egg
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「朝っぱらからとんでもねぇな」
ケータイを切るところだったギアッチョにイルーゾォが声をかけると、大嫌いなアンチョビーを見る目つきでこちらを睨んだ。
睨んだのち、身なりの汚らしさに、今度こそ汚いものを目の当たりにした人間がとる、まっとうな反応を示した。
ギアッチョの足下には女が転がっている。
すでに息はない。
先ほどのブレーキ音、衝突音、タイヤ痕、そして言い逃れ出来そうにない血痕と轢死体。
一般人に見られたらまず面倒な状況に、どんな状態であれイルーゾォが居合わせたことはギアッチョの人生でも最大級の幸運だった。
「テメェには頼みたくなかったがよ、」
言い終わらないうちに、体が真綿へと変化し、表面から優しすぎる力で引き裂かれるような、奇妙な感覚に襲われた。
遺体とイルーゾォとギアッチョ以外が反転した世界でも、朝の空気は冴えていた。
「適当に埋めろ。俺は手伝えない」
手伝わない、とは言わなかったイルーゾォの素直さに驚きつつ、その成りを改めて見れば納得のしようもあった。
担ぎ上げた女はまだ生者と同じ体温を持ち、ギアッチョの体をほぼ同じ温度の血が伝っていった。
ギアッチョのシャツの胸ポケットでケータイが鳴った。
彼女からの着信であることを確かめ、両手が塞がった主に代わってイルーゾォが取る。
『……あれ?イルーゾォ?』
「ギアッチョの用事なら、たぶん済んだよ。他に用は?」
『あ、……なら、テレビのクイズを一緒に考えてくれない?恋人の死体が消えたんだけど、それがどうなったかって。今日の正午が〆切で、正解すれば五十万リレなの』
「あぁ、去年やってたドラマの。確か、『直前でオオカミ男に噛まれた恋人は満月で生き返り、恋人と敵対するはめになる』ってイカサマな答えだったろ? イタリアじゅうから応募がきて、婆さんひとりだけが正解したって…」
通話口の向こうで素っ頓狂な悲鳴が上がり、イルーゾォの話を途中から全く無視し、なにやら口論する声だけが漏れ聞こえた。
「そっちの事情はどうでもいいけど、メローネに会ったら俺が礼を言ってたって伝えてくれよ。ついでに、一発ぶん殴っておいてくれ」
もう話は通じていないだろうと解りつつ、イルーゾォはつい、付け加えた。
thee end
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