シュールマルーシェ
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「今夜の食事と眠る前に読む本は決まったか?」
「どちらも、今考えているところです」
「決まっていないなら好都合だ」
『ソリッド』に声をかけられたナナシは「また閉店間際まで夢中になってしまったか」と壁にかかった時計を見上げた。
古書店の時計は表面が曇って文字盤は見づらかったが、夕食までにまだかなりの時間があるのはちゃんと読めた。
「早すぎませんか?」
「なら、少し付き合え。本もいいが、バックギャモンでもどうだ?」
『ソリッド』の提案に、ナナシはしばし考えた。
暇にかまけてカリスマトレーダー二人を相手にし、手加減無用で
「バックギャモンとモノポリーだけはしないって決めているんです」
「なら、チェスは?」
今日はこの男、どうも退屈を持て余しているらしい。
嫌な一夜をまだ脳髄に巡らせ、ナナシは思い出してしまった憂さを晴らせはしないかと勝算のありそうなゲームをチカチカと思い出していく。
「得意ではないので、トランプか何かにしませんか」
カジノから離れ、サシでポーカーというのなら悪くない。
潜入前に爪が割れるほど練習させられたおかげで、少々のイカサマなら心得ている。
しかし『ソリッド』はそれを見透かして、不適な笑みでヒラヒラ手を振った。
「みすみすハメられるつもりはない。……そうだな、子供だましにオセロでもしてみるか」
緑の盤面に白黒のチップを並べていく、アレ。
ダイスを振るよりカードを配るより、これならお互いにイカサマのしようがない。
「負けませんよ?」
下らないゲームやイタズラにばかり熱くなる性分をどうにかしなければ。と、ナナシが反省…することは、まだなさそうだ。
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