なんでもない3日間の出来事
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『 ……、……ィ 、……オイ、ナナシ、……起き …か?』
ずっと遠くで聞こえていた声が少しずつ近づくように、呼びかける声はだんだんと大きくなった。
それがメローネの声だと気が付いて、あぁ、いつものアレを、今日はメローネがしたんだとゆっくり思い出してくる。
途端に、枕のかわりにレンガの上で寝ていたのではないかと思うほど、後頭部がキンと痛むのを感じた。
「……痛……」
『まだ、無理に動かないほうがいいよ』
ボールペンほどの太さの注射器を何本か纏めてガーゼにくるみながらメローネが言った。
口にセロファンをあてて喋っているように、声がジラジラとしゃがれて聞こえる。
酸素吸入チューブを鼻の下に固定するテープが、頬でひきつって痛痒い。
耳の後ろにも、チクチクと突き刺す痛みが続いている。
しかしまだ、手をのばす力が湧かない。
「耳が、いたい」
『あぁ、それはゴメンね。チューブをつける時に爪が当たっちゃったみたいだ』
メローネは薄いゴム手袋を外し、ナナシの化粧台脇の屑籠へ放った。
『オレはもう行くから、眠なよ。ケータイは消音にして、右手の下。オレの番号開いてあるから、用があったらコールボタンだけ押してくれればいい』
いくら痒かったからといって、乱暴に剥がされては頬が痛い。
仮にも女性の顔だし、一応は商売道具なのだ。もっと丁寧に扱うべきだ、という抗議も、今はまだ口から出そうにない。
酸素チューブを手に巻いたメローネは、意識朦朧とするナナシをベッドに残して部屋を出ていった。
「……あぁ……」
ちょうどテープの形にヒリヒリする頬をなでる気も起こらない。
収まりが悪かった尻の位置だけをおっくうそうに定め直して、耐え難い倦怠感に飲まれるまま、ナナシは目を閉じた。
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