チョコレヰト
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
霧がかったように結露するウィンドウごしに、ナナシはカウンターで手早く会計を済ませる背中を見守る。
意見を述べる間も与えずに出てきたプロシュートの手には、店の紙袋がひとつぶら下がっていた。
細い紙紐の取っ手を人差し指とナカユビに引っかけて、煙草の吸いさしから灰を落とす時の仕草で差し出す。
「グラーッツィ、」
「おッと」
受け取ろうとしたナナシの手が、フイと空で泳いだ。
意地悪に逃げたチョコレヰトショップの袋は、先ほどより高い位置でユラユラ揺れる。
「タダでやるのは簡単だが、それはツマラネェだろう?」
胸中
「欲しいなら俺にキスしな。ただし、フィールドはアジトの中のみ、一回につき一つずつ」
いちどにつき、ひとつ。
「そんな事していたら、みんな黙っちゃあいないわよ」
カーリーヘアを逆立てて怒り狂うさまや、黒い長い髪の隙間から忌々しそうに睨み付ける目や、チームリーダーの冷ややかな視線や、居心地の悪いニヤニヤですり寄ってくるアシンメトリーカットが目に浮かぶ。
「あいつらの眼を盗んでやれよ。しくじった時点で、残りはペッシのモンだ」
「それなら、いいわ」
「ガキのキスじゃあないぜ」
「解ってるわよ」
手を入れた紙袋から、プロシュートはオレンジ色のパラフィンをキャンデーの形に絞った一粒を取り出した。
厚みのあるコイン型を、ゲン担ぎをするためのポーカーチップと同じように唇に浅くくわえ、背を少しかがめる。
『食いたいなら取りな』と差し出された唇から、ナナシは『契約成立』の証に受け取った。
「三十はあるか。全部盗ってみろ」
プロシュートが、『味見』ついでに溶けたチョコレヰトを舐め取った。
表面の解けたチョコレヰトチップから焼けるように甘いアーモンドクリームが溶け出し、舌をたっぷりと犯して喉へ落ちていく。
次のひとつがもう、欲しくなる。
.