なんでもない3日間の出来事
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吸殻を突っ込まれた空き缶や、読んだページを開いたまま折り目のついた雑誌。
丸めた紙からは誰が吐き出したのか解らないチューインガムがはみ出してへばりつく。
これまた誰が飲んだのか解らないカップの底は、黒い輪っかのシミ。
そんな、『乱雑』なんて言葉で片付けられないアジトのテーブルの上が珍しく片付けられ、今は数冊の専門書が開かれていた。
傍らでは、メローネが数種類の薬品を出してきて遊んでいる。
手術に用いるようなゴム手袋ではなく、分厚く茶色いゴム手袋をしていることから、少々危険な薬品を弄んでいるのが解る。
コーヒーシュガーをジャリジャリと乳鉢で擦り、マジック用具なのか、線香花火様の火花が散らしていた。
刺激臭のする薬品をピペットで吸い出しシャーレに垂らすと、中で小さな炎が上がる。
「あッツ!!」
「どうしたァ?」
慌てて手袋を脱ぎ捨てるメローネに、ホルマジオが気の抜けた声をかけた。
「ゴム手袋が硫酸で溶けた」
「台所用のなんか使ってるからよ」
新しいの買ってきておいてね、とナナシが付け加え、捲りすぎて端がベロベロになった面白くもない雑誌をまた開いた。
「---と、ここまで」
引っ張り出された黒板型のボードに走らせたチョークの文字の前で、ひととおりの説明を終えたプロシュートが振り返った。
にもかかわらず。
ペッシはウゥ、と返事にならない唸りを漏らす。
「何が解らねぇんだ?」
「それが説明できれば苦労はないんですよォ」
確かにこの3時間、プロシュートはタクトを振るう指揮者のようにボールペンを翻し、熟練の牧師の説法より滑らかな熱弁を繰り広げていた。
ただし、内容は学校教育からほど遠い物騒さ。
人体における急所。
物証と死体の処分方法。
武器と適正。
凶器の特性と弱点。
その他。
薬物関連の化学記号が並び始めた一時間ほど前から、ペッシの集中力はとぎれとぎれになっている。
問題に向かおうとする気はあった。
やらねばというプレッシャーも勿論あるのだが、どうも目が滑る。
「質問を変えるぜ。『どのあたり』が解らねぇ?
「取っ掛かりはあやふや、中ほどはちんぷんかんぷん、お終いのほうはさっぱりで」
「つまり全部じゃあねーか!!!」
このマンモーニ!とお決まりの悪口が飛び出しそうになった。
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