バックミラーシアター
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酒神バッカスが一晩、どんな思惑のもとにこのハゲを酷く酔わせたのか。
面倒な荷物をひとつ後部座席に乗せた男は、晴れの予感をたたえるさわやかな朝の空とは裏腹の、暗い瞳をいっそう曇らせていた。
ひとり気持ちよく酔っ払って大騒ぎの荷物、ボウズ頭の阿呆は、後部座席でわめいていた。
「おぉ!俺の愛するXXXXXッヒューウゥ!!!」
「…」
バックミラーには、そこそこ広いバックシートの間でデビット・ボウイになりきったボウズが両手を大きく広げている。
真っ赤な顔は赤毛の生え際まで同じ色に染まり、窓を全開にして流し込む朝の空気にさえ冷まされはしないようだ。
赤信号で停車する白い車の後ろに停車すると、赤毛のボウズ頭がシートの間から顔を突きだした。
「律儀に信号守ってンじゃあねーよ、我らがリーィィダーァァアア?」
自分が飲むときには気にならない酒気が、他人の口から浴びせられると何故こんなにも不快なのか。
つい息を止めて鼻孔への侵入を防いだが、ボウズ頭の肺から二酸化炭素まじりに吐き出された生暖かいいくらかは、すでに体内へと侵入していた。
信号がグリーンに変わる。
動こうとしない白い車の後ろにつけたまま、向かいからトレーラーが何台かやってくるのを見送り、早くも変わりかけた信号に諦めてハンドルをきった。
ちらりとバックミラーを見る。
泥酔した『デビット・ボウイもどき』ごしの白い車は、まだ同じ位置に停車したままでいる。
車の脇、 朝の光の中で白い蝶がひらりと舞っていた。
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