ムービーゲーム
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それは深夜。
オレ達にしては珍しく、ベッドの上で、だった。
「目の色が……」
「あぁ、コンタクトのせいだよ」
いつも顔にかかるように下ろしていた前髪が流れてしまって、隠していた右目の色に気付かれてしまった。
ナナシはじっと顔を覗き込んで、頬の産毛に触れてくる。
「瞳孔の上まで赤?ピンク色になってる」
「うん。片眼だけ色盲なんだ」
のしかかる体と軽く触れる指の追跡に逃れようがなくなって、諦めて白状した。
原因は、シグ。
ストライカースプリングがイカれてて、発砲した瞬間に吐き出された薬莢と弾け飛んだ閃光が右目を焼いた。
右目が最後に見た赤は、今まで見たことがないほど鮮やかに炸裂したカーマインレッドの炎。
その火の花があんまり綺麗すぎて、「痛い」よりも「ディ・モールト、きれい」が先に口から出た。
失明は免れた。
けど、その時から右目は左より白く濁り、全ての風景から『赤色』を消し去った。
左目の視界を片手で覆えば、人はみんな死人みたいな土気色になった。
フィレンツェの街並みの真っ赤な屋根も熟れたトマトソースのスパゲッティも、ほんの少しオレンジがかった黄色に見える。
ワインは黒っぽい青や、光の具合で緑色にさえ見える。
先天性でもなく方眼だけが色覚異常に陥って、裸眼でいると面白いくらいに眩暈を覚えた。
しばらくは楽しんだけど、おかげでプロシュートから奪い取ったランブレッタがパーになった。
だから片目に赤いフィルターをかけるためのコンタクトを特注して、サングラスも右のレンズにだけ赤の混じった黒のをはめて。
時々コンタクトで目が疲れると片方のレンズだけがピンク色のふざけたメガネをかけてみたりもする。
シグの管理をしていたのは、ギアッチョだった。
ぜーんぜん気にするような事じゃあないのに、ギアッチョはずっと負い目を感じているみたいだった。
オレのために血相変えてうろたえて、担ぎ上げて走ってくれたのはベリッシモ素敵な思い出だ。
───せっかく、ギアッチョとだけの秘密だったのに。
素敵な思い出に土足で踏み込まれたみたいで、途端に冷めた。
「みんなには内緒にしろよ?仕事がしずらくなる」
「メローネがそう言うなら」
疲れで重く感じる右目蓋の上から、そうっと唇を付けてくれる。
こういう仕草は普通の女と同じで、薄気味悪くて嫌だった。
ヒトゴロシとは思えない柔らかさから逃げたくて体を起こす。
「『例の、』早くしろよ。あと一人ぶん」
「解ってる」
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