を、ためらいもなく、自らの腕に深々と突き刺して。
しかし、落ちていかなかったのはそんな物理的な要因が問題だったのではない。
『強運』という名の見えない命綱が、プロシュートについていたおかげだ。
「兄貴がいなくなったらッ!アジトが煙たくならないし……怒鳴られないし……殴られないしッ……」
苦心して引き上げられたプロシュートを目の前に、そこまで言って感極まってしまったペッシが鼻をすすり出した。
「いいことづくめじゃあないか」
ペッシの鼻声に、プロシュートの生還を何とも思っていないふうのメローネが答える。
そう言いたくなるのも無理はない。
駆け寄った三人を見上げるプロシュートは、突き刺さる爪の痛みを訴えるでも無く、だらだらと流れ出て上から降ってくる自らの血液が頬に滴るのが不快だというような顔をして、口に入った血を地べたに吐き捨てたのだから。
奇人、いいや、鬼人。
図らずも慣れ合う時間が長くなっていたが、そこにいた全員がプロシュートに畏怖の念を抱かずにはいられなかった。
ともあれ、命拾いの祝いに一服ふかそうとプロシュートが胸ポケットを探り、眉根を寄せる。
……己の命と引き替えになったにしては安いものだと思うが、開けたばかりのボックスがライターごと消えていた。
それでも尊い犠牲にため息を送り、ギアッチョのポケットからはみ出していたロイヤルハバナをかすめ盗った。
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