贖罪
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「ナナシは、それで納得したのかよ」
「8割がた、オレとソルベとジェラートの仕込みだけどね」
いつもニヤけるようにつり上がっている口の両端を、メローネはもう少しだけつり上げた。
「ナナシが荷担したのは、『ソルベとジェラートの逃亡を隠すための偽装死』だけ。ナナシに関わってたヤツらを始末したのも、オレ。
…あぁ、もちろんコトを起こした何日かはお前とも一緒にいたな。でも、持ち株イジりながらヒトゴロシできるなんてオレしか居ないだろ?
Babyをナナシの形にしておいて正解だった。
『ナナシは生きてるんじゃあないか』って思う奴が現れたからな」
足下で割られたケースの破片が飛んで、ホルマジオの手の甲に傷を付けたようだった。
小片が刺さったままになっていないのを確認すると、ホルマジオはまたハンマーを振り上げる。
砕ける音を再開させたのを確かめて、メローネはさらに小さな声で続けた。
「ま、保険みたいなモンさ。もしナナシがソルベとジェラートの行方を不信に思っても、自分にかかずらわったやつらがバタバタ死んでいったら、そっちに気を取られるから。
結果はご覧の通り、オレの読みは大正解。ナナシも含めて、全員まんまと丸め込まれてやんの。
…フフ。 ペッシ。
まさかお前まで追いかけてくるとは思わなかったけど。なかなか鋭いよ」
「オレは、鋭くなんか…」
波音の間に「これが最後だ」と告げたギアッチョの声が聞き取れた。
こんな所で褒められても何の足しにもならないペッシは、暗い面もちで俯く。
感情の音程を持たずに語っていたメローネの声は、わずかに興奮の感情を含ませた。
「確かにお前は図体だけデカくて、臆病で、ウスノロで、気が利かなくて、頭も要領も悪くて、全ッ然ツカエナイ奴だけど…嗅覚ってのかな、持って生まれた資質がある。だからプロシュートもリゾットも、お前には一目置いてる」
「そんなもの…」
「ある。いちばん冷静にナナシを追いかけたのは、ペッシ、お前だけだよ」
メローネは立ち上がり、細めた目で正面からペッシを見据えた。
テールランプの反射角にあたるのか、ペッシにはメローネの右目が赤く見えた気がした。
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