ドミノ ージエンドオブエデンー
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明け方が近かった。
透き通った空気は街全体を凍り付かせ、未だ眠りの中に留めている。
網の目になった路地に反響を続けていた2人ぶんの靴音が止む。
咽せ乱れるまで早くなった呼吸。
威嚇する獣の形相でプロシュートが唸った。
「観念したらどうだ?」
冬のただ中の、時間が時間。
立ちんぼの不細工な売春婦も、チンピラまがいの客取りもいないのは好都合だといえた。
立ちはだかる壁。
行く手を阻まれ、追い詰まった女は足場になりそうな場所を探すように頭を巡らした。
朝の光にぼやけ始めた静寂の風景に、息を切らすラテックスのコスチュームだけが混じり合わない。
長い腕がかすかに、次の動作を作ろうとした。
「動くな。エモノを捨てろ」
プロシュートは銃を構えもせずに口にした。
……やがて逃げ場はないと見切りをつけたのか。
地面に置いた銃を後ろ脚に蹴り、女は両手を頭の後ろに組んだ。
薄明るい足元に、銃身に蔦飾りのついたデリンジャーが転がる。
艶やかなモスグリーンのグリップが、空を反射して鈍く曇っていた。
「フフ、……ッアハハハハ!」
それまで一言も口を開かなかった『女』が、どん詰まりの路地で高らかに。
『男の声』で笑った。
「やっぱりお前か……
……メローネ」
「クク……、アンタを騙しおおせるとは思ってなかったけどね」
ウイッグをむしり取ると、ざんばらのブロンドがばらりと肩に散った。
くるりとこちらに向いたメローネはフロントファスナーを下げ、胸に詰めてあったパットを引っ張り出して投げ捨てる。
プロシュートは胸元からシガーケースを取り出し、最後の一本になったクラブサイズの煙草に火をつけた。
メローネに歩み寄りながらゆっくりと含んだ一口めの煙でマッチを吹き消し、燃えカスをピンと捨てる。
淀みない動作でシガーケースをポケットに戻し、肩吊りのホルスターに収まったトカレフのハンドルを掴んだ。
「ォグッ!!!」
そのまま、メローネの顎を真上に殴り上げる。
骨をじかに殴打する鈍い音。
シャッフルされた頭でもんどり打った体が、下手くそな綾吊り操り人形のように足をもつれさせて尻餅をついた。
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