ブラインド・ゲイジ
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「つまり、協力しろって事ね?」
ずいぶんと誘導的だったが、物分かりの良い彼女に2人は薄ら笑いを浮かべた。
「少しだけ、時間が稼げればいい」
「報酬は弾むよ……おッと」
ガタタン!とテーブルが斜めになりかけ、ジェラートが慌てて男を抑えつけた。
びっしりと浮いた汗でヌルヌルと湿った体を掴み、苛立たしげに頬の筋肉をヒクリと痙攣させる。
『少しだけ』
ソルベはそう言った。
しかし、その少しだけの時間を作り出すには一体どうすれば?
リゾットは仕事があろうが無かろうが不定期に連絡を入れる。
ほとんどアジトに顔を出さない2人には、ことに頻繁に。
ホルマジオと悪事を働く時と比べものにならないくらい緻密な、決して抜け穴のない完全犯罪計画…深慮遠謀が必要だった。
ソルベとジェラートを合法的に消し去るには、自分ひとりでは不可能。
イルーゾォやホルマジオを抱き込むのは簡単だが、そんな簡単なトリックにはもう誰も引っかからない。
もっと、心理の穴をつくような奇策……
───そう、例えば……
下手なタップを踏むように鳴っていた机の脚が、沈黙した。
ナナシはしばし押し黙り、頭の中でシナリオを整理した。
「…逃亡資金を減らさなくてもいい。それより、いくらノルチアでも国内に居るのはマズイわ。まず国外に逃げて」
気を失った男から手を離し、ジェラートが汚らしい汗を吸った手袋を忌々しげに見つめる。
アイロンを置いたソルベが、ジェラートの腰をそっと抱き寄せて言った。
「もちろんそのつもりだよ。何年かイギリスで暮らして、ノルチアには最終的に行けたらいいと思ってる」
ナナシはアイロンのコンセントを引っこ抜き、同じ部分にドライヤーのコンセントを突っ込んだ。
来てすぐに男の腕を折った万力にドライヤーの持ち手を挟み、ネジを絞って固定する。
ソルベがもう一台の万力で男の頭を固定し、ナナシは熱風の吹き出し口の位置を調整した。
「「「Arrivedelci」」」
ジェラートによってスイッチを入れられたドライヤーが、気を失っている男の片耳を熱し始めた。
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