シェイクラブ
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眠たげな空は爛々と光っていた太陽を赤く充血させた後、暗闇の目蓋を静かに閉じさせた。
街の明かりが厚い雲に反射して、夜の空が薄気味悪い黄土色に見える。
四角いケーキの3分の1をざくりと削り取ったような、解体工事を中断された古いアパルトビル。
ソルベとジェラートがネグラにしている部屋の真下に、緋色のアプリリアが構えていた。
「やぁ、やぁ、お呼び出しありがとう。女の子との約束蹴ってきたんだ、高く付くよ?」
さも楽しそうな口上を述べた悪魔が、フルフェイスのヘルメットを頭から抜いて金色の髪をゆらした。
ほんの少し開けた窓から微弱な風が部屋へと巻き込み、注意深く観察しなければ解らない程ゆっくりした速度で雲を流していく。
二人の部屋には来客をもてなすような用意はなく、それをちゃんと知っているメローネは勝手に冷蔵庫を開けてミネラルウォーターの瓶を開けた。
「ほら、こっちにケツ向けろよ。その穴ファックしてやるからさ」
瓶で塞がっていた口が開くやいなや、育ちの悪さを露呈する悪口(あっこう)があふれ出す。
言うとおり差し出したところで満足など出来ないだろう。
最初だけ抵抗を見せたナナシは早々に諦め、尻を差し出す形になっていた。
指紋が付いたらすぐに解る、と潔癖気味のジェラートがいつも磨いているガラステーブルに、ナナシは遠慮無く突き飛ばされる。
瓶が腕に当たって、残り少ない水が勢いもなく流れる。
カットソーの繊維一本一本が水分を吸って肌に張り付き、ジワリと皮膚の表面温度を下げた。
「なぁ、ソルベのビューエルもらってもいいか?」
「あのアプリリアはどうするんだ?それに、プロシュートのランブレッタも勝手に乗り回してただろう?」
ナナシのショーツを尻の半分まで下げたメローネが、深い隙間にナカユビを差し込んで撫でた。
尾骨をテーブル面へ押しつけて逃げようとする腰に厚い唇が話しかけるたび、歯と舌が背骨に触れて肌を粟立たせる。
「あんな街乗りのスクーターつまらないね。どのみち、アレに乗ってたら足がつくぜ」
手も金もかけ、パーツを取り寄せてカスタムを重ねたソルベの「愛馬」。
ハイウェイで轟くハーレー社のエンジンは、スマートで滑らかな走りを見せるレーサー仕様のアプリリアとは魅力のベクトルが違う。
雄叫びは暴れ牛を思わせ手が掛かる。
乗りこなす方にも技術が問われる、いわばロデオ。
野性的な唸りをあげるマシンを狙われているのは解っていた。
時宜かなったりと提案したメローネに易々とくれてやるのはシャクだったが、仕方のないこととソルベは思い切るほかなかった。
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