贖罪
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先の尖ったスコップが盛られて間もない土を掘り返していく。
ひとかき。
ふたかき。
やがて、まだ新しい木の蓋が現れる。
ギアッチョとホルマジオが長方形の短い端を吊り持ち棺を暴くと、ジェラートの遺体は虫と微生物による腐食が始まっていた。
埋葬したときと同じ姿勢、喉を真上に向けて仰いだまま、下に敷かれたクッションに体液の茶色いシミを作っている。
月と懐中電灯の僅かな明かりに驚いて、ジェラートを喰っていた虫達が一斉に体の下や中へと潜り込む。
ギアッチョは大切なものを運ぶ手順で、ソルベが閉じこめられた最初のケースを、そっとジェラートの上に降ろした。
「ちょっと重いかも知れねぇけど、堪えろよジェラート」
「大丈夫だよ。ソルベの重さにはきっと慣れてる」
ジェラートの胸の上に置かれたガラスケースに、ゴーグルを付けたホルマジオがハンマーを振り下ろす。
派手な音と共に、破片とホルマリンがジェラートの上へと飛び散った。
うるかされて皺の寄った皮膚、ツブツブと波打つクリームイエローの脂肪が、途端に安定を失って内臓を吐き出した。
ケースを割るたび、パーツを固定していた細い細いテグスが二人の上で絡み合う。
今まで見えなかった糸が、崩れ落ちたソルベの肉の間から。
何本も。
何本も。
「ホルマリンて可燃性?」
「どうだったか。もとはホルムアルデヒドだから揮発性は高いはずだけど」
好奇心の向くまま、メローネはいつもと変わらぬ口調でイルーゾォに訪ねた。
その方面はメローネのほうが詳しそうだと思いながらも、他に話したいこともなく、イルーゾォはいつもより低い声で答えて、黙った。
「なぁ、オレ、よく解らねぇよ」
メルセデスの後部ハッチを開けたまま、腰掛けたペッシが小さく漏らした。
絶え間なく波音が続く。
聞こえているのは多分、隣に座ったメローネだけだろう。
振り下ろされるハンマーを眺め、距離を置いて立つリゾットとプロシュートを眺め、メローネはペッシにだけ聞こえる声で語り出した。
「簡単なトリックだよ。とっても簡単な。
駐車してた車が、突然目の前から消えてたらどうする? ちょっとパニックになるだろ。
ポケットの中のキーからキーホルダーが無くなってたって、そっちを気にするヤツはまず居ない。
それと、おんなじだ。
ナナシが死んだことになっておけば、ソルベとジェラートとの連絡が少しくらい途絶えても不振じゃあない。
ソルベとジェラートにはオレが連絡したことになってたしね。
オレなんかの言うこと全部信じてるなんて、リゾットは案外お人好しすぎると思わないか?」
少し逸れた話の道筋を直すように、ペッシがちらとメローネの顔を伺った。
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