ブラインド・ゲイジ
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目を覚ました男が、熱さに吠えた。
言葉を創ることが出来たのはほんの数分。
あとは舌が喉に落ちたように呻き、全身を痙攣させて失禁した。
筋肉は男の顔を笑った形にさせたが、濁りだした目はグリンと裏返る。
机の脚が踊る下手なタップと世界を呪う笑い声が、埃に混じって小屋を満たす。
デクレッシェンドでしぼんだそれらが完全に無くなってしまうと、男がこの世に残したのは焼けた肉と尿と便の臭い……
……そして、魂のない亡骸だけになる。
全てが終わり、用も無くなった三人はようやく各々が手袋を外した。
「そうだ、良いこと教えてあげる」
誰に聞かれるわけでないが、ナナシは顔を付けあう2人の耳に唇を寄せた。
「キッチンの床下収納がね、実は地下室になってるのよ。直接階段になってるけど、ピッタリのサイズで浅い箱でも引っ掛ければいいわ」
「それはいいね」
「シェルターにぴったりだ」
手袋を持ったままのソルベがジェラートから離れ、ナナシをそっと抱いた。
「多分、もう会うこともないね」
「どこに行ったって変わらないさ」
ジェラートの手前、ナナシは遠慮がちにソルベの背中をそっと撫でて手を下ろす。
今度はジェラートが、力を込めてナナシを抱きしめた。
「暑ければ服を脱ぐし、屋根が無くて雨晒しなら濡れる。……あと、酔っ払った夜には噴水にダイブだな」
「ジェラートッ!!」
誰から聞いたのか(と言っても、知っているのはその場にいたヤツだけだが)そんな恥ずかしい過去を笑われて、ナナシは突き飛ばすようにジェラートから退いた。
その様子を見てソルベも可笑しそうに笑う。
刑務所からの脱走以上の逃亡を繰り広げようという者達とは思えない、呆れるほど楽しげな笑い声だった。
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