†クリスマス†
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燦々と照る太陽より、イルーゾォはこの空が好きだった。
自分に似合っているとも思っていた。
雲は雨を降らせる様子もなく、青白い皮膚にヒリヒリ灼き入る日差しも無い。
風が乾き、生きるもの以外が温度を無くす。
世界が息をひそめるこの季節は、イルーゾォに外出の機会を増やさせた。
新しい店に気が付いたのは、季節が秋を通り越して冬に差し掛かる頃だった。
アジトへ向かう道すがらの、広い通りに面している明るい立地。
イルーゾォがアジトへ出向こうと試みる時間は容赦ない日差しが照りつけ、逃げ込める影もないので遠回りをしていた場所。
クリスマスツリーに、オーナメントの一部であるかのようにディスプレイされた蝶のピアスが目に付いた。
「…へぇ」
ナナシが部屋へ来たとき気にしていた、チナーゼの蝶のモチーフに似ていた。
ヨーロッパ系の、リアリティありきで作られた精巧なフォルムとは違う、墨が輪郭をしっかりと描くアジアの蝶模様。
何かプレゼントの口実ができたなら、これに似たものにしようと決めていた。
そう目論んでいるうちに街はクリスマスの色を装い始めた。
そして今まさに、ちょうどのタイミングを計ったかのように、イルーゾォの目の前に『おあつらえ向き』のアクセサリーを提示した。
ものはガラスだろうか。
華奢すぎない形で、何色かを混じらせた赤の深みが派手過ぎなくてとてもいい。
ケチの付いたクロスのあのピアスよりも、ナナシにきっとよく似合う。
ケースとラッピングを断り、小さな封筒型の紙袋に入れてもらう。
大仰な箱を出して、何か悟られるのも、勘ぐられるのも、気負わせるのも嫌だった。
パンツのポケットに小さな荷物をしまう余地はなく、煙草の箱の隙間へと押し込んだ。
一対の蝶が、イルーゾォの胸で温まる。
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