†クリスマス†
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足つきの大皿のうえに山盛りの、マトリョーシカの銀紙でつつまれたチョコレート。
赤と白と緑をひねくった、杖型のクリスマスキャンディ。
…違う!
入りづらい花屋の花を遠巻きに眺める。
ドライフラワーのリースがきれい。
とても買えるような値段じゃあないけど、一応、宝石店のウィンドウも覗く。
…違う違う!
茶色くてふわっふわの、抱き心地が本物そっくりの猫のぬいぐるみ。
額装されたアルフォンス・ミュシャのポスター。
…でも、これじゃあない!
昨日は、アジトにメンバーと同じ数だけあった皿の半分を落として割った。
「こうでもしないと新しい食器を買う口実が作れなかったんです」と、ナナシはリゾットに言った。
1週間前、メローネのシャツが乾燥機の中で糸くずになりかけたとき。
「女の子の臭いがどうしても取れなくて」と、返り討ちに合わせた。
もう少し前、アジトの洗面台に置かれていたトニックの瓶を倒して中身が半分になってしまった。
「一緒に入浴してるみたいで素敵だった」とナナシが言ったおかげで、プロシュートの怒りの半分を沈静させることができた。
これらの要因は、実はすべてペッシ。
最近の出来事を思い返して、ペッシは情けない気持ちになった。
ここ一年出来事を思い返して懺悔するなら、教会の懺悔室からまる一日は出てこられないんじゃあないかと思われた。
度重なり積み重なる失態の数々。
さりげなく尻ぬぐいをしていたのはナナシだ。
『オイラがあげたいのは、包装紙にくるんでリボンをかけて、ブランドロゴがプリントされた紙袋にいれられる、そんなものじゃあないんだ!』
約束の時間に遅れそうで、ペッシは走った。
飛び込んだアジトのリビングで、ペッシはホルマジオをなぎ倒した。
ドアの向こうにいたイルーゾォが、ホルマジオの下敷きになって転んだ。
メキリと何か割れる音がしたが、ペッシには届かない。
ホルマジオの手から飛んだ『タバスコ入りケーキ』は、ギアッチョ横っつらを着地点とした。
甘いやら辛いやらのクリームを浴びたギアッチョは、『クリスマスプレゼント』と称してワイセツ極まりない下着を突きつけたメローネに掴みかかっている所だった。
自分が巻き起こした騒動など目に入らないペッシは、両膝を拳で押さえ、まだ息を切らしていた。
「ハー、ハーッ、…プレゼントッ!」
「いらないったら」
「選べなかった!!!」
ペッシは、力一杯言うことでもないことを、正直すぎるほど正直に宣言してしまった。
ナナシは思わず吹き出した。
胸の下で蝶のピアスが潰れて割れたイルーゾォも、
イルーゾォの上に乗ったままのホルマジオも、
下着を握りしめて顔にケーキを張り付けたギアッチョも、
掴みかかられたままのメローネも、吹き出した。
ラディッシュ色にまで赤くなった顔のペッシが、切れ切れの息で続けた。
「オイラがあげたかったのはッ!
アンタに…
『ありがとう』、って、ことなんだ 」
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