egg
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太陽が昇りきっているとばかり思っていたイルーゾォは、今はまだ人の気配が全くない早朝であることを、外に出てから知った。
確かに空気は冴えていた。
そのまま二ブロック行ってヤブ医者の角を右に折れ、さらに二ブロック先の正面に現れる道を渡ったはす向かいにある公園まで、よろつく足取りで何とかたどり着いた。
目的があった訳ではなく、金木犀の香りの真偽を確かめに来たわけでもない。
公園、というキィワードだけが脳へ先走った結果、みすぼらしい風体で外に出るという、普段からは考えられない行動をイルーゾォに取らせていた。
ベンチに座った途端、飛び上がるほどの冷たさを尻と背中からくらった。
おかげで、幾分目が覚めた。
目の前の角の奥では、人気がないにも関わらずこの時間から店を開いているバール。
任務の帰りなど、体をあたためるグラッパ入りのカフェをひとくち啜ることができる。
そういえば、カフェを注文できるくらいの、なけなしの金さえ持参していないじゃあないか。
ヌバックを編んだウォレットチェーンをつけた財布は、部屋に置いてきてしまった。
イルーゾォは寒さのせいか時間経過のおかげか、少しだけ正常な思考を取り戻しつつあった。
指先が冷える。
着替えもしなかったパンツに手を突っ込むと、丸い紙が指に触れた。
お守り。
そう言ってメローネがポケットに突っ込んでいったものを、改めて手の中に出してみた。
クチャクチャに丸まったそれを開く。
五十万リレの紙幣だった。
オイシャサマの申しつけた、マトモな食事を取るにも充分。
嫌らしいナイトクラブで自分と違わぬほどアレに酔った女に一杯オゴってうまくすれば、快楽を分けて貰える。
それに充分。
雪のように白いアレを、天国へ昇らせてくれる粉の一回分を買うにももちろん、充分な額。
「何がお守りだ、この悪魔」
寒さ以外で震えだした手が止まったのは、冴えた空気をさらに千切り裂いた急ブレーキと衝突音、鼻先までにおったタイヤの焼けた臭いのためだった。
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