†クリスマス†
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眼鏡を『武器庫』の作業机に置いてきてしまったのは、本日一番の失態だった。
ギアッチョの眉間にシワを寄せる要因は、寒さだけではない。
カツ、カツ、カツ、カツ。
眼鏡はしている。
赤いフレームでバー部分が太い、いつも付けているものだ。
カツ、カツ、カツ、カツ。
置いてきた眼鏡は、細いシルバーフレームに縁取られた、こめかみを横切るバーもワイヤーのように細いタイプ。
カツ、カツ、カツ、カツ。
寒空の下、店先に凍えながら咲く花々と、ギアッチョが横目に盗み見ようとする視線の間に、眼鏡の真っ赤なバーが横切って邪魔をする。
往復の累計は、ついに10に達した。
「アァアア!!クッソ!!!」
ずっと様子を伺っていた女主人が声をかける前に、ギアッチョの緊張も臨界点に達した。
『花なんか選べるか!!!』
「もっと早く声かければ良かったかしら?」
タバコの煙でも吐いたような白い息とともに、女主人は独り言を漏らした。
クリスマスローズの季節にはドラマがあるものね、と、感慨深げな眼差しで走り去る背中を見送る。
悪態とともに走り去った一陣の風は、季節に似合わないシトラスの香りを花屋の店先に残していった。
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