ノルマ
名前変換
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「理由」
「聞いたって、何も変わらねェだろ。今までだって、……何人見送ったか覚えてっか?」
「忘れるかよ、クソ」
しゃがみこんだギアッチョの顔の前、唇だけで引っかかっているタバコが、吸われもせずにジリジリと灰になっていく。
目の前で死んだ者、名も無き死体として発見されたもの、事後報告のみで実感の湧かぬ最後を遂げたもの。
同じチームのメンバーの顔は、その死を目の当たりにした時から、全てモノクロームに変色した『記憶』となる。
時に笑いあい、ささいな事で殴り合うまでやりあったその顔を、いくら思いだそうとしても思い出せない。
それほどまでに鮮烈に焼き付く、死面。
二日もすると皮膚から水分が抜け、やや萎縮した小さな頭だけを、脳味噌はやたらとリプレイさせて見せたがる。
───だから、自分たちに『強い結束』なんてものは必要なかった。
葬ってやることが出来るのは、パターンでいえば稀、そしてとても幸運なこと。
目の前にただ死体が横たわるようなケースは初めてだったが、その要因がナナシの過失によるものなのか、他者の作為なのかを確かめる術は無い。
「ソルベとジェラートに、連絡」
「した。見たくねぇって」
「あいつらアレでナナシのこと、可愛がってたからな」
ナナシと名前を出した所で、ホルマジオが奥歯を噛んだ。
噛み合わせがキシシ、と音をたてる。
「飲むか?」
「やめろよ」
「……イルーゾォが羨ましいな」
「クソったれ野郎が」
プロシュートはフラリと出て行き、それを追いかけようとしたペッシは「来るんじゃねぇ!」と一喝された。
イルーゾォは己ただひとりの世界に、リゾットは自室に入ったまま出て来ない。
メローネはナナシの抜け殻を抱えて、ひとり。
いや、それは体力的に無理がある。
『解体(バラシ)』専門のソルベとジェラートを引きずり出して墓堀りに行くだろう。
野良犬に骨を喰い荒らされないよう、深い深い墓穴を掘るだろう。
───ナナシのために、長い時間をかけて。
深く、深く───
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