チョコレヰト
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ピカピカに磨き込まれたウィンドウは、商品を陳列するというよりも光を反射する鏡のように、石畳の通りに面していた。
上品な水色の紙箱にズラリと並ぶ、チョコレヰト。
店内には、一粒ひとつぶをジュエリィの扱いで陳列したショウケース。
深いカカオ色の滑らかなコイン型。
砕かれたナッツを
熟成の浅いワインのピンクにスパングルを散らした包み。
砂糖雪にくるまれた小さなボール。
ウィンターシーズン限定の、雪の結晶の型で抜かれた白チョコレヰト。
カシスボルドーでコーチングされた、中はおそらくドライベリーとラム酒の詰まったハート。
入れ立てのココアの香りが溢れ出す店の外で、ナナシは香ばしく深い甘みと、香り高い苦みを喉の奥が思い出していた。
「テメェは卑しん坊のマンモーニか?」
後ろからかけられた声に振り返ると、深いチョコレヰト色のウールコートと白いストールに包んだプロシュートが居た。
長時間立ちつくして眺めていただろうか。
「買えばいいだろう」
「肌が荒れるとか太るとか言うのは、プロシュートでしょう」
ナナシが恨みがましい視線を投げると、ストールに隠れそうな唇が、珍しく柔らかな笑みを作った。
「たまになら、いいんじゃあないか?」
冬の曇天を透明なガラスに閉じ込めたような眼は、赤く血色を浮かせた冷たい頬の上から、何か試すように見下ろしている。
保護者に小遣いの使い道を監督されている子供の気持ちで、磨かれたウィンドウの中をもう一度眺めた。
深いチョコレヰト色のコートが、ふいに隣をすり抜ける。
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