シュールマルーシェ
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チョコレート色の滑らかなサテンスリップを尻の下に巻くように手を滑らし、ナナシはゆっくりと椅子にかけた。
レースに縁取られた裾のスリットから、苺ジャムより赤いショーツがちらりとするが、『ソリッド』の位置からは見えない。
「全部で十八回」
「……?」
最初の一打を勿体ぶるように、ナナシは影の深くなる胸の谷の前でチップをクルリと回した。
「あの時、私が連続で赤(ルージュ)に落とした回数です」
「数えていたのか」
「えぇ。二十回、落としてみせようと思ったんです。十九投めも赤(ルージュ)に落とすつもりでしたけど、玉は黒(ノワール)に落ちた。……あなたは、黒(ノワール)に賭けていた」
ヒラリと玉を放る仕草をし、手の中のチップの黒い面を『ソリッド』へ向けて見せた。
「ほう。二十回を赤(ルージュ)に賭けたおまえに、俺は勝ったというわけか」
絡繰りが無いわけでもないくせに、『ソリッド』は白々しい笑いを浮かべて足を組み直す。
「だから、今回は
「根に持つタイプだな。気をつける」
「もし私が根に持つタイプだったとしても、ご心配の必要は無いみたいですね」
最初のゲームと同じ枚数のチップが、白い面を天井に向けていた。
さぞや悔しげに盤面をにらみつけているだろうと、ナナシは『ソリッド』をチラリと盗み見る。
しかし長髪に縁取られた『ソリッド』の顔では唇が緩い弧を描いており、今にも「ベネ(良し)」と言い出しそうにすら見えた。
「下着姿の女とゲームなんかしていたら集中などできるものか」
「フフ、負け惜しみですか?根に持たないでくださいね」
「何とでも言え。お前こそ、これを狙っていたんだろう?」
わざと負け続けて掛け金をつり上げさせ、高額になった所で息の根を止めるのは、イカサマまがいの賭事師がよくやる手段だ。
「さぁ、どうでしょう」
ナナシの瞳が、イタズラを成功させた時と同じようにキラリと光る。
それを見て、なぜか満足そうに顎先を軽く上げた『ソリッド』は、窮屈そうに組んでいた足を解いて立ち上がった。
部屋の隅に置かれた金庫から紙幣を無造作に掴み取り、手の中で申し訳程度に端を揃えて差し出す。
あまりにぞんざいなその扱いに、ナナシは差し出された金よりも『ソリッド』を見つめたままでしばし動きを止めていた。
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