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白黒の砂嵐しか映らないと思っていたテレビの機嫌はすこぶる良いようだ。
すくなくとも、今のこの五十分間は。
洗い終えたグラスやカップを棚に仕舞い終え、自分のカップにコーヒーを注いでソファへ腰掛けた。
こんなにゆっくりとテレビを眺めるのはいつぶりだろう。
最近はそんな機会が有り余るほど、時間銀行職員が来たらうっかり騙されて時間貯金をしてしまいそうなほど暇を持て余していたが、肝心のテレビが映らないのでは「テレビを眺める」チャンスが無かったのには間違いない。
時々目障りなノイズがブラウン管の上部に邪魔するが、ひどい砂嵐に慣れた今では苦にもならない。
つくづく、貧乏くさい体質になってしまったものだ。
ドラマの中では、恋人達が少々豪華な食事をしながら、仕事と愛について言い争いを始める。
作られた痴話喧嘩よりも、先ほど撃ち合いをしていた男どもの手に握られたワルサーP99Rやヘッケラー&コックUSPよりも、太った男の手元に映ったラム・スペアリブのほうが魅力に溢れていた。
久しぶりに、リストランテで食事がしたい。
埃っぽい通りに面したあのピッツェリアじゃあなく、ギャルソンがいる店でワインをあけてもらって。知らない男が相手でも社交辞令のひとつやふたつ出てくるから、不在のリーダーが簡単な任務でも持って帰ってはくれないだろうか。
都合のいい妄想に意識を飛ばしていたとき、一度大きくノイズを走らせたテレビの音声が急に大きくなった。
『……ではお待たせ致しました、クイズのコーナーです。セリーンが駆けつけたとき既にマイケルの遺体は無かった。このマイケルの行方が、今回の問題です。ヒントは先ほどご覧いただいた劇中でしたよ、正解者全員にはもれなく五十万リレを進呈いたします!!』
五十万リレ?
二日後の〆切を伝える陽気な声と共に映し出された電話番号を、とっさにメモした。
主人公のセリーンとマイケルの中を良く思わないなら、マイケルを気に入っていたエリカかアメリアのはず。
いや、マイケルが邪魔になるのはむしろ、リーダー格のクレイヴン…?
コーヒーの味と共におぼろげながら残っているストーリーを頭の中で反芻した。
久しく動かしていない頭には丁度良い、うまくいけば五十万リレだ。
勝算のない面倒ごとはご免だが、『正解者全員に』というのがなんとも太っ腹ではないか。
なら、もっと意外な線で犯人をしたててくるはず。
期日の二日後にはまだ時間がある。
深意を探るには、まず。
もう一杯コーヒーが必要だ。
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