ワイヤーストリッパー
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
───もうひと月。
廊下とリゾットの自室を隔てた扉は開くことも閉まることもしていない。
今回向かったのはプエルトリコ、だっただろうか。
英語が達者なギアッチョを連れていっている。
アメリカやイギリスの芸能人やミュージシャンが、新しい恋人を連れてヴァカンスを満喫する。
ワイドショウを賑わすそんな光景とは程遠い、いつも通り地味で地道な調査をこなしているのだろう。
そもそも、燦々と降り注ぐ太陽の下で長身の暗い男と眼鏡の男が2人ビーチチェアに寝そべり、ハイビスカスやオレンジやパイナップルで飾られたトロピカルカクテルを手に肌を焼いている───
───などとはあまり考えたくない。
とくに片方は、どんな形であれ水着というものを想像したくない。
「心配?」
膝の上の雑誌のページだけをハラリハラリと捲っていたナナシを、メローネがソファの後ろから覗き込んだ。
「何が?」
「リーダーとギアッチョ」
「別に」
「ふぅん」
腕を伸ばしてナナシの膝から雑誌を取り上げる。
心ここに在らずで捲っていたのは、アダルトグッズのカタログだった。
「リーダー、水着持って行ったかなァ」
「水着!?あるの?どんな!?」
「ンッンー?どんなんだったっけ」
フンフンと勿体ぶりながら、メローネは取り上げたカタログをパラパラと捲る。
丁度、男性用下着のページに来たところで手が止まった。
「忘れちゃったなァ」
指が、ほとんど意味を成していないような下着をつけた男性モデルの上を滑る。
シースルーの紫色の、両サイドとバックが紐で、前の重要な所がリボンで結ばれている下着を付けたマッチョな男性モデルは、こんがり焼けた肌に白い歯を剥き出して笑っていた。
「こんなんだったかも」
「ヒィイ!やーめーてー!」
「ギアッチョのがね」
「どっちも嫌ー!!」
ナナシは耳を塞いでしゃがみこむ。
紫色のシースルーの下着をつけてビーチに寝そべる2人を想像しそうになって、ブンブンと頭を振った。
「あはははは!想像しただろ、今、絶対!やーらしー」
「してない!」
「いやしたね。コレつけてるところ、絶対想像してた」
「しーてーなーいー!!」
ソファの下で頭を抱えるナナシを指差したメローネは腹を抱えて笑った。
カチャリと開いた玄関ドアに、ナナシはタイミングの妖精とやらを恨んだ。
不健康そうに浅黒いリゾットも、乳白色の肌のギアッチョも、それなりに焼けていた。
ギアッチョの頬では、ソバカスの色がまた少し濃くなっている。
「お帰りー!ね、ねッギアッチョ、プエルトリコのバカンス地ならビーチへ行っただろ?水着、持って行ったかい?」
「帰る早々やかましいなテメェは!水着なんか持っていくかよ。オレらが張ってたの、ヌーディストビーチだぜ」
こんがり焼けた2人の逞しい裸体のヴィジョンが額の上あたりに浮かんだのと同時に、ナナシは鼻っ柱が殴られたような熱を帯びるのを感じて顔を抑えた。
あたたかなぬめりが、つーっと手のひらに、指に伝う。
「ナナシ、鼻血出たの!?」
メローネの爆笑は止まることが無かったが、背を丸めたままのナナシにはそちらを睨みつけることすら出来なかった。
.
1/1ページ